7.炎症・免疫・アレルギー 8.感染症

ジャルカ配合錠(ドルテグラビル/リルピビリン)の作用機序と特徴【HIV】

更新日:

厚労省は2018年11月26日、「HIV-1感染症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品、新医療用配合剤のジャルカ配合錠(一般名:ドルテグラビルナトリウム/リルピビリン塩酸塩)を承認しました。

 

通常、HIV治療薬は3~4剤併用が基本ですが、ジャルカ配合錠は世界初の2剤併用で治療効果が期待できる薬剤です!

ただし、初回から使用できるわけではなく、初回治療(3~4剤併用)で効果が得られている患者さんからの切り替えとして使用されます。

 

ジャルカ配合錠は

の配合剤ですね☆

 

今回はHIV感染症とジャルカ配合錠(ドルテグラビル/リルピビリン)の作用機序についてご紹介します。

 

<スポンサーリンク>

AIDSとHIV

AIDS(エイズ)という言葉は一度は耳にしたことがあると思います。

正式名称は「後天性免疫不全症候群(Acquired immune deficiency syndrome:AIDS)」と呼ばれ、体内の免疫細胞が破壊されて後天的に免疫不全を引き起こす疾患です。

 

AIDSを引き起こす原因とされているウイルスが「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」です。

HIVに感染して数年の潜伏期間(無症状)を経た後にAIDSが発症すると言われています。

 

AIDSを発症すると全身倦怠感、体重の急激な減少、咳、発熱、発疹、といった風邪のような症状を呈します。

その後、普通では感染しないような日和見感染症(例:ニューモシスチス肺炎、カポジ肉腫、サイトメガロウイルス感染症)を合併し、生命に危機を及ぼします。

 

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染と増殖メカニズム

HIVの感染経路には以下の3つが知られています。

  • 性的感染
  • 血液感染
  • 母子感染

 

HIVは一本鎖RNAを持つレトロウイルスで、単体では増殖できません。

従って、ヒト等の動物の細胞内に感染して増殖を行います。それではここから増殖メカニズムについてご説明します。

 

HIVの構造と吸着・膜融合・脱殻

HIVはエンベロープと呼ばれる外膜の中にカプシドがあり、その中にRNAが封入された構造を有しています。

 

HIVがヒト細胞に感染すると、
吸着⇒膜融合⇒脱殻というプロセスを経てヒト細胞内にウイルスRNAが放出されます。

 

ウイルスRNAの逆転写

ヒトの細胞内に放出されたウイルスRNAは「逆転写酵素」と呼ばれるウイルス酵素によって二本鎖DNAが合成されます。

合成されたウイルス二本鎖DNAはヒト細胞の核内へと運ばれていきます。

 

ヒトDNAへの組み込み(インテグラーゼ)

核内に運ばれたウイルスDNAは、そのままでは複製や転写・翻訳ができません。

そのためウイルスDNAは「インテグラーゼ」と呼ばれるウイルス酵素によって、ヒトDNAの中にウイルスDNAを組み込みます

 

ウイルスDNAがヒトDNAに組み込まれることで、HIVに感染したヒト細胞が増殖する際にはウイルスDNAも一緒に増殖していってしまいます。

そしてウイルスDNAの遺伝情報を元に、転写・翻訳が行われ、ウイルスに必要なタンパク質も勝手に合成されていってしまいます。

 

以上がHIVの感染・増殖のメカニズムです。

 

<スポンサーリンク>

HIV感染症の治療

HIV感染症は早期に行うことで、AIDSの発症までの期間を延長することができます。

ただし、HIVを完治させることは現代医学では難しいとされています。

 

主に使用される薬剤には以下の種類があり、これらを適宜併用した多剤併用療法が基本です。

 

初回治療の組み合わせとしては、以下のいずれかが患者さんの適正に併せて推奨されています。

  • NRTI×2剤+INSTI×1剤
  • NRTI×2剤+PI×1剤+リトナビル(PI)
  • NRTI×2剤+NNRTI×1剤

 

これらの多剤併用療法を原則、一生涯行うことでAIDSで死亡することはほとんど無くなったと言われています。

しかしながら投与が長期化すると、薬剤の副作用等が懸念されますが、基本的に減薬はできませんでした。

 

ジャルカ配合錠は既存薬(3~4剤併用)から切り替えても治療効果が担保され、かつ2剤併用のため副作用の軽減等が期待されています。

 

ジャルカ配合錠の作用機序

ジャルカ配合錠は

の配合剤です!

それぞれの有効成分の作用機序を紹介します。

 

インテグラーゼ阻害剤(INSTI)の作用機序

インテグラーゼ阻害剤のテビケイ(一般名:ドルテグラビル)前述のウイルスDNAがヒトDNAに組み込まれる際に関与している「インテグラーゼ」を特異的に阻害する薬剤です。

 

インテグラーゼが阻害されることで、ウイルスDNAをヒトDNAへ組み込むことができなくなり、その後の増殖プロセスが全てストップしてしまいます。

上記の作用機序によってHIVの増殖を抑制すると考えられています。

 

非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)の作用機序

逆転写酵素阻害剤には「核酸系」と「非核酸系」がありますが、エジュラント(一般名:リルピビリン)は非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)に分類されています。

 

前述のウイルスの逆転写酵素を阻害することで、二本鎖DNAが合成できなくなり、その後の反応が全てストップします。

 

このようにウイルスの

  • インテグラーゼの阻害
  • 逆転写酵素の阻害

といった作用機序によってHIVの増殖を抑制するのがジャルカ配合錠です。

 

<スポンサーリンク>

エビデンス紹介:SWORD-1、SWORD-2

根拠となった海外の2つの第Ⅲ相試験(SWORD-1、SWORD-2)です。1)

両試験は、抗レトロウイルス療法(NRTI2剤とINSTI、NNRTI又はPIのいずれか1剤)を施行していてウイルス学的に抑制されているHIV-1感染症患者さんを対象に、ジャルカ配合錠投与群もしくは施行中の抗レトロウイルス療法を継続する群(継続投与群)を比較した試験です。

 

主要評価項目は「投与48週時のHIV-1のRNA量が50コピー/mL未満の割合」とされ、継続投与群に対するジャルカ配合錠群の非劣性が検証されました(非劣性マージンは-10%)。

 

下表にはSWORD-1とSWORD-2を統合した結果を掲載しています。

試験群ジャルカ配合錠群継続投与群
投与48週時のHIV-1のRNA量が
50コピー/mL未満の割合
95%95%
群間差:-0.2(95%CI:-3.0~2.5)
非劣性が証明
ウイルス学的な治療失敗率<1%1%
いずれかの有害事象発現率(48週目まで)77%71%

 

このように既存の治療からジャルカ配合錠に切り替えても治療効果が担保され、使用薬剤の軽減に繋がりますね。

 

副作用はもっと軽減されるものと期待していましたが、そこまで変わらない、もしくは若干増えている印象を受けました。

ただ、上記データは48週目までですので、長期的なものについては不明ですね。

 

1)Lancet. 2018 Mar 3;391(10123):839-849.

 

ジャルカ配合錠の副作用

主な副作用として、腹部膨満、頭痛、疲労、鼓腸、下痢、浮動性めまい等が報告されています。

 

ジャルカ配合錠の用法・用量

1回1錠を1日1回食事中または食直後に経口投与します。

 

効能・効果に関連する使用上の注意には以下の記載があります。

本剤は、ウイルス学的失敗の経験がなく、切り替え前6ヵ月間以上においてウイルス学的抑制(HIV-1 RNA量が50copies/mL未満)が得られており、本剤の有効成分に対する耐性関連変異を持たず、本剤への切り替えが適切であると判断される抗HIV薬既治療患者に使用すること(「臨床成績」の項参照)

 

ジャルカ配合錠の薬価

収載予定時(2018年12月12日)の薬価は以下の通りです。

  • ジャルカ配合錠 1錠:5,350.90円

 

算定方式は「類似薬効比較方式(Ⅰ)」でテビケイ錠とエジュラント錠が比較薬ですね。

 

緊急薬価収載される見込みです!

 

まとめ・類薬

ジャルカ配合錠はこんな薬

  • INSTIとNNRTIの2剤配合剤
  • INSTIによるインテグラーゼの阻害
  • NNRTIによる逆転写酵素の阻害
  • 1日1回の経口投与
  • 既存薬から切り替えて使用する

 

INSTIとNNRTIの2剤併用の配合剤は初の登場です。

 

例えば、4剤併用配合剤のスタリビルド配合錠は

  • インテグラーゼ阻害剤(INSTI)のエルビテグラビル
  • CYP3A阻害薬のコビシスタット
  • 逆転写酵素阻害剤のエムトリシタビンとテノホビル

を配合しています。

 

その他、3剤併用配合剤にはオデフシィ配合錠やコムプレラ配合錠があります。

製品名オデフシィ配合錠コムプレラ配合錠
有効成分NNRTIリルピビリン塩酸塩
NRTIエムトリシタビン
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩

 

これらの既存薬からジャルカ配合錠に切り替えることで使用薬剤を減らすことが可能となります!

 

以上、今回はHIVとジャルカ配合錠(ドルテグラビル/リルピビリン)の作用機序についてご紹介しました。

参考になったらシェアいただけると嬉しいです!
   

★おススメの関連記事&広告


※新薬情報オンラインの更新情報は、facebookページtwitterにて配信しています。
  • この記事を書いた人

木元 貴祥

大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。FP資格あり。

-7.炎症・免疫・アレルギー, 8.感染症
-, ,

Copyright© 新薬情報オンライン , 2018 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.