11.血液・造血器系 12.悪性腫瘍

キムリア(チサゲンレクルユーセル)の作用機序・特徴と副作用【急性リンパ性白血病】

更新日:

2019年3月26日、以下を効能・効果とするキムリア点滴静注(一般名:チサゲンレクルユーセル)が承認されました!

  • 「再発または難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)」:ただし、25歳以下に限る
  • 「再発または難治性のCD19陽性のびまん性細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」

 

製薬会社

  • 製造販売:ノバルティスファーマ(株)

 

キムリアは国内初の「CAR-T細胞(キメラ抗原受容体T細胞)療法」に分類されており、患者さん自身の“生きたT細胞”によって治療効果を発揮するといった新規作用機序を有しています!

参考CAR-Tの読み方:カーティー

 

今回はB細胞性急性リンパ性白血病キムリア(チサゲンレクルユーセル)の作用機序についてご紹介します。

 


急性リンパ性白血病(ALL)

白血病は「血液のがん」です。

 

血液細胞には、白血球、赤血球、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。

急性リンパ性白血病(ALL:Acute Lymphocytic Leukemia)は、白血球の中でも「リンパ球」が腫瘍化する疾患で、予後は不良とされています。

特に小児のがんの中ではALLが最も多いとされています。

 

また、腫瘍化するリンパ球によっていくつか分類されており、B細胞が腫瘍化した急性リンパ性白血病のことを「B細胞性急性リンパ性白血病」と呼んでいます。

この腫瘍化したB細胞のことを「白血病細胞」と呼んでおり、白血病細胞の表面にはしばしば「CD19」と呼ばれるタンパク質が発現していることが知られています。

B細胞性急性リンパ性白血病

 

急性リンパ性白血病の治療

基本的な治療は、抗がん剤の多剤併用療法(化学療法)です。

1カ月程の化学療法(導入化学療法)によって8割以上の患者さんでは「完全寛解」が得られ、その後も1~2年程、化学療法(地固め/維持化学療法)を継続していきます。

そしてその後も完全寛解が5年以上続けば、「治癒」に至ります。

 

ただし、最初の導入化学療法で1~2割の患者さんは抵抗性を示してしまいます。

また、一度完全寛解が得られたとしても、約半数の患者さんは再発してしまいます。

このような抵抗性・再発の患者さんに対して有望な治療法はありませんでした。

 

特に小児のALLの場合、治療選択肢が限られていることから新たな治療開発が望まれていました。

 

CAR-T細胞療法とは:キムリアの治療概念

キムリアは「CAR-T細胞療法」と呼ばれる新たな治療法です。

参考CAR(Chimeric Antigen Receptor):キメラ抗原受容体

 

新薬情報
作用機序の前にまずはCAR-T細胞療法の治療概念について説明します。

 

ヒトの体内には異物やがん細胞を排除する機構(免疫機構)が存在しており、その中心を担う細胞として「T細胞」が知られています。このT細胞を改変するのがCAR-T細胞療法です。

 

step
1
患者さんのT細胞を取り出す

CAR-T細胞法ではまず患者さん自身のT細胞を取り出します(下図の①)。

 

step
2
CARを導入する

その後、遺伝子改変技術を用いて白血病細胞のCD19を特異的に認識する受容体である「CAR」をT細胞に導入します(下図の②)。CARは白血病細胞を発見するアンテナのような役割ですね♪

 

step
3
増殖させた後、投与する

CARが導入されたT細胞を「CAR-T細胞」と呼んでいますが、CAR-T細胞を培養・増殖(下図の③)させ、数を増やした後に患者さんの体内に投与します(下図の④)。

CAR-T療法の概念・手順

 

なお、培養したCAR-T細胞を患者さんの体内に投与する前には「前処置」として免疫抑制薬等が投与されます。これはキムリアの効果を減弱させてしまう“制御性T細胞”の働きを事前に抑制させる目的です。

 

このように患者さんが本来持っているT細胞を改変して、白血病細胞をより認識するように設計されたのがCAR-T細胞療法です。

従って、キムリアは「患者さん自身のCAR-T細胞」を主成分とする医薬品です!

 

新薬情報
キムリアは患者さん毎に作成されるため、AさんにはAさん専用のCAR-T細胞、BさんにはBさん専用のCAR-T細胞といった具合ですね。

 

キムリア(チサゲンレクルユーセル)の作用機序と特徴

体内に投与されたCAR-T細胞は、CD19を発現した白血病細胞を特異的に認識して攻撃します。

その結果、白血病細胞の死滅・増殖抑制効果が得られると考えられています。

キムリア(チサゲンレクルユーセル)の作用機序

 

また、投与されたCAR-T細胞が体内に定着すると、自分自身で増殖することができますので、永久的にCD19を発現した白血病細胞を監視・攻撃することが可能です!

 

そのためキムリアは1回の投与で治療が完了します。

キムリアの特徴

 

このようにキムリアは患者さん自身の“生きたT細胞”によって治療効果を発揮する新規の治療法です!

 

エビデンス紹介:国際共同第Ⅱ相試験(ELIANA試験)

ALLに対するキムリアの根拠となった臨床試験を一つご紹介します。1)

本試験は25歳以下の再発・難治性のB細胞性ALL患者さんを対象にキムリアの有効性と安全性を検討した国際共同第Ⅱ相試験(日本人を含む)です。

 

主要評価項目は3か月以内の「完全寛解率」で、81%という結果でした。また、寛解が得られた患者さんは全員、残存している白血病細胞(微小残存病変)がなかったと報告れています。

なお、6か月時点の生存率は76%という結果でした。

 

新薬情報
長期の有効性や安全性についてはまだ論文報告がないため、今後の長期の解析も重要だと思います。

 

ちなみにもう一つの適応症である「再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」の根拠となった臨床試験はJULIET試験(第Ⅱ相試験)です。2)

 

副作用:サイトカイン放出症候群と対策

前述の臨床試験1)では、以下のような特徴的な副作用が報告されています。

  • サイトカイン放出症候群(悪心、倦怠感、頭痛、発熱、頻脈、など):77%
  • 神経毒性(脳卒中、錯乱、せん妄、振戦、傾眠、など):40%

 

特にサイトカイン放出症候群は死に至る可能性もあるため特に注意が必要です!!

 

なお、サイトカイン放出症候群の対処薬として同日、アクテムラ点滴静注用(一般名:トシリズマブ(遺伝子組換え))が使用可能となりました

 

薬価

現時点では薬価未収載です。

キムリアは患者さん毎に作成されるため、非常に手間がかかります。また当然ながら他の人には使用することができません(例:Aさん用のキムリアは、Bさんには投与不可)。

 

新薬情報
米国では既に承認されていますが、日本円換算で約5,000万円超と非常に高額です!

従って、国内の薬価がどうなるか、非常に注目されています!

 

ちなみに再生医療等製品の保険適用は、医薬品(薬価)医療機器(材料価格)か、個別に判断されます。

<平成 26 年 11 月5日 中医協総-2-1(抜粋)>

1.保険適用に係る今後の対応について

○ 再生医療等製品の保険適用に関する当面の間の対応
・薬事法改正後に承認(条件・期限付承認を含む。)された再生医療等製品については、保険適用の希望のあった個別の製品の特性を踏まえ、医薬品の例により対応するか、医療機器の例により対応するかを、薬事承認の結果を踏まえて判断

 

※引用:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第285回) 議事次第

 

キムリアは2019年3月27日の中央社会保険医療協議会 総会(第411回)にて医薬品として薬価収載されることが了承されました。3)

 

まとめ・あとがき

キムリアはこんな薬

  • 世界初のCAR-T細胞療法
  • 患者さん自身の“生きたT細胞”によって治療する
  • 1回の投与で治療が完了する
  • サイトカイン放出症候群と神経毒生に注意が必要

 

キムリアはCAR-T細胞療法といった新規の作用機序を有する医薬品です!

現在、キムリア以外のCAR-T細胞療法が様々な疾患に対して開発が進行中ですので、今後の動向も注目されています。

 

ただ、CAR-T細胞療法は現時点では血液がん(造血器腫瘍)にしか効果がなく、固形がん(例:大腸がん、肺がん、胃がん、等)には効果が示されていません。何かしらの工夫が求められていますので、今後、固形がんへの広がりについても期待したいと思います☆

 

以上、今回は新規の治療法であるCAR-T細胞療法について、キムリアの作用機序と共にご紹介しました!

 

引用文献・資料等

  1. 国際共同第Ⅱ相試験(ELIANA試験):N Engl J Med. 2018 Feb 1;378(5):439-448.
  2. JULIET試験:N Engl J Med 2019; 380:45-56
  3. 厚労省:中央社会保険医療協議会 総会(第411回) 議事次第「再生医療等製品の医療保険上の取扱いについて:総-3(PDF:397KB)」
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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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