3.呼吸器系

テリルジー吸入用の作用機序:ビレーズトリ・エナジアとの違い【COPD/気管支喘息】

2020年10月30日、厚労省の薬食審医薬品第二部会にて、テリルジー・エリプタの効能・効果に「気管支喘息」を追加することが承認了解されました!

基本情報

製品名テリルジー100エリプタ吸入用
テリルジー200エリプタ吸入用
一般名ウメクリジニウム臭化物/
ビランテロールトリフェニル酢酸塩/
フルチカゾンフランカルボン酸エステル
製品名の由来テリルジー:該当資料なし
エリプタ:楕円形(ellipse)
製造販売グラクソ・スミスクライン(株)
効能・効果●慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合):100エリプタのみ
●気管支喘息(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入β2刺激剤及び長時間作用性吸入抗コリン剤との併用が必要な場合)
用法・用量1日1回吸入投与(記事内参照
収載時の薬価エリプタ14吸入用:4,107.40円
エリプタ30吸入用:8,692.80円(1日薬価:289.80円)

現時点では200エリプタと気管支喘息は未承認のためご注意ください。

 

テリルジーは2019年3月26日に「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」を対象疾患として承認された日本初のLAMA/LABA/ICSの3剤配合剤です。その後、COPDではビレーズトリ・エアロスフィア、気管支喘息ではエナジア吸入用カプセルが相次いで承認されました。

エナジア吸入用カプセル(LAMA/LABA/ICS)の作用機序【気管支喘息】

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テリルジーは

  • 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)のウメクリジニウム
  • 長時間作用性β2刺激薬(LABA)のビランテロール
  • 吸入ステロイド薬(ICS)のフルチカゾン

を配合した薬剤で、3剤配合剤は国内初登場です!また、COPDと気管支喘息を共に適応として持つ3剤配合剤も国内初となります。

参考読み方:LAMAは“ラマ”、LABAは“ラバ”、ICSは“アイシーエス”

 

木元 貴祥
また、1日1回1吸入で治療効果が期待できるといった特徴もありますね。

 

100エリプタはCOPDと気管支喘息共に適応がありますが、200エリプタは気管支喘息のみの適応ですので注意が必要です。

 

今回は慢性閉塞性肺疾患(COPD)と気管支喘息について、そしてテリルジーの作用機序についてご紹介します。

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは

慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、喫煙を主な原因として発症する肺の炎症性疾患です。

基本的には不可逆的の慢性疾患で、徐々に症状が進行していきます。

 

主な症状は、咳、痰や動作時の呼吸困難などで、患者さんのQOLが著しく低下するだけでなく、症状の進行によって、やがては呼吸不全を起こし、生命を脅かす可能性のある病気です。

 

ではここで、COPDがどのような症状か体験してみたいと思います。

まず息を大きく吸って下さい。そのまま吐かずに吸って吸って吸って・・・・。

ちょっと吐いて下さい。

そしたらまた吸って吸って吸って・・・。ちょっと吐いてください。これを繰り返します。

このような状態がずっと続くのがCOPDの主な症状だとお考えください。

 

原因と病態

COPDの最大の原因は喫煙です。

喫煙者の15~20%がCOPDを発症すると言われています。従って、発症予防としては「禁煙」が最も効果的です。

 

喫煙によって気管支に炎症が生じ、それに伴い気管支平滑筋の収縮や肥厚(平滑筋が厚くなってしまう)してしまいます。

また、喫煙による痰も絡みやすくなり、次第に気管支は狭窄していってしまいます。

 

 

進行してしまうと、酸素を取り込む肺胞自体も炎症によって破壊され、呼吸機能が低下していってしまいます。

呼吸機能が低下しすぎてしまうと、人工呼吸器を用いることもあります。

 

気管支平滑筋の収縮と弛緩(拡張)

通常、気管支平滑筋の収縮や弛緩(拡張)は副交感神経と交感神経によって調節されています。

  • 副交感神経:平滑筋の収縮
  • 交感神経:平滑筋の弛緩(拡張)

 

副交感神経から産生される「アセチルコリン」が平滑筋の「アセチルコリンM3受容体」に作用することで平滑筋が収縮します。

また、交感神経から産生される「ノルアドレナリン」が平滑筋の「アドレナリンβ2受容体」に作用することで平滑筋が弛緩(拡張)します。

気管支平滑筋の収縮と弛緩(拡張):アセチルコリンとノルアドレナリン

 

COPDの治療

COPDの治療の基本は気管支拡張薬による薬物療法が中心です。1)

主な気管支拡張薬には以下があります。

  • 抗コリン薬
  • β2刺激薬
  • テオフィリン薬

 

また、上記薬剤は基本的には「吸入」で使用し、長時間持続タイプのものが使用されます。

 

抗コリン薬の長時間持続タイプを「LAMA」、β2刺激薬長時間持続タイプを「LABA」と呼んでいます。

治療を開始する際には、LAMAやLABAを単剤から使用していきますが、最近ではLAMAの単剤が第一選択として推奨されています。

また、喘息を併発している場合、適宜、吸入ステロイド薬(ICS)も併用します。

 

単剤で治療効果が不十分な場合に併用療法(例:LAMA+LABA、ICS+LABA)が検討されますが、症状や重症度によっては最初から併用療法が行われることもあります。

  • LAMA+LABA配合剤:アノーロ、ウルティブロ
  • ICS+LABA配合剤:レルベア、シムビコート、アドエア

 

今回ご紹介するテリルジーはLABAとLABAとICSを配合した薬剤で、中等度~重度の増悪歴のある患者さんに対して使用されます。

 

気管支喘息とは

気管支喘息は、呼吸をするときの空気の通り道が、アレルギーなど炎症によって敏感になり、けいれんを起こして狭くなることで起こります。

 

発作時の症状としては、「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった喘鳴ぜんめいや、激しい咳が出る、呼吸が苦しくなるといった症状が発現し、痰が絡むこともあります。(イメージ図としてはCOPDと同じ)

気管支喘息では気管支が狭窄している

 

日本では、子供の5~7%、大人の3~5%が喘息であると言われていますね。

 

子供の喘息は男子に比較的多く、アレルギーが原因であることがほとんどとされていますが、成長するに従って発作が消失することもあります。

 

主な原因としては、ダニ、ハウスダスト、ペット 花粉、といったアレルギー物質のほか、たばこ、過労、ストレス、感染症から誘発されることもあります。

 

気管支喘息の治療

気管支喘息は炎症によって引き起こされているため、抗炎症作用のある「ステロイドの吸入」による治療が基本です。2)

 

その他に、発作の予防として、以下の薬剤を適宜併用して用います。

  • ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA:Leukotriene receptor antagonist)
  • 長時間作用性β2刺激薬(LABAラバ:Long Acting β2 Agonist)
  • 長時間作用性抗コリン薬(LAMAラマ:Long-Actng anti-Muscarinic Agent)

 

最近では、吸入ステロイドとLABAを配合した合剤(例:レルベアエリプタ)等も販売されています。

レルベアエリプタ(ビランテロール/フルチカゾン)の作用機序【COPD】

続きを見る

 

しかし上記のような治療(ICS/LABA併用療法)を行っても、喘息がコントロールできない場合もあります。

 

このような場合において今回ご紹介するICS/LABA/LAMA配合剤のテリルジーが使用可能となる見込みですね!

 

その他、抗体製剤のデュピクセント(デュピルマブ)もコントロール不良な気管支喘息に対して選択肢になります。

デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】

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テリルジーの作用機序

テリルジーは、

  • 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)のウメクリジニウム
  • 長時間作用性β2刺激薬(LABA)のビランテロール
  • 吸入ステロイド薬(ICS)のフルチカゾン

を配合した薬剤です。

 

ウメクリジニウムの作用機序

ウメクリジニウムは抗コリン薬に分類されています。

アセチルコリンM3受容体を遮断することで気管支平滑筋の収縮を抑制し、気管支を拡張するといった作用機序を有しています。

 

ビランテロールの作用機序

ビランテロールはβ2刺激薬に分類されています。

アドレナリンβ2受容体を刺激することで気管支平滑筋を弛緩(拡張)させるといった作用機序を有しています。

 

フルチカゾンの作用機序

フルチカゾンはステロイド薬であり、抗炎症作用を有しています。

COPDで特に喘息を併発している場合、気管支の炎症によって平滑筋が収縮してしまいますが、フルチカゾンによって、炎症を抑制することができます。

 

このようにテリルジーは、

  • LAMAとLABAによる気管支拡張
  • ICSによる炎症抑制

により、炎症によって狭窄した気管支を広げ、呼吸機能の緩和が期待されています。

 

COPDのエビデンス紹介:IMPACT試験

COPDの承認根拠となった臨床試験を一つご紹介します。3)

本試験は中等度~重度の増悪歴のあるCOPD患者さんを対象に、LAMA+LABA配合剤のアノーロ、ICS+LABA配合剤のレルベア、テリルジーの各1日1回吸入投与(52週間)の有効性と安全性を検証した第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「中等度または重度の増悪の年間発生率」とされました。

アノーロレルベアテリルジー
中等度または重度の増悪の
年間発生率
1.21件1.07件0.91件
--2剤併用との比較:
対アノーロ, p<0.001
対レルベア, p<0.001
入院を要する重度の増悪の
年間発生率
0.19件0.15件0.13件
--2剤併用との比較:
対アノーロ, p<0.001
対レルベア, p=0.06

 

このようにテリルジーではアノーロやレルベアと比較して中等度から重度の増悪を有意に抑制させることが示されています。

しかしながらICSを含むテリルジー群やレルベア群において、肺炎の発生率がアノーロ群と比較して有意に高くなることも報告されていますので注意が必要そうですね。

 

気管支喘息のエビデンスについては割愛しますが、国際共同で行われた第Ⅲ相試験のCAPTAIN試験が根拠とされています。4)

 

副作用と注意事項

主な副作用として、口腔カンジダ症(2.4%)、肺炎(1.1%)、発声障害(0.6%)などが報告されています。5)

 

ステロイドのフルチカゾンには免疫低下作用もあるため、口腔内の感染症(カンジダ症など)が発現することがあります。

従って、吸入後には「うがい」をするなどして予防することが望ましいです。

 

また、抗コリン薬のウメクリジニウムを配合していることから、下記の患者さんには投与禁忌

  • 閉塞隅角緑内障の患者さん
  • 前立腺肥大等による排尿障害がある患者さん

 

木元 貴祥
共に、抗コリン作用によって、悪化する可能性があるためですね。

 

用法・用量

<慢性閉塞性肺疾患の場合>

通常、成人にはテリルジー100エリプタ1吸入を1日1回吸入投与します。

 

<気管支喘息の場合>

通常、成人にはテリルジー100エリプタ1吸入を1日1回吸入投与します。

なお、症状に応じてテリルジー200エリプタ1吸入を1日1回吸入投与することも可能です。

 

木元 貴祥
両疾患共に基本は100エリプタの1日1回吸入ですが、気管支喘息の場合のみ、200エリプタ1日1回吸入とすることも可能というわけですね。

 

薬価

100エリプタの収載時(2019年5月22日)の薬価は以下の通りで、有用性加算が加算されています。

 

  • テリルジー100エリプタ14吸入用:4,107.40円
  • テリルジー100エリプタ30吸入用:8,692.80円(1日薬価:289.80円)

 

有用性加算の根拠

  • 本剤は既存治療で効果不十分な患者群で検討を行い、既存の2成分の治療と比較して、慢性閉塞性肺疾患の増悪の年間発現率で統計学的に有意な差が認められた。
  • 審査報告書において本剤は3成分を1回の吸入で投与可能であり、利便性が高いと評価されている。

 

算定方式等については以下の記事をご確認ください。

【新薬:薬価収載】11製品+再生医療等製品(2019年5月22日)

続きを見る

 

テリルジー・ビレーズトリ・エナジアの違い・比較

2020年10月時点でLAMA+LABA+ICSの3剤配合剤はテリルジーとビレーズトリエナジアがあり、適応症や特徴が異なります。

テリルジー・ビレーズトリ・エナジアの違い・比較:COPDや気管支喘息の適応症が異なる

 

木元 貴祥
まずは適応症でしょうか。

 

テリルジーの気管支喘息が承認されれば、3剤配合剤では初のCOPDと気管支喘息を共に適応を有することになります。COPDでは気管支喘息を併発することが少なくないため、使いやすいと思います。

 

その他、テリルジーやエナジアでは1吸入を1日1回ですが、ビレーズトリは1回2吸入を1日2回のため、少し煩雑な印象を受けました。その分細かな用量調節が可能かもしれませんが。

 

またデバイスも異なっています。ビレーズトリのエアロスフィアは加圧式定量噴霧吸入器(pMDI:pressurized meterdose inhaker)の一種に分類されていますが、世界初の薬剤送達技術(以下の特徴)を有しているようです。

  • 3つの薬剤を多孔性粒子である担体に接着させ、肺全体に送達できる
  • この担体は、肺の中枢から末梢まで到達するのに適していると考えられている粒子径である
  • 比重が軽いことから、薬剤を肺の末梢まで送達することが期待できる

 

エアロスフィアは加圧式定量噴霧吸入器ですので、エリプタ(ドライパウダー吸入器)とは吸入時の特徴も異なりますね。

  • エアロスフィア:加圧式定量噴霧吸入器(pMDI:pressurized meterdose inhaker)による吸入のため、努力呼吸を必要としません。吸気流量の低いCOPD患者さんでも吸入しやすいとされている一方で、ボンベを押すタイミングと吸気開始を合わせる必要があります。
  • エリプタ:ドライパウダー吸入器(DPI:dry powder inhaler)の一種で、粉状の薬剤を吸入器によってセットすることによって吸入します。勢いよく吸入して息を数秒間止める必要がある一方で、吸気を同期させる必要はありません

 

木元 貴祥
このようにデバイスによる使い分けもできるかもしれません。自発呼気量が低下しているような患者さんではエアロスフィア(ビレーズトリ)の方が良いかもしれませんね。

 

まとめ・あとがき

テリルジーはこんな薬

  • LAMA/LABA/ICSを配合した初の薬剤
  • COPDと気管支喘息を共に適応症として有する
  • 1日1回1吸入

 

実地臨床でもLAMA/LABA/ICS(例:アノーロ+ICS、レルベア+LAMA)によって症状がコントロールできている患者さんもいらっしゃいますので、まずはそういった患者さんに対してテリルジーへ切り替えることでアドヒアランスの向上が期待できると思われます。

 

IAMA/LABA/ICSの3剤配合剤についてはCOPDを適応症として2019年に2製品目(ビレーズトリ・エアロスフィア)も登場しました!

ビレーズトリ(LAMA/LABA/ICS)の作用機序【COPD】

続きを見る

 

そして2020年には気管支喘息を適応症としてエナジア吸入用カプセルも登場しました。エナジアのブリーズヘラーはセンサーを装着の上、「PROPELa」と呼ばれるスマートフォンアプリとBluetooth連動させることで

  • 吸入確認
  • 服薬リマインダー
  • 主治医に日々の服薬の記録を共有(希望すれば)

が可能になるようです!

エナジア吸入用カプセル(LAMA/LABA/ICS)の作用機序【気管支喘息】

続きを見る

 

木元 貴祥
面白いですよね!

 

このようにCOPDや気管支喘息の領域では3剤配合剤が相次いで登場しました。今後は適切な患者さん選択や比較検討等が進めば興味深いですね。

 

本記事が皆様の一助になれば幸いです☆

 

引用文献・資料等

  1. COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]
  2. 喘息予防・管理ガイドライン2018
  3. IMPACT試験:N Engl J Med 2018; 378:1671-1680
  4. CAPTAIN試験:Lancet Respir Med. 2020 Sep 9;S2213-2600(20)30389-1. doi: 10.1016/S2213-2600(20)30389-1.
  5. テリルジーエリプタ 添付文書

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木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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