3.呼吸器系

テリルジー吸入用(LAMA/LABA/ICS)の作用機序【COPD】

更新日:

テリルジー・エリプタとは、2019年3月26日に「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」を対象疾患として承認された新有効成分含有・新医療用配合剤で、日本初のLAMA/LABA/ICSの3剤配合剤です。

グラクソ・スミスクライン|ニュースリリース

基本情報

製品名テリルジー100エリプタ吸入用
一般名ウメクリジニウム臭化物/
ビランテロールトリフェニル酢酸塩/
フルチカゾンフランカルボン酸エステル
製品名の由来テリルジー:該当資料なし
エリプタ:楕円形(ellipse)
製造販売グラクソ・スミスクライン(株)
効能・効果慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解
(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
用法・用量テリルジー100エリプタ1吸入を1日1回吸入投与する。
収載時の薬価エリプタ14吸入用:4,107.40円
エリプタ30吸入用:8,692.80円(1日薬価:289.80円)

 

テリルジーは

  • 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)のウメクリジニウム
  • 長時間作用性β2刺激薬(LABA)のビランテロール
  • 吸入ステロイド薬(ICS)のフルチカゾン

を配合した薬剤で、3剤配合剤は国内初登場です!

参考読み方:LAMAは“ラマ”、LABAは“ラバ”、ICSは“アイシーエス”

 

木元 貴祥
また、1日1回1吸入で治療効果が期待できるといった特徴もありますね。

 

今回は慢性閉塞性肺疾患(COPD)とテリルジーの作用機序についてご紹介します。

 


慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは

慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、喫煙を主な原因として発症する肺の炎症性疾患です。

基本的には不可逆的の慢性疾患で、徐々に症状が進行していきます。

 

主な症状は、咳、痰や動作時の呼吸困難などで、患者さんのQOLが著しく低下するだけでなく、症状の進行によって、やがては呼吸不全を起こし、生命を脅かす可能性のある病気です。

 

ではここで、COPDがどのような症状か体験してみたいと思います。

まず息を大きく吸って下さい。そのまま吐かずに吸って吸って吸って・・・・。

ちょっと吐いて下さい。

そしたらまた吸って吸って吸って・・・。ちょっと吐いてください。これを繰り返します。

このような状態がずっと続くのがCOPDの主な症状だとお考えください。

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因と病態

COPDの最大の原因は喫煙です。

喫煙者の15~20%がCOPDを発症すると言われています。従って、発症予防としては「禁煙」が最も効果的です。

 

喫煙によって気管支に炎症が生じ、それに伴い気管支平滑筋の収縮や肥厚(平滑筋が厚くなってしまう)してしまいます。

また、喫煙による痰も絡みやすくなり、次第に気管支は狭窄していってしまいます。

 

進行してしまうと、酸素を取り込む肺胞自体も炎症によって破壊され、呼吸機能が低下していってしまいます。

呼吸機能が低下しすぎてしまうと、人工呼吸器を用いることもあります。

 

気管支平滑筋の収縮と弛緩(拡張)

通常、気管支平滑筋の収縮や弛緩(拡張)は副交感神経と交感神経によって調節されています。

  • 副交感神経:平滑筋の収縮
  • 交感神経:平滑筋の弛緩(拡張)

 

副交感神経から産生される「アセチルコリン」が平滑筋の「アセチルコリンM3受容体」に作用することで平滑筋が収縮します。

また、交感神経から産生される「ノルアドレナリン」が平滑筋の「アドレナリンβ2受容体」に作用することで平滑筋が弛緩(拡張)します。

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療

COPDの治療の基本は気管支拡張薬による薬物療法が中心です。1)

主な気管支拡張薬には以下があります。

  • 抗コリン薬
  • β2刺激薬
  • テオフィリン薬

 

また、上記薬剤は基本的には「吸入」で使用し、長時間持続タイプのものが使用されます。

 

抗コリン薬の長時間持続タイプを「LAMA」、β2刺激薬長時間持続タイプを「LABA」と呼んでいます。

治療を開始する際には、LAMAやLABAを単剤から使用していきますが、最近ではLAMAの単剤が第一選択として推奨されています。

また、喘息を併発している場合、適宜、吸入ステロイド薬(ICS)も併用します。

 

単剤で治療効果が不十分な場合に併用療法(例:LAMA+LABA、ICS+LABA)が検討されますが、症状や重症度によっては最初から併用療法が行われることもあります。

  • LAMA+LABA配合剤:アノーロ、ウルティブロ
  • ICS+LABA配合剤:レルベア、シムビコート、アドエア

 

今回ご紹介するテリルジーはLABAとLABAとICSを配合した薬剤で、中等度~重度の増悪歴のある患者さんに対して使用されます。

 

テリルジーの作用機序

テリルジーは、

  • 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)のウメクリジニウム
  • 長時間作用性β2刺激薬(LABA)のビランテロール
  • 吸入ステロイド薬(ICS)のフルチカゾン

を配合した薬剤です。

 

ウメクリジニウムの作用機序

ウメクリジニウムは抗コリン薬に分類されています。

アセチルコリンM3受容体を遮断することで気管支平滑筋の収縮を抑制し、気管支を拡張するといった作用機序を有しています。

 

ビランテロールの作用機序

ビランテロールはβ2刺激薬に分類されています。

アドレナリンβ2受容体を刺激することで気管支平滑筋を弛緩(拡張)させるといった作用機序を有しています。

 

フルチカゾンの作用機序

フルチカゾンはステロイド薬であり、抗炎症作用を有しています。

COPDで特に喘息を併発している場合、気管支の炎症によって平滑筋が収縮してしまいますが、フルチカゾンによって、炎症を抑制することができます。

 

このようにテリルジーは、

  • LAMAとLABAによる気管支拡張
  • ICSによる炎症抑制

により、炎症によって狭窄した気管支を広げ、呼吸機能の緩和が期待されています。

 

エビデンス紹介:IMPACT試験

根拠となった臨床試験を一つご紹介します。2)

本試験は中等度~重度の増悪歴のあるCOPD患者さんを対象に、LAMA+LABA配合剤のアノーロ、ICS+LABA配合剤のレルベア、テリルジーの各1日1回吸入投与(52週間)の有効性と安全性を検証した第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「中等度または重度の増悪の年間発生率」とされました。

アノーロレルベアテリルジー
中等度または重度の増悪の
年間発生率
1.21件1.07件0.91件
--2剤併用との比較:
対アノーロ, p<0.001
対レルベア, p<0.001
入院を要する重度の増悪の
年間発生率
0.19件0.15件0.13件
--2剤併用との比較:
対アノーロ, p<0.001
対レルベア, p=0.06

 

このようにテリルジーではアノーロやレルベアと比較して中等度から重度の増悪を有意に抑制させることが示されています。

しかしながらICSを含むテリルジー群やレルベア群において、肺炎の発生率がアノーロ群と比較して有意に高くなることも報告されています。

 

副作用と注意事項

主な副作用として、口腔カンジダ症(2.4%)、肺炎(1.1%)、発声障害(0.6%)などが報告されています。3)

 

ステロイドのフルチカゾンには免疫低下作用もあるため、口腔内の感染症(カンジダ症など)が発現することがあります。

従って、吸入後には「うがい」をするなどして予防することが望ましいです。

 

また、抗コリン薬のウメクリジニウムを配合していることから、下記の患者さんには投与禁忌です。

  • 閉塞隅角緑内障の患者さん
  • 前立腺肥大等による排尿障害がある患者さん

共に、抗コリン作用によって、悪化する可能性があるためです。

 

用法・用量

テリルジー100エリプタ1吸入を1日1回吸入投与します。

 

薬価

収載時(2019年5月22日)の薬価は以下の通りで、有用性加算が加算されています。

 

  • テリルジー100エリプタ14吸入用:4,107.40円
  • テリルジー100エリプタ30吸入用:8,692.80円(1日薬価:289.80円)

 

有用性加算の根拠

  • 本剤は既存治療で効果不十分な患者群で検討を行い、既存の2成分の治療と比較して、慢性閉塞性肺疾患の増悪の年間発現率で統計学的に有意な差が認められた。
  • 審査報告書において本剤は3成分を1回の吸入で投与可能であり、利便性が高いと評価されている。

 

算定方式等については以下の記事をご確認ください。

>>【新薬:薬価収載】11製品+再生医療等製品(2019年5月22日)

 

まとめ・あとがき

テリルジーはこんな薬

  • LAMA/LABA/ICSを配合した初の薬剤
  • 2剤配合剤(アノーロやレルベア)と比較して効果が高い

 

実地臨床でもLAMA/LABA/ICS(例:アノーロ+ICS、レルベア+LAMA)によって症状がコントロールできている患者さんもいらっしゃいますので、まずはそういった患者さんに対してテリルジーへ切り替えることでアドヒアランスの向上が期待できると思われます。

 

IAMA/LABA/ICSの3剤配合剤については2019年に2製品目(ビレーズトリ・エアロスフィア)も登場しました!

詳しくは以下の記事でエビデンスやテリルジーとの比較表についても掲載していますので是非ご確認くださいませ~☆

ビレーズトリ(LAMA/LABA/ICS)の作用機序:テリルジーとの違い【COPD】

ビレーズトリ・エアロスフィアとは、2019年6月18日に「COPD」を対象疾患として承認された新有効成分含有・新医療用配合剤で、LAMA/LABA/ICSの3剤を配合しています。 アストラゼネカ|ニュ ...

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引用文献・資料等

  1. COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]
  2. IMPACT試験:N Engl J Med 2018; 378:1671-1680
  3. テリルジーエリプタ 添付文書

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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