4.消化器系

ラグノスNF経口ゼリー(ラクツロース)の作用機序と類薬との違い【便秘症】

更新日:

慢性便必症(器質的疾患による便秘を除く) 」を効能・効果とするラグノスNF経口ゼリー分包12g(一般名:ラクツロース)2018年9月21日に承認されました!

製薬会社

  • 製造販売元:(株)三和化学研究所

 

ラグノスゼリーは

  • モニラック・シロップ(一般名:ラクツロース)
  • ラクツロース・シロップ(一般名:ラクツロース)

の後発医薬品(ジェネリック)に分類されていますが、ラグノスは臨床試験を別途行っているため先発品と適応症が異なっています!

 

ラグノスゼリーは既に16.05g製剤(ラグノスゼリー分包16.05g)があり、適応は以下の通りです。

  • 高アンモニア血症に伴う下記症候の改善
    • 精神神経障害、手指振戦、脳波異常
  • 産婦人科術後の排ガス・排便の促進

 

今回12g製剤が追加され、上記適応と共に慢性便秘症が追加されました。なお、16.05g製剤には慢性便秘症の適応は追加されていませんのでご注意ください。

 

本記事では慢性便秘症とラグノス(ラクツロース)の作用機序、そしてモニラック・シロップとの違いについてご紹介します。

 

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便秘の疫学

便秘症は、

  • 本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態

と定義されています。

 

便秘の患者さんは全人口の1割程度で、治療に不満を抱く患者さんも多い疾患です。

皆様も便秘は経験されたことがあると思いますが、実際に便秘になると、、、辛いですよね・・・。

 

発症は年齢が高くなればなるほど割合が多くなります。

また、男女比では女性に多くいとされていますが、高齢になれば男女差は無くなっていきます

特に80歳以上では男性に多いとされています。

 

小児でも10人に1人は便秘になると言われており、トイレトレーニングの頃に多いとされています。

 

便秘の症状と種類

便秘の主症状は、腹痛、直腸残便感、腹部膨満感などがあります。

 

また、発症経過から「急性便秘」と「慢性便秘」に大別されています。

具体的には、排便回数の減少排便困難の状態が6カ月以上持続する場合に、「慢性便秘」と診断されます。

 

さらに原因や病態により「器質性便秘」と「機能性便秘」等に分類されています。

  • 器質性便秘:腸の形態的変化(構造異常)を伴う便秘で、胃腸の疾患によるものが多い
  • 機能性便秘:腸の形態的変化(構造異常)を伴わない便秘で、胃腸の機能低下(ストレスや運動不足、食生活)によるものが多い

一般的には機能性便秘が多いとされていますね。

 

便秘の治療

これら便秘症に対しては、

  • 生活習慣の改善(食事、運動、睡眠、飲酒など)
  • 内服薬による治療

を適宜組み合わせて行われます。

 

慢性便秘症診療ガイドライン2017では、
内服薬による治療の推奨度とエビデンスレベルは以下の通りです。1)

推奨度エビデンス
レベル
分類代表薬の例
推奨度1
(強い推奨)
A浸透圧性下剤酸化マグネシウム、
ラクツロース
D-ソルビトール
上皮機能変容薬アミティーザ
リンゼス
推奨度2
(弱い推奨)
A消化管運動賦活薬ガスモチン(モサプリド)
Bプロバイオティクスビオフェルミン
刺激性下剤センノシド、
アロエ、
ビサコジル
C膨張性下剤ポリカルボフィルカルシウム
漢方薬大黄甘草湯、大建中湯、等

※推奨度:(1)強い推奨、(2)弱い推奨
※エビデンスレベル:A(質の高いエビデンス)からD(非常に質の低いエビデンス)まで分類

 

このように、強い推奨と高いエビデンスレベル(A)で推奨されているのは、

  • 酸化マグネシウムやラクツロースに代表される「浸透圧性下剤」と、
  • リンゼスに代表される「上皮機能変容薬」

です。

 

酸化マグネシウムは昔から使用経験があり、また薬価も安いため、初回の治療としてよく用いられています。

しかし、酸化マグネシウムは長期に使用すると「高マグネシウム血症」の危険性があるため、ガイドラインには以下の注意書きがあります。

マグネシウムを含む塩類下剤使用時は、定期的なマグネシウムの測定を推奨する

 

今回ご紹介するラグノスは「浸透圧性下剤」のうちラクツロースを主成分とした薬剤です!

 

上皮機能変容薬もラグノスも添付文書上は第一選択薬として使用可能ですが、以下の通知が発出されているため、実際には酸化マグネシウム等の浸透圧性下剤で効果不十分な場合に使用されるケースが多いと思われます。

薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(2)ラグノス NF 経口ゼリー分包 12g
本製剤の使用に当たっては、他の便秘症治療薬(ルビプロストン製剤、エロビキシバット水和物製剤、リナクロチド製剤及びマクロゴール 4000 配合製剤を除く。)で効果不十分な場合に、器質的疾患による便秘を除く慢性便秘症の患者へ使用すること。

「保医発1127第2号:平成30年11月27日」

 

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ラグノス(一般名:ラクツロース)の作用機序

ラグノスの便秘改善効果は2つの作用機序が考えられています。

  1. 腸内細菌(善玉菌)への作用
  2. 浸透圧作用

 

①腸内細菌(善玉菌)への作用

通常、ヒトの腸内に存在する腸内細菌は、

  • ヒトに有益な働きをする善玉菌(乳酸菌など)
  • ヒトに有害な働きをする悪玉菌(大腸菌など)

が知られていますが、健康な状態では善玉菌が優勢で存在しています。

 

しかし、腸内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌が優勢になってしまうと、腸内に有害物質が増えたり、食物の消化が悪くなったりして便秘を生じます。

 

ラグノスが投与されると、ヒトはラクツロースを分解することができないため、そのままの形で腸内へ到達します。

そしてラクツロースは腸内の善玉菌のエサとなり、分解されることで有機酸(酢酸や酪酸)が産生されます。

 

ヒトや善玉菌にとって有機酸は良いものですが、悪玉菌にとっての有機酸はです。

 

従って、ラグノスの分解産物である有機酸によって

  • 善玉菌の増加
  • 悪玉菌の減少

が起こり、それによって便秘症の改善効果が期待できると考えられています。

 

②浸透圧作用

一般的に、便秘になる時には腸管内の水分が不足してしまっています。

 

また、水の特徴として、
濃度の薄いところから濃いところへ移動するという性質があります。

濃度の薄いところを物理用語で「浸透圧が低い」、濃いところを「浸透圧が高い」と呼びます。

 

ラグノスが投与されると有効成分のラクツロース、分解産物の有機酸によって腸管内の浸透圧が高くなる結果、上皮細胞内の水分が腸管内に移動します。

 

上記の作用機序によって、腸管内に水分を分泌する働きをするのがラグノスです!

これによって腸管内の蠕動運動も高まり、便秘を改善すると考えられています。

 

エビデンス紹介:国内第Ⅲ相試験

根拠となった臨床試験を一つご紹介します。2)

本試験は国内の慢性便秘症の患者さんを対象に、プラセボもしくはラグノス(下記の3群)を2週間投与した際の有効性と安全性を検証した第Ⅲ相臨床試験です。

  • ラグノス24g/日群:1回12g(1包)を1日2回(朝・夕)
  • ラグノス48g/日群:1回24g(2包)を1日2回(朝・夕)
  • ラグノス72g/日群:1回36g(3包)を1日2回(朝・夕)

 

主要評価項目は「自発排便回数の変化量(ベースラインと投与第1週の差)」でした。

試験群プラセボ群ラグノス群
24g/日48g/日72g/日
自発排便回数の変化量
(投与第1週-ベースライン)
2.042.173.785.06
プラセボとの差-0.13
p=0.826
1.74
p=0.003
3.02
p<0.001

 

このようにラグノス48g/日(24g×2)群もしくは72g/日(36g×2)群において有意な排便回数の増加が認められています。

 

ラグノスNF経口ゼリー分包12gの用法・用量

慢性便秘症に使用する場合、成人には本剤24g(本剤2包)を1日2回経口投与します。

症状によって適宜増減が可能ですが、1日最高用量は72g(本剤6包)までとされています。

 

なお、小児には使用できませんのでご注意ください。

 

ラグノスNF経口ゼリー分包12gの副作用

臨床試験では、
下痢、腹部膨満、腹痛といった消化器症状が主な副作用として報告されています。

 

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ラグノスNF経口ゼリーとモニラック・シロップの違い

ラグノスゼリーはモニラック・シロップやラクツロース・シロップの後発医薬品(ジェネリック医薬品)に分類されており、有効成分は共にラクツロースです。

 

しかし、便秘についての適応には差があります。

  • モニラック・シロップ:小児における便秘の改善
  • ラクツロース・シロップ:便秘に関する適応なし

 

このようにモニラックは「小児における便秘の改善」を効能・効果に有していますが、成人の慢性便秘症には使用できません。また、ラクツロース・シロップは便秘に関する適応がありません。

 

一方、ラグノスゼリーは「成人の慢性便秘症」にしか使用できず、小児には使用できません

このように、便秘症にラクツロースを使用したい場合、有効成分は同じですが

  • 小児にはモニラック
  • 成人にはラグノスゼリー

といった使い分けでしょうか。

 

ラグノスNF経口ゼリー分包12gの薬価

収載時(2018年11月28日)の薬価は以下の通りです。(類似薬効比較方式Ⅰ)

  • ラグノスNF経口ゼリー分包12g(1包):48.20円

 

ラグノスは既に16.05g製剤(ラグノスゼリー分包16.05g)がありましたが、「規格間調整」ではなく「類似薬効比較方式」で算定されているのが面白いですね!

おそらくモビコールの薬価算定と同じく類薬のグーフィス等を参考に算定されていると想定されます。

 

ラグノスゼリー分包16.05gの2018年時点の薬価は「3.00円/g」ですので、ラグノスNFがもし規格間調整で算定されていれば36円程でしょうね・・・^^;

少しお高くなっています。

 

慢性便秘症でラグノスを使用するならラグノスNF経口ゼリー分包12gしかありませんが、その他の適応(高アンモニア血症、産婦人科術後の排ガス・排便の促進)で使用するなら薬価の安いラグノスゼリー分包16.05gですね。

 

まとめ・あとがき

ラグノスNFはこんな薬

  • ラクツロースの浸透圧によって排便を促す
  • モニラックのジェネリックだが適応が違う

 

近年、慢性便秘症の治療薬は2012年のアミティーザを皮切りに、2018年にはグーフィスリンゼスの適応拡大、と治療選択肢が広がっています。

上記の3剤については以下の記事で使い分けや比較等を考察しています。

 

また、同日、新規の浸透圧性下剤であるモビコール(一般名:マクロゴール)も承認されています!モビコールやラグノスを含めた比較表については以下の記事に掲載しています。

 

これまで治療選択肢が限られていた慢性便秘症ですが、近年選択肢が増えてきました。患者さんにとって選択肢が増えたことは朗報ですが、今後の使い分け等が検討されれば興味深いと感じます。

 

以上、今回は慢性便秘症とラグノス(ラクツロース)の作用機序についてご紹介しました。

 

引用文献・資料等

  1. 慢性便秘症診療ガイドライン2017
  2. ラグノスNF経口ゼリー分包12g 添付文書

 

参考になったらシェアいただけると嬉しいです!
   

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【薬剤師・講師】大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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