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「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性または不耐性のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とするローブレナ錠25mg及び同錠100mg(一般名:ロルラチニブ)が2018年9月21日に承認されました。
製薬会社
- 製造販売:ファイザー(株)
本剤は「条件付き早期承認制度」の適用第1号で、申請から約8か月で承認されました!
今回は非小細胞肺がんとローブレナ(ロルラチニブ)の作用機序についてご紹介します☆
目次(クリック可)
非小細胞肺がんと治療について
肺がんは性質や薬の効き方によって“小細胞肺がん”と“非小細胞肺がん”に分類されています。
早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合(StageⅣ)や再発してしまった場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。
非小細胞肺がんの初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況によって以下の優先順位で使用する薬剤が細かく使い分けられています。
- EGFR遺伝子変異陽性の場合:タグリッソ(一般名:オシメルチニブ)、イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)、タルセバ(一般名:エルロチニブ)、ジオトリフ(一般名:アファチニブ)
- ALK融合遺伝子陽性の場合:アレセンサ(一般名:アレクチニブ)、ジカディア(一般名:セリチニブ)、ザーコリ(一般名:クリゾチニブ)
- ROS1融合遺伝子陽性の場合:ザーコリ(一般名:クリゾチニブ)
- BRAF遺伝子変異陽性の場合:タフィンラー(一般名:ダブラフェニブ)+メキニスト(一般名:トラメチニブ)併用療法
- PD-L1陽性の場合:キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)
- 上記遺伝子等がすべて陰性の場合:抗がん剤(シスプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ペメトレキセドなど)とアバスチンなどの分子標的薬を組み合わせた治療、もしくはこれらに免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダもしくはテセントリク)を併用
上記のうち、最も頻度が高いのがEGFR遺伝子変異陽性で、約半数を占めています。
一方、ALK融合遺伝子陽性は約2~5%とされ、推定患者数は1600~3900人と少数です。
それではここから、ローブレナが関与するALK融合遺伝子についてご紹介します。
ALK融合遺伝子陽性の肺がん
がん細胞が増殖するメカニズムは様々な仕組みが存在していますが、がん細胞は増殖因子の結合する受容体を持っています。
受容体を構成する遺伝子の1つに「ALK遺伝子」が知られていますが、正常なALK遺伝子を持つ受容体では、増殖因子が結合することで、その刺激が細胞内を伝達(シグナル伝達)し、核内に刺激が届けられます。
核内まで刺激が伝達すると、増殖・活性化が促進され、がん細胞の増殖に繋がります。
ただし、増殖因子が存在しない場合、刺激が核に伝達しないため、がん細胞は増殖しません。
しかし、非小細胞肺がんの約2~5%の患者さんでは、ALK遺伝子と別の遺伝子が入れ替わって融合してしまうことが知られています。
融合してしまった遺伝子のことを「ALK融合遺伝子」と呼んでおり、これを元に「ALK融合タンパク」が合成されます。
ALK融合タンパクは、増殖因子が存在しないにも関わらず、恒常的にシグナル伝達が核へと伝達されています。
そのため、常にがん細胞は増殖が活性化されている状態です。
ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの一次治療
ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの一次治療では、これまで下記のいずれかのALK阻害薬が使用されていました。
今回ご紹介するローブレナは「第三世代」に分類されるALK阻害薬で、第一/第二世代のALK阻害薬で耐性の生じた肺がん細胞にも効果が期待されています!
ALK阻害薬の耐性
第一世代と第二世代のALK阻害薬の登場によって、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの生存期間は延長しましたが、いずれ遺伝子変異(例:G1202R⇒1202番目のグリシンがアルギニンに置換)によって耐性を生じてしまいます。
耐性化した患者さんではALK融合タンパクに第一/第二世代のALK阻害薬が結合できなくなってしまいます。
その結果、がん細胞のシグナル伝達が回復し、再度、がんの増殖が活性化されてしまいます。
ローブレナ(一般名:ロルラチニブ)の作用機序と特徴
ローブレナはG1202Rなどの遺伝子変異(耐性)の生じたALK融合タンパクに対しても阻害作用を有する薬剤です!
ALK融合タンパクを阻害することでシグナル伝達を阻害させ、がん細胞の増殖を抑制するといった作用機序を有しています。
このように、一次治療のALK阻害薬で耐性のあった患者さんに対しても効果が期待できるのがローブレナです。
また、ローブレナは血液脳関門を通過できるように設計されいるため、脳転移に対しても効果が期待されています。
エビデンス紹介:国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験
ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺癌患者さんを対象とした国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験が根拠です。1-2)
本試験の第Ⅱ相パートにおいて、前治療で1レジメン以上のALK阻害薬が投与されていた患者さんの奏効率*は47%と報告されています。
*奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合
ローブレナは「条件付き早期承認制度」を利用しているため、第Ⅲ相試験を待たずに上記第Ⅰ/Ⅱ相試験のみで承認されています!
一次治療を対象とした第Ⅲ相試験(ザーコリ vs. ローブレナ)3)の結果、ローブレナ群で有意な改善が認められていますので、今後の適応拡大も期待したいと思います。
ローブレナ錠の用法・用量
通常、成人にはロルラチニブとして1日1回100mgを経口投与します。
ローブレナ錠の副作用
主な副作用として、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、浮腫、末梢性ニューロパチー、体重増加、疲労、下痢、関節痛などが報告されています。
ローブレナ錠の薬価
収載時(2018年11月20日)の薬価は以下の通りです。
- ローブレナ錠25mg:7,216.40円
- ローブレナ錠100mg:25,961.00円(1日薬価:25,961.00円)
算定方法等については以下の記事をご覧ください。
>>【新薬:薬価収載】12製品(2018年11月20日)と市場拡大再算定
まとめ・あとがき
ローブレナはこんな薬
- ALK阻害薬
- 第一/第二世代のALK阻害薬で耐性が生じた場合にも治療効果が期待できる
- 条件付き早期承認制度に指定されている
ALK阻害薬が登場したことで、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者さんの予後は飛躍的に延長しました。
しかしながら、ずっと効果が続くわけではなく、耐性が生じた場合、次の治療選択肢は限られていました。
ローブレナは第一/第二世代のALK阻害薬で耐性が生じた場合にも治療効果が期待されている薬剤です。
患者さんにとっては治療選択肢が増えることは朗報ではないでしょうか。
本剤は国内初の
- 条件付き早期承認制度
に指定されているため、申請から僅か8か月の迅速な承認でした!
条件付き早期承認制度の概要については厚労省の資料をご覧ください。
現在進行中の第Ⅲ相試験の結果も期待したいと思います☆
以上、今回は非小細胞肺がんとローブレナ(ロルラチニブ)の作用機序についてご紹介しました!
引用文献・資料等
- ローブレナ 添付文書
- Lancet Oncol. 2018 Dec;19(12):1654-1667.
- CROWN試験:N Engl J Med 2020; 383:2018-2029
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