12.悪性腫瘍

トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の作用機序・特徴【乳がん】

投稿日:

2019年9月9日、「HER2陽性の手術不能又は再発乳がん」を対象疾患とするトラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の製造販売承認申請が行われました!

現時点では未承認のためご注意ください。

第一三共|申請のニュースリリース

基本情報

製品名未定
一般名トラスツズマブ デルクステカン
製品名の由来未定
製薬会社第一三共(株)
効能・効果未定
用法・用量未定
収載時の薬価薬価未収載

 

トラスツズマブ デルクステカンはハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)に抗がん剤のデルクステカンを結合させた構造を有しています。

 

木元 貴祥
いわゆる、ADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)と呼ばれている薬剤分類ですね。

 

今回は乳がん治療とトラスツズマブ デルクステカンの作用機序、エビデンスについてご紹介します。

 


乳がんの概要

2011年の女性乳がんの罹患数は、約72,500人と、女性のがんの中では最も多く、約20%を占めると言われています。

 

手術で取り切れるような早期の乳がんでは、5年生存率は80%を超えます(StageⅠ~Ⅱでは90%を超える)ので、治癒することが可能な比較的予後の良いがんとして知られています。

 

ただし、発見時に手術ができない(手術不能)の乳がんや、再発した乳がんでは5年生存率は30%と、治癒を見込むのは難しくなってしまいます(基本的には延命)。

 

従って、日頃の観察やがん検診(マンモグラフィや超音波検査)によって、できるだけ早期に発見することが非常に重要です!!!

また、乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られています。

 

その他、乳がんの15%~25%は「HER2ハーツー」と呼ばれるタンパク質が細胞膜に発現していることもあり、従来は予後不良と言われていました。

 

木元 貴祥
今回ご紹介するトラスツズマブ デルクステカンはHER2を標的とした薬剤ですね。

 

早期の乳がんの治療

早期の乳がんは基本的には手術によって完全に取り除くことが可能です。

早期乳がんの中でも術後に再発リスクが高いと診断された患者さんでは、術後にホルモン療法や抗がん剤によって再発を抑える薬物療法(初期治療)が行われることがあります。

 

乳がんは、がん細胞の性質によって、術後の初期治療が異なります。

  1. ホルモン陽性の乳がん:ホルモン療法(タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬
  2. HER2陽性の乳がん:パージェタ(ペルツズマブ)+ハーセプチン(トラスツズマブ)±抗がん剤
  3. ホルモンもHER2も陰性の乳がん:抗がん剤

 

HER2陽性の場合、ハーセプチン+抗がん剤(主にタキサン系)にパージェタが併用されることもあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

パージェタ(ペルツズマブ)の作用機序と副作用【乳がん】

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転移のある乳がんの治療(手術不能)

発見時に転移がある乳がんの場合、手術はできませんので、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬)が基本となります。

 

転移のある乳がんの場合も、がん細胞の性質によって薬物療法の種類が異なります。

  1. ホルモン陽性の乳がん:ホルモン療法±CDK4/6阻害薬
  2. HER2陽性の乳がん:ハーセプチン±パージェタ±抗がん剤
  3. ホルモンもHER2も陰性の乳がん(トリプルネガティブ乳がん):抗がん剤

 

最も多いとされるのが、「①ホルモン陽性の乳がん」で、この場合はホルモン療法が基本です。

ホルモン陽性の乳がんに対しては

といったCDK4/6阻害薬が使用できます。両薬剤の比較表については以下の記事で解説しています。

ベージニオ(アベマシクリブ)の作用機序:イブランスとの違い/比較【乳がん】

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「②HER2陽性の乳がん」の場合にはパージェタやハーセプチンが使用でき、効かなくなった場合、二次治療としてカドサイラ点滴静注用(一般名:トラスツズマブ エムタンシン)を使用します。

しかし、カドサイラが効かなくなった後、三次治療として有効な薬剤はありませんでした。

 

木元 貴祥
今回ご紹介するトラスツズマブ デルクステカンはHER2陽性乳がんの三次治療以降で治療効果が認められています。

 

なお、「③ホルモンもHER2も陰性の乳がん(トリプルネガティブ乳がん)」の場合、抗がん剤が基本ですが、PD-L1が陽性の場合にはテセントリク(一般名:アテゾリズマブ)が使用可能です。

テセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序【肺がん/乳がん】

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トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の構造・作用機序・特徴

トラスツズマブ デルクステカンはHER2を特異的に認識する抗体医薬品のハーセプチン(トラスツズマブ )に、抗がん剤のデルクステカンを結合させた構造を有しています。

トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の構造:抗体薬物複合体(ADC)

 

木元 貴祥
ちなみに結合させる薬物のことを「ペイロード」、結合を介している物質(手)のことを「リンカー」と呼んでいます。

 

ハーセプチンについては、胃がんの解説記事ですが以下で紹介しています。

ハーセプチン(トラスツズマブ)の作用機序と副作用【胃がん】

今回の記事では、ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)と、その後発医薬品である「バイオ後続品」について紹介していきます。   ハーセプチンは以下の効能・効果を有しており、バイオ後続品も同じで ...

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このように抗体医薬品と抗がん剤を結合させた医薬品を「ADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)」と呼んでいて、以下の薬剤が既に承認・販売されていますね。

 

 

トラスツズマブ デルクステカンが乳がん細胞のHER2を認識して結合した後、細胞質内に侵入していきます。

がん細胞の細胞内には「カテプシン」と呼ばれる物質が高発現していて、それによってリンカーが切断されてデルクステカンが遊離します。

トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の作用機序

 

デルクステカンはトポイソメラーゼⅠを阻害する抗がん剤で、作用機序としてはカンプト/トポテシン(一般名:イリノテカン)と同じですね。

がん細胞のDNA複製時には、DNAのねじれ(超らせん構造)を解消させるため、トポイソメラーゼⅠによってDNAの一本鎖が切断されますが、これが阻害されるため、がん細胞の増殖が抑制されるといった作用機序です。

 

なお、デルクステカンの抗腫瘍活性はイリノテカンの約10倍とのデータもあります。1-2)

 

木元 貴祥
ちなみにカテプシンは正常細胞にはあまり存在していないため、正常細胞に入ったとしてもデルクステカンは遊離されにくいそうです☆

 

これまでのADCと比較してトラスツズマブ デルクステカンは

  • 通常、抗体1分子に対してペイロード(薬物)は2~3個だが、トラスツズマブ デルクステカンは7~8個の薬物が結合可能
  • リンカーとペイロードとの結合が血中で外れにくい
  • がん細胞の中で特異的にリンカーが切断されるため、正常細胞に影響を及ぼしにくい

といった特徴があります。1)

 

その他にもデルクステカンは細胞膜の透過性が高いため、周囲のがん細胞にも効果が及ぶようです。

 

エビデンス紹介:DESTINY-Breast01

根拠となった臨床試験は、カドサイラの治療を受けたHER2陽性の再発・転移性乳がん患者さんを対象とした国際共同第Ⅱ相試験のDESTINY-Breast01試験です。3)

 

試験結果の詳細はまだ公表されていませんが、主要評価項目である客観的奏効率は、既に報告されている第Ⅰ相試験1)と同様とのことです。

 

木元 貴祥
結果が公表されましたら追記していきます!

 

副作用

後日更新予定です。

第Ⅰ相試験では、主なGrade 3以上の副作用として貧血、好中球減少、白血球減少、血小板減少等が報告されています。1)

 

用法・用量

後日更新予定です。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

DS-8201はこんな薬

  • 抗HER2抗体薬のトラスツズマブに抗がん剤のデルクステカンを結合させたADC
  • デルクステカンはトポイソメラーゼⅠを阻害する
  • HER2陽性でカドサイラ既治療に対して有効性が期待されている

 

トラスツズマブ デルクステカンは米国で、HER2陽性の再発・転移性乳がん治療を対象に画期的治療薬(Breakthrough Therapy)に指定されているため、非常に期待されています。

 

HER2は胃がんでも発現が確認されていますので、現在、HER2陽性の胃がんに対しても開発が進行中です。

 

木元 貴祥
今後も適応拡大が期待できますので、注目していきたい薬剤ですね!

 

以上、今回は乳がん治療とトラスツズマブ デルクステカンの作用機序・特徴等について解説しました。

 

現時点では未承認のためご注意ください。

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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