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コラテジェン(ベペルミノゲン ペルプラスミド)の作用機序【重症虚血肢】

更新日:

2019年2月20日、薬事・食品衛生審議会再生医療等製品・生物由来技術部会は

  • 「標準的な薬物治療の効果が不十分で、血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症およびバージャー病)における潰瘍の改善」

を効能・効果とする日本初の遺伝子治療薬であるコラテジェン筋注用4mg(一般名:ベペルミノゲン ペルプラスミド)条件・期限(5年間)付きで承認することを了承しました!

現時点では未承認のためご注意ください。

条件及び期限付承認」のため、承認期限は5年間と期限付きです。

製薬会社

  • 製造販売(仮):アンジェス(株)
  • 販売元(仮):田辺三菱製薬(株)

 

承認されれば、日本初の遺伝子治療薬(再生医療治療薬)となる見込みです!

 

これまでの薬剤(低分子・抗体薬)は、

  • 体内に元からあるタンパク質
  • 病気によって産生されるタンパク質
  • 細菌・ウイルス・がん細胞のタンパク質やDNA

等に作用することで治療を行うものが基本でした。

 

遺伝子治療とは、ある遺伝子(DNA)を患者さんに投与し、その遺伝子が作り出すタンパク質の作用によって病気を治療することを言います。

 

今回は閉塞性動脈硬化症(重症虚血肢)とコラテジェン筋注(一般名:ベペルミノゲン ペルプラスミド)の作用機序についてご紹介します。

 

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閉塞性動脈硬化症(重症虚血肢)とは

閉塞性動脈硬化症とは、四肢(手や足)の動脈が何らかの原因で閉塞してしまい、手足に血液が供給されなくなってしまう状態を言います。

特に下肢(足)の症状が出やすいのが特徴です。

 

動脈が閉塞(詰まってしまう)する原因は様々ですが、以下のような生活習慣病をきっかけに動脈硬化が起こり、それによって引き起こされることが多いとされています。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症(高脂血症)

その他、喫煙によってもそのリスクが高まると言われています。

 

例えば、脂質異常症ではコレステロールの塊(プラーク)足の動脈血管内に沈着して血管内が細くなっていることがあります。

ここに血栓などが詰まってしまうと、動脈の血流が止まってしまい、それ以降の組織や細胞に栄養・酸素を届けられなくなってしまいます(虚血状態)。

 

これが重度(重症)の場合、「重症虚血肢」と呼ばれ、組織の壊疽(組織・細胞の腐敗)が起こることもあります。

 

閉塞性動脈硬化症の重症度と症状

閉塞性動脈硬化症の初期の自覚症状としては、下肢の冷感やしびれ感などがあります。

 

また、重症度と症状に応じて以下の「Fontaine分類」がよく用いられています。

Fontaine分類虚血具合症状
Ⅰ度軽度虚血冷感やしびれ感があるが、一過性ですぐに消失することもある。
Ⅱ度中等度虚血歩いた時に足の筋肉に痛みを感じ、歩きにくくなる。
Ⅲ度高度虚血安静時にも足に痛みを感じる。
Ⅳ度重度虚血壊疽や潰瘍が見られる。

 

特にⅢ度とⅣ度は「重症虚血肢」と呼ばれていて、足の切断を余儀なくされる場合もある重篤な疾患です。

 

閉塞性動脈硬化症の治療

閉塞性動脈硬化症の治療は重症度(Fontaine分類)に応じ、適宜組み合わせて行われます。

  • 運動療法や生活改善:Ⅰ~Ⅱ度
  • 原因疾患(生活習慣病)の治療:Ⅰ~Ⅱ度
  • 抗血小板剤などの薬物療法:Ⅰ~Ⅳ度
  • 外科的な血行再建(自家静脈や人工血管によるバイパス術):Ⅲ~Ⅳ度
  • バルーンやステントを用いた血管拡張術:Ⅲ~Ⅳ度

 

重症虚血肢(Ⅲ・Ⅳ度)ではバイパス術や血管拡張術が行われ、閉塞部位を回避することができるため症状の緩和効果も期待できます。

しかし、完全に閉塞してしまっている場合や広範囲に及んでいる場合、全身状態が不良な場合では上記が適さないこともしばしばあります。

 

その場合、有効な治療選択が無く、足の切断を余儀なくされていました。

 

今回ご紹介するコラテジェンは重症虚血肢(Ⅲ・Ⅳ度)に対して有望な治療薬です!

コラテジェンは遺伝子治療薬のため、遺伝子とタンパク質合成について簡単に紹介します。

 

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ヒトのタンパク質合成のプロセス

ヒトのタンパク質が合成されるまでには以下のプロセスがあります。

  • DNA(遺伝子)の「転写」によってmRNAが合成される。
  • mRNAの「翻訳」によってタンパク質が合成される。

 

 

コラテジェン(ベペルミノゲン ペルプラスミド)の作用機序

コラテジェンはヒトのHGF遺伝子を組み込んだ「プラスミドDNA構造(環状二本鎖DNA)」を有する薬剤です!遺伝子治療用プラスミドベクター製品とも言われています。

 

コラテジェンのHGF遺伝子の前にはプロモーター領域(転写開始)があり、ここから転写が開始されます。

コラテジェンを筋肉内に注射で投与すると、筋肉細胞内で転写が開始され、ヒトHGFのmRNAが合成されます(ポリA尾部領域もあるため、安定化される)。

 

その後、mRNAが翻訳されることでヒトHGFが産生されます。

 

産生されたHGF(hepatocyte growth factor)は「肝細胞増殖因子」と呼ばれ、様々な臓器の修復や新たな血管を作る作用(血管新生作用)を有しているタンパク質です。

HGFが血管の閉塞箇所付近で作用すると、閉塞箇所を迂回するように新たな血管が作られ(血管新生)、血流が回復します。

 

血流が回復する結果、足の末端まで栄養・酸素が届けられるようになり、重症虚血肢の症状緩和効果が得られると考えられます。

 

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エビデンス紹介(国内第Ⅲ相試験)

根拠となった臨床試験を一つご紹介します。

本試験は薬物治療抵抗性で、外科的治療の適用が困難な慢性動脈閉塞症(Fontaine分類Ⅲ~Ⅳ度)の患者さんを対象とした国内第Ⅲ相試験です。1)

対象患者さんをコラテジェン筋肉内投与群とプラセボ筋肉内投与群に分けて有効性・安全性が検討されました。

 

本試験の主要評価項目は12週時点の「改善率*」でした。

試験群コラテジェン群プラセボ群
12週時点の改善率*(全体)70.4%30.8%
p=0.014
Fontaine分類Ⅲ度の
患者さんの改善率*
50%25%
p=0.39
Fontaine分類Ⅳ度の
患者さんの改善率*
100%40%
p=0.018

*Fontaine分類Ⅲ度の患者さんでは「痛みの改善」、Ⅳ度の患者さんでは「潰瘍の縮小率」

 

このようにコラテジェンの投与によって症状の改善効果が認められています。

 

新薬情報
ただし非常に症例数が少ないため、効果は限定的かもしれません。

 

コラテジェンの副作用と注意事項

後日更新予定です。

 

コラテジェンの用法・用量

虚血部位1か所当たり0.5mgを8か所に4週間間隔で2回筋肉内投与します(1回総計4mg)。

なお、臨床症状が残る場合には、2回目投与の4週間後に3回目の投与が可能とのことです。

 

コラテジェンの薬価

現時点では未承認・薬価未収載です。

 

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条件及び期限付承認とは?

今回コラテジェンは「再生医療等製品における条件及び期限付き承認制度」によって承認される見込みです。

これは少数例の臨床試験等で

  • 有効性がある程度担保される
  • 安全性が確認

されれば、条件及び期限を付して早期に承認されるという制度のことですね。

 

2018年12月にも再生医療等製品のステミラック注が同制度によって早期承認されています。(7年間の限定付き)

 

今回のコラテジェンもこれまでの臨床試験における症例数が少ないことから「条件及び期限付承認」扱いとされ、その期限は5年とされました。

5年以内にコラテジェン群120例と対照群(標準療法)80例を比較評価し、有効性が確認されれば正式承認の流れです。

 

コラテジェンの承認条件

その他にも以下の承認条件が付加されています。

  1. 重症化した慢性動脈閉塞症に対する十分な知識や治療経験を持つ医師のもとで、創傷管理を複数診療科で連携して実施している施設で使用する
  2. 条件・期限付き承認後にあらためて行う製造販売承認申請までの期間中は、全症例を対象として製造販売後承認条件評価を行う

 

新薬情報
どこの施設でも治療ができるわけではないですね。また投与される全例が評価の対象となります。

 

まとめ・あとがき

コラテジェンはこんな薬

  • 日本初の再生医療治療薬
  • HGF遺伝子によってHGFが産生される
  • 血管新生によって重症虚血肢の症状を改善
  • 条件・期限付き(5年間)の承認

 

コラテジェンは国内初の遺伝子治療薬(再生医療治療薬)として非常に注目されています。

 

似たような薬剤として、「アンチセンス核酸医薬品」がありますが、これは標的RNAに結合して、その遺伝子発現を調整する合成ヌクレオチドですので、遺伝子治療薬とは少し異なりますね。

 

治療選択肢が少なかった重症虚血肢に対してコラテジェンは新たな選択肢のため、治療成績の改善に寄与できるのではないでしょうか。

今後も様々な疾患に対して遺伝子治療薬の開発が進んでいますので、注目していきたいと思います。

 

以上、今回は閉塞性動脈硬化症(重症虚血肢)とコラテジェン筋注(一般名:ベペルミノゲン ペルプラスミド)の作用機序についてご紹介しました!

 

引用文献・資料等

  1. Gene Ther. 2010 Sep;17(9):1152-61.
   

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【薬剤師・講師】大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。>>プロフィール詳細はこちら

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