1.中枢神経系

レグテクト(アカンプロサート)の作用機序【アルコール依存症】

2013年3月25日、「アルコール依存症患者における断酒維持の補助」を効能・効果とする新薬のレグテクト錠333mg(一般名:アカンプロサートカルシウム)が承認されました。

今回はアルコール依存症とレグテクト(アカンプロサート)の作用機序についてご紹介します。

 

アルコール依存症とは

二十歳以上の方でしたら一度はお酒を経験したことがあると思います。

お祝い事や会食など多くの場面でお酒を経験することがあり、生活・文化の一部として親しまれています。

お酒は「百薬の長」とも言われ、適度な飲酒は健康に良いと言われていますが、多量・長期間のお酒はがんの発症リスクを高めたり、死亡リスクを高めてしまいます。

 

アルコール依存症とは、大量のお酒を長期間飲み続けることで、お酒がないといられなくなる状態のことを言います。

常にアルコールが体内にないと不安やイライラしてしまい、アルコールが抜けると離脱症状として頭痛・嘔気・下痢・手の震え・発汗・動悸などの身体面の症状も現れてしまいます。

この症状を抑えるために、またお酒を飲んでしまう、といったサイクルを繰り返してしまいます。

 

アルコール依存症の患者さんは国内で約80万人以上と推定されていますが、予備軍も含めると約440万人にもなると考えられています。

 

飲酒と中枢神経の働き

脳内の神経には、「興奮系」と「抑制系」と2つがあり、代表的なものには以下があります。

  • 興奮系:グルタミン酸作動性神経
  • 抑制系:GABA作動性神経

興奮系のグルタミン酸作動性神経は、脳の興奮に関わったり、記憶・学習などに関与しています。

一方、抑制系のGABA作動性神経は、鎮静や抗痙攣、抗不安などに関与しています。

 

通常、飲酒すると興奮系のグルタミン酸作動性神経抑制され、抑制系のGABA作動性神経活性化されることが知られています。

お酒を飲むと嫌なことや不安なことが吹き飛んだりすることがありますが、これはGABA作動性神経が活性化されるためです。

その後、少し経過すると、興奮系と抑制系のバランスを保とうとし、興奮系神経が活性化することで均衡が保たれます

 

アルコール依存症時の神経バランス

大量の飲酒を短期間に何度も繰り返すと、上記の均衡を保つため、興奮系神経であるグルタミン酸作動性神経が常に活性化している状態になり、脳内のグルタミン酸が多くなってしまっています。

この状態でお酒が体内から消失すると、興奮系と抑制系のバランスが一気に崩れ、興奮系が優位になってしまいます。

これによって、強烈な飲酒欲求が引き起こされると考えられています。

レグテクト(一般名:アカンプロサート)の作用機序

レグテクはグルタミン酸の受容体であるNMDA受容体を選択的に阻害する薬剤です!

NMDA受容体を阻害することで興奮系神経(グルタミン酸作動性神経)が抑制できるため、飲酒欲求が抑えられると考えられます。

このようにレグテクトによって興奮系神経が抑制されれば、断酒によって抑制系神経が活性化したとしても、バランスが崩れにくくなり、飲酒欲求が起きにくいと考えられます。

レグテクトは断酒の意志のある患者さんに対して、「断酒の維持」を補助する目的で使用されるため、「断酒薬」と呼ばれています。

 

類薬

アルコール依存症に用いる薬剤としては、抗酒薬(嫌酒薬)があります。

 

あとがき

アルコール依存症の治療は、飲酒を完全にやめる「断酒」がゴールです。

しかし、患者さん本人もお酒が好きなため、完全な断酒にはしばしば抵抗感があり、このため受診率の低下治療意欲(治療継続率)の低下を招いてしまっていました。

 

2018年には、「減酒」をコンセプトとした新規のアルコール依存症治療薬であるセリンクロ(一般名:ナルメフェン)も登場しました!

 

今後、アルコール依存症治療の選択肢の幅が広がっていくのではないでしょうか。

 

以上、今回はアルコール依存症レグテクト(一般名:アカンプロサート)の作用機序についてご紹介しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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