4.消化器系 12.悪性腫瘍

サイラムザ(ラムシルマブ)の作用機序【胃/大腸/肝細胞がん】

更新日:

2019年6月18日、「肝細胞がん」を対象疾患とするサイラムザ点滴静注液(一般名:ラムシルマブ)の適応拡大が承認されました!

 

サイラムザは既に胃がん、大腸がん、肺がんに適応を有していますね。

基本情報

製品名サイラムザ点滴静注液
一般名ラムシルマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来該当資料なし
製造販売日本イーライリリー(株)
効能・効果○治癒切除不能な進行・再発の胃がん
○治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん
○切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
がん化学療法後に増悪した血清AFP値が400ng/mL以上の切除不能な肝細胞がん

 

肝細胞がんについては「AFP(αフェトプロテイン)が400ng/mL以上」の患者さんに対して二次治療以降で使用可能となります。

 

今回は消化器がん(胃がん、大腸がん、肝細胞がん)とがんの血管新生、そしてサイラムザ(ラムシルマブ)の作用機序やエビデンスについて解説します。

 


胃がん・大腸がん・肝細胞がんの概要

胃・大腸・肝細胞がんはいずれも消化器がんに分類されており、罹患者数としては以下の通りです。1)

  • 男性:胃がん > 大腸がん >肝細胞がん
  • 女性:大腸がん > 胃がん >肝細胞がん

 

大腸がんは年々罹患率が増加しており、これは食生活の欧米化等が寄与していると考えられています。

一方、胃がんや肝細胞がんは年々減少傾向にあります。

 

肝細胞がんの約60%がC型肝炎ウイルス約15%がB型肝炎ウイルスの持続感染に起因すると言われていますが、最近ではC型肝炎ウイルスは治癒が期待できるようになってきましたので、今後、肝細胞がんの罹患者数はより減少すると予想されています。

 

C型肝炎ウイルスとその治療薬については以下の記事で解説しています☆

 

初期症状としては無症状ですが、ある程度がんが進行すると様々な症状を呈します。2)

  • 胃がん:胃(みぞおち)の痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振
  • 大腸がん:血便、下痢と便秘、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る
  • 肝細胞がん:腹部のしこり・圧迫感、痛み

 

胃がん・大腸がん・肝細胞がんの治療

早期に発見された場合は手術によってがんを取り除くことができ、場合によっては術後の抗がん剤治療(術後補助化学療法)が行われます。

 

一方、発見時に他の臓器に転移(StagrⅣ)があったり、再発している場合、手術はできないため、抗がん剤(化学療法)による治療が基本です。

 

StageⅣ・再発胃がんの治療

StageⅣや再発の胃がんの場合、約20%は「HER2(“ハーツー”)」と呼ばれる受容体が発現していることが知られています。

 

HER2が陽性の場合、HER2を阻害するハーセプチン(トラスツズマブ)を併用した以下のような化学療法(一次化学療法)が行われます。

  • XP(カペシタビン+シスプラチン)+トラスツズマブ
  • SP(S-1+シスプラチン)+トラスツズマブ
  • SOX(S-1+オキサリプラチン)+トラスツズマブ
  • XELOX(カペシタビン+オキサリプラチン)+トラスツズマブ

 

新薬情報
このように2~3剤の抗がん剤を組み合わせたもの(“レジメン”と呼びます)とハーセプチンを併用した治療が行われます。

 

ハーセプチン(トラスツズマブ)の詳細については以下の記事をご参考くださいませ。

 

一方、HER2が陰性の場合、以下のような化学療法が行われます。

  • SOX(S-1+オキサリプラチン)
  • SP(S-1+シスプラチン)
  • DS(S-1+ドセタキセル)
  • XP(カペシタビン+シスプラチン)
  • XELOX(カペシタビン+オキサリプラチン)
  • FOLFOX(オキサリプラチン+5-FU+レボホリナート)

 

サイラムザは上記の治療に抵抗・不耐の場合に二次治療として単剤もしくはタキソール(パクリタキセル)と併用して使用されます。

 

StageⅣ・再発大腸がんの治療

大腸がんの一次化学療法では抗がん剤(2〜3種)+分子標的薬(ベバシズマブなど)を用いた以下のいずれかの治療法が行われます。

  • FOLFOX+アバスチン/ベクティビクス/アービタックス
  • FOLFIRI+アバスチン/ベクティビクス/アービタックス
  • CAPOX+アバスチン
  • SOX+アバスチン
  • IRIS+アバスチン

 

参考:使用薬剤

 

アバスチン(ベバシズマブ)の詳細については以下の記事をご参考くださいませ。

 

サイラムザは上記の治療に抵抗・不耐の場合に二次治療FOLFIRIと併用して使用されます。

 

二次治療ではアバスチン、サイラムザ、ザルトラップ(アフリベルセプト)が使用可能ですので、使い分け等の検討が望まれていますね。

 

StageⅣ・再発肝細胞がんの治療

肝細胞がんの一次治療としては分子標的薬の単剤治療が基本です。

 

主に使用される分子標的薬としては、

  • ネクサバール(一般名:ソラフェニブ)
  • レンビマ(一般名:レンバチニブ)

などがあります。

 

新薬情報
上記2製品の直接比較試験については以下の記事で解説しています。

 

サイラムザは上記の治療に抵抗・不耐の場合に二次治療として単剤で使用されます。

二次治療ではスチバーガ(レゴラフェニブ)単剤も使用可能ですので、サイラムザとの使い分けが気になるところですね。

 

また肝細胞がんの予後因子としてAFP(αフェトプロテイン)が知られており、高値では予後不良であるとされています。

 

それではここからサイラムザが関与するがんと血管新生について解説します☆

 

がんと血管新生

がん全般的に言えることですが、がん細胞が大きくなるためには多くの栄養素や酸素が必要となります。

 

そこでがん細胞は、自分のところに血管を無理やり作らせようとし、それに関与する因子として、がん細胞はVEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-Dといった「血管増殖因子」を放出することが知られています。

 

この因子が、血管の受容体(VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3)に結合すると、がん細胞に対して異常な血管が作られ(これを“血管新生”といいます)、この血管を通じてがん細胞は大量の栄養と酸素を得ることができます。

がんの血管新生と関連する因子、受容体:VEGFとVEGFR

 

新薬情報
このように、がんは血管新生を通じて増殖し、他の臓器への転移も引き起こされると考えられています。

 

この中でも、最もがんの血管新生に関与している因子は「VEGF-A」、受容体は「VEGFR-2」であることが知られています。

即ち、VEGF-AがVEGFR-2に結合することによるシグナル伝達が最もがん血管新生に重要ということです。

 

サイラムザ(ラムシルマブ)の作用機序

今回紹介するサイラムザは、ヒト血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)-2に対するモノクローナル抗体です。

 

がん血管新生に最も関与するVEGFR-2に結合することで血管新生を阻害し、栄養供給を妨げることなどにより腫瘍の増殖を抑制するといった作用機序を有しています☆

サイラムザ(ラムシルマブ)の作用機序

 

エビデンス紹介

胃がん、大腸がん、肝細胞がんの根拠となった各臨床試験について簡単にご紹介します。

 

胃がんのエビデンス:RAINBOW試験

進行・再発胃がん(StageⅣ胃がん)の一次治療に抵抗・耐性がみられた患者さんを対象に、タキソール(パクリタキセル)+プラセボタキソール(パクリタキセル)+サイラムザを比較する第Ⅲ相臨床試験(RAINBOW試験)です。4)

即ち、StageⅣ胃がんの二次治療として行われた臨床試験です。

 

本試験の主要評価項目は「全生存期間」で、結果は以下の通りでした。

試験名RAINBOW試験
試験群タキソール+
プラセボ
タキソール+
サイラムザ
全生存期間中央値7.4か月9.6か月
HR=0.807, P=0.017
無増悪生存期間中央値*2.9か月4.4か月
HR=0.635, p<0.0001
奏効率16%28%

*無増悪生存期間:薬を投与してから、がんが大きく(増大)するまでの期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合

 

大腸がんのエビデンス:RAISE試験

進行・再発大腸がん(StageⅣ大腸がん)の一次治療として5-FU+オキサリプラチン+アバスチンによる治療(例:FOLFOX+アバスチン療法)に抵抗・耐性がみられた患者さんを対象に、FOLFIRI+プラセボFOLFIRI+サイラムザを比較する第Ⅲ相臨床試験(RAISE試験)です。4)

即ち、StageⅣ大腸がんの二次治療として行われた臨床試験です。

 

本試験の主要評価項目は「全生存期間」で、結果は以下の通りでした。

試験名RAISE試験
試験群FOLFIRI+
プラセボ
FOLFIRI+
サイラムザ
全生存期間中央値11.7か月13.3か月
HR=0.844, P=0.0219
無増悪生存期間中央値4.5か月5.7か月
HR=0.793, p=0.0005
奏効率12.5%13.4%

 

肝細胞がんのエビデンス:REACH-2試験

進行・再発肝細胞がん(StageⅣ肝細胞がん)の一次治療としてソラフェニブによる治療(例:FOLFOX+アバスチン療法)に抵抗・耐性がみられ、AFP値が400ng/mL以上の患者さんを対象にプラセボサイラムザ単剤を比較する第Ⅲ相臨床試験(REACH-2試験)です。5)

即ち、StageⅣ肝細胞がんの二次治療として行われた臨床試験です。

 

本試験の主要評価項目は「全生存期間」で、結果は以下の通りでした。

試験名REACH-2試験
試験群プラセボサイラムザ
全生存期間中央値7.3か月8.5か月
HR=0.710, P=0.0199
無増悪生存期間中央値1.6か月2.8か月
HR=0.452, p<0.0001
奏効率1%5%

 

新薬情報
このようにサイラムザは胃・大腸・肝細胞がん、いずれの臨床試験においても二次治療として全生存期間の有意な延長が示されていますね。

 

まとめ・あとがき

サイラムザはこんな薬

  • がんの血管新生に関与するVEGFR-2を選択的に阻害する抗体製剤
  • 胃がん、大腸がん、肺がん、肝細胞がんの二次治療として使用される

 

サイラムザは免疫チェックポイント阻害薬(例:オプジーボやキイトルーダ等)との併用療法についても開発が進行中ですので、今後も期待したいと思います。

 

以上、今回は消化器がん(胃・大腸・肝細胞がん)とサイラムザ(一般名:ラムシルマブ)の作用機序、エビデンス等についてご紹介しました!

 

参考資料・文献等

  1. がん情報サービス:最新がん統計
  2. がん情報サービス:それぞれのがんの解説
  3. RAINBOW試験(胃がん):Lancet Oncol 2014; 15: 1224–35
  4. RAISE試験(大腸がん):Lancet Oncol. 2015 May;16(5):499-508.
  5. REACH-2試験(肝細胞がん):Lancet Oncol 2019; 20: 282–96

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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