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タウリン散の作用機序【MELAS(ミトコンドリア病)】

更新日:

2019年2月21日、タウリン散98%「大正」の効能・効果に「ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)」の適応が追加されました!

製薬企業

  • 製造販売:大正製薬(株)
  • 発売:大正富山医薬品(株)

 

MELASはミトコンドリア病の一種でこれまで有効な治療薬がありませんでしたが、タウリンはMELASに対する初の治療薬です!

 

今回はMELASとタウリンの作用機序、エビデンスについてご紹介します。

 

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MELAS(ミトコンドリア病)と症状

ミトコンドリア病とは、ミトコンドリア機能が障害されて臨床症状が出現する病態の総称で、指定難病に認定されています。1)

この中でもMELAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes:ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群)は最も頻度の高い型2)とされ、推定対象患者数は300人とされています。3)

参考MELASの読み方は「メラス」です。

 

症状としては脳卒中様症状が特徴的ですが、それ以外にも以下の症状が現れることもあります。

  • 痙攣
  • ミオクローヌス
  • 失調
  • 知能低下
  • 偏頭痛
  • 精神症状
  • ジストニア
  • ミエロパチー

 

初発年齢は、0-1歳が1%、1-5歳が10%、5-10歳が37%、10-15歳が21%、15歳以上が31%であり、15歳未満が全体の約70%を占めています。2)

 

また、予後は悪く、MELAS患者さんの全生存期間中央値は16.9歳と推定されています。4)

 

有効な治療法はなく、基本的には症状に応じた対症療法が行われています。

 

MELASの原因

MELASはミトコンドリアのDNA変異によって引き起こされることが知られています。

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ではここで、簡単にDNAの転写からタンパク質合成までおさらいしてみましょう。

 

通常、ミトコンドリアを含むヒト細胞のタンパク質合成は

  1. DNAの転写:DNAからmRNA(伝令RNA:messenger RNA)を合成する
  2. mRNAの翻訳:mRNA情報を元にアミノ酸を結合してタンパク質を合成する

というプロセスで行われています。

 

その中でも特に翻訳の過程を詳しく見ていきましょう。

mRNA上に存在する“3つ毎の塩基配列(コドン)”をtRNA(転移RNA:transfer RNA)が読み取り、対応するアミノ酸を運んで結合していきます。

対になる塩基は「AとU」、「GとC」が対応しています。

 

このうち、アミノ酸のロイシンを運ぶtRNA(AAU)は、mRNAの「UUA」と「UUG」のコドンを認識しています。

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あれ?と思われた方はさすがです。

 

そう、通常tRNAの「AAU」に対応するmRNAのコドンは「UUA」のみです。しかしロイシンを運ぶtRNAは「UUG」も認識することが可能です。

これはロイシンを運ぶtRNAが「タウリン修飾」されているという仕組みがあるからです。

 

タウリン修飾という仕組みのお蔭でロイシンを運ぶtRNAはmRNAのコドン「UUA」と「UUG」を共に認識してロイシンを結合することができます。

しかし、MELASではtRNAの遺伝子変異(A3243G変異)によって、タウリン修飾が欠損してしまっています。

参考MELASの約80%がこのA3243G変異と言われている。2)

 

そのため、ロイシンを運ぶtRNAはコドン「UUG」を認識することができなくなり5)、ミトコンドリアタンパクの翻訳が障害されてしまいます。結果、タンパク質の合成障害によってMELASが引き起こされると考えられています。

 

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タウリン散の作用機序

今回ご紹介するタウリンは大量投与することでtRNAのタウリン修飾を改善させる働きがあります。

 

その結果、ロイシンを運ぶtRNAはコドン「UUG」も認識することが可能となり、ミトコンドリアタンパクの翻訳・合成が回復すると考えられています。

 

エビデンス紹介:国内第Ⅲ相試験

根拠となった国内の非盲検第Ⅲ相試験をご紹介します。4)

本試験はMELAS患者さん10名が登録され、タウリンの52週投与による有効性と安全性が検討された試験です。

 

主要評価項目は「脳卒中様発作完全抑制率(100%レスポンダー率)」とされました。結果、脳卒中様発作完全抑制率は60%(95%信頼区間:26.2~87.8%)であり、設定した信頼区間下限値の閾値5%を上回ったため、タウリンの有効性が認められています。

 

タウリン散の副作用

主な有害事象は鼻咽頭炎、下痢、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、嘔吐、耳痛、C-反応性蛋白増加、好中球数増加などが報告されています。4)

 

タウリン散の用法・用量

MELASに関する用法・用量は、タウリンとして下表の1回量を1日3回食後に投与します。

体重1回量
15kg未満1g
15kg以上25kg未満2g
25kg以上40kg未満3g
40kg以上4g

 

まとめ・あとがき

タウリンはこんな薬

  • MELASに対する初の治療薬
  • ミトコンドリアtRNAのタウリン修飾を回復させる

 

今回はミトコンドリア病の中でもMELASに対する初の治療薬となる見込みのタウリン散についてご紹介しました!

 

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ちなみに、皆さんご存知の通り、タウリンは大正製薬の「リポビタンD」にも含まれていますよね(笑)

もちろんリポビタンDは医療用医薬品ではありませんし、MELASにも使用できませんのでご注意ください。

 

希少疾病ではありますが、有効な薬剤の選択肢が増えたことは朗報かと思います☆

 

   

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【薬剤師・講師】大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。>>プロフィール詳細はこちら

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