5.内分泌・骨・代謝系 疾患・作用機序まとめ

【高脂血症】フィブラート系薬剤の作用機序と薬剤一覧の紹介

今回は「高脂血症」とその治療薬の一つであるフィブラート系薬剤(~~フィブラート)の作用機序を中心にご紹介します。

フィブラート系薬剤は数製品発売されていますので、その一覧についてもご紹介します。

 

高脂血症(脂質異常症)とは

高脂血症は、現在では「脂質異常症」と呼ばれている疾患です。

 

厚生労働省の「平成26年(2014)患者調査の概況」によると、脂質異常症の患者さんの総数は206万2000人と推計されており、その数は年々増えているようです。

やはり、その理由として食生活の欧米化、運動不足などが関与していると考えられます。

 

このような脂質異常症に関連する生体内の脂質には以下の3つの種類があります。

 

  1. LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
  2. 中性脂肪(トリグリセライド)
  3. HDLコレステロール(善玉コレステロール)

 

脂質異常症とは、

  • LDLコレステロール、もしくは中性脂肪が基準値以上に増えた場合

または、

  • HDLコレステロールが基準値未満に減った場合

に診断されます。

 

高脂血症(脂質異常症)の治療

高脂血症(脂質異常症)の治療は、

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 薬物療法
    です。

高脂血症は多くの場合、食事や運動などの生活習慣が大きく関係しています。

従って、治療の基本は食事療法と運動療法で、長期的に継続する必要があります。

 

食事療法と運動療法で脂質が改善しない場合、もしくは緊急を要する場合(心筋梗塞、脳梗塞)には薬物療法を行います。

 

フィブラート系薬剤の作用機序

フィブラート系薬剤は、特に中性脂肪を減らす作用を有する薬剤です☆

 

それではここから、中性脂肪(トリグリセライド)の合成と分解についてご紹介します♪

 

肝臓では、遊離脂肪酸から中性脂肪が合成され血中に放出されています。

また、血中の中性脂肪は、“LPL(リポ蛋白リパーゼ)”と呼ばれる酵素の働きにより、遊離脂肪酸へと分解されます。

その後、分解された遊離脂肪酸は各組織に存在する細胞へと取り込まれていきます。

 

このような中性脂肪の合成や分解に関与しているタンパク質として「PPAR(ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター)α」が知られています。

 

PPARαは以下の作用によって血中の中性脂肪を減らす作用を有しています。

  1. 肝臓での中性脂肪の合成抑制
  2. 血中のLPL合成促進による中性脂肪の分解促進

 

フィブラート系の薬剤は、「PPARα」に結合してPPARαの働きを活性化することで、血中の中性脂肪を低下させる働きがあります!

 

即ち、フィブラート系薬剤は

  1. 肝臓での中性脂肪合成抑制
  2. LPL合成促進による中性脂肪を分解

といった作用機序によって中性脂肪を低下させる薬剤です!

 

フィブラート系薬剤の一覧

現在(2023年6月)までに承認・販売されているフィブラート系薬剤は以下の通りです。

製品名 一般名 規格・剤形 用法 主な
排泄経路
禁忌(一部略)
クロフィブラート「ツルハラ」 クロフィブラート 250mg
カプセル剤
1日2~3回 ●胆石又はその既往歴
●妊婦・授乳婦
ベザトール ベザフィブラート 100mg
200mg
錠剤
1日2回 ●人工透析患者
●妊婦・授乳婦
●重篤な腎疾患(透析患者、腎不全等)
リピディル フェノフィブラート 53.3mg
80mg
錠剤
1日1回 ●肝障害
●胆嚢疾患
●中等度以上の腎機能障害
●妊婦・授乳婦
トライコア
パルモディア ペマフィブラート 0.1mg
錠剤
1日2回
(XR錠は1日1回)
●重篤な肝障害
●胆石患者
●妊婦・授乳婦
●シクロスポリンやリファンピシンを投与中の患者

 

使い分けのポイント

主な排泄経路には腎排泄型と肝排泄型の製剤があります。

それに伴い、禁忌等が異なっているので、患者さんの状態に応じて使い分けができると思われます。

 

フィブラート系薬剤の副作用(注意事項)

これまで腎機能に異常が認められる患者さんに対して、フィブラート系薬剤をアトルバスタチン等のHMG-CoA還元酵素阻害薬と併用すると、横紋筋融解症のリスクが増加するため「原則禁忌」に該当していました。

アトーゼット(エゼチミブ/アトルバスタチン)の作用機序【高脂血症】

続きを見る

 

しかし、2018年10月16日に厚労省より「使用上の注意の改訂指示」がなされ、上記の原則禁忌が解除されました!

 

各製剤の添付文書の[重要な基本的注意]の項に、

腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者に、本剤とHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用する場合には、治療上やむを得ないと判断される場合にのみ併用すること。急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすい。
やむを得ず併用する場合には、本剤を少量から投与開始するとともに、定期的に腎機能検査等を実施し、自覚症状(筋肉痛、脱力感)の発現、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇並びに血清クレアチニン上昇等の腎機能の悪化を認めた場合は直ちに投与を中止すること。

と記載されています。

 

あとがき

2018年には新規のフィブラート系薬剤としてパルモディア(一般名:ペマフィブラート)の販売が開始されました。

他のフィブラート系薬剤と比較してPPARαに対する作用が選択的といった特徴があります。

 

臨床試験等も紹介していますので、下記記事をご覧いただければ幸いです。

パルモディアXR(ペマフィブラート)の作用機序と副作用【高脂血症】

続きを見る

 

以上、今回は高脂血症とフィブラート系薬剤の作用機序、薬剤一覧についてご紹介しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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