1.中枢神経系

ラツーダ(ルラシドン)の作用機序・特徴【統合失調症/双極性障害】

更新日:

2019年7月31日、「統合失調症」および「双極性障害におけるうつ症状の改善」を予定効能・効果とするラツーダ(ルラシドン)の製造販売承認申請が行われました!

現時点では未承認のためご注意ください。

大日本住友製薬|ニュースリリース

基本情報

製品名ラツーダ
一般名ルラシドン塩酸塩
製品名の由来不明。
製造販売大日本住友製薬(株)
効能・効果・統合失調症
・双極性障害におけるうつ症状の改善
用法・用量未定
収載時の薬価薬価未収載

 

木元 貴祥
ラツーダは海外では2010年に承認されていましたが、日本では統合失調症を対象とした2本の臨床試験が成功しなかったため(ニュースリリース:2011年5月2015年4月)、申請が遅れていました。

 

今回、ようやく3度目の正直で臨床試験が成功したようですので申請に漕ぎ付けています!

統合失調症と双極性障害(躁うつ病)の概要、そしてラツーダ(ルラシドン)の作用機序について解説していきます。

 


統合失調症とは

統合失調症は認知機能障害、思考障害、感情変化ときわめて情緒不安定なまたは緊張性の行動を特徴とする精神障害です。

 

症状としては「陽性症状」と「陰性症状」があります。

  1. 陽性症状:妄想や幻覚、等
  2. 陰性症状:感情表現が乏しい、意欲低下、情動の平板化、引きこもり、感情鈍麻性、快感消失、注意力欠陥、社会能力の欠乏、等

 

木元 貴祥
イメージとしては、陽性症状は「ないものがある」陰性症状は「あるべきものがない」といったところでしょうか。

 

発症年齢は、典型的には10代後半から20代前半であり、その原因は多面的で、遺伝的、環境的要因(ストレス等)の両方が関与するものと考えられています。1)

 

発症原因:ドパミンとセロトニン

統合失調症の陽性症状では、神経伝達物質の1つであるドパミン量が中脳辺縁系過剰になっています。ドパミンがドパミンD2受容体に作用することで陽性症状が発現すると考えられています。

 

木元 貴祥
これをドパミン仮説と呼び、非常に長い歴史があるものでした。従って、陽性症状の治療はドパミンD2受容体を遮断するのが基本です。

 

一方、陰性症状では中脳皮質系でドパミンの機能が低下していることが知られています。

統合失調症の陰性症状・陽性症状と原因:ドパミン仮説とセロトニン

 

中脳皮質系ではセロトニン神経から放出されるセロトニンが、ドパミン神経の5-HT2A受容体に作用することでドパミン放出が抑制されています。

 

従って、陰性症状を改善するためには、中脳皮質系のセロトニン5-HT2A受容体も抑制しなければいけません。

 

木元 貴祥
このように統合失調症では脳の部位によってドパミン活性が異なっているため、上手にバランスを整えてあげることが大切です。

 

統合失調症治療薬の種類

統合失調症の治療の中心は薬物療法です。2)

 

治療薬には、「定型抗精神病薬」と「非定型抗精神病薬」の二種類があります。

治療薬の分類特徴
定型抗精神病薬・ドパミンD2受容体のみを遮断
・陽性症状を改善するが、陰性症状は改善しない
・錐体外路障害が起こりやすい
非定型抗精神病薬・ドパミンD2受容体以外にも作用する
・陽性症状、陰性症状を共に改善する
・錐体外路障害が起こりにくい

 

定型抗精神病薬は主に脳内のドパミンD2受容体のみを遮断して陽性症状を改善する薬ですが、陰性症状は改善できません。

 

また、D2受容体を強く遮断してしまうと、ドパミンによる刺激が極端に減少してしまい、副作用としてパーキンソン症候群が発現してしまいます。

 

これを「錐体外路障害」と呼んでいます。

 

木元 貴祥
パーキンソン病も同じくドパミン量の低下によって発症しますので、これに似ていますね。

ハルロピテープ(ロピニロール)の作用機序:ニュープロパッチとの違い【パーキンソン病】

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代表的な定型抗精神病薬にはハロペリドールやクロルプロマジンがありますが、最近では陽性症状だけでなく陰性症状も改善する非定型抗精神病薬が良く使用されるため、定型抗精神病薬はあまり使用されていません。

 

一方、非定型抗精神病薬は比較的新しい薬で、作用の違いから「SDA」「MARTA」「DSS」「SDAM」の4つがあります。こちらは陰性症状も改善することができます。

 

非定型抗精神病薬作用機序代表薬
SDA:
Serotonin-Dopamine Antagonist
セロトニン・ドパミン受容体遮断リスパダール
ルーラン
ロナセン
MARTA:
Multi-Acting Receptor Target Antipsychotics
セロトニン・ドパミン受容体遮断

α受容体/H1受容体/M受容体も広く遮断
ジプレキサ
セロクエル
DSS:
Dopamine System Stabilizer
ドパミン受容体の
部分作動薬(パーシャルアゴニスト)
エビリファイ
SDAM:
Serotonin-Dopamine Activity Modulator
セロトニン・ドパミン受容体の
遮断及び部分作動薬(パーシャルアゴニスト)
レキサルティ

 

木元 貴祥
今回ご紹介するラツーダはSDAに分類されていますね!

 

SDA、MARTA、DSS、SDAMの簡単な作用機序等は以下のレキサルティの記事でまとめています。

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双極性障害(躁うつ病)とは

うつ状態だけが現れるものは「うつ病」ですが、うつ状態とは対極の躁状態も現れ、これらをくりかえす慢性の病気が双極性障害(躁うつ病)です。3)

 

通常のうつ病については以下の記事で疾患解説をしています。

トリンテリックス(ボルチオキセチン)の作用機序【うつ病】

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また、躁状態の程度によってⅠ型とⅡ型に分類されています。

  • 双極Ⅰ型障害:入院が必要になるほどの激しい「躁状態」が起こる
  • 双極Ⅱ型障害:本人も周りも困らない程度の「軽躁状態」が起こる

 

双極性障害(躁うつ病)の治療

双極性障害は程度に応じた薬物療法が基本です。4)

軽躁状態ではリチウムが最も推奨されており、躁状態が中程度以上の場合には非定型抗精神病薬(MARTA、DSS等)とリチウムの併用が推奨されています。

 

木元 貴祥
良く用いられるのがMARTAのジプレキサ(一般名:オランザピン)やDSSのエビリファイ(一般名:アリピプラゾール)でしょうか。

 

共に「統合失調症」と「双極性障害における躁症状の改善」の効能・効果を有していますね。

 

SDAの代表薬である

  • リスパダール(一般名:リスペリドン)
  • インヴェガ(一般名:パリペリドン)
  • ロナセン(一般名:ブロナンセリン)
  • ルーラン(一般名:ペロスピロン)

は「統合失調症」に適応を有していますが、これまで双極性障害に適応はありませんでした。

 

木元 貴祥
今回ご紹介するラツーダはSDAで初の双極性障害に使用できる見込みですね!

 

ラツーダ(ルラシドン)の作用機序と特徴

ラツーダは非定型抗精神病薬の中でもSDAに分類されている薬剤です!

 

統合失調症においては、中脳皮質系のセロトニン5-HT2A受容体の遮断作用によって陰性症状を改善し、中脳辺縁系のドパミンD2受容体の遮断作用によって陽性症状を改善すると考えられています。5)

ラツーダ(ルラシドン)の作用機序

 

また、うつ症状にはセロトニン5-HT7受容体や5-HT1A受容体が関与していることが知られていますが、ラツーダは5-HT7受容体遮断作用と5-HT1A受容体部分作動(パーシャルアゴニスト)によってうつ症状を改善すると考えられています。5)

 

ヒスタミンH1受容体やムスカリンM1受容体にはほとんど作用しないことも特徴です。

 

木元 貴祥
ちなみにラツーダはタンドスピロンをスタートとして、各受容体の親和性等を設計して合成されていったようですよ!すごい!

興味があれば参考文献5)をご確認くださいませ~。

 

エビデンス紹介

後日更新予定です。

メーカーのニュースリリースによると、

  • 統合失調症を対象としたJEWEL試験(日本を含む国際共同第Ⅲ相試験)
  • 双極Ⅰ型障害を対象としたELEVATE試験(日本を含む国際共同第Ⅲ相試験)

においてプラセボと比較してラツーダの有効性が証明されたとのことでした。

 

木元 貴祥
詳しくは論文等が公表されてから考察したいと思います。

 

用法・用量

後日更新予定です。

 

薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ラツーダはこんな薬

  • SDAに分類されている
  • 5-HT2A受容体の遮断によって陰性症状を改善、ドパミンD2受容体の遮断によって陽性症状を改善
  • 5-HT7受容体遮断作用と5-HT1A受容体部分作動によってうつ症状を改善

 

現時点では未承認ですが、承認・発売されれば今までの非定型抗精神病薬とどのように使い分けられるのか興味深いですね。

 

以上、今回は統合失調症と双極性障害(躁うつ病)の概要、そしてラツーダ(ルラシドン)の作用機序について解説しました!

 

参考文献・資料等

  1. 【厚生労働省】みんなのメンタルヘルス|統合失調症
  2. 日本神経精神薬理学会|統合失調症薬物治療ガイドライン
  3. 【厚生労働省】みんなのメンタルヘルス|双極性障害(躁うつ病)
  4. 日本うつ病学会|気分障害の治療 ガイドライン作成委員会双極性障害
  5. 新規統合失調症治療薬ルラシドン塩酸塩の創製 ―構造活性相関・非臨床薬理評価―

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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