11.血液・造血器系

フェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)の作用機序・特徴【鉄乏性貧血】

更新日:

2019年1月31日、厚労省の薬食審・医薬品第一部会は「鉄乏性貧血」を効能・効果とするフェインジェクト静注500mg(一般名:カルボキシマルトース第二鉄)の承認を了承しました!

現時点では未承認のためご注意ください。

製薬会社

  • 製造販売元(仮):ゼリア新薬工業(株)

 

鉄欠乏性貧血の基本は経口鉄剤ですが、経口剤が無効または使用できない場合、フェインジェクトのような静脈内投与が検討されます。

既存の静脈内投与の鉄剤は週に2~3回の投与が必要ですが、フェインジェクトは週1回の投与で治療が行える予定です。

 

今回は鉄欠乏性貧血とフェインジェクトの作用機序・特徴についてご紹介します。

 

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鉄欠乏性貧血とは

血中の酸素運搬を担っているのが赤血球の中に存在する「ヘモグロビン」と呼ばれる物質です。

ヘモグロビンや赤血球が不足して組織に酸素を十分に運べなくなった状態を貧血と呼んでいますが、特にヘモグロビンの構成成分である鉄不足によって引き起こされる貧血を「鉄欠乏性貧血」と呼んでいます。

 

それでは鉄と赤血球・ヘモグロビンについてもう少し詳しくみていきましょう。

赤血球は骨髄内で造血幹細胞⇒赤芽球⇒赤血球の順に成熟していきますが、途中、ヘモグロビンを構成する鉄を取り込みます。

通常、鉄は貯蔵鉄として肝臓に多く存在していますが、必要量が血中に放出され「トランスフェリン(血清鉄)」となります。

そしてトランスフェリンが赤芽球に鉄を運ぶことで、ヘモグロビンが合成されて赤血球が成熟していきます。

 

鉄欠乏性貧血では何らかの原因で鉄が欠乏し、以下の順で体内の鉄が減少していきます。

  1. 貯蔵鉄の減少
  2. 血清鉄の減少
  3. ヘモグロビン鉄の減少
  4. 組織鉄の減少

 

3.のヘモグロビン鉄まで減少してしまうと、赤血球の酸素運搬能力が低下し、組織に十分な酸素を供給することができなくなってしまいます。これが鉄欠乏性貧血の発症です。

 

若年から中年の女性に多く発症するのが特徴で、これは女性では月経や、妊娠による鉄需要の増大などがあるためですね。

 

鉄欠乏性貧血の症状

一般的な貧血症状としては以下があります。

  • 動悸・息切れ
  • 頭痛
  • めまい
  • 易疲労感

 

鉄欠乏性貧血に特徴的な症状としては以下がありますが、これは組織鉄が欠乏することに起因すると考えられています。

  • スプーン状爪:爪が脆くなり、真ん中が凹んでスプーンみたいになる
  • 異食症状:栄養価の無いもの(例:氷、土、紙)を無性に食べたくなる症候
  • 舌炎

 

これらの症状は鉄欠乏が回復すると徐々に回復していきます。

 

鉄欠乏性貧血の治療

治療は鉄剤の経口投与が第一選択です。

主に使用される経口の鉄剤としては以下がありますね。

  • フェロミア錠(一般名:クエン酸第一鉄ナトリウム)
  • フェロ・グラデュメット錠(一般名:乾燥硫酸鉄)

 

経口鉄剤で副作用(例:悪心・嘔吐、腹痛、下痢・便秘などの消化器症状)が強い場合や効果不十分な場合、もしくは緊急を要する場合に初めて静脈投与の鉄剤が選択されます。

代表的な静脈投与の鉄剤としては以下があります。

  • フェジン静注(一般名:含糖酸化鉄注射液)

静脈投与の鉄剤では事前に総鉄必要量を計算して個人に合わせた分量を投与します。

 

今回ご紹介するフェインジェクト静注も静脈投与として使用する薬剤です。

 

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フェインジェクト静注の作用機序・特徴

フェインジェクトの有効成分はカルボキシマルトース第二鉄で、以下の構造をしています。1)

カルボキシマルトースと複合体を形成したコロイド状の水酸化鉄(Fe3+)で、投与されると血中で徐々に鉄が放出されるといった特徴があります。

また週1回の投与で治療効果が発揮できるのも特徴かと思います。

 

エビデンス紹介:月経過多による鉄欠乏性貧血

根拠となった国内臨床試験を一つご紹介します。2)

本試験は月経過多による鉄欠乏性貧血患者さんを対象に、フェインジェクト静注とフェジン静注を比較した第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「ベースラインからヘモグロビン値が最大となるまでの平均変化量」とされ、フェジンに対するフェインジェクトの非劣性が検討されました。(非劣性マージン:1.0g/dL)

試験群フェインジェクト静注フェジン静注
ベースラインからヘモグロビン値が
最大となるまでの平均変化量
3.90g/dL4.05g/dL
差:-0.15(95%CI:-0.35-0.04)
非劣性が証明
何らかの有害事象58.8%58.0%

 

このように既存のフェジンに対してフェインジェクトの非劣性が示されましたので効果としては同程度ですね。

フェインジェクトは投与頻度が軽減できることから使いやすいのではないでしょうか。

 

なお、有害事象の発現率については両群間で同程度でした。

 

類薬(フェジン静注)との違い

前述の臨床試験2)では効果と副作用は同程度であったとされています。

その他の違いについては正式承認後に考察したいと思います☆

 

フェインジェクト静注の副作用

後日更新予定です。

前述の臨床試験2)では、血清リン減少、鼻咽頭炎、頭痛などが報告されています。

 

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フェインジェクト静注の用法・用量

通常、成人に鉄として1回あたり500mgを週1回、緩徐に静注または点滴静注します。

なお、総投与量は患者さんの血中ヘモグロビン値および体重に応じますが、上限は鉄として1500mgとされています。

 

フェインジェクト静注の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

フェインジェクトはこんな薬

  • 静脈投与で使用する鉄剤
  • 週1回の投与

 

静注の鉄剤は過去に数種類(ブルタール、フェリコン、アトフェン)が販売されていましたが、相次いで販売中止となり、現在ではフェジン静注しか選択肢がありませんでした。

フェインジェクトは新規の静注の鉄剤のため、治療選択肢が増えることは朗報かと思います。

 

以上、今回は鉄欠乏性貧血の概要とフェインジェクト作用機序・特徴、そしてエビデンスについてご紹介しました☆

 

引用文献・資料等

  1. DailyMed:INJECTAFER- ferric carboxymaltose injection injection, solution
  2. 月経過多による鉄欠乏性貧血の国内第Ⅲ相試験:Int J Hematol. 2019 Jan;109(1):41-49.
   

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【薬剤師・講師】大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。>>プロフィール詳細はこちら

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