12.悪性腫瘍

パージェタ(ペルツズマブ)の作用機序と副作用【乳がん】

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パージェタ点滴静注(一般名:ペルツズマブ(遺伝子組換え))の「HER2陽性の乳がんにおける術前・術後薬物学療法」に対する効能・効果追加が2018年10月10日に承認されました。

製薬会社

  • 製造販売元:中外製薬(株)

 

パージェタは既に「HER2陽性の手術不能又は再発乳がん」の効能・効果を有していますが、早期の乳がんに対する「術後」と「術前」の適応が追加され、「HER2陽性の乳がん」となりました。

 

今回は乳がん治療とパージェタ(ペルツズマブ)の作用機序、エビデンスについてご紹介します。

 

乳がんの概要

2011年の女性乳がんの罹患数は、約72,500人と、女性のがんの中では最も多く、約20%を占めると言われています。

最近では、北斗晶さんや、小林麻央さんが記憶に新しいと思います。

手術で取り切れるような早期の乳がんでは、5年生存率は80%を超えます(StageⅠ~Ⅱでは90%を超える)ので、治癒することが可能な比較的予後の良いがんとして知られています。

 

ただし、発見時に手術ができない(手術不能)の乳がんや、再発した乳がんでは5年生存率は30%と、治癒を見込むのは難しくなってしまいます(基本的には延命)。

 

従って、日頃の観察やがん検診(マンモグラフィや超音波検査)によって、できるだけ早期に発見することが非常に重要です!!!

また、乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られています。

 

その他、乳がんの15%~25%は「HER2(“ハーツー”と読みます)」と呼ばれるタンパク質が細胞膜に発現していることもあり、従来は予後不良と言われていました。

 

早期の乳がんの治療

早期の乳がんは基本的には手術によって完全に取り除くことが可能です。

早期乳がんの中でも術後に再発リスクが高いと診断された患者さんでは、術後にホルモン療法や抗がん剤によって再発を抑える薬物療法(初期治療)が行われることがあります。

 

乳がんは、がん細胞の性質によって、術後の初期治療が異なります。

  1. ホルモン陽性の乳がん:ホルモン療法(タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬
  2. HER2陽性の乳がん:ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)±抗がん剤
  3. ホルモンもHER2も陰性の乳がん:抗がん剤

 

パージェタはHER2陽性の早期乳がんの場合、術後のハーセプチン+抗がん剤に上乗せすることで再発抑制効果が期待されています。

 

また、HER2陽性の早期乳がんで、がんが大きい場合、手術の前に術前薬物療法としてパージェタ+ハーセプチン+抗がん剤を行い、がんを小さくしてから手術が行われることもあります。

 

転移のある乳がんの治療(手術不能)

発見時に転移がある乳がんの場合、手術はできませんので、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬)が基本となります。

 

転移のある乳がんの場合も、がん細胞の性質によって薬物療法の種類が異なります。

  1. ホルモン陽性の乳がん:イブランス(一般名:パルボシクリブ)±ホルモン療法
  2. HER2陽性の乳がん:ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)±パージェタ(一般名:ペルツズマブ)±抗がん剤
  3. ホルモンもHER2も陰性の乳がん:抗がん剤

 

最も多いとされるのが、「ホルモン陽性」の乳がんで、この場合はホルモン療法が基本です。

パージェタは転移のあるHER2陽性の乳がんの場合、ハーセプチン+抗がん剤に上乗せすることで生存期間の延長が認められています。

 

HER2/HER3によるがん細胞の増殖

がんの増殖に関わるタンパク質(受容体)としてHERファミリーが知られており、以下の種類があります。

  • HER1(別名:EGFR)
  • HER2
  • HER3
  • HER4

 

乳がんでは特にHER2が重要で、HER2を有するがん細胞では増殖シグナルが活性化されているため、予後不良とされていました。

 

HER2は単独でも増殖シグナルを活性化しますが、HER3と二量体を形成することでより強固なシグナル伝達が活性化され、がん細胞の増殖を促進します。

HER2/HER3は共にドメインⅠ~Ⅳから成り立っていますが、二量体形成に関与しているのは「ドメインⅡ」であることが知られています。

 

パージェタ(ペルツズマブ)の作用機序

パージェタはHER2とHER3の二量体形成に関与しているHER2のドメインⅡを選択的に阻害するモノクローナル抗体製剤です。

 

また、HER2のドメインⅣを選択的に阻害するハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)を併用することで、がん細胞のシグナル伝達をより強固に阻害することができます。

 

臨床試験ではパージェタは、ハーセプチン+抗がん剤と併用することで効果が認められているため、基本的には併用して用います。

 

エビデンス紹介(術後の初期治療):APHINITY試験

早期乳がんの術後初期治療としてパージェタの有用性が示された第Ⅲ相試験(APHINITY試験)をご紹介します。1)

本試験はリンパ節転移陽性もしくは再発リスクの高いリンパ節転移陰性のHER2陽性早期乳がん患者さんを対象に、ハーセプチン+化学療法(ドセタキセルを含む)、もしくはパージェタ+ハーセプチン+化学療法を投与する群を比較した試験です。投与期間は「1年間」とされています。

 

本試験の主要評価項目は3年の「iDFS(浸潤病変の無い生存期間)*」でした。

試験名APHINITY試験
試験群ハーセプチン+化学療法パージェタ+
ハーセプチン+化学療法
3年のiDFS率*93.2%94.1%
HR=0.81, p=0.045
リンパ節転移陽性例の
3年のiDFS率*
90.2%92.0%
HR=0.77, p=0.02

*iDFS(浸潤病変の無い生存期間):いずれかの部位での浸潤性乳がんの再発、または死亡を認めない生存時間

 

このように、これまでの標準治療であったハーセプチン+化学療法にパージェタを上乗せすることで再発率を抑制できることが示されています。

特にリンパ節に転移のあった患者さんではより効果が期待できそうな印象です。

 

エビデンス紹介(転移のある乳がんの一次治療):CLEOPATRA試験

転移のある乳がん(手術不能)の一次治療としてパージェタの有用性が示された第Ⅲ相試験(CLEOPATRA試験)をご紹介します。2-3)

本試験はHER2陽性の手術不能乳がん患者さんを対象に、ハーセプチン+ドセタキセル、もしくはパージェタ+ハーセプチン+ドセタキセルを投与する群を比較した試験です。

 

本試験の主要評価項目は「PFS(無増悪生存期間)*」でした。

試験名CLEOPATRA試験
試験群ハーセプチン+ドセタキセルパージェタ+
ハーセプチン+ドセタキセル
PFS中央値*12.4か月18.5か月
HR=0.62, p<0.001
生存期間中央値40.8か月56.5か月
HR=0.68, p<0.001
奏効率69.3%80.2%

*PFS(無増悪生存期間):治療を開始してからがんが大きく(増悪)するまでの期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合

 

このようにハーセプチン+ドセタキセルにパージェタを上乗せすることでPFSや生存期間の延長効果が示されています。

 

パージェタの副作用

主な副作用として下痢、脱毛、倦怠感、好中球減少症、悪心、爪の異常、神経障害、発疹などが認められています。

ハーセプチンとドセタキセル等と併用するため、これらの薬剤の副作用にも要注意です。

 

稀にアナフィラキシーショックや間質性肺炎の発現もあるため、注意が必要です。

 

あとがき

パージェタはHER2陽性の手術不能乳がんの一次治療として広く使用されています。

 

適応追加によって術前・術後の治療として使用可能となりましたので、治療効果の向上が期待されています。

ただし、術後にパージェタを使用する場合、再発率を僅か1%~2%向上させるのみですので、費用対効果がどれほどなのかは疑問が残ります。

 

記事では割愛しましたが、術前のパージェタの根拠となった臨床試験は以下の海外の2試験(いずれも第Ⅱ相試験)です。

 

以上、今回は乳がん治療とパージェタ(ペルツズマブ)の作用機序とエビデンスについてご紹介しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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