1.中枢神経系

ビバンセ(リスデキサンフェタミン)の作用機序・特徴:類薬との違い/比較【ADHD】

更新日:

2019年3月26日、「小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」を効能効果とするビバンセカプセル20mg同カプセル30mg(一般名:リスデキサンフェタミンメシル酸塩)が承認されました!

基本情報

製品名ビバンセカプセル
一般名リスデキサンフェタミンメシル酸塩
製品名の由来
製薬会社製造販売:塩野義製薬(株)
プロモーション提携:武田薬品(株)
効能・効果小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
用法・用量小児にはリスデキサンフェタミンメシル酸塩として30mgを1日1回朝経口投与する。
症状により、1日70mgを超えない範囲で適宜増減するが、
増量は1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgを超えない範囲で増量を行うこと。
収載時の薬価薬価未収載

 

ビバンセは覚醒剤原料に指定される成分が含有されていたため、特別な適正流通管理策が必要となりました。そのためパブリックコメントが実施され、継続審議になったという経緯です。

 

また、使用実態下における乱用・依存性がしっかりと評価されるまでは「他のADHD治療薬が効果不十分な場合にのみ使用」とセカンドラインの位置づけになりました!

 

本日は小児ADHD(attention deficit hyperactivity disorder)とビバンセ(リスデキサンフェタミン)の作用機序、そして類薬のコンサータ、ストラテラインチュニブとの違いについてご紹介いたします。

 


ADHDとは

ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは、

  • 不注意(集中力がない)
  • 多動性(じっとしていられない)
  • 衝動性(考えずに行動してしまう)

の3つの症状がみられる疾患です。

 

ただ、小さい子どもであればこれらの要素は誰にでも見られるものなので、なかなか診断が難しい疾患です。

さらに周囲の人に障害として理解されづらく、ただの乱暴者や親のしつけができていない子などと誤解を受けてしまうケースが多々あります。

そして、子ども時代の症状が改善されず、そのまま大人になってしまうこともしばしばあります。

 

ADHDの治療

ADHDの治療目標は、

  • 本人が自分を理解し、自身の行動をコントロールできるようになることによって、周囲の環境が改善し、自信を取り戻せること。
  • それによって生きにくさが改善され、充実した生活・社会生活が送れることです。

必ずしも不注意、多動性、衝動性を抑えることが治療の目標ではありません。

 

ADHDの治療には「非薬物療法(教育・療育的支援)」と「薬物治療」があります。

 

まずは、環境調整などの心理社会的治療による非薬物療法を優先して行います。

 

これら非薬物療法で効果の無かった場合、薬物療法が考慮され、非薬物療法と適宜並行して行われます。

 

ADHDの原因

脳内の情報伝達にはノルアドレナリンドパミンが関与しています。

 

ADHDの原因は解明されていませんが、脳内(特に前頭葉)の情報伝達に異常があると考えられています。

脳内伝達物質のノルアドレナリンやドパミン量が低下したり、脳内の情報伝達を司る「シナプス」がうまく働かないことが原因の一つではないかと言われています。

 

従って、外から入ってきた情報をうまく取り込んだり処理をしたりするのが困難になり、自分の注意や行動をコントロールできなくなる(“不注意”、“多動性”、“衝動性”が発現)と考えられています。

 

ADHDのある人の中には、以下の図のように後シナプスと前シナプスの間のノルアドレナリンやドパミン量が低下していることがあります。

そのため、脳内の情報伝達量が減少してしまっていると考えられます。

ADHDとノルアドレナリン・ドパミン

 

ノルアドレナリンやドパミンの再取り込み

通常、前シナプスから分泌されたノルアドレナリンやドパミンは、前シナプスにある「トランスポーター」によって一部が再取り込みされます。

再取り込みのメカニズム

ADHDの患者さんでは、この再取り込みが過剰に起こっている結果、ノルアドレナリンやドパミン量が減少している可能性があります。

 

ビバンセ(一般名:リスデキサンフェタミン)の作用機序

ビバンセは、以下の作用機序を有する薬剤です。

  • ノルアドレナリントランスポーター阻害
  • ドパミントランスポーター阻害
  • ノルアドレナリン/ドパミン分泌促進

 

ノルアドレナリンとドパミンの再取り込み阻害分泌促進作用によって、シナプス間のノルアドレナリン・ドパミン量が回復すると考えられます。

ビバンセ(リスデキサンフェタミン)の作用機序

 

従って、より多くの情報を伝達できるようになり、覚えられる情報の量や、その持続力も高まります。

その結果、不注意、多動性、衝動性といった症状の改善に繋がります。

 

このように、ビバンセは中枢神経を刺激して神経伝達物質を増やす作用もあることから中枢神経刺激薬に分類されています。

 

新薬情報
一般的に中枢神経刺激薬は治療効果が早く発現しますが、使用方法を誤ると依存性のリスクもありますので注意が必要です。

 

有効成分(リスデキサンフェタミン)は覚醒剤原料

厚労省は2018年2月21日に新たな化合物を覚醒剤原料に指定しました。1)

化学名: 2,6—ジアミノ—N—(1—フェニルプロパン—2—イル)ヘキサンアミド、その塩類及びこれらのいずれかを含有する物

 

ビバンセの有効成分であるリスデキサンフェタミンは上記化合物の立体異性体に該当します。従って、ビバンセも覚醒剤原料の規制対象となっています。

 

覚醒剤原料は流通上の規制を受けることから以下の注意喚起が発出されています。1)

リスデキサンフェタミンは、現在海外で医薬品として流通している物質ですが、今後は、覚せい剤取締法上の覚醒剤原料として規制を受けることになります。

覚醒剤原料は、覚醒剤原料輸入業者・輸出業者が、その都度、厚生労働大臣の許可を受けて輸出入する場合を除き、一般の個人が輸出入することは禁止されています。

また、原則として、一般の個人が覚醒剤原料を所持したり、使用したりすることも禁止されています。これらの行為は、覚せい剤取締法により罰せられることになります。

 

適正流通管理

上記の経緯もあって、2018年12月3日の第一部会では、ビバンセの承認審議前に流通管理策に関するパブコメを募集することが提案されています。

 

その後、2018年12月6日に「ビバンセカプセル流通管理策(案)の概要」に関する御意見の募集についてのパブコメの募集2)が開始されました(既に募集は終了)。>>詳しくはこちら(e-Gov)

 

新薬情報
最終的にメーカー側の「実施体制」、処方側の「処方及び調剤の手順 」が策定されています。

 

<メーカー側の体制>

1.実施体制

○ 医師、薬剤師、弁護士等からなる「ビバンセカプセル適正流通管理委員会」を社外に組織し、各種登録時の審査や登録取消、流通管理の実施状況の確認、必要に応じた管理策の見直し等の役割を担う。

○ 適正流通管理委員会の登録事務局が管理する「ビバンセカプセル適正流通管理システム」(以下「管理システム」という。)において、各種登録や本剤の流通量等を一元管理する。

○ 本剤を取り扱う医療機関、薬局及び調剤責任者の管理システムへの登録を求め、卸売販売業者に対しては、登録施設以外への納入を禁止する。

○ 本剤を処方する医師の管理システムへの登録を求める。登録時には、e-ラーニングの受講や流通管理への同意を求めるほか、関連学会への参加や ADHD 症例報告・関連論文等により ADHD の治療経験について確認を行う。また、医師の登録については定期的な更新を求める。

○ 管理システムへ登録された医師(以下「登録医師」という。)は、新規に本剤を処方する患者に対し、予め管理システムへの患者登録を行う。

 

※引用:【PMDA】安全対策に関する通知等(医薬品)「(別添)ビバンセカプセル適正流通管理の概要

 

<処方側の手順>

2.処方及び調剤の手順

【患者登録時】

○ 登録医師は、患者及び代諾者の同意を取得し、イニシャル、性別、生年月日、薬物乱用歴や第三者から得た患者の症状に関する情報源等について、管理システムに登録する。

○ 当該登録については、登録医師が管理システムにより、患者の重複登録が無いことを確認してから行う。

○ 患者情報の登録後、ID番号を記載した患者カードを登録事務局が発行し、登録医師から患者に交付する。

【処方時】

○ 登録医師が、患者カード及び管理システムを用いて過去の処方内容を確認した上で、新たに処方する内容を管理システムに入力し、処方箋を発行

【調剤時】

○ 登録薬局及び薬剤師は、患者カード、処方箋発行医師及び医療機関を確認し、管理システム上の情報と突合した上で薬剤を交付

 

※引用:【PMDA】安全対策に関する通知等(医薬品)「(別添)ビバンセカプセル適正流通管理の概要

 

まとめるとこんな感じ

  • 取り扱う医療機関は管理システムに登録(未登録施設には納品禁止)
  • 処方医はeラーニングが必要
  • 患者さん毎に管理システムに登録

 

新薬情報
結構厳しめの印象を受けますね。類薬のコンサータも同じく適正流通管理策がありますが、コンサータには患者さんのシステム登録はありませんでした。ちょっと面倒かも・・・・?

 

副作用

主な副作用として食欲減退(79.1%)、不眠(45.3%)、体重減少(25.6%)、頭痛(18.0%)、悪心(11.0%)などが報告されています。3)

 

用法・用量

小児にはリスデキサンフェタミンメシル酸塩として30mgを1日1回朝経口投与します。

なお、症状により日70mgを超えない範囲で適宜増減可能ですが、増量は1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgを超えない範囲で増量を行います。

 

以下の承認条件が付されましたので暫くの間はセカンドラインとしての位置づけですね。3)

「使用実態下における乱用・依存性に関する評価が行われるまでの間は、他のADHD治療薬が効果不十分な場合にのみ使用されるよう必要な措置を講じる」

 

薬価

現時点では薬価未収載です。

 

インチュニブ、ストラテラ、コンサータとの違い/比較

ADHDに適応を持つ類薬としては、以下の3種類があります。

 

それぞれの作用機序の違い、投与の対象者や禁忌等についてまとめてみました。

 

作用機序の違い

インチュニブは後シナプスのα2Aアドレナリン受容体を刺激することでイオンチャネルが閉じ、後シナプスでの情報伝達量が回復すると考えられています。

 

ストラテラは再取り込みのトランスポーターの中でもノルアドレナリントランスポーターを選択的に阻害する作用機序を有しています。

 

コンサータの作用機序はビバンセと同様です。以下の図に作用機序をまとめてみました。

ADHD治療薬の作用機序の違い・比較

 

一覧表:投与の対象者や禁忌等について

4製品の一覧表を作成してみました。(2019年3月26日時点)

ADHD治療薬のまとめ一覧表

 

新薬情報
上表を参考に各製品の違いについて気になるポイントを考察してみました(個人的意見)。

 

中枢神経への作用

中枢神経刺激作用のある薬剤(コンサータとビバンセ)は一般的に治療効果が早く発現しますが、使用方法を誤ると依存性のリスクもありますので注意が必要です。

一方で“衝動性”の症状が強く出ている場合でしたら中枢神経刺激作用の方がより効果が期待できるとされています。

 

18歳以上への投与可否

コンサータとストラテラは18歳以上にも使用可能ですが、インチュニブとビバンセは使用不可です。

 

投与禁忌患者の違い

ドパミンやノルアドレナリンはMAOという酵素によって分解されます。

ドパミン/ノルアドレナリン量に関与しているビバンセ、コンサータ、ストラテラではMAO阻害薬を併用することその作用が増強されてしまうことから投与禁忌です。

 

代表的なMAO阻害薬にはアジレクト(一般名:ラサギリン)があります。

 

その他にもノルアドレナリン等のカテコールアミンが関与する疾患褐色細胞腫がありますので、こちらも同様にビバンセ、コンサータ、ストラテラは投与禁忌です。

 

褐色細胞腫については以下の記事をご覧ください。

 

全体的に投与禁忌が少ないのはインチュニブですね。

 

妊婦への投与

インチュニブは妊婦への投与が禁忌です。

コンサータとストラテラも基本は投与しない方が望ましいですが、ビバンセとストラテラは有用性が上回る場合にのみ投与可能です。

 

 

新薬情報
実際にどの薬剤を使用すれば良いのか、使い分けについては非常に難しいですね・・・^^;

 

処方医の使いやすさから言えば、覚醒剤原料に該当しない非中枢神経刺激薬のストラテラかインチュニブでしょうか。

禁忌項目の少ないインチュニブは魅力的ですが、18歳以上には使用できません。

 

治療効果:ビバンセ vs. コンサータの比較試験(海外)

13~17歳のADHD患者さんを対象に、プラセボ vs. ビバンセ vs. コンサータを比較する海外の試験が報告されています。4)

本報告には投与量を固定した試験投与量を調節した試験が含まれており、結果の概略は以下の通りでした。

 

  • 投与量を固定した試験:ADHDの程度を評価する指標(ADHD-RS-IV)ではビバンセ、コンサータ共にプラセボより有意に改善が認められた。また、臨床的総合印象度尺度の改善度(CGI-I)はコンサータ(71.3%)よりもビバンセ(81.4%)で有意に高かった(p=0.0188)。
  • 投与量を調節した試験:ADHDの程度を評価する指標(ADHD-RS-IV)ではビバンセ、コンサータ共にプラセボより有意に改善が認められた。ビバンセとコンサータの効果は同程度であった。

 

新薬情報
海外なので日本では一概に言えません。が、ビバンセはコンサータよりも治療効果が高そうな印象を受けますね。

 

まとめ・あとがき

ビバンセはこんな薬

  • ノルアドレナリン/ドパミントランスポーターを阻害する
  • ノルアドレナリン/ドパミンの分泌促進作用のある中枢神経刺激薬
  • 覚醒剤原料に指定されている
  • 暫くはセカンドラインの使用

 

2017年にはADHDの新薬であるインチュニブ錠が登場しましたが、現状、小児にしか使用できません。

類薬のコンサータ錠とストラテラカプセルは18歳以上にも使用可能です。

 

今回ご紹介したビバンセもまずは小児の適応ですが、今後は18歳以上等への適応拡大も期待したいと思います。

 

以上、今回はADHDとビバンセ(一般名:リスデキサンフェタミン)の作用機序、類薬との違い/比較についてご紹介しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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