1.中枢神経系

ビバンセ(リスデキサンフェタミン)の作用機序・特徴:類薬との違い/比較【ADHD】

更新日:

厚労省の薬食審医薬品第一部会は2018年12月3日、「小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」を予定効能効果とするビバンセカプセル20mg同カプセル30mg(一般名:リスデキサンフェタミンメシル酸塩)の承認可否について審議される予定でしたが、継続審議となりました。

現時点では未承認のためご注意ください。

製薬会社

製造販売元:塩野義製薬(株)

 

覚醒剤原料に指定される成分が含有されているため、特別な流通管理が必要とのことです。

そのため今後パブリックコメントを実施し、継続審議となりました。

 

本日は小児ADHD(attention deficit hyperactivity disorder)とビバンセ(リスデキサンフェタミン)の作用機序、そして類薬のコンサータ、ストラテラインチュニブとの違いについてご紹介いたします。

 

<スポンサーリンク>

ADHDとは

ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは、

  • 不注意(集中力がない)
  • 多動性(じっとしていられない)
  • 衝動性(考えずに行動してしまう)

の3つの症状がみられる疾患です。

 

ただ、小さい子どもであればこれらの要素は誰にでも見られるものなので、なかなか診断が難しい疾患です。

さらに周囲の人に障害として理解されづらく、ただの乱暴者や親のしつけができていない子などと誤解を受けてしまうケースが多々あります。

そして、子ども時代の症状が改善されず、そのまま大人になってしまうこともしばしばあります。

 

ADHDの治療

ADHDの治療目標は、

  • 本人が自分を理解し、自身の行動をコントロールできるようになることによって、周囲の環境が改善し、自信を取り戻せること。
  • それによって生きにくさが改善され、充実した生活・社会生活が送れることです。

必ずしも不注意、多動性、衝動性を抑えることが治療の目標ではありません。

 

ADHDの治療には「非薬物療法(教育・療育的支援)」と「薬物治療」があります。

 

まずは、環境調整などの心理社会的治療による非薬物療法を優先して行います。

 

これら非薬物療法で効果の無かった場合、薬物療法が考慮され、非薬物療法と適宜並行して行われます。

 

ADHDの原因

脳内の情報伝達にはノルアドレナリンドパミンが関与しています。

 

ADHDの原因は解明されていませんが、脳内(特に前頭葉)の情報伝達に異常があると考えられています。

脳内伝達物質のノルアドレナリンやドパミン量が低下したり、脳内の情報伝達を司る「シナプス」がうまく働かないことが原因の一つではないかと言われています。

 

従って、外から入ってきた情報をうまく取り込んだり処理をしたりするのが困難になり、自分の注意や行動をコントロールできなくなる(“不注意”、“多動性”、“衝動性”が発現)と考えられています。

 

ADHDのある人の中には、以下の図のように後シナプスと前シナプスの間のノルアドレナリンやドパミン量が低下していることがあります。

そのため、脳内の情報伝達量が減少してしまっていると考えられます。

 

ノルアドレナリンやドパミンの再取り込み

通常、前シナプスから分泌されたノルアドレナリンやドパミンは、前シナプスにある「トランスポーター」によって一部が再取り込みされます。

ADHDの患者さんでは、この再取り込みが過剰に起こっている結果、ノルアドレナリンやドパミン量が減少している可能性があります。

 

<スポンサーリンク>

ビバンセ(一般名:リスデキサンフェタミン)の作用機序

ビバンセは、以下の作用機序を有する薬剤です。

  • ノルアドレナリントランスポーター阻害
  • ドパミントランスポーター阻害
  • ノルアドレナリン/ドパミン分泌促進

 

ノルアドレナリンとドパミンの再取り込み阻害分泌促進作用によって、シナプス間のノルアドレナリン・ドパミン量が回復すると考えられます。

 

従って、より多くの情報を伝達できるようになり、覚えられる情報の量や、その持続力も高まります。

その結果、不注意、多動性、衝動性といった症状の改善に繋がります。

 

このように、ビバンセは中枢神経を刺激して神経伝達物質を増やす作用もあることから中枢神経刺激薬に分類されています。

一般的に中枢神経刺激薬は治療効果が早く発現しますが、使用方法を誤ると依存性のリスクもありますので注意が必要です。

 

ビバンセの有効成分(リスデキサンフェタミン)は覚醒剤原料

厚労省は2018年2月21日に新たな化合物を覚醒剤原料に指定しました。1)

化学名: 2,6—ジアミノ—N—(1—フェニルプロパン—2—イル)ヘキサンアミド、その塩類及びこれらのいずれかを含有する物

 

ビバンセの有効成分であるリスデキサンフェタミンは上記化合物の立体異性体に該当します。従って、ビバンセも覚醒剤原料の規制対象となっています。

 

覚醒剤原料は流通上の規制を受けることから以下の注意喚起が発出されています。1)

リスデキサンフェタミンは、現在海外で医薬品として流通している物質ですが、今後は、覚せい剤取締法上の覚醒剤原料として規制を受けることになります。

覚醒剤原料は、覚醒剤原料輸入業者・輸出業者が、その都度、厚生労働大臣の許可を受けて輸出入する場合を除き、一般の個人が輸出入することは禁止されています。

また、原則として、一般の個人が覚醒剤原料を所持したり、使用したりすることも禁止されています。これらの行為は、覚せい剤取締法により罰せられることになります。

 

1)厚労省報道発表資料

 

ビバンセの流通管理策(パブコメ募集)

上記の経緯もあって、2018年12月3日の第一部会では、ビバンセの承認審議前に流通管理策に関するパブコメを募集することが提案されています。

 

その後、2018年12月6日に「ビバンセカプセル流通管理策(案)の概要」に関する御意見の募集についてのパブコメの募集が開始されました。>>詳しくはこちら(e-Gov)

案ではメーカー側の「実施体制」、処方側の「処方及び調剤の手順 」が提案されています。

 

1.実施体制

○ 医師、薬剤師、弁護士等からなる「ビバンセカプセル適正流通管理委員会」を社外に組織し、各種登録時の審査や登録取消、流通管理の実施状況の確認、必要に応じた管理策の見直し等の役割を担う。

○ 適正流通管理委員会の登録事務局が管理する「ビバンセカプセル適正流通管理システム」(以下「管理システム」という。)において、各種登録や本剤の流通量等を一元管理する。

○ 本剤を取り扱う医療機関、薬局及び調剤責任者の管理システムへの登録を求め、卸売販売業者に対しては、登録施設以外への納入を禁止する。

○ 本剤を処方する医師の管理システムへの登録を求める。登録時には、e-ラーニングの受講や流通管理への同意を求めるほか、関連学会への参加や ADHD 症例報告・関連論文等により ADHD の治療経験について確認を行う。また、医師の登録については定期的な更新を求める。

○ 管理システムへ登録された医師(以下「登録医師」という。)は、新規に本剤を処方する患者に対し、予め管理システムへの患者登録を行う。

 

2.処方及び調剤の手順

【患者登録時】

○ 登録医師は、患者及び代諾者の同意を取得し、イニシャル、性別、生年月日、薬物乱用歴や第三者から得た患者の症状に関する情報源等について、管理システムに登録する。

○ 当該登録については、登録医師が管理システムにより、患者の重複登録が無いことを確認してから行う。

○ 患者情報の登録後、ID番号を記載した患者カードを登録事務局が発行し、登録医師から患者に交付する。

【処方時】

○ 登録医師が、患者カード及び管理システムを用いて過去の処方内容を確認した上で、新たに処方する内容を管理システムに入力し、処方箋を発行

【調剤時】

○ 登録薬局及び薬剤師は、患者カード、処方箋発行医師及び医療機関を確認し、管理システム上の情報と突合した上で薬剤を交付

 

まとめるとこんな感じ

  • 取り扱う医療機関は管理システムに登録(未登録施設には納品禁止)
  • 処方医はeラーニングが必要
  • 患者さん毎に管理システムに登録

 

結構厳しめの印象を受けますね。ちょっと面倒かも・・・・?

パブコメの募集は2019年1月4日までとのことです。>>詳しくはこちら(e-Gov)

 

エビデンス紹介

後日更新予定です。

 

ビバンセカプセルの副作用

海外では既に使用されており、主な副作用として、不安、食欲減少、悪心・嘔吐、体重減少、上腹部痛、口渇、めまいなどが報告されています。

 

ビバンセカプセルの用法・用量

後日更新予定です。

 

ビバンセカプセルの薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

<スポンサーリンク>

インチュニブ、ストラテラ、コンサータとの違い/比較

ADHDに適応を持つ類薬としては、以下の3種類があります。

 

それぞれの作用機序の違い、投与の対象者や禁忌等についてまとめてみました。

 

作用機序の違い

インチュニブは後シナプスのα2Aアドレナリン受容体を刺激することでイオンチャネルが閉じ、後シナプスでの情報伝達量が回復すると考えられています。

 

ストラテラは再取り込みのトランスポーターの中でもノルアドレナリントランスポーターを選択的に阻害する作用機序を有しています。

 

コンサータの作用機序はビバンセと同様です。以下の図に作用機序をまとめてみました。

 

一覧表:投与の対象者や禁忌等について

4製品の一覧表を作成してみました。(2018年12月5日時点)

 

↓画像をクリックすると別ウィンドウで高画質用が開きます↓

 

上表を参考に各製品の違いについて気になるポイントを考察してみました(個人的意見)。

 

覚醒剤原料・中枢神経への作用

中枢神経刺激作用のある薬剤は一般的に治療効果が早く発現しますが、使用方法を誤ると依存性のリスクもありますので注意が必要です。

従って、中枢神経刺激作用のあるコンサータとビバンセはいずれも覚醒剤原料に指定されています。

 

18歳以上への投与可否

コンサータとストラテラは18歳以上にも使用可能ですが、インチュニブとビバンセは使用不可です。

 

投与禁忌患者の違い

ドパミンやノルアドレナリンはMAOという酵素によって分解されます。

ドパミン/ノルアドレナリン量に関与しているコンサータ、ストラテラではMAO阻害薬を併用することその作用が増強されてしまうことから投与禁忌です。(おそらくビバンセも禁忌に該当すると思われます)

 

代表的なMAO阻害薬にはアジレクト(一般名:ラサギリン)があります。

 

その他にもノルアドレナリン等のカテコールアミンが関与する疾患褐色細胞腫がありますので、こちらも同様にコンサータ、ストラテラは投与禁忌です。

 

褐色細胞腫については以下の記事をご覧ください。

 

全体的に投与禁忌が少ないのはインチュニブですね。

 

妊婦への投与

インチュニブは妊婦への投与が禁忌です。

コンサータとストラテラも基本は投与しない方が望ましいですが、ストラテラは有用性が上回る場合にのみ投与可能です。

 

 

実際にどの薬剤を使用すれば良いのか、使い分けについては非常に難しいです^^;

処方医の使いやすさから言えば、覚醒剤原料に該当しない非中枢神経刺激薬のストラテラかインチュニブでしょうか。

禁忌項目の少ないインチュニブは魅力的ですが、18歳以上には使用できないのが難点です。

 

<スポンサーリンク>

まとめ・あとがき

ビバンセはこんな薬

  • ノルアドレナリン/ドパミントランスポーターを阻害する
  • ノルアドレナリン/ドパミンの分泌促進作用のある中枢神経刺激薬
  • 覚醒剤原料に指定されている中枢神経刺激薬

 

2017年にはADHDの新薬であるインチュニブ錠が登場しましたが、現状、小児にしか使用できません。

類薬のコンサータ錠とストラテラカプセルは18歳以上にも使用可能です。

 

今回ご紹介したビバンセもまずは小児の適応を取得する予定ですが、今後は18歳以上等への適応拡大も期待したいと思います。

 

以上、今回はADHDとビバンセ(一般名:リスデキサンフェタミン)の作用機序、類薬との違い/比較についてご紹介しました。

参考になったらシェアいただけると嬉しいです!
   

★おススメの関連記事&広告


※新薬情報オンラインの更新情報は、facebookページtwitterにて配信しています。
  • この記事を書いた人

木元 貴祥

大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。FP資格あり。

-1.中枢神経系
-, , ,

Copyright© 新薬情報オンライン , 2018 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.