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ダフクリア(フィダキソマイシン)の作用機序と副作用【クロストリジウム・ディフィシル感染症】

   

新薬情報オンライン(@shinyaku_online)です。

2018年7月2日、厚労省は「感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品のダフクリア錠200mg(一般名:フィダキソマイシン)を承認しました。

適応菌種は「クロストリジウム・ディフィシル」で、これに起因する偽膜性大腸炎(感染性腸炎)に用いる新規作用機序の抗菌薬(大環状抗菌薬)です。

 

今回は偽膜性大腸炎とクロストリジウム・ディフィシル感染症、ダフクリア(フィダキソマイシン)の作用機序についてご紹介します。

 

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偽膜性大腸炎とは

腸内には実に600兆~1000兆個の様々な細菌がバランスよく生息していて、顕微鏡で見ると、「花畑」のように見えることから「腸内フローラ」と呼んでいます。

通常、健康なヒトの腸内フローラは、良い菌が多く、悪い菌が少ない状態が保たれています。

 

しかし、抗生物質によって正常な腸内フローラのバランスが乱れ、腸の免疫機能が低下してしまうことで大腸に炎症を引き起こすことがあります(感染性腸炎)。

偽膜性大腸炎とは、感染性腸炎のうち、大腸の壁に小さい円形の膜(偽膜)がみられる疾患で、その原因菌のほとんどはクロストリジウム・ディフィシルによるものといわれています。

このようにクロストリジウム・ディフィシルよる感染症を総称してクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)と呼んでいます。

 

症状としては、

  • お腹の張り
  • 繰り返す下痢
  • 腹痛
  • 発熱
  • 嘔吐

などがありますが、重篤な場合、脱水症状やショック状態、消化管穿孔、敗血症も引き起こすため死に至る可能性もあります。

 

クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の治療

症状が軽度な場合、原因となった抗生物質の中止が基本です。

また、重症度に応じてクロストリジウム・ディフィシル治療薬としてバンコマイシンメトロニダゾールが投与されます。

 

しかし、最近ではこれらの薬剤に抵抗を示すこともしばしばあり、新たな治療選択肢の開発が望まれていました。

また、一旦効果が得られてもその後、再発することもあります。

再発してしまった際にはジーンプラバ(一般名:ベズロトクスマブ)の使用が検討されいます。

 

クロストリジウム・ディフィシルの増殖機構(転写・翻訳)

クロストリジウム・ディフィシルが増殖する際には、自身のDNAからタンパク質を合成する必要があります。

まずDNAから転写というプロセスによってmRNAが作成されます。

その後、mRNAの情報を元に翻訳が行われ、タンパク質が合成されます。

 

転写のプロセスでは、「RNAポリメラーゼ」がDNAに結合することで転写が開始されますが、その際に必要なのが「σ(シグマ)因子」と呼ばれるサブユニットです。

RNAポリメラーゼのコア酵素にσ因子が結合することでDNAと結合できるようになり、転写が開始されます。

 

ダフクリア(一般名:フィダキソマイシン)の作用機序

ダフクリアは大環状抗菌薬に分類される薬剤です。構造としてはマクロライド系抗菌薬に似ています。

ダフクリアはRNAポリメラーゼのコア酵素と結合したσ因子を阻害することで転写の開始を阻害します。

 

その結果、クロストリジウム・ディフィシルは転写・翻訳ができなくなりますので、タンパク質合成が阻害され、死に至る、といった作用機序です。

 

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ダフクリアの特徴

これまでの抗菌薬では、原因菌だけでなく、腸内の良い菌も殺してしまうといったデメリットがありました。

しかし、ダフクリアは狭域スペクトラムであることからクロストリジウム・ディフィシル対して選択的に作用するため、バンコマイシン等に比べて腸内細菌への影響が少ないという特徴があります。

 

また、ダフクリアは腸管からはほとんど吸収されませんので、全身作用がほとんど無く、腸管内に存在しているクロストリジウム・ディフィシルに対して選択的に作用を示します。

 

エビデンス紹介(海外の第Ⅲ相試験)

根拠となった海外の臨床試験を一つご紹介します。1)

CDI患者さんを対象に、ダフクリア(1日2回、10日間投与)群とバンコマイシン(1日4回、10日間投与)群を直接比較した第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「臨床的治癒率」における非劣性で、結果は以下の通りでした(mITT例の解析)。

試験群 ダフクリア群 バンコマイシン群
臨床的治癒率* 88.2% 85.8%
非劣性が証明された
再発率 15.4% 25.3%
P=0.005
完全治癒率 74.6% 64.1%
P=0.006

*臨床的治癒:治療コースの終了後2日目時点で症状が消失し、クロストリジウム・ディフィシル感染症に対する追加治療の必要性がないこと

 

このように、ダフクリアはバンコマイシンと同程度の臨床的治癒率であることが示され、更には再発率を有意に低下させました。

また、完全治癒率はダフクリア群で有意に高いといった結果でした。

 

1)N Engl J Med. 2011 Feb 3;364(5):422-31.

 

ダフクリアの副作用

主な副作用として、嘔吐、腹痛、胃腸出血、貧血、好中球減少症などが報告されています。

 

ダフクリアの用法・用量

通常、成人にはフィダキソマイシンとして1回200mgを1日2回経口投与します。

 

ダフクリアの薬価

現時点では薬価未収載です。

 

あとがき

これまでCDIの治療薬にはバンコマイシンやメトロニダゾールしか選択肢がなく、しばしば再発することもありました。

ダフクリアは上記薬剤とは異なる作用機序を有しているため、新たな治療選択しとして期待されています。

 

海外では2011年に承認され、広く使用されていましたが、日本でもようやく登場見込みです。

 

もしダフクリアを使用して再発してしまった場合でも、ジーンプラバ(一般名:ベズロトクスマブ)が使用可能です。

 

以上、今回は偽膜性大腸炎とクロストリジウム・ディフィシル感染症、ダフクリア(フィダキソマイシン)の作用機序についてご紹介しました。

 
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