5.内分泌・骨・代謝系

ガラフォルド(ミガーラスタット)の作用機序と副作用【ファブリー病】

2022年12月23日、ファブリー病に使用するガラフォルドカプセル(ミガーラスタット)12歳以上に対する適応拡大が承認されました!

アミカス・セラピューティクス|ニュースリリース

基本情報

製品名 ガラフォルドカプセル123mg
一般名 ミガーラスタット塩酸塩
製品名の由来 α-Gal酵素の折りたたみ(fold)構造を矯正するという本剤のメカニズムに由来している。
製造販売 アミカス・セラピューティクス(株)
効能・効果 ミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異を伴うファブリー病
用法・用量 通常、16歳以上の患者成人及び12歳以上の小児にはミガーラスタットとして1回123mgを隔日経口投与する。
なお、食事の前後2時間を避けて投与すること。
収載時の薬価 123mg 1カプセル:142,662.10円

 

ガラフォルドは2018年3月23日に承認された新規作用機序を有する薬剤ですが、これまでは16歳以上の使用に限られていました。

 

木元 貴祥
今後は12歳以上に対しても使用可能となりましたね!

 

今回はファブリー病とガラフォルド(ミガーラスタット)の作用機序についてご紹介します。

 

ファブリー病とは

ファブリー病は、リソソーム(ライソゾーム)内の分解酵素の遺伝子変異・欠損により引き起こされるライソゾーム病の一種に分類される指定難病です。

 

国内患者数は315人~760人と推定されています。

 

通常、細胞内の小胞体で合成された「α-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)」と呼ばれる酵素は、細胞質内に放出された後、リソソーム内に輸送されます。

リソソームは様々な物質の分解に関与していますが、α-Gal AはGL-3やGL-2等を分解することが知られています。

 

しかし、ファブリー病ではGLA遺伝子の先天的な変異によってα-Gal Aが変異しています。

具体的には、
α-Gal Aの折りたたみ構造が変異しているため、小胞体から放出された後、すぐに分解されてしまい、リソソームまで輸送されません。

 

その結果、
本来分解されるはずのGL-3やGL-2等が分解されなくなってしまい、リソソーム内に過剰に蓄積していってしまいます。

 

ファブリー病の症状

このように蓄積したGL-3やGL-2等によって、以下のような様々な症状が発現します。

 

<小児期>

  • 四肢疼痛:手足が焼けるような強烈な痛み
  • 低汗・無汗:汗が出なくなり、体温調節ができない
  • 被角血管腫:赤紫色の皮膚炎(発疹)

 

<成人期>

  • 脳梗塞
  • 心不全
  • 腎不全

 

ファブリー病の治療

ファブリー病では「α-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)」が欠損・少なくなっているため、基本的にはα-Gal Aの補充療法が行われます。

 

α-Gal Aの補充療法に使用する薬剤には以下があり、いずれも注射薬です。

 

α-Gal Aを補充することで、GL-3等の分解が促進され、症状が緩和されると考えられます。

 

ガラフォルド(ミガーラスタット)の作用機序

ガラフォルドは特定の異常なα-Gal Aに結合して、折りたたみ構造を正常化させる働きを有しています。

折りたたみ構造が正常化することで、α-Gal Aの構造が安定し、分解されることなくリソソーム内に輸送されていきます。

 

リソソーム内に到着すると、ガラフォルドは可逆的に分離し、α-Gal AによってGL-3等の分解が促進されます。

この結果、GL-3の蓄積が解消され、症状が緩和すると考えられています。

 

このように、あるタンパク質の折りたたみ構造を正常化させる働きをもつ物質を総称して「シャペロン」と呼んでいます。

 

副作用

主な副作用として頭痛、下痢、浮動性めまい、悪心、錯感覚などが報告されています。

 

用法・用量、使用上の注意

通常、成人及び12歳以上の小児にはミガーラスタットとして1回123mgを隔日経口投与します。

なお、食事の前後2時間を避けて投与することとされています。

 

また、ガラフォルドは全てのファブリー病患者さんに効果があるわけではありません。従って、添付文書には以下の注意書きがあります。

本剤の投与開始に先立って、患者のGLA遺伝子変異のミガーラスタットに対する反応性を確認すること

 

収載時の薬価

収載時(2018年5月22日)の薬価は以下の通りです。

  • 123mg 1カプセル:142,662.10円

 

ガラフォルドは新規作用機序のため有用性加算(Ⅱ)が5%、希少疾病用医薬品のため市場性加算(Ⅰ)が10%加算されています。

しかし、製造総原価の開示度が低いために加算係数0.2を乗じて、最終的には、(5%+10%)×0.2=3%の加算とされています。

 

有用性加算となった根拠は以下の通りです。

  • 新規作用機序:リソソームへα-Gal Aの適切な輸送を促進する(薬理学的シャペロン)
  • 既存薬は注射剤であるのに対し、本剤は経口投与が可能

 

薬価の算定方法については以下の記事をご参照ください。

>>【新薬:薬価収載】13製品(2018年5月22日)

 

あとがき

ファブリー病ではこれまでα-Gal Aの補充療法しか治療薬がありませんでした。

補充療法は注射薬のみでしたので、患者さんにとっては負担となっていましたが、ガラフォルドは経口投与で治療できるといったメリットがあります。

 

治療選択肢が増えたことは朗報ではないでしょうか。

以上、今回はファブリー病とガラフォルド(ミガーラスタット)の作用機序についてご紹介しました。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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