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2018年7月2日、厚労省はタフィンラーカプセル50m、同カプセル75mg(一般名:ダブラフェニブメシル酸塩)とメキニスト錠0.5mg、同錠2mg(一般名:トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物)に「BRAF遺伝子変異を有する悪性黒色腫の術後補助療法」の適応追加を承認しました。
製薬会社(両薬剤)
- 製造販売:ノバルティス ファーマ(株)
両薬剤は既に2016年3月28日に「BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫」を効能・効果として承認されていますが、術後補助療法でも使用できるようになりました!
従って、効能効果は「BRAF遺伝子変異を有する悪性黒色腫」に統一されています。
今回は悪性黒色腫とタフィンラー(ダブラフェニブ)、メキニスト(トラメチニブ)の作用機序、そして各エビデンスについてご紹介します。
目次(クリック可)
悪性黒色腫とその治療
悪性黒色腫(メラノーマ)は皮膚がんの1つであり、ほくろのような黒色のがんができることからこのような名前が付けられています。
発生部位は足底(足のうら)が最も多く、体幹、顔面、爪が続きます。
悪性黒色腫は早期発見(StageⅠ~Ⅲの一部)できれば手術で取り除くことができ、その後は基本的に経過観察(無治療)でした。
しかし、StageⅢでBRAF遺伝子に変異がある場合、無治療では再発のリスクが高く、何かしらの術後補助療法が求められていました。
一方、発見時に進行している場合(StageⅣ)は手術の適応とならず、抗がん剤や分子標的治療薬による治療が行われます。
主に使用される薬剤は以下があります。
- BRAF遺伝子変異ありの場合:タフィンラー(ダブラフェニブ)+メキニスト(トラメチニブ)併用療法、ゼルボラフ(ベムラフェニブ)
- BRAF遺伝子変異無しの場合:免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ、ヤーボイ、キイトルーダ)の単剤投与
2018年には、免疫チェックポイント阻害薬同士の併用療法も承認されています!
-
オプジーボとヤーボイ併用療法の作用機序【悪性黒色腫/腎/大腸/肺がん】
続きを見る
今回ご紹介するタフィンラー+メキニストは、既にBRAF変異のあるStageⅣに対して使用可能でしたが、新たにBRAF変異のあるStageⅢの術後補助療法としても使用可能となります!
BRAF遺伝子変異陽性の悪性黒色腫
がん細胞が増殖するメカニズムは様々な仕組みが存在していますが、がん細胞はしばしば「EGFR」と呼ばれるタンパク質を発現していることあります。
因子であるEGFが、がん細胞のEGFRに結合すると、その刺激が細胞内を伝達(シグナル伝達)し、核内に刺激が届けられます。
このシグナル伝達の中継点として「BRAF(“ビーラフ”と読みます)」や「MEK(“メック”と読みます)」が存在することが知られており、BRAFに伝わったシグナルはMEKに届けられ、核内まで届けられます。
核内まで刺激が伝達すると、増殖・活性化が促進され、がん細胞の増殖に繋がります。
ただし、因子であるEGFが存在しない場合、刺激が核に伝達しないため、がん細胞は増殖しません。
悪性黒色腫の約20~30%の患者さんではBRAFの遺伝子に変異のあることが知られています。
これを「BRAF遺伝子変異陽性の悪性黒色腫」と呼んでいます。
BRAF遺伝子変異陽性の場合、因子であるEGFが存在しないにも関わらず、恒常的にBRAFから下流のシグナル伝達が核へと伝達されています。そのため、MEKも間接的に活性化していると考えられます。
このようにBRAF遺伝子に変異があると、常にがん細胞の増殖が活性化されています。
この変異のある患者さんではがん細胞の増殖速度や転移が促進されており、更には薬剤が効きにくいことから予後不良とされていました。
タフィンラーとメキニストの作用機序
タフィンラーは、BRAF遺伝子変異のあるBRAFを特異的に阻害する薬剤です!
変異したBRAFを阻害することでシグナル伝達を阻害させ、がん細胞の増殖を抑制するといった作用機序を有しています。
また、間接的にMEKも活性化しているため、MEKを特異的に阻害するメキニスト(一般名:トラメチニブ)を併用して用いることでシグナル伝達をより強固に阻害することが可能となります。
このように「タフィンラー」と「メキニスト」は、BRAF遺伝子変異の患者さんに対して原則併用して使用されます。
エビデンス紹介(進行・再発の場合:COMBI-V試験)
BRAF遺伝子変異のある進行・再発の悪性黒色腫に対して、ゼルボラフ(一般名:ベムラフェニブ)とタフィンラー/メキニストを直接比較した第Ⅲ相臨床試験(COMBI-V試験)をご紹介します。1)
本試験の主要評価項目は「全生存期間」でした。
臨床試験名 | COMBI-V試験1) | |
試験群 | ゼルボラフ | タフィンラー/ メキニスト |
PFS中央値※ | 7.3か月 | 11.4か月 |
HR=0.56, P<0.001 | ||
全生存期間中央値 | 17.2か月 | 未到達 |
HR= 0.69, P=0.005 | ||
奏効率† | 51% | 64% |
※PFS(無増悪生存期間):薬を投与してから、がんが大きく(増大)するまでの期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合
ゼルボラフ(一般名:ベムラフェニブ)と比較してタフィンラー/メキニストの方が治療効果が高いことが示されています。
エビデンス紹介(術後補助療法の場合:COMBI-AD試験)
BRAF遺伝子変異のあるStageⅢの悪性黒色腫の手術後に、プラセボ投与とタフィンラー/メキニストを直接比較した第Ⅲ相臨床試験(COMBI-AD試験)をご紹介します。2)
プラセボ、タフィンラー/メキニストの治療期間は12か月(1年)間です。
本試験の主要評価項目は「無再発生存期間(RFS)」でした。
臨床試験名 | COMBI-AD試験2) | |
試験群 | プラセボ | タフィンラー/ メキニスト |
3年時点のRFS率* | 39% | 58% |
HR=0.47, P<0.001 | ||
3年時点の生存率 | 77% | 86% |
HR=0.57, P=0.0006 |
*3年RFS(無再発生存期間)率:3年時点で再発せずに生存されている割合
プラセボと比較してタフィンラー/メキニスト方が再発率を抑制できることが示されています。
類薬とあとがき
タフィンラーカプセルは、1日2回の投与ですが、メキニスト錠は1日1回の投与のため、飲み忘れ等には十分注意する必要がありそうです。
悪性黒色腫に対する治療は、ここ最近で多くの新規薬剤(オプジーボ、ヤーボイ、ゼルボラフ)が登場してきました。
進行・再発では同様の作用機序を有する類薬のビラフトビ/メクトビ併用療法が登場しています。使い分けについても考察していますので、是非ご覧ください。
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ビラフトビ/メクトビ併用療法の作用機序【悪性黒色腫・大腸がん】
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術後補助療法については、オプジーボ(一般名:ニボルマブ)やキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)も登場しているため、今後はこれらの薬剤との使い分けも気になるところです。
以上、本日はBRAF遺伝子変異の悪性黒色腫に対する2つの薬剤をまとめてご紹介しました☆
引用文献・資料等
- COMBI-V試験:N Engl J Med. 2015 Jan 1;372(1):30-9.
- COMBI-AD試験:N Engl J Med. 2017 Nov 9;377(19):1813-1823.
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