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ビラフトビ/メクトビ併用療法の作用機序:タフィンラー/メキニストとの比較【悪性黒色腫】

更新日:

厚労省の薬食審医薬品第二部会は2018年11月29日、「BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫」を効能・効果とするビラフトビカプセル50mg(一般名:エンコラフェニブ)メクトビ錠15mg(一般名:ビニメチニブ)の承認が了承されました。

現時点では未承認のためご注意ください。

製薬会社

製造販売元(仮):小野薬品工業(株)

 

ビラフトビはBRAF阻害薬メクトビはMEK阻害薬に分類され、基本的には併用して用います。

今回は悪性黒色腫とビラフトビとメクトビの作用機序、そして類薬のタフィンラー/メキニストとの比較・使い分けについて考えてみたいと思います。

 

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悪性黒色腫とは

悪性黒色腫(メラノーマ)は皮膚がんの1つであり、ほくろのような黒色のがんができることからこのような名前が付けられています。

発生部位は足底(足のうら)が最も多く、体幹、顔面、爪が続きます。

 

悪性黒色腫は早期発見できれば手術で取り除くことができますが、発見時に他臓器に転移のあるような進行した場合は手術の適応とならず、抗がん剤や分子標的治療薬による治療が行われます。

主に使用される薬剤は以下があります。

 

今回ご初回するビラフトビとメクトビはBRAF遺伝子変異あり(陽性)の場合に使用できる薬剤です。

 

BRAF遺伝子変異陽性の悪性黒色腫

がん細胞が増殖するメカニズムは様々な仕組みが存在していますが、がん細胞はしばしば「EGFR」と呼ばれるタンパク質を発現していることあります。

因子であるEGFが、がん細胞のEGFRに結合すると、その刺激が細胞内を伝達(シグナル伝達)し、核内に刺激が届けられます。

 

このシグナル伝達の中継点として「BRAF(“ビーラフ”と読みます)」や「MEK(“メック”と読みます)」が存在することが知られており、BRAFに伝わったシグナルはMEKに届けられ、核内まで届けられます。

 

核内まで刺激が伝達すると、増殖・活性化が促進され、がん細胞の増殖に繋がります。

ただし、因子であるEGFが存在しない場合、刺激が核に伝達しないため、がん細胞は増殖しません

 

悪性黒色腫の約20~30%の患者さんではBRAFの遺伝子に変異のあることが知られています。

これを「BRAF遺伝子変異陽性の悪性黒色腫」と呼んでいます。

BRAF遺伝子変異陽性の場合、因子であるEGFが存在しないにも関わらず、恒常的にBRAFから下流のシグナル伝達が核へと伝達されています。そのため、MEKも間接的に活性化していると考えられます。

このようにBRAF遺伝子に変異があると、常にがん細胞の増殖が活性化されています。

 

この変異のある患者さんではがん細胞の増殖速度や転移が促進されており、更には薬剤が効きにくいことから予後不良とされていました。

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ビラフトビ(エンコラフェニブ)とメクトビ(ビニメチニブ)の作用機序

ビラフトビは、BRAF遺伝子変異のあるBRAFを特異的に阻害する薬剤です!

変異したBRAFを阻害することでシグナル伝達を阻害させ、がん細胞の増殖を抑制するといった作用機序を有しています。

 

また、間接的にMEKも活性化しているため、MEKを特異的に阻害するメクトビを併用して用いることでシグナル伝達をより強固に阻害することが可能となります。

 

このように「ビラフトビ」と「メクトビ」は、BRAF遺伝子変異の患者さんに対して原則併用して使用されます。

 

ビラフトビとメクトビの用法・用量

両剤は併用して用います。

  • ビラフトビ:1回450mg(9錠!)を1日1回経口投与
  • メクトビ:1回45mg(3錠)を1日2回経口投与

 

ビラフトビは50mg製剤のため、1回に9錠の服用です・・・さすがにちょっと多い気がしますね^^;

高用量製剤の開発が進むことを期待します。

 

ビラフトビとメクトビの副作用

COLUMBUS試験1)では、悪心・嘔吐、下痢、γ-GTP増加、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、疲労、関節痛、頭痛、などが報告されています。

 

その他、BRAF阻害薬とMEK阻害薬の併用に関して特に注意すべき副作用として、発疹、発熱、網膜色素上皮剥離、光線過敏症などが報告されています。

 

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類薬(タフィンラー/メキニスト)との違い/使い分け

同様の作用機序(BRAF阻害/MEK阻害)を有する併用治療は以下があります。

  • タフィンラー(一般名:ダブラフェニブ):BRAF阻害薬
  • メキニスト(一般名:トラメチニブ):MEK阻害薬

タフィンラー/メキニストもBRAF遺伝子変異の悪性黒色腫に対して併用して用いられます。

 

服用方法・回数は、以下の通りです。1日1回と1日2回服用する薬剤があるのは共通していますね。

治療法タフィンラー/メキニスト
併用療法
ビラフトブ/メクトビ
併用療法
薬剤(規格)タフィンラー
カプセル
(50mg/75mg)
メキニスト錠
(0.5mg/2mg)
ビラフトビ
カプセル
(50mg)
メクトビ錠
(15mg)
作用機序BRAF阻害薬MEK阻害薬BRAF阻害薬MEK阻害薬
併用時の通常用法
(進行・再発悪性黒色腫)
1回150mgを
1日2回
1回2mgを
1日1回
1回450mgを
1日1回
1回45mgを
1日2回
効能・効果(一部略)進行・再発悪性黒色腫
悪性黒色腫の術後補助療法
進行・再発非小細胞肺がん
進行・再発悪性黒色腫

 

効能・効果的にはタフィンラー/メキニストの方が幅広いですし、服用錠剤(カプセル)数もタフィンラー/メキニストの方が少ないですね。

 

ビラフトビ/メクトビとタフィンラー/メキニストは共に海外の第Ⅲ相臨床試験1-3)において、ゼルボラフ(一般名:ベムラフェニブ)と比較して治療効果が優れていることが示されています。

しかし、ビラフトビ/メクトビとタフィンラー/メキニストを直接比較した臨床試験はありません

 

参考までに両臨床試験を見て使い分けについて検討したいと思います。

臨床試験名COLUMBUS試験1)2)COMBI-V試験3)
試験群ゼルボラフビラフトビ/
メクトビ
ゼルボラフタフィンラー/
メキニスト
PFS中央値7.3か月14.9か月7.3か月11.4か月
HR=0.54, p=0.0001HR=0.56, p<0.001
全生存期間中央値16.9か月33.6か月17.2か月未到達
HR=0.61, p<0.0001HR=0.69, p=0.005
奏効率40%63%51%64%

PFS(無増悪生存期間):薬を投与してから、がんが大きく(増大)するまでの期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合

 

上記を比較すると、全体的には
ビラフトビ/メクトビとタフィンラー/メキニストの治療効果にあまり差が無いように見受けられます。

 

もう少し詳しく見ていくと、PFSでは両試験のサブグループ解析において興味深い点がありました。

BRAF変異にはV600E変異V600K変異がありますが、
V600E変異ではタフィンラー/メキニスト(HR=0.56)が、V600K変異ではビラフトビ/メクトビ(HR=0.27)がゼルボラフと比較してより良好な傾向でした。

 

その他、進行具合(Stage)についても両治療で違いがありました。

StageⅢ/ⅣM1a/ⅣM1bではタフィンラー/メキニスト(HR=0.39)が、StageⅣM1cではビラフトビ/メクトビ(HR=0.48)がゼルボラフと比較してより良好な傾向でした。

即ち、より進行している患者さんではビラフトビ/メクトビの方が治療効果が高い可能性があります。

 

使い分けのポイント

以上より私の考える使い分けのポイントとしては、

  • BRAF遺伝子変異の違い
  • Stage(進行具合)の違い

でしょうか。

 

ただ、現状では効能・効果服用錠剤(カプセル)数を考えるとタフィンラー/メキニストで十分なのでは?と個人的に感じています。

 

あくまで個人的な意見であり、直接比較試験がない限り、両治療法の使い分けは明確ではないことにご注意ください。

 

1)COLUMBUS試験(主解析):Lancet Oncol. 2018 May;19(5):603-615.
2)COLUMBUS試験(追加解析):Lancet Oncol 2018
3)COMBI-V試験:N Engl J Med. 2015 Jan 1;372(1):30-9.

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まとめ・あとがき

ビラフトビ/メクトビはこんな薬

  • ビラフトビはBRAFを特異的に阻害する
  • メクトビはMEKを特異的に阻害する
  • 原則併用して用いる

 

BRAF遺伝子変異は悪性黒色腫だけでなく、様々ながんでも認められています。

今後、大腸がんのBRAF遺伝子変異に対してもビラフトビ/メクトビの開発が進行しているため、期待したいと思います。

 

悪性黒色腫には近年様々な治療が登場してきています。

2018年には免疫チェックポイント阻害薬同士の併用療法も登場しました。

 

今後は新規の薬剤との使い分けや比較がより検討されることを期待します。

以上、今回は悪性黒色腫とビラフトビ(エンコラフェニブ)/メクトビ(ビニメチニブ)の作用機序、そして類薬であるタフィンラー/メキニストとの使い分けについて考察してみました。

参考になったらシェアいただけると嬉しいです!
   

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。FP資格あり。

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