6.腎・泌尿器系 11.血液・造血器系

エベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序・特徴【CKD・腎性貧血】

更新日:

おススメ記事|薬剤師の稼げる副業3選

2019年9月20日、「透析施行中の腎性貧血」を効能・効果とするエベレンゾ(ロキサデュスタット)が承認されました!

アステラス製薬|ニュースリリース

基本情報

製品名エベレンゾ錠20mg/50mg/100mg
一般名ロキサデュスタット
製品名の由来EVRENZO = Everest(エベレスト)+enzyme inhibitor(酵素阻害薬)
製造販売アステラス製薬(株)
効能・効果透析施行中の腎性貧血
用法・用量週3回経口投与。
詳細は記事内参照
収載時の薬価20mg 1錠:387.40円
50mg 1錠:819.20円
100mg 1錠:1,443.50円(1日薬価:465.80円)

 

エベレンゾは初のHIFヒフ活性化薬(HIF-PH阻害薬)に分類されていて、エリスロポエチン(EPO)製剤であるネスプ(一般名:ダルベポエチン アルファ)等に次ぐ製品として期待されています。

 

木元 貴祥
ですので「ポストEPO製剤」、「ポストネスプ」とも呼ばれています!

 

また、HIFは2019年のノーベル医学生理学賞の受賞(「細胞の低酸素応答の仕組みの解明」が授賞理由)にも繋がっていますね。すごい!

 

今回は慢性腎臓病(CKD)と腎性貧血、そしてエベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序についてご紹介します。

 

慢性腎臓病(CKD)とは

慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)は、腎障害が慢性的に持続する疾患の全体を意味するものです。

以下の場合、CKDと確定診断されます。

  • 尿異常(蛋白尿)、画像診断・血液所見・病理所見等で腎障害の存在が明らか
  • GFRが60(mL/分/1.73㎡)未満

※GFR:「糸球体ろ過量」のことで、腎機能の指標です。

 

CKDのリスク因子としては、以下が知られています。

 

また、CKDは初期にはほとんど無症状のため徐々に腎機能が低下していきます。

腎臓は老廃物の排泄骨代謝造血器機能調節といった様々な役割を担っています。

 

そのためCKDによって腎機能低下が進行してしまうと、

といった様々な症状が現れます。

 

木元 貴祥
従って、早期からリスク因子である原疾患の治療、症状に対する対処療法と共に、生活習慣改善が行われます。

 

腎性貧血とは

CKDの症状の一つである腎性貧血について解説します。

体の中で“はたらく細胞”の一つに「赤血球」が知られており、主に酸素の運搬二酸化炭素の回収を担っている細胞です。

 

赤血球は造血幹細胞⇒赤芽球を経て産生されますが、そこに関与する物質として「エリスロポエチン(EPO)」があります。

EPOは腎臓で産生され、造血幹細胞の「エリスロポエチン受容体」に作用することで赤芽球への成熟・分化を促進させます。

エリスロポエチンの作用

 

また、赤血球の内部には酸素運搬に関与するヘモグロビンが存在していますが、これはを中心に含んだタンパク質です。

 

鉄が食事等で体内に吸収されると、一部は血中でトランスフェリンと呼ばれるタンパク質と結合して存在します(血清鉄)。

赤血球の成熟過程では、血中のトランスフェリン(血清鉄)を取り込むことでヘモグロビンを構成していきます。

 

しかし、CKDでは腎臓の機能が低下しているためEPOの産生も低下しています。

そのため造血幹細胞から赤芽球への分化が低下し、結果的に赤血球の数が減少してしまい、貧血の症状が現れます。

腎不全(CKD)によるEPO低下

 

即ち、腎臓が原因で貧血を生じますので「腎性貧血」と呼んでいます。

 

腎性貧血の治療

腎性貧血は大まかに、透析の必要性に応じて

  • 保存期:透析必要無し
  • 透析期:透析の必要あり

があります。

 

いずれの場合にもESA(赤血球造血刺激因子)製剤であるエリスロポエチン(EPO)製剤の

等が主流で使用されていました。

ネスプ(ダルベポエチン)の作用機序とバイオセイム・ABS【CKD・腎性貧血】

続きを見る

 

今回ご紹介するエベレンゾは「透析期」のみにまずは使用可能となる見込みです。従って、保存期には使用できないことに注意が必要ですね。

 

木元 貴祥
ではここからエベレンゾが関与するHIFについてご紹介します☆

 

HIF(低酸素誘導因子)とは

アンデス高地に住んでいる人々は、標高が高いため酸素濃度の低い生活環境で暮らしていますが、この地方の健常成人男性のヘモグロビン値は19.2g/dLと、我々日本人(成人男性で15g/dL前後)と比較しても高値であることが知られています1)

これは、酸素がより少ない状況下でも、全身の細胞に何とか酸素を行き渡らせようとするメカニズムが働いているためです。

 

このメカニズムを担っているのがHIFヒフです。

HIF(低酸素誘導因子:hypoxia inducible factor)は、細胞の酸素供給が低下した場合(低酸素状態)に誘導・活性化されるといった特徴を有したタンパク質(転写因子)です。

 

HIFにはαとβがあり、通常の酸素状態でも産生されています。

しかし、通常の酸素状態ではすぐに「HIF-PH(HIFプロリン水酸化酵素:HIF-Prolyl Hydroxylase)」によって速やかに分解されてしまうため、活性化することはありません。

 

一方、高地で酸素濃度の薄い場所や、出血などで細胞が低酸素状態になった場合、HIF-PFの働きが抑制されるため、HIFは分解されなくなります。

その後、HIF-αはHIF-βと複合体を形成してDNAの転写を活性化させます。

 

HIFによって転写が活性化されると、

  • エリスロポエチン(EPO)の産生促進
  • 鉄の吸収促進
  • 赤血球へのトランスフェリンの取り込み促進

によって赤血球の分化・成熟が促進されます。

低酸素状態とHIF

 

このように低酸素状態であっても生体の恒常性を維持(ホメオスタシス)するメカニズムの一つがHIFですね。

 

エベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序・特徴:HIF活性化

エベレンゾは初のHIF活性化薬(HIF-PH阻害薬)に分類されている薬剤です。

HIF-PHを選択的に阻害することでHIFの活性を促します。

 

その結果、EPOの産生促進、鉄の吸収促進、トランスフェリンの取り込み促進等によって赤血球の成熟・分化が促進されると考えられます。

エベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序:HIF活性化薬

 

このように通常の酸素状態であってもHIFが活性化することで赤血球の数が回復する結果、貧血の症状軽減に繋がります。

 

エビデンス紹介:1517-CL-0307試験

日本で実施された透析期のCKD患者さんを対象とした4つの第Ⅲ相試験を元に承認申請が行われていますが、代表の試験(1517-CL-0307試験)をご紹介します。2)

 

血液透析施行中の腎性貧血患者さんを対象に、ESA(赤血球造血刺激因子)製剤からエベレンゾに切り替える群と、そのままESAとしてネスプを使用する群を比較する国内第Ⅲ相臨床試験です。

本試験の主要評価項目は「投与18週から24週におけるベースラインからの平均Hb値変化量」とされ、結果は以下の通りでした。

試験群エベレンゾ
切替え群
ネスプ群
投与18週から24週における
ベースラインからの平均Hb値変化量
-0.04g/dL-0.03g/dL
非劣性が証明

 

その他の臨床試験では、ESA製剤未使用の患者さんに対するエベレンゾの効果も確認されていますね。

 

副作用

重大な副作用として、

  • 血栓塞栓症(3.4%)

が挙げられていますので特に注意が必要です。添付文書の警告欄にも掲載されています。

 

HIFはVEGF(血管内皮細胞増殖因子)の活性化にも関与しているため、眼関係の副作用(例:黄斑変性や網膜出血)が気になるところでしたが、審査報告書3)には以下の記載がありました。

現時点では本薬で明らかに網膜出血リスクが増加する傾向は認められていないと考える。

ただし、臨床試験では網膜出血を発現するリスクの高い患者(未治療の増殖糖尿病網膜症、黄斑浮腫、滲出性加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞症等を合併する患者)を除外していたこと、また、本薬は HIF 経路の活性化を介して血管新生を亢進する可能性が考えられることから、これらの網膜出血を発現するリスクの高い患者に対しては特に注意して投与するよう添付文書で注意喚起するとともに、網膜出血の発現状況は製造販売後も引き続き情報収集し検討する必要がある。

 

木元 貴祥
添付文書2)にも特に眼に関する注意喚起はなさそうですね。ただ、今後の長期の安全性も見ていく必要がありそうです。

 

用法・用量

ESA(赤血球造血刺激因子)製剤の使用歴によって異なります。

 

<ESA製剤未使用の場合>

通常、成人には、ロキサデユスタットとして1回50mgを開始用量とし、週3回経口投与します。

 

<ESA製剤から切り替える場合>

通常、成人には、ロキサデユスタットとして1回70mg又は100mgを開始用量とし、週3回経口投与します。

 

いずれの場合も以後は患者さんの状態に応じて投与量を適宜増減が可能ですが、最高用量は1回3.0mg/kgを超えないこととされています。

 

木元 貴祥
週3回投与なので・・・少し煩雑ですね。月曜日・水曜日・金曜日に服用、という感じでしょうか。

 

収載時の薬価

薬価収載時(2019年11月19日)の薬価は以下の通りです。

 

  • エベレンゾ錠20mg 1錠:387.40円
  • エベレンゾ錠50mg 1錠:819.20円
  • エベレンゾ錠100mg 1錠:1,443.50円(1日薬価:465.80円) 

 

ちなみに透析時にネスプ等のエリスロポエチン製剤(ESA)を使用する場合、その薬剤費は透析の技術料に包括されています。

エベレンゾも透析時に使用しますが、現状のままでは薬剤費は技術料に包括されません(出来高算定になってしまう)。

 

そのため、2020年3月までの経過措置として、「エベレンゾをESA製剤と同様とみなし、人工腎臓への技術料へ包括されるものとして扱うこと」が了承されました!

保医発1118第2号|「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」の一部改正について

 

収載時の算定根拠については以下の記事で解説しています。

【新薬:薬価収載】14製品と市場拡大再算定(2019年11月19日)

続きを見る

 

類薬:バダデュスタット/ダプロデュスタット/エナロデュスタット

同様の作用機序を有する薬剤も既に申請されていますね。

 

  • バダデュスタット:「透析期」と「保存期」で2019年7月申請

田辺三菱製薬|ニュースリリース

 

  • ダプロデュスタット:「透析期」と「保存期」で2019年8月申請

グラクソ・スミスクライン|ニュースリリース

 

  • エナロデュスタット:「透析期」と「保存期」で2019年11月申請

日本たばこ産業/鳥居薬品|ニュースリリース

 

エベレンゾ(ロキサデュスタット)はまずは透析期のみですが、上記3製品は保存期にも申請をしていますので、十分巻き返しができるのではないでしょうか。

 

木元 貴祥
経口剤のメリットが活きてくるのは保存期だと思います。透析期では透析回路からESA(赤血球造血刺激因子)製剤の注射投与が可能ですのであまり経口剤の簡便さが活きてきません。

 

まとめ・あとがき

エベレンゾはこんな薬

  • 初のHIF活性化薬(HIF-PH阻害薬)
  • HIFの量が増加することでEPO産生促進、鉄の吸収や取り込み促進を促す
  • 経口投与で治療が可能
  • 透析期の腎性貧血に使用する

 

これまで腎性貧血に対しては、注射のエリスロポエチン(EPO)製剤である

等が主流で使用されていました。

ネスプ(ダルベポエチン)の作用機序とバイオセイム・ABS【CKD・腎性貧血】

続きを見る

 

エベレンゾは経口投与可能なHIF活性化薬(HIF-PH阻害薬)といった新規作用機序を有していることから、利便性の向上やEPO製剤で効果不十分だった患者さん等に対して期待されています。

ただし、透析期にしか使用できないため、注意が必要です。現在、保存期に対しても臨床試験が進行中ですので、今後の適応拡大に期待したいと思います。

 

木元 貴祥
現在、様々なHIF活性化薬の開発が進行中ですので、腎性貧血以外の疾患に対しても期待されるところですね。

 

以上、今回はCKDと腎性貧血、そしてエベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序についてご紹介しました!

 

引用文献・資料等

  1. Am J Phys Anthropol. 1998 Jul;106(3):385-400.
  2. エベレンゾ錠 添付文書
  3. エベレンゾ錠 審査報告書

時給5千円・年収700万円以上!

看護師限定!看護専門学校の予備校講師を募集中【副業も可】

続きを見る

失敗しない薬剤師の転職とは?

数多く存在する薬剤師専門の転職エージェントサイト

どこに登録したらいいのか悩むことも少なくありません。そんな転職をご検討の薬剤師さんに是非見ていただきたい記事を公開しました。

  • 新薬情報オンラインの薬剤師2名が実際に利用・取材!
  • 各サイトの特徴等を一覧表で分かりやすく掲載!
  • 絶対にハズレのない厳選の3サイトを解説!

上手に活用してあなたの希望・条件に沿った【失敗しない転職】を実現していただけると嬉しいです!

薬剤師の転職サイト3選|評判・求人特徴とエージェントの質を比較

続きを見る

★関連記事&広告


  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

プロフィール・運営者詳細
お問い合わせ・仕事の依頼

Twitter(フォロワー2,500人超)とFacebook(フォロワー15,000人超)でも配信中!

-6.腎・泌尿器系, 11.血液・造血器系
-, , , ,

Copyright© 新薬情報オンライン , 2019 All Rights Reserved.