11.血液・造血器系 12.悪性腫瘍

ボシュリフ(ボスチニブ)の作用機序・副作用【CML】

投稿日:

2019年7月、慢性骨髄性白血病(CML)治療薬のボシュリフ(ボスチニブ)初回治療から使用可能とする承認申請が行われました。

現時点では初回治療は未承認のためご注意ください(既治療のみ)。

ファイザー|申請のニュースリリース

基本情報

製品名ボシュリフ錠100mg
一般名ボスチニブ水和物
製品名の由来Bosutinib + Life = Bosulif = ボシュリフ
製造販売ファイザー(株)
効能・効果前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病
※現時点で初回治療は未承認
用法・用量通常、成人にはボスチニブとして1日1回500 mgを食後経口投与する。
なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回600 mgまで増量できる。

 

木元 貴祥
ボシュリフは2014年に慢性骨髄性白血病の二次・三次治療薬として承認・発売されました。

 

今回の申請によって、承認されれば一次治療(初回治療)から使用可能となりますので、期待したいと思います!

 

本記事では慢性骨髄性白血病とボシュリフの作用機序について解説しています。

 


慢性骨髄性白血病とは

白血病は「血液のがん」です。

血液細胞には、白血球(好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球、リンパ球等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気を白血病と総称しています。

 

木元 貴祥
本当は細かく分類すると100種類以上(WHO分類)あるのですが・・・割愛します。。

 

血液細胞の元となる細胞として造血幹細胞が知られていますが、この造血幹細胞に異常が発生(腫瘍化)し、「好中球」が異常に増殖する疾患を慢性骨髄性白血病(CML:Chronic Myelogenous Leukemia)と呼んでいます。

便宜的に、腫瘍化した造血幹細胞を以降、「白血病細胞」と呼びます。

 

初期の自覚症状はほとんどなく、非常にゆっくりと進行していきます。そのため健康診断などで白血球数の増加を指摘され、偶然見つかる場合が半数以上を占めると言われています。1)

 

しかし、発見が遅れたり、治療が遅れたりして進行してしまうと、

  • 倦怠感・無力感
  • 発熱・寝汗
  • 体重減少
  • 脾臓の増大(腹部膨満感)
  • 骨痛

などの自覚症状が発現し、その後、致死的な転帰を辿ってしまいます。

 

木元 貴祥
CMLは現在では早期発見・早期治療を行えば非常に予後良好ですので、早めの対処が重要です!

 

原因:フィラデルフィア(Ph)染色体

CMLの白血病細胞の細胞内には、通常の細胞には存在しない“フィラデルフィア(Ph)染色体”が存在しています。

 

これは何らかの原因で9番染色体と22番染色体の相互転座が起こることで生じますが、その際のPh染色体上にはBCRビーシーアール遺伝子とABLエイブル遺伝子が融合したBCR-ABL遺伝子が新たに作られています。

 

BCR-ABL遺伝子から合成されるBCR-ABLチロシンキナーゼにATP(体内のエネルギーの元)が結合することで活性化し、白血病細胞の増殖活性が促されるというメカニズムですね。

BCR-ABL遺伝子(BCR-ABLチロシンキナーゼ)とCMLの白血病細胞の増殖

 

治療:TKIが中心

BCR-ABLチロシンキナーゼがCMLの白血病細胞を増殖させている原因ですので、これを阻害するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が治療の中心です。

 

初回治療として使用可能なTKIには以下の3種類があります。2)

 

使い分けは明確ではありませんが、治療効果は第一世代のグリベックよりも第二世代の方が高い一方で、心血管系の副作用の発現が高いとされています。2)

 

木元 貴祥
患者さんの年齢・リスク・希望等を考慮されて使い分けされている現状ですね。

 

上記、TKIに耐性・抵抗性を示した場合、

等のTKIが二次治療・三次治療で使用されます。

アイクルシグはT315I変異にのみ使用可能

 

今回ご紹介するボシュリフは二次・三次治療として使用可能でしたが、今後は初回治療への適応拡大が期待されていますね!

 

ボシュリフ(ボスチニブ)の作用機序

ボシュリフはCMLの白血病細胞で発現しているBCR-ABLチロシンキナーゼを特異的に阻害する薬剤です!

 

また、BCR-ABLチロシンキナーゼの下流にあるSrcチロシンキナーゼの阻害作用もあると言われています。

ボシュリフ(ボスチニブ)の作用機序:BCR-ABLチロシンキナーゼとSrcチロシンキナーゼの阻害

 

BCR-ABLチロシンキナーゼとSrcチロシンキナーゼの働きが抑制されることで白血病細胞の増殖抑制効果が得られると考えられますね!

 

エビデンス紹介:初回治療(BFORE試験)

初回治療の根拠となった臨床試験の一つであるBFORE試験をご紹介します。3)

 

本試験はCML患者さんの初回治療としてボシュリフとグリベックを直接比較する国際共同第Ⅲ相臨床試験です。

主要評価項目は「12か月時点のMMR率*」とされ、結果は以下の通りでした。

試験群ボシュリフグリベック
12か月時点のMMR率*47.2%36.9%
p=0.02
12か月時点のCCyR率77.2%66.4%
p=0.0075
Grade3以上の副作用
・下痢
・ALT上昇
・AST上昇
7.8%
19.0%
9.7%
0.8%
1.5%
1.9%

*MMR(Major Molecular Response:分子遺伝学的大奏効):BCR-ABL遺伝子の検出レベルが0.1%以下

†CCyR(Complete Cytogenetic Response:細胞遺伝学的完全奏効):骨髄内のPh染色体が0%

 

木元 貴祥
第一世代のグリベックと比較して有意にMMRやCCyRが高いことが示されていますね。

 

ただし、下痢や肝機能(AST/ALT上昇)には注意が必要そうです。

 

副作用

主な副作用として、下痢(93.7%)、発疹(47.6%)、ALT(GPT)上昇(38.1%)等が報告されています(国内の二次・三次治療を対象とした全Gradeの副作用)。4)

 

また、重大な副作用4)として、

  • 肝炎(頻度不明)、肝機能障害(60.3%)
  • 重度の下痢(12.7%)
  • 骨髄抑制(57.1%)
  • 体液貯留(9.5%)
  • ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
  • 心障害(6.3%)
  • 感染症(36.5%)
  • 出血(15.9%)
  • 膵炎(3.2%)
  • 腎不全(頻度不明)
  • 肺高血圧症(頻度不明)
  • 腫瘍崩壊症候群(頻度不明)
  • 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(頻度不明)、多形紅斑(頻度不明)

が挙げられていますので特に注意が必要です。

 

用法・用量

通常、成人にはボスチニブとして1日1回500mg(5錠)を食後に経口投与します。

なお、患者さんの状態により適宜増減可能で、1日1回600mg(6錠)まで増量できます。

 

木元 貴祥
初回治療でも二次・三次治療でも用法・用量は同じだと思われます。

 

まとめ・あとがき

ボシュリフはこんな薬

  • BCR-ABLチロシンキナーゼとSrcチロシンキナーゼを阻害し、白血病細胞の増殖を抑制する
  • CMLの初回治療の適応拡大が期待されている

 

慢性骨髄性白血病の治療はグリベックに代表されるTKIの登場で飛躍的に改善しました。グリベックが効かなくなった場合にも第二/第三世代のTKIによって患者さんの予後は延長してきています。

 

ボシュリフが初回治療で承認されれば、初回の選択肢は4つに増えますので患者さんにとっては朗報ではないでしょうか。

 

木元 貴祥
ただし、使い分けは明確ではありませんので今後の検討課題かもしれませんね。

 

以上、今回は慢性骨髄性白血病(CML)とボシュリフの作用機序・エビデンスについて解説しました!

 

参考資料・文献等

  1. がん情報サービス|慢性骨髄性白血病
  2. 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版
  3. BFORE試験:J Clin Oncol. 2018 Jan 20;36(3):231-237.
  4. ボシュリフ錠 添付文書

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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