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イミフィンジ(デュルバルマブ)の作用機序と副作用【肺がん】

切除不能な局所進行の非小細胞肺がんにおける根治的化学放射線療法後の維持療法」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品のイミフィンジ点滴静注120mg、同500mg(一般名:デュルバルマブ(遺伝子組換え))2018年7月2日に承認されました。

製薬会社

  • 製造販売元:アストラゼネカ(株)

 

イミフィンジは抗PD-L1抗体で免疫チェックポイント阻害薬に分類されています。

また、イミフィンジはStageⅢの非小細胞肺がんに使用できる初の免疫チェックポイント阻害薬です。

StageⅢの非小細胞肺がんの治療は20~30年程、大きな進歩はありませんでした。

 

今回は非小細胞肺がんとイミフィンジ(デュルバルマブ)の作用機序についてご紹介します。

 

非小細胞肺がんと治療について

肺がんは性質や薬の効き方によって“小細胞肺がん”と“非小細胞肺がん”に分類されています。

非小細胞肺がんで発見時に他の臓器に転移がある場合(StageⅣ)は化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

 

一方、早期に発見できた場合(StageⅠ~Ⅲ)手術の適応になります。

しかしながら、StageⅢの一部の患者さんでは手術ができない(切除不能)ことがしばしばあり、その場合は白金製剤(シスプラチンやカルボプラチン)を中心とする抗がん剤と放射線治療を併用した治療が行われます。

上記の抗がん剤と放射線治療の併用療法は、通常1~2カ月間行い、その後は無治療で経過観察となります。

しかし経過観察中に多くの患者さんは、がんの進行が認められ、他臓器に転移を引き起こしてしまいます。

 

今回ご紹介するイミフィンジは本来経過観察を行う期間に投与することで、がんの進行を抑えることが示されています。

 

がんと免疫チェックポイント

通常、がんができると生体内の免疫反応が活性化され、がん細胞を死に導こうとしますが、がん細胞はヒトの免疫機構から逃れる術をいくつか持っています。

その一つに、がん細胞ではヒトの免疫反応を抑制する「PD-L1(“ピーディーエルワン”と読みます)」を大量に発現し、免疫反応(T細胞からの攻撃)から逃れています。

 

PD-L1はT細胞のPD-1(ピーディーワン)と結合することで、T細胞の活性を抑制させる働きがある、いわば、ブレーキのような働きを担っています。

 

本来、PD-L1やPD-1はT細胞が自己を攻撃しない(自己免疫抑制作用)のために体内に存在していますが、がん細胞はそれを逆手に取っています。

これを“免疫チェックポイント”と呼んでいます。

 

イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)の作用機序

イミフィンジはがん細胞の「PD-L1」を抑制することで、がん細胞のブレーキを解除させ、ヒト本来の免疫反応を活性化させます。

その結果、T細胞が、がん細胞を攻撃することでがん細胞を死に導く、といった作用機序を有しています☆

 

T細胞が活性化され、ヒト本来の免疫力によってがん細胞を攻撃しますので、従来の抗がん剤と比較して副作用が比較的少ないと言われています。

 

イミフィンジ点滴静注の副作用

主な副作用として咳、疲労、肺炎、上気道感染、呼吸困難、発疹、下痢などが報告されています。

 

また、免疫が過剰になることで自己免疫疾患(例:間質性肺炎、横紋筋融解症、大腸炎、甲状腺機能障害、一型糖尿病、肝炎)等の発現の恐れがあるため、これらの発現には特に注意が必要となります。

 

イミフィンジ点滴静注の用法・用量

通常、成人にはデュルバルマブとして、1回10mg/kg(体重)を2週間間隔で60分間以上かけて点滴静注します。

ただし、投与期間の上限は「12か月間まで」とされています。

 

エビデンス紹介(PACIFIC試験)と最適使用推進ガイドライン

根拠となった臨床試験のPACIFIC試験をご紹介します。1-2)

本試験は白金製剤を用いた根治的同時化学放射線療法の後に進行が認められなかった切除不能局所進行(StageⅢ)の非小細胞肺がん患者さんを対象に、イミフィンジもしくはプラセボを12か月間投与する第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」と「全生存期間」で、結果は以下の通りでした。

試験名PACIFIC試験
試験群イミフィンジプラセボ
PFS中央値*16.8か月5.6か月
HR=0.52, p<0.001
奏効率28.4%16.0%
p<0.001
全生存期間中央値未達28.7か月
HR=0.68, p=0.0025

*無増悪生存期間(PFS):治療を開始してからがんが大きく(増悪)するまでの期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合

 

このようにイミフィンジ群ではPFS、生存期間を共に延長することが示されています!

ただし、PD-L1の発現率が1%未満の患者さんではイミフィンジの治療効果が弱いことが示唆されています。2)

 

従って、イミフィンジの最適使用推進ガイドライン3)では以下の記載があります。

PD-L1発現率も確認した上で、本剤の投与可否の判断をすることが望ましい。PD-L1 発現率が1%未満であることが確認された患者においては、本剤の投与の必要性を慎重に判断すること。

 

イミフィンジ点滴静注の薬価

薬価収載時点(2018年8月29日)の薬価は以下の通りです。

  • イミフィンジ点滴静注120mg:112,938円
  • イミフィンジ点滴静注500mg:458,750円(1日薬価:32,768円)

 

有用性加算(Ⅱ)が10%加算されており、根拠は以下の通りです。

  • StageⅢの非小細胞肺がんの維持療法として国内外の診療ガイドラインにおいて初の標準的治療法として推奨された

 

算定方式等は以下の記事をご覧ください。

 

なお、本剤は治療選択肢が極めて限られている患者さんの緊急の要望にお応えするために、厚労省の「保険外併用療養費制度」のもとで、薬価収載までの間、無償提供されていました。

2018年8月29日より発売開始されたため、無償提供は終了しています。

 

類薬

非小細胞肺がんに使用できる免疫チェックポイント阻害薬としては以下があります。

上記の薬剤は全てStageⅣに使用できる薬剤です。

 

StageⅢに使用できる免疫チェックポイント阻害薬は今回ご紹介したイミフィンジのみです。

 

まとめ・あとがき

イミフィンジはこんな薬

  • StageⅢの非小細胞肺がんに使用できる初の免疫チェックポイント阻害薬
  • がん細胞のPD-L1を抑制することで、がん細胞のブレーキを解除する

 

StageⅢの非小細胞肺がんでは抗がん剤と放射線治療しか治療選択肢がなく、その後は無治療の経過間観察でした。

抗がん剤と放射線治療による導入療法後にイミフィンジを地固め療法として投与することで、がんの増悪を抑制できるため、新たな治療選択肢として期待されています。

StageⅢの非小細胞肺がんの治療は20~30年程、大きな進歩が無かったため、イミフィンジによって治療成績の向上が期待されます。

 

以上、今回は非小細胞肺がんとイミフィンジ(デュルバルマブ)の作用機序についてご紹介しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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