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ゼルヤンツ(トファシチニブ)の作用機序と副作用【潰瘍性大腸炎】

2018年5月25日ゼルヤンツ錠5mg(一般名:トファシチニブクエン酸塩)に「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の適応が追加されました。

製薬会社

  • 製造販売:ファイザー(株)

 

ゼルヤンツは既に「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」の効能・効果を有していましたが、潰瘍性大腸炎が追加されました。

 

今回は潰瘍性大腸炎とゼルヤンツ(トファシチニブ)の作用機序、根拠となったエビデンスについてご紹介します。

 

潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患(炎症を伴う腸疾患)の1つであり、大腸の粘膜に炎症が起き、ただれたり、潰瘍が発生する疾患です。

好発年齢は10歳代後半~30代前半で、比較的若年者にみられます。

 

主な自覚症状としては、粘血便、下痢、腹痛などの症状が持続的かつ反復的にみられ、症状が悪化すると体重減少や発熱など、全身の症状が起こることもあるようです。

特に初期症状としては粘血便が多いとされています。

 

潰瘍性大腸炎の多くは、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返します。

長い経過のなかでは、徐々に病気が進行し、重大な合併症を引き起こすこともあり、さらに、長期間罹患していると、大腸がんの発現率も高くなると言われています!!

 

潰瘍性大腸炎の原因

明確な原因は未だ不明とされていますが、

  • 免疫異常等の遺伝因子
  • 食習慣等の環境因子
  • ストレス等の心理学的因子

が複雑に関与して発症すると考えられています。

 

何らかの自己免疫異常によって、免疫細胞(白血球)が自分自身の大腸粘膜を「異物」としてみなして攻撃してしまうことで大腸粘膜に炎症が引き起こされます。

このような持続的な自己免疫異常が潰瘍性大腸炎の発症と炎症の持続に関与すると言われています。

 

白血球(マクロファージ、顆粒球、T細胞)が大腸粘膜を攻撃する際、血中の白血球は以下のプロセスで大腸粘膜まで移動し、攻撃を行います。

  1. 血管内皮細胞に接着する
  2. 組織内に入る(浸潤
  3. 攻撃する部位(この場合、大腸粘膜)に移動する(“遊走”と呼びます)
  4. 大腸粘膜を攻撃し、炎症を引き起こす

 

また、マクロファージが粘膜を攻撃する際、TNFαやIL-12、IL-23などの炎症性サイトカインを過剰に分泌することで炎症を引き起こします。

 

潰瘍性大腸炎の治療

潰瘍性大腸炎は、その病状により、「軽症」「中等症」「重症」に分類されております。

 

潰瘍性大腸炎は原因が不明であるため、腸管の炎症を抑えて症状を鎮め寛解に導くこと、そして炎症のない状態を維持(寛解状態)することが治療の主な目標になります。

治療は薬物療法が主体となりますが、薬物療法が有効でない場合や腸閉塞、穿孔などの合併症では外科治療血球成分除去療法などが行われることもあります。

 

初期に行う主な薬物療法は、以下の薬剤があり、重症度によって適宜併用して用います。

  • 5-ASA製剤:メサラジン、サラゾスルファピリジン
  • 副腎皮質ホルモン:ブレドニゾロン、ブデソニド
  • 免疫調整薬:アザチオプリン、6-メルカプトプリン

 

これらの標準治療薬剤を使用しても症状が改善しない場合、「難治」とされ、以下のような生物学的製剤(抗TNFα抗体製剤)の使用が検討されます。

 

今回ご紹介するゼルヤンツは標準治療薬剤に抵抗性の中等症から重症の潰瘍性大腸炎(抗TNFα抗体製剤の有無によらず)に対して治療効果が認められている薬剤です。

 

ゼルヤンツ(一般名:トファシチニブ)の作用機序

炎症性サイトカインであるTNFαやIL-12、IL-23等が炎症を引き起こす際、それらが各受容体に結合して刺激が核に伝えられます。

各受容体には「ヤヌスキナーゼ(JAK:“ジャック”)」と呼ばれるタンパク質が付随していて、JAKを介してシグナルが核へと届けられます。

 

核内に刺激が到達すると、炎症反応が引き起こされ、潰瘍性大腸炎が進行してしまいます。

 

ゼルヤンツは各受容体の細胞内に存在しているJAKを選択的に阻害する薬剤です。

JAKを阻害することで、TNFαやIL-12、IL-23による刺激が核に伝わるのを遮断して炎症を抑え、潰瘍性大腸炎の進行を抑制すると考えられています。

 

ゼルヤンツ錠の副作用

主な副作用として、頭痛、咽頭炎、関節痛などが報告されています。

特に結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染などの重篤な感染症が発現する可能性もあるため、特に注意が必要です。

 

ゼルヤンツの用法・用量

潰瘍性大腸炎に使用する場合、導入療法と維持療法で使用法が異なります。

 

  • 導入療法:1回10mgを1日2回、8週間経口投与します。なお、効果不十分な場合はさらに 8週間投与することができます。

 

  • 維持療法:1回5mgを1日2回経口投与します。なお、維持療法中に効果が減弱した患者さんでは、1回10mgの1日2回投与に増量することもできます。また、過去の薬物治療において難治性の患者さん(抗TNF阻害薬無効例等)では、1回10mgを1日2回投与することができます。

 

エビデンス紹介(OCTAVE試験)

根拠となった代表的な臨床試験には以下の3つがあります。1)

  • 寛解導入療法:OCTAVE Induction 1試験および2試験
  • 維持療法:OCTAVE Sustain試験

 

OCTAVE Induction 1試験および2試験は、
従来療法または抗TNF阻害薬を受けたものの中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎を有する患者さんを対象とし、寛解導入療法としてのゼルヤンツ(10mgを1日2回投与)とプラセボを直接比較する第Ⅲ相臨床試験です。

主要評価項目は「8週時点の寛解率」でした。

試験名OCTAVE Induction 1試験OCTAVE Induction 2試験
試験群ゼルヤンツ群プラセボ群ゼルヤンツ群プラセボ群
8週時点の
寛解率
18.5%8.2%16.6%3.6%
P=0.007P<0.001

 

 

OCTAVE Sustain試験は、上記の寛解導入療法で臨床効果の認められた患者さんを対象に、ゼルヤンツ(5mg or 10mgを1日2回投与)による52週間の維持療法群とプラセボ群を直接比較する第Ⅲ相臨床試験です。

主要評価項目は「52週時点の寛解率」でした。

試験名OCTAVE Sustain試験
試験群ゼルヤンツ
5mg群
ゼルヤンツ
10mg群
プラセボ群
52週時点の
寛解率
34.3%40.6%11.1%
P<0.001

 

このように、ゼルヤンツは寛解導入療法・維持療法において共にプラセボと比較して有意に寛解率を改善することが示されました。

 

あとがき

ゼルヤンツは既に関節リウマチの適応を有していましたが、潰瘍性大腸炎にも適応が拡大されました。

関節リウマチでは同じくJAK阻害薬のオルミエント(一般名:バリシチニブ)が使用できますが、潰瘍性大腸炎の適応はありません。

ゼルヤンツの適応追加が承認されましたので、潰瘍性大腸炎で初のJAK阻害薬です。

 

2018年には、リンパ球(T細胞)が血管内皮細胞に接着する際に関与する「α4β7インテグリン」を特異的に阻害するモノクローナル抗体薬のエンタイビオ(一般名:ベドリズマブ)も登場しました。

T細胞の接着が阻害されることで、組織への浸潤炎症部位への遊走も阻害されるといった新規作用機序を有する薬剤のため、今後期待できると思われます。

 

以上、本日は潰瘍性大腸炎とゼルヤンツ(トファシチニブ)の作用機序についてご紹介いたしました♪

 

引用文献・資料等

  1. OCTAVE Induction 1/2試験、OCTAVE Sustain試験:N Engl J Med. 2017 May 4;376(18):1723-1736.

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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