5.内分泌・骨・代謝系

オルケディア(エボカルセト)の作用機序、レグパラ/パーサビブとの違い【副甲状腺機能亢進症】

更新日:

2019年4月、オルケディア錠(一般名:エボカルセト)の効能・効果に「副甲状腺がんや原発性腹甲状腺機能亢進症に伴う高カルシウム血症」を追加する製造販売承認申請が行われました!

高カルシウム血症については現時点で未承認です。

基本情報

製品名オルケディア錠1mg/2mg
一般名エボカルセト
製品名の由来オーケストラのようにPTH、P、Ca の調和を取りながらコントロール可能にする、
経口の(Oral)の透析(Dialysis)患者への薬剤
製造販売元協和キリン(株)
効能・効果○維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症
○下記疾患における高カルシウム血症
・副甲状腺がん
・副甲状腺摘出術不能又は術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症
用法・用量記事中参照
収載時の薬価1mg 1錠:280.70円
2mg 1錠:412.10円

 

オルケディア錠は2018年3月23日に「維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症」を効能・効果として承認されていますが、今後は「副甲状腺がんや原発性腹甲状腺機能亢進症に伴う高カルシウム血症」に対して適応拡大が期待されています。

 

木元 貴祥
作用機序としてはカルシウム受容体作動薬ですので、類薬には以下がありますね。

 

今回は二次性副甲状腺機能亢進症とオルケディア(エボカルセト)の作用機序、そして上記類薬との違いや比較について解説します。

 


副甲状腺とPTH

二次性副甲状腺機能亢進症の説明の前に、副甲状腺と「副甲状腺ホルモン(PTH:パラソルモン)」の働きについて説明します。

喉の近くにある甲状腺の裏側には、米粒大の「副甲状腺」という臓器が存在しています。

 

副甲状腺から分泌されるPTHは、

  • 腸管からのカルシウム吸収促進
  • 尿からのカルシウム排泄抑制
  • 骨のカルシウムを血中に放出(骨吸収)

などの作用によって、血中のカルシウム濃度を上昇させる働きがあるホルモンです。

 

その他にも、リンの尿中排泄を促進する働き(血中のリン濃度低下作用)もあります。

 

血中のカルシウム濃度が上昇すると副甲状腺の「カルシウム受容体」がそれを感知し、PTHの分泌を抑制します。

 

逆に、血中のカルシウム濃度が低下するとカルシウム受容体が感知して、PTHの分泌を促進させます。

 

木元 貴祥
このように、血中のカルシウムやリンの濃度を一定に保つために働いているホルモンがPTHです。

 

腎臓の働きとカルシウム濃度

腎臓の働きの一つに「活性型ビタミンD3の産生」があります。

 

活性型ビタミンD3は、ビタミンDが肝臓と腎臓を経て産生される物質で、腸管からのカルシウム吸収を促進して血中カルシウム濃度を上昇させます。

 

木元 貴祥
その他、リンの排泄にも腎臓が大きく関わっています。

 

慢性腎不全(透析患者さん)と二次性副甲状腺機能亢進症

透析を行っている患者さんでは腎機能が低下しています(慢性腎不全)。

 

そのため、活性型ビタミンD3の産生が低下し、腸管からのカルシウム吸収が悪くなってしまっています。(→低カルシウム血症

また、リンの排泄もできなくなってしまい、体内にリンが蓄積されてしまいます。(→高リン血症

 

このような低カルシウム血症高リン血症の状態が長期間持続してしまうと、低下したカルシウム濃度を上昇させるために、副甲状腺からPTHが過剰に分泌されます。

 

この状態になると、カルシウム濃度に関係なく常にPTHが過剰分泌されてしまい、血中のカルシウム濃度が異常に上昇してしまいます。

 

木元 貴祥
このように、甲状腺以外(この場合、腎臓)が原因で甲状腺機能が亢進する疾患を「二次性副甲状腺機能亢進症」と呼んでいます。

 

ちなみに、甲状腺が原因(例:副甲状腺がん)で甲状腺機能が亢進する疾患を「原発性副甲状腺機能亢進症」と呼んでいます。

 

二次性副甲状腺機能亢進症の症状

PTHの過剰分泌によって、骨からカルシウムが放出(骨吸収)されてしまいます。

そのため、骨が脆くなってしまい、骨折を引き起こすことがあります。

 

また、血中のカルシウム等が骨以外の場所(関節、皮下、眼、血管)に沈着する「異所性石灰化」がみられることもあります。

 

血管に異所性石灰化がみられると、動脈硬化などの心血管系障害の発症リスクが高まり、生命予後に影響を及ぼす可能性もあります。

 

二次性副甲状腺機能亢進症の治療

二次性副甲状腺機能亢進症の治療の基本は、薬物療法です。

 

主に用いられる薬物療法には、以下があります。

  • 活性型ビタミンD3製剤
  • カルシウム受容体作動薬

 

薬物療法で効果が不十分な場合は、手術が行われることもあります。

今回ご紹介するオルケディアは「カルシウム受容体作動薬」に分類されている薬剤です。

 

オルケディア(一般名:エボカルセト)の作用機序

オルケディアは、血中カルシウム濃度のセンサーである副甲状腺のカルシウム受容体を直接刺激するカルシウム受容体作動薬です。

 

カルシウム受容体を刺激することで過剰なPTHの分泌が抑制され、血中のPTH濃度を低下させるといった作用機序を有しています。

 

その結果、血中のカルシウム濃度やリン濃度が正常になり、二次性副甲状腺機能亢進症の症状緩和が得られると考えられます。

オルケディア(一般名:エボカルセト)の作用機序

 

エビデンス紹介:オルケディアとレグパラの直接比較試験(二次性副甲状腺機能亢進症)

血液透析施行中の二次性副甲状腺機能亢進症患者さんを対象とした国内の第Ⅲ相臨床試験では、同様の作用機序を有するレグパラ(一般名:シナカルセト)と直接比較において、有効性は同程度(非劣性が証明された)と報告されています。1-3)

 

本試験の主要評価項目は「28~30週におけるiPTH濃度平均値が60pg/mL以上240pg/mL以下を達成した割合」でした。

試験群オルケディア
1日1回30週間投与
レグパラ
1日1回30週間投与
達成割合72.7%76.7%
群間差:-4.0%, 非劣性が証明
消化管障害の発現率18.6%32.8%
p<0.001

 

また、レグパラで課題となっていた消化管障害の副作用は、オルケディアで有意に低かったと報告されています。3)

 

木元 貴祥
上記の臨床試験結果は、今後オルケディアとレグパラの使い分けを考える上で重要だと思います。

 

副作用

上部消化管障害の頻度は低いものの、腹部不快感(3.7%)、低カルシウム血症(16.8%)、悪心(4.7%)、嘔吐(4.1%)、下痢(3.2%)などの副作用の発現が認められていますので注意が必要です。

 

用法・用量

通常、成人にはエボカルセトとして1回1mgを開始用量とし、1日1回経口投与します。

患者さんの必要に応じて開始用量は2mgとすることも可能です。

 

以降は、PTHや血中カルシウム濃度を十分に観察しながら1日1回1~8mgの間で適宜用量を調整して経口投与しますが、効果不十分な場合には1日1回12mgまで増量して経口投与することが可能です。

 

薬価

収載時(2018年5月22日)の薬価は以下の予定です。

  • 1mg 1錠:280.70円
  • 2mg 1錠:412.10円

 

なお、薬価に対して以下の不服意見が出されており、有用性加算(Ⅱ)の適用を希望されていましたが、残念ながら却下されています。

  1. レグパラと比較して本剤では上部消化管障害の発現が低い。
    ⇒回答:上部消化管障害の発現は第Ⅲ相試験の検証目的として設定されていない。また、本剤でも一定の割合で上部消化管障害が発現している。
  2. レグパラと比較して高用量投与が可能である。
    ⇒回答:第Ⅲ相試験であくまで非劣性が証明されたのみであり、臨床的位置づけはレグパラと同様である。

 

薬価の算定方法については以下の記事をご参照ください。

>>【新薬:薬価収載】13製品(2018年5月22日)

 

オルケディアと類薬(レグパラ、パーサビブ)との違い・比較表

同様の作用機序(カルシウム受容体作動薬)をもつ類薬には、

があります。

 

適応症や禁忌・併用注意・重大な副作用等に違いがありますので、一覧の比較表を作成してみました。

カルシウム受容体作動薬(オルケディア、レグパラ、パーサビブ)の違い・比較表

 

適応症(効能・効果)ではレグパラが最も多いですね。

木元 貴祥
しかし、レグパラは併用注意薬や重大な副作用が多い印象を受けますので、二次性副甲状腺機能亢進症に使用するならオルケディアの方が使いやすそうです。

 

オルケディアは以下のような原発性腹甲状腺機能亢進症に対しても2019年4月に承認申請しているため、今後はレグパラと適応症が同じになると期待されています!

  • 下記疾患における高カルシウム血症
    ・副甲状腺癌
    ・副甲状腺摘出術不能又は術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症

※参考:【協和発酵キリン株式会社ニュースリリース】KHK7580(エボカルセト)の国内適応追加申請のお知らせ

上記適応は現時点では未承認。

 

まとめ・あとがき

オルケディアはこんな薬

  • カルシウム受容体作動薬
  • 過剰なPTHの分泌を抑制し、血中のPTH濃度を低下させる ⇒血中カルシウム濃度の低下
  • 類薬にはレグパラとパーサビブがある

 

木元 貴祥
レグパラでは上部消化管障害が問題となっていましたが、オルケディアではその問題点が改善されているため、使いやすいのではないでしょうか。

 

今後は原発性副甲状腺機能亢進症にも適応拡大が期待されていますので、楽しみに待ちたいと思います。

 

以上、今回は二次性副甲状腺機能亢進症とオルケディア(一般名:エボカルセト)の作用機序についてご紹介しました。

 

引用文献・資料等

  1. オルケディア 添付文書
  2. オルケディア 審査報告書
  3. 維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症の国内第Ⅲ相試験:Kidney Int. 2018 Oct;94(4):818-825.

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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