5.内分泌・骨・代謝系

リベルサス(経口のセマグルチド)の作用機序と特徴【糖尿病】

更新日:

2019年7月、初の経口GLP-1受容体作動薬であるリベルサス(セマグルチド)が「2型糖尿病」を予定効能・効果として製造販売承認申請されました!

ノボ ノルディスクファーマ|ニュースリリース

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名米国では「Rybelsus(リベルサス or ライベルサス)
日本では不明
一般名セマグルチド
製品名の由来不明
製造販売ノボ ノルディスクファーマ(株)
効能・効果2型糖尿病(予定)
用法・用量1日1回経口投与
収載時の薬価薬価未収載

米国では2019年9月20日に承認!

 

木元 貴祥
承認されれば、GLP-1受容体作動薬(GLP-1アナログ製剤)として初の経口剤となる見込みです!

読み方 GLP-1:ジーエルピーワン

 

有効成分のセマグルチドは既に注射剤のオゼンピック皮下注という製品名で承認されていますが、薬価の折り合いが付かず、現在でも薬価未収載状態です。詳しくは以下で解説しています。

オゼンピック(セマグルチド)の作用機序と副作用【糖尿病】

続きを見る

 

GLP-1受容体作動薬はペプチド構造のため、胃酸やペプシン等の消化酵素によって速やかに分解されてしまうことからこれまで経口剤の開発は困難とされていました。また比較的高分子(分子量4,000前後)のため胃からの吸収も困難です。

 

今回ご紹介するリベルサスはサルカプロザートナトリウム(SNAC)を配合することで新たな吸収メカニズムを有しています。

疾患解説・作用機序と共に、リベルサス(経口セマグルチド)の吸収メカニズムについても解説していきます。

 

生体内の血糖調節システム

通常、生体内では以下のいくつかのホルモン等によって血糖が一定に保たれています。

 

<血糖を上昇させる生体内物質>

  • グルカゴン
  • アドレナリン
  • ノルアドレナリン
  • コルチゾール
  • 成長ホルモン

<血糖を下降させる生体内物質>

  • インスリン

 

このように、血糖を上昇させる物質は数種類存在していますが、血糖を下降する物質はインスリンしかありません。

 

インスリンの作用とGLP-1

インスリンは膵臓から分泌されるホルモンです。

分泌されたインスリンは、細胞に作用することで血中のブドウ糖を細胞内に取り込む働きがあります。

インスリンの働き

 

木元 貴祥
この働きによって、血中のブドウ糖を下げる(血糖値の降下)作用を発揮します。

 

 

また、インスリンの分泌を促進させる物質の一つに「GLP-1」と呼ばれる生体内ホルモンがあります。

GLP-1は食事が小腸を通過することで分泌されるホルモンで、以下のような働きを有します。

  • インスリン分泌促進(血糖依存的)
  • グルカゴン分泌抑制(血糖依存的)
  • 胃排泄遅延
  • 食欲抑制

 

血糖値が低い時にはインスリンの分泌を促進しないため、過剰に分泌されても低血糖になる恐れがありません

しかし、GLP-1は「DPP-4」と呼ばれるタンパク質によって半減期1~2分ほどの早さで速やかに分解され、効果はすぐ失われます。

GLP-1の働きとDPP-4

 

木元 貴祥
まずは体内の血糖調節とそれに関わるホルモンについて解説しました!ここからは糖尿病について解説します。

 

糖尿病とは

平成29年の厚労省調査(3年に1度)によると、糖尿病の総患者数は約328万人超であり、前回の調査から12万人以上増加しています。

厚生労働省平成29年(2017)患者調査の概況

 

糖尿病はその名の通り、血中ブドウ糖濃度が高い状態が慢性的に継続している病態です。

 

健康診断等で

  • 空腹時血糖値が126mg/dL以上
  • HbA1cが6.5%以上

の場合に疑われ、数回の検査を経て確定診断されます。

 

糖尿病にはその原因や病態によって

  • 1型糖尿病
  • 2型糖尿病

に分類されています。

 

日本人では約95%が「2型糖尿病」に分類されており、遺伝因子と食生活・運動不足・肥満等の生活習慣が原因で、以下の理由で引き起こされると考えられています。

  • インスリンの分泌低下:インスリン量が減っている
  • インスリンの抵抗性増大:インスリンの効きが悪くなっている

2型糖尿病の発症要因

主にはインスリンの抵抗性増大によると考えられています。(インスリン分泌低下は軽度~中等度と様々)

 

 

一方、1型糖尿病遺伝因子自己免疫等によって、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が欠損・破壊されている状態です。(インスリンの分泌低下

従って、治療の基本はインスリンの補充療法です。

 

木元 貴祥
1型・2型、いずれも遺伝因子が関与していますが、その関与の程度は1型糖尿病の方が強いと言われています。

 

2型糖尿病の治療

2型糖尿病治療は

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 薬物療法

を基本としますが、最も大切なのは食事療法運動療法です。1)

 

食事/運動療法を2~3カ月続けても血糖値が下がらない場合、薬物療法が開始されます。

 

2型糖尿病治療薬

2型糖尿病治療薬にはいくつかの種類があり、年齢や肥満の程度、合併症、肝・腎機能等によって使い分けられます。

まずは経口血糖降下薬の少量から開始されることが多いです。1)

 

経口血糖降下薬には以下の種類があり、糖尿病の原因(インスリン分泌低下、抵抗性増大)によって使い分けられます。

 

<インスリン分泌低下を改善>

  • スルホニル尿素(SU)薬:インスリン分泌促進
  • グリニド薬:より速やかなインスリン分泌促進
  • DPP-4阻害薬:GLP-1分解抑制によるインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制

 

<インスリン抵抗性を改善>

  • ビグアナイド薬:糖新生の抑制
  • チアゾリジン薬:インスリンの感受性を向上

 

加えて、ブドウ糖の吸収を抑制する「α-グルコシダーゼ阻害薬」や、ブドウ糖の排泄を促進する「SGLT2阻害薬」等も使用されます。

 

これら経口血糖降下薬を使用しても血糖値が下がらない場合、経口薬の増量や併用、そして注射剤(GLP-1受容体作動薬、インスリン製剤)の使用が検討されます。

 

また、最近では経口血糖降下薬でコントロール不十分な場合、BOTBPTと呼ばれれる治療が行われることもあります。

  • 持続型インスリン製剤+経口血糖降下薬:BOT(Basal Supported Oral Therapy)
  • 持続型インスリン製剤+GLP-1受容体作動薬:BPT(Basal supported post Prandial GLP-1 therapy)2)
ゾルトファイ配合注(インスリンデグルデク/リラグルチド)の作用機序【糖尿病】

続きを見る

 

木元 貴祥
海外では注射剤と同様、初回からは使用できず、リベルサスは注射のGLP-1GLP-1受容体作動薬と同列の位置づけです。

 

それではここから、何故、通常は胃酸やペプシンで分解されてしまうGLP-1受容体作動薬のセマグルチドが胃から吸収されるのか解説しますね。

 

リベルサス(経口セマグルチド)の吸収メカニズム

セマグルチドは分子量約4,000のペプチドです。

ペプチドを経口投与すると、通常は胃内の酸やペプシン等の消化酵素によってバラバラに分解されてしまいます。

 

木元 貴祥
食物に含まれるタンパク質やペプチドも胃内でバラバラに分解されてアミノ酸になってから小腸で吸収されますよね。それと同じです。

 

従って、そのままセマグルチドを経口投与しても胃内で速やかに分解されてしまうため、吸収されませんし、薬効も発揮しません。

 

そこでリベルサスの錠剤には吸収を補助するためにサルカプロザートナトリウム(SNAC)と呼ばれる吸収促進剤が配合されています。(読み方は・・・・“スナック”・・・??)

 

配合されているセマグルチドとSNACが胃内に到達すると、セマグルチドにSNACが結合した複合体を形成します。3)

 

複合体は胃酸よりもpHが高いため、セマグルチド周囲のpHを上昇させ、酸やペプシンによる分解から保護する作用があります。

 

また、SNACは疎水基を有しているため、セマグルチドの親油性が高まり、胃粘膜から濃度依存的に吸収されるようです。

リベルサス(経口セマグルチド)の吸収メカニズム:サルカプロザートナトリウム(SNAC)による吸収促進参考論文3)より作図

 

上記のメカニズムによって、セマグルチドが経口投与でも効率的に体内に吸収されるようになります!SNACすごい(笑)

 

リベルサス(経口セマグルチド)の作用機序

通常、生体内のGLP-1はDPP-4によって速やかに分解されてしまいます。

 

そこでセマグルチドに代表されるGLP-1受容体作動薬は、GLP-1のアミノ酸配列を改変させてDPP-4の分解を受けにくくした薬剤です!

 

別名、「GLP-1アナログ製剤」とも呼ばれています(アナログとは“類似の”という意味です)。

 

従って、生体内に吸収されると長時間作用するのが特徴です。

リベルサス(セマグルチド)の作用機序・特徴

 

また、GLP-1は血糖値が低い時にはインスリンの分泌を促進しないため、生体内に長時間滞留しても低血糖になる恐れがありません。

 

胃排泄遅延と食欲抑制によって、体重減少効果も示唆されています。

 

余談:GLP-1の発見

アメリカドクトカゲと呼ばれるトカゲが、小動物を大量に捕食しても血糖値が全然上昇しないことがきっかけで、体内を調べたところ、ヒトのGLP-1によく似たGLP-1アナログが発見されたようです。

 

エビデンス紹介:PIONEER試験

リベルサスは日本を含む国際共同臨床開発プログラム「PIONEER」に基づいています。

PIONEERは10個の第Ⅲ相試験(PIONEER 1~10)から構成されているようですが、今回は代表的なPIONEER 1試験について解説します。4)

 

PIONEER 1試験は食事と運動療法によってコントロール不良な2型糖尿病患者さんを対象にリベルサス(3mg、7mg、14mg)とプラセボを比較する第Ⅲ相試験です(日本人含む)。

 

主要評価項目は「26週時点のHbA1cのベースラインからの変化量」とされました。

リベルサス
3mg7mg14mg
26週時点のHbA1cの
ベースラインからの変化量
(プラセボとの差)
-0.6%-0.9%-1.1%
プラセボとの差; 全てp<0.001
26週時点の体重の
ベースラインからの変化量
(プラセボとの差)
-0.1kg-0.9kg-2.3kg
プラセボとの差; 14mg群のみp<0.001

 

このようにプラセボと比較していずれも有意にHbA1cの低下が認められていますし、14mg群では体重減少も認められていますね。

 

その他にも以下の臨床試験が公表されていますので参考になるかと思います!

  • PIONEER 3試験5):リベルサス(3mg、7mg、14mg)とシタグリプチン(製品名:ジャヌビア/グラクティブ)を比較。リベルサス7mg/14mg群はシタグリプチンと比較して有意にHbA1cを減少(3mgは有意差無し)。
  • PIONEER 4試験6):リベルサスとビクトーザ皮下注(リラグルチド)とプラセボを比較。リベルサスはビクトーザ皮下注に対してHbA1c減少について非劣性が証明。
  • PIONEER 5試験7):中等度の腎機能障害を有する患者さんを対象にリベルサスとプラセボを比較。リベルサスはプラセボに対して有意にHbA1cを減少。
  • PIONEER 7試験8):リベルサスの用量変更群とシタグリプチン(製品名:ジャヌビア/グラクティブ)を比較。

 

木元 貴祥
すごい数の臨床試験ですね・・・。確認するのが大変でした(笑)^^;

 

副作用

後日更新予定です。

 

用法・用量

後日更新予定です。

臨床試験では1日1回の経口投与で治療されています。

 

薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

リベルサスはこんな薬

  • GLP-1受容体作動薬として初の経口剤となる見込み
  • SNACを配合することで胃での吸収を促進させている(胃酸・消化酵素保護、親油性向上)
  • 皮下注のGLP-1受容体作動薬のビクトーザに対して非劣性が証明されている

現時点では未承認のためご注意ください。

 

正式に承認・薬価収載されれば糖尿病治療のどの位置で使用されるのか、検討が進んでいくと思われます!

今後の糖尿病治療に大きく貢献すると期待していますので楽しみに待ちたいですね。

 

糖尿病治療薬関連の以下のまとめ記事もありますので是非ご覧くださいませ☆

 

引用文献・資料等

  1. 日本糖尿病学会|糖尿病治療ガイド
  2. Pharm Med 2014; 32: 101-11
  3. SNACによる胃の吸収メカニズム:Pharmaceutics. 2019 Feb 13;11(2).
  4. PIONEER 1試験:Diabetes Care. 2019 Jun 11. pii: dc190749. doi: 10.2337/dc19-0749. 
  5. PIONEER 3試験:JAMA. 2019;321(15):1466-1480.
  6. PIONEER 4試験:Lancet. 2019 Jul 6;394(10192):39-50.
  7. PIONEER 5試験:Lancet Diabetes Endocrinol. 2019 Jul;7(7):515-527.
  8. PIONEER 7試験:Lancet Diabetes Endocrinol. 2019 Jul;7(7):528-539.

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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