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カボメティクス(カボザンチニブ)の作用機序【腎細胞がん】

2020年3月25日、「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」を効能・効果とするカボメティクス(カボザンチニブ)が承認されました!

武田薬品工業|ニュースリリース

基本情報

製品名カボメティクス錠20mg/60 mg
一般名カボザンチニブリンゴ酸塩
製品名の由来未定
製造販売武田薬品工業(株)
効能・効果根治切除不能又は転移性の腎細胞がん
用法・用量通常、成人にはカボザンチニブとして1回60mgを空腹時に経口投与する。
なお、患者の状態による適宜減量する。
収載時の薬価薬価未収載

 

木元 貴祥
海外では既に承認・販売されていますが、ようやく日本でも承認される見込みですね。

 

カボメティクスはMET、VEGFR、AXL等のがん細胞の増殖に関与する受容体を幅広く阻害することのできるマルチキナーゼ阻害薬に分類されています。

 

今回は腎細胞がんとカボメティクス(カボザンチニブ)の作用機序、エビデンスについてご紹介します。

 

腎臓とは

腎臓は、ちょうど背骨の両側の、腰の高さのところに左右1つずつある臓器で、大きさは握りこぶしくらいのソラマメのような形をしています。

 

主な働きはご存知の通り、原尿の生成です。

原尿は「腎実質」と呼ばれる部位で血液を濾過(糸球体で濾過される)して生成されます。

その後、原尿は腎盂に集められた後に、尿管、膀胱を通っていきます。

 

腎細胞がんと治療薬

腎臓の中でも、腎実質の細胞から発生するのが腎細胞がんです。

腎細胞がんは初期では手術で取り除くことが可能ですが、肝臓や他臓器に転移が認められる場合、手術で取り除くことが困難になります。

 

一般的に、他の臓器のがんでは、手術により切除できない場合や他の臓器に転移が見られた場合には、抗がん剤による化学療法が行われます。

 

しかし、腎細胞がんの場合、これまでの抗がん剤ではがんに対する感受性が低く、一般的に化学療法が行われることはありませんでした。

かつて、薬物治療として唯一行われてきたのが、インターフェロンα(IFN-α)製剤やインターロイキン2(IL-2)製剤を用いたサイトカイン療法でした。

 

その後、分子標的治療薬として以下の薬剤が登場し、現在ではこれらの薬剤が一次治療の中心です。

 

これら薬剤の使い分けですが、下記のIMDCリスク分類(低・中・高リスク)による使い分けがよく行われています。1)

予後予測の6因子何項目当てはまるか
0個1-2個3個以上
  1. 初診から治療開始まで1年未満
  2. 全身状態(KPS)が80%未満
  3. 貧血
  4. 補正カルシウム値の上昇
  5. 好中球数増加
  6. 血小板数増加
低リスク中リスク高リスク

 

低リスクにはスーテントやネクサバールなどの分子標的治療薬単剤、中・高リスクにはオプジーボ+ヤーボイ併用療法が用いられることが多いです。

 

最近では一次治療として免疫チェックポイント阻害薬+インライタ(一般名:アキシチニブ)も承認されましたので、今後様々な使い分けが検討されていくと思われます。

バベンチオ/キイトルーダ+インライタの作用機序【腎細胞がん】

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今回ご紹介するカボメティクスは一次治療および、一次治療抵抗性の二次治療として期待されている薬剤です。

 

木元 貴祥
それではここからカボメティクスの関与するがんの血管新生や各受容体について解説していきます。

 

がんの血管新生と増殖に関与する受容体(VEGFR、MET、AXL)

がん全般的に言えることですが、がん細胞が大きくなるためには多くの栄養素や酸素が必要となります。

そこでがん細胞は、自分のところに血管を無理やり作らせようとし、それに関与する因子として、がん細胞はVEGF(血管内皮細胞増殖因子)などを放出することが知られています。

 

これらの因子が、血管のVEGF受容体(VEGFR)に結合すると、がん細胞に対して異常な血管が作られ(これを“血管新生”といいます)、この血管を通じてがん細胞は大量の栄養と酸素を得ることができます。

読み方:VEGFRは“ブイイージーエフアール”

がんの血管新生とVEGFR

 

木元 貴祥
そうすることでがん細胞はどんどんと成長し、他臓器へ転移もしやすくなってしまいます。

 

また、がん細胞の細胞膜にはしばしば以下の受容体が存在しています。

  • METメット:肝細胞増殖因子受容体
  • VEGFR:血管内皮細胞増殖因子受容体
  • AXLアクセル:成長停止特異的タンパク質6受容体

 

METは主にがんの増殖、VEGFRはがんの増殖と血管新生、AXLはがんの増殖や抗がん剤の耐性2)に関与していると言われています。

癌細胞の増殖とMET、VEGFR、AXLの働き

 

これら受容体を介したシグナル伝達が、がん細胞の核内に到達すると、がん細胞の増殖活性化に繋がると考えられています。

 

カボメティクス(カボザンチニブ)の作用機序

カボメティクスはがんの増殖や血管新生の関与しているMET/VEGFR/AXLを選択的に阻害するマルチキナーゼ阻害薬です。3)

 

血管に存在しているVEGFRを阻害することでがんの血管新生を抑制します。

カボメティクス(カボザンチニブ)の作用機序:VEGFR阻害による血管新生阻害

 

加えて、がん細胞に存在しているMET、VEGFR、AXLをマルチに阻害することで、がん細胞の増殖抑制効果を発揮すると考えられています!

カボメティクス(カボザンチニブ)の作用機序:MET、VEGFR、AXL阻害による増殖抑制

 

その他にもKIT、RET、FLT3といったがん細胞の増殖に関わる受容体の阻害作用も示唆されています。3)

 

木元 貴祥
このように、がん細胞の血管新生や増殖に関与する様々な受容体を阻害することでがん細胞の増殖を抑制するのがカボメティクスですね。

 

エビデンス紹介:初回および二次治療

根拠となった臨床試験を2つご紹介します。

  1. ABOSUN試験4-5):低・中リスクの一次治療としてのカボメティクスとスーテント(スニチニブ)を比較する海外第Ⅱ相臨床試験
  2. METEOR試験6):低・中・高リスクの二次治療としてのカボメティクスとアフィニトール(エベロリムス)を比較する海外第Ⅲ相臨床試験

 

 

共に主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)*」とされていましたので、下表に結果をまとめてみました。

試験名ABOSUN試験4-5)
(一次治療)
METEOR試験6)
(二次治療)
試験群スーテントカボメティクスアフィニトールカボメティクス
PFS中央値5.3か月8.6か月3.8か月7.4か月
HR=0.48, p=0.0008HR=0.58, p<0.001
奏効率9%20%5%21%
-p<0.001

*無増悪生存期間(PFS):がんが増殖(増悪)せずに生存している期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合

 

一次治療のABOSUN試験については第Ⅱ相試験のため、確証的な事は言えませんが、カボメティクスで良好な結果でした。

 

木元 貴祥
一次治療、二次治療共に使用可能ですが、どのように使用されているのか興味深いですね!

 

副作用

10%以上に認められる副作用として、下痢(68.9%)、食欲減退(40.1%)、悪心、口内炎、嘔吐、腹痛、消化不良、発疹、疲労(50.7%)、味覚異常、体重減少、甲状腺機能低下症、発声障害、粘膜の炎症、無力症、低マグネシウム血症、低リン酸血症などが報告されています。

 

重大な副作用として、

  • 消化管穿孔(1.1%)、瘻孔(1.1%)
  • 出血(9.9%)
  • 血栓塞栓症(2.3%)
  • 高血圧(37.6%)
  • 可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)
  • 顎骨壊死(0.2%)
  • 膵炎(0.9%)
  • 腎障害(19.1%)
  • 肝不全(頻度不明)、肝機能障害(36.3%)
  • 骨髄抑制:貧血(14.4%)、好中球減少(8.3%)、血小板減少(11.0%)、リンパ球減少(4.3%)
  • 虚血性心疾患(頻度不明)、不整脈(2.3%)、心不全(0.2%)
  • 横紋筋融解症(頻度不明)
  • 間質性肺疾患(頻度不明)
  • 手足症候群(44.4%)
  • 創傷治癒遅延(0.9%)
  • 重度の下痢(11.0%)

が挙げられていますので特に注意が必要です。

 

用法・用量

通常、成人にはカボザンチニブとして1回60mgを空腹時に経口投与します(患者の状態による適宜減量)。

 

収載時の薬価

現時点では薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

カボメティクスはこんな薬

  • MET、VEGFR、AXL等の受容体を選択的に阻害するマルチキナーゼ阻害薬
  • 腎細胞がんの一次治療と二次治療で期待されている

 

現在、腎細胞がんの一次治療では免疫チェックポイント阻害薬同士(オプジーボ+ヤーボイ)の併用療法が使用可能ですし、2019年には免疫チェックポイント阻害薬+インライタ(アキシチニブ)も承認されています。

バベンチオ/キイトルーダ+インライタの作用機序【腎細胞がん】

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木元 貴祥
このような状況下ですので、カボメティクスがどの治療ラインで使用されていくのか興味部会です。

 

現在、免疫チェックポイント阻害薬との併用や、他癌腫での臨床試験も進行中ですので期待していきたいと思います!

 

2020年1月には肝細胞がんへの適応拡大申請も行われています。

武田薬品工業|キナーゼ阻害剤カボザンチニブのがん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌に関する日本における製造販売承認申請について

 

以上、今回は腎細胞がんと新規のマルチキナーゼ阻害薬であるカボメティクスの作用機序、エビデンス等についてご紹介しました☆

 

引用文献・資料等

  1. 日本泌尿器科学会:腎癌診療ガイドライン 2017年版
  2. Nat Commun. 2019 Jan 16;10(1):259.
  3. Mol Cancer Ther. 2011 Dec;10(12):2298-308.
  4. ABOSUN試験(一次治療):J Clin Oncol. 2017 Feb 20;35(6):591-597. 
  5. ABOSUN試験(一次治療)の追加解析:Eur J Cancer. 2018 May;94:115-125.
  6. METEOR試験(二次治療):N Engl J Med 2015; 373:1814-1823

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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