12.悪性腫瘍

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序と副作用【MSI-Highの固形がん】

更新日:

がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がん(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能・効果とするキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))の適応拡大が2018年12月21日に承認されました!

製薬会社

  • 製造販売元:MSD(株)
  • 販売提携:大鵬薬品工業(株)

 

上記適応に関しては2018年6月に厚生労働省の条件付き早期承認制度の適用対象になっていますので、ローブレナ(一般名:ロルラチニブ)に続いて2番目の同制度適用の承認ですね。

 

米国ではFDAが上記の効能・効果のように臓器横断的(臓器非特異的)にキイトルーダを既に承認しており、非常に話題になっていました。

ある共通のがんのバイオマーカーによる臓器横断的(臓器非特異的)な承認は国内初です!!

 

本日はMSI-Highの固形がんとキイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序についてご紹介します。

 


高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)とは

マイクロサテライトとは、正常細胞のDNAに存在する2から4塩基程度の単純な繰り返し配列のことを指します。

 

よくある例としては、シトシン(C)とアデニン(A)が交互に繰り返されるCAリピートと呼ばれるマイクロサテライトが有名です。

このようなマイクロサテライトの配列の長さが、正常細胞とがん細胞で異なってしまうことを「マイクロサテライト不安定性(MSI)」と呼んでいます。

 

例えば、正常細胞ではマイクロサテライトの繰り返しが10回のところ、がん細胞では2回しか繰り返していなかったり、30回繰り返されていたりします。

 

正常細胞のDNAの修復機構がうまく機能していないほど、がん細胞のマイクロサテライト不安定性が高頻度に見られてしまいます。

これを高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)と呼んでいます。

 

高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)のがん

一般的に、MSI-Highのがんでは、その他の遺伝子異常も多く存在しているため、予後が不良だと言われています。

 

MSI-Highがよくみられるがんとしては、以下があります。

  • 大腸がん
  • 胃がん
  • 膵臓がん
  • 子宮がん
  • 乳がん
  • 膀胱がん
  • 前立腺がん
  • 甲状腺がん

特に大腸がんでは5%前後にMSI-Highがみられます。

このようなMSI-Highのがんに対して効果が期待されているのがキイトルーダです。

 

ただし、初回から使用できるわけではなく、

  • がん化学療法後に増悪した進行・再発の場合
  • 標準的な治療が困難な場合

に限られていますので注意が必要です。

 

従って、基本的には抗がん剤(化学療法)が標準で、治療選択肢が無くなった場合に初めてキイトルーダを使用することができます。

 

使用にあたっては添付文書にも以下の注意書きがあります。1)

<がん化学療法後に増悪した進行・再発のMSI-Highを有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)>

  1. 十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、MSI-Highが確認された進行・再発の固形癌患者に投与すること。検査にあたっては、承認された体外診断薬を用いること。
  2. 結腸・直腸癌の場合、フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤、オキサリプラチン及びイリノテカン塩酸塩水和物による治療歴のない患者における本剤の有効性及び安全性は確立していない。
  3. 結腸・直腸癌以外の固形癌の場合、本剤の一次治療における有効性及び安全性は確立していない。また、二次治療において標準的な治療が可能な場合にはこれらの治療を優先すること。
  4. 本剤の手術の補助療法における有効性及び安全性は確立していない。
  5. 臨床試験に組み入れられた患者の癌腫等について、「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、本剤以外の治療の実施についても慎重に検討し、適応患者の選択を行うこと。

 

がんと免疫チェックポイント

通常、がんができると生体内の免疫反応が活性化され、がん細胞を死に導こうとしますが、がん細胞はヒトの免疫機構から逃れる術をいくつか持っています。

その一つに、がん細胞ではヒトの免疫反応を抑制する「PD-L1(ピーディーエルワン)」を大量に発現し、免疫反応(T細胞からの攻撃)から逃れています。

 

PD-L1はT細胞のPD-1と結合することで、T細胞の活性を抑制させる働きがある、いわば、ブレーキのような働きを担っています。

 

本来、PD-L1やPD-1はT細胞が自己を攻撃しない(自己免疫抑制作用)のために体内に存在していますが、がん細胞はそれを逆手に取っています。

これを“免疫チェックポイント”と呼んでいます。

 

キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)の作用機序

今回紹介するキイトルーダは、「ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体薬」と呼ばれる、がん免疫療法薬です。

 

キイトルーダはT細胞の「PD-1」を特異的に抑制することで、がん細胞からのブレーキを解除させ、ヒト本来の免疫反応を活性化させます。

その結果、T細胞が、がん細胞を攻撃することでがん細胞を死に導く、といった作用機序を有しています☆

 

T細胞が活性化され、ヒト本来の免疫力によってがん細胞を攻撃しますので、従来の抗がん剤と比較して副作用が比較的少ないと言われています。

 

特にMSI-Highのがんでは、PD-L1の発現量が多いことが示唆されているため、キイトルーダが期待されています。

 

キイトルーダの副作用

抗がん剤よりは副作用が低いものの、免疫活性化に伴い自己免疫疾患(例:甲状腺機能異常、腸炎、一型糖尿病、肝炎、肺炎)等の発現が認められていますので注意が必要となります。

間質性肺炎では死亡例も報告されているため特に注意が必要です。

 

キイトルーダの用法・用量

MSI-Highの固形がんに使用する場合は、その他の適応に使用する場合と同じく、以下の通り固定用量で投与します。1)

  • 通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回200mgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注する。

 

エビデンス紹介:5つの第Ⅱ相臨床試験

日本の承認の根拠となった臨床試験は以下の2つで、いずれもMSI-Highの固形がん患者さんが対象です。1)

  • KEYNOTE-164(61例)2)5-FU、オキサリプラチン、イリノテカンの治療歴を有する結腸・直腸がん患者さんが対象です。
    ⇒奏効率(がんが30%以上縮小した患者さんの割合)は27.9%でした。

 

  • KEYNOTE-158(グループKの83例)3):一次治療として標準的な化学療法歴のある固形がん患者さんが対象です。
    ⇒奏効率は34.9%でした。

なお、KEYNOTE-158には、子宮内膜がん、胃がん、小腸がん、膵臓がん、胆道がん、副腎皮質がん、中皮腫、小細胞肺がん、子宮頸がん、神経内分泌腫瘍、甲状腺がん、尿路上皮がん、脳腫瘍、卵巣がん、前立腺癌がん、後腹膜腫瘍、唾液腺がん、肉腫、精巣腫瘍、扁桃がん、の患者さんが含まれています。

すごい種類ですね・・^^;

 

 

参考までに、米国で承認された際の根拠臨床試験は以下の5つの第Ⅱ相臨床試験で、いずれもMSI-Highの固形がん患者さんを対象としています。4)

  • KEYNOTE-016
  • KEYNOTE-164
  • KEYNOTE-012
  • KEYNOTE-028
  • KEYNOTE-158

 

上記149例の奏効率(がんが30%以上縮小した患者さんの割合)は39.6%と報告されています。また、奏効が得られた患者さんの78%は少なくとも6か月の奏効持続期間が得られています。

 

MSI検査について

MSI検査の保険適応については2018年12月1日より可能となっています。5)

 

承認条件と施設・医師要件:最適使用推進ガイドライン

承認条件として使用実態下における結腸・直腸癌を除く MSI-Highを有する固形がんに対する使用成績調査が課せられています。

 

従って、キイトルーダの「最適使用推進ガイドライン(高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌)」では、以下の施設要件(①-1)と医師要件(①-2)が定められています。6)

①-1 下記の(1)~(5)のいずれかに該当する施設であること。

(1) 厚生労働大臣が指定するがん診療連携拠点病院等(都道府県がん診療連携拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、地域がん診療病院など)(平成 30 年 4 月 1 日時点:437施設)

(2) 特定機能病院(平成 29 年 6 月 1 日時点:85 施設)

(3) 都道府県知事が指定するがん診療連携病院(がん診療連携指定病院、がん診療連携協力病院、がん診療連携推進病院など)

(4) 外来化学療法室を設置し、外来化学療法加算 1 又は外来化学療法加算 2 の施設基準に係る届出を行っている施設(平成 28 年 7 月 1 日時点:2540 施設)

(5) 抗悪性腫瘍剤処方管理加算の施設基準に係る届出を行っている施設(平成 28 年 7月 1 日時点:1290 施設)

 

①-2 対象となる癌腫での化学療法及び副作用発現時の対応に十分な知識と経験を持つ医師(下表のいずれかに該当する医師)が、当該診療科の本剤に関する治療の責任者として配置されていること。

医師免許取得後 2 年の初期研修を修了した後に 5 年以上のがん治療の臨床研修を行っていること。うち、2 年以上は、がん薬物療法を主とした臨床腫瘍学の研修を行っていること。
医師免許取得後 2 年の初期研修を修了した後に 4 年以上の臨床経験を有していること。うち、3 年以上は、対象となる癌腫領域でのがん薬物療法を含むがん治療の臨床研修を行っていること。

 

その他にも当該ガイドラインには臨床成績、投与対象となる患者さん、投与に際して留意すべき事項等が掲載されていますので、詳しく知りたい方は是非ご確認ください。

 

まとめ・あとがき

キイトルーダはこんな薬

  • PD-1を特異的に阻害する免疫チェックポイント阻害薬
  • T細胞を活性化することで、がんを攻撃する
  • MSI-Highの固形がん患者さんに対して効果が期待されている

 

がんに特化したMSI-Highのように、バイオマーカーによる臓器横断的(臓器非特異的)な承認は国内初です。

近年では、プレシジョン・メディシン(Precision Medicine)と呼ばれる「精密医療」の推進が図られています。

遺伝子のバイオマーカーを発見し、個々の患者さんに最適・最良の薬のみを投与して治療を行う概念です。オーダーメイド医療のようなイメージですね。

 

キイトルーダがプレシジョン・メディシンの先駆けになるかもしれません。

他にも臓器横断的な薬剤の開発が進められていますので、今後も注目していきたいと思います。

 

以上、今回はMSI-Highの固形がんキイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序についてご紹介しました。

 

2019年にはNTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対する臓器横断的な薬剤ロズリートレク(一般名:エヌトレクチニブ)も登場予定です!

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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