12.悪性腫瘍

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序と副作用【MSI-Highの固形がん】

更新日:

厚労省の薬食審医薬品第二部会は2018年11月29日、「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がん(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能・効果とするキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))の承認を了承しました!

現時点では未承認のためご注意ください。

製薬会社

製造販売元:MSD(株)
販売提携:大鵬薬品工業(株)

 

上記適応に関しては2018年6月に厚生労働省の条件付き早期承認制度の適用対象になりました。ローブレナ(一般名:ロルラチニブ)に続いて2番目の同制度適用の承認となりそうです。

 

米国ではFDAが上記の効能・効果のように臓器横断的(臓器非特異的)にキイトルーダを既に承認しており、非常に話題になっていました。

ある共通のがんのバイオマーカーによって臓器横断的(臓器非特異的)に承認されれば、国内初となる見込みです。

 

本日はMSI-Highの固形がんとキイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序についてご紹介します。

 

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高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)とは

マイクロサテライトとは、正常細胞のDNAに存在する2から4塩基程度の単純な繰り返し配列のことを指します。

よくある例としては、シトシン(C)とアデニン(A)が交互に繰り返されるCAリピートと呼ばれるマイクロサテライトが有名です。

このようなマイクロサテライトの配列の長さが、正常細胞とがん細胞で異なってしまうことを「マイクロサテライト不安定性(MSI)」と呼んでいます。

例えば、正常細胞ではマイクロサテライトの繰り返しが10回のところ、がん細胞では2回しか繰り返していなかったり、30回繰り返されていたりします。

 

正常細胞のDNAの修復機構がうまく機能していないほど、がん細胞のマイクロサテライト不安定性が高頻度に見られてしまいます。

これを高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)と呼んでいます。

 

高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)のがん

一般的に、MSI-Highのがんでは、その他の遺伝子異常も多く存在しているため、予後が不良だと言われています。

 

MSI-Highがよくみられるがんとしては、以下があります。

  • 大腸がん
  • 胃がん
  • 膵臓がん
  • 子宮がん
  • 乳がん
  • 膀胱がん
  • 前立腺がん
  • 甲状腺がん

特に大腸がんでは5%前後にMSI-Highがみられます。

このようなMSI-Highのがんに対して効果が期待されているのがキイトルーダです。

 

ただし、初回から使用できるわけではなく、

  • がん化学療法後に増悪した進行・再発した場合
  • 標準的な治療が困難な場合

に限られていますので注意が必要です。

従って、基本的には抗がん剤(化学療法)が標準で、治療選択肢が無くなった場合に初めてキイトルーダを使用することができます。

 

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がんと免疫チェックポイント

通常、がんができると生体内の免疫反応が活性化され、がん細胞を死に導こうとしますが、がん細胞はヒトの免疫機構から逃れる術をいくつか持っています。

その一つに、がん細胞ではヒトの免疫反応を抑制する「PD-L1(ピーディーエルワン)」を大量に発現し、免疫反応(T細胞からの攻撃)から逃れています。

 

PD-L1はT細胞のPD-1と結合することで、T細胞の活性を抑制させる働きがある、いわば、ブレーキのような働きを担っています。

 

本来、PD-L1やPD-1はT細胞が自己を攻撃しない(自己免疫抑制作用)のために体内に存在していますが、がん細胞はそれを逆手に取っています。

これを“免疫チェックポイント”と呼んでいます。

 

キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)の作用機序

今回紹介するキイトルーダは、「ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体薬」と呼ばれる、がん免疫療法薬です。

 

キイトルーダはT細胞の「PD-1」を特異的に抑制することで、がん細胞からのブレーキを解除させ、ヒト本来の免疫反応を活性化させます。

その結果、T細胞が、がん細胞を攻撃することでがん細胞を死に導く、といった作用機序を有しています☆

 

T細胞が活性化され、ヒト本来の免疫力によってがん細胞を攻撃しますので、従来の抗がん剤と比較して副作用が比較的少ないと言われています。

 

特にMSI-Highのがんでは、PD-L1の発現量が多いことが示唆されているため、キイトルーダが期待されています。

 

キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)の副作用

抗がん剤よりは副作用が低いものの、免疫活性化に伴い自己免疫疾患(例:甲状腺機能異常、腸炎、一型糖尿病、肝炎、肺炎)等の発現が認められていますので注意が必要となります。

特に間質性肺炎では死亡例も報告されているため特に注意が必要です。

 

エビデンス紹介:5つの第Ⅱ相臨床試験

後日更新予定です。

 

米国で承認された際の根拠臨床試験は以下の5つの第Ⅱ相臨床試験で、いずれもMSI-Highの患者さんを対象としています。1)

  • KEYNOTE-016(58例)
  • KEYNOTE-164(61例)
  • KEYNOTE-012(6例)
  • KEYNOTE-028(5例)
  • KEYNOTE-158(19例)

 

上記149例の奏効率(がんが30%以上縮小した患者さんの割合)は39.6%と報告されています。また、奏効が得られた患者さんの78%は少なくとも6か月の奏効持続期間が得られています。

 

1)KEYTRUDA米国添付文書

 

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MSI検査について

MSI検査の保険適応については2018年12月1日より可能となっています。(2018年11月14日の中医協の資料より)

 

まとめ・あとがき

キイトルーダはこんな薬

  • PD-1を特異的に阻害する免疫チェックポイント阻害薬
  • T細胞を活性化することで、がんを攻撃する
  • MSI-Highの固形がん患者さんに対して効果が期待されている

 

がんに特化したMSI-Highのようなバイオマーカーによって臓器横断的(臓器非特異的)に承認されれば、国内初となる見込みです。

近年では、プレシジョン・メディシン(Precision Medicine)と呼ばれる「精密医療」の推進が図られています。

遺伝子のバイオマーカーを発見し、個々の患者さんに最適・最良の薬のみを投与して治療を行う概念です。オーダーメイド医療のようなイメージですね。

 

キイトルーダがプレシジョン・メディシンの先駆けになるかもしれません。

他にも臓器横断的な薬剤の開発が進められていますので、今後も注目していきたいと思います。

以上、今回はMSI-Highの固形がんキイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序についてご紹介しました。

参考になったらシェアいただけると嬉しいです!
   

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。FP資格あり。

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