6.腎・泌尿器系 12.悪性腫瘍

アーリーダ(アパルタミド)の作用機序と副作用【前立腺がん】

更新日:

2019年3月26日、「遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん」を効能・効果とするアーリーダ錠60mg(一般名:アパルタミド)が承認されました。

基本情報

製品名アーリーダ錠
一般名アパルタミド
製品名の由来特になし
製薬会社製造販売:ヤンセンファーマ(株)
コ・プロモーション:日本新薬(株)
効能・効果遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん
用法・用量通常、成人にはアパルタミドとして1日1回240mgを経口投与する
収載時の薬価薬価未収載

 

アパルタミドは米国では既に「ERLEADA」という製品名で販売されています。

今回は前立腺がんアーリーダ(アパルタミド)の作用機序についてご紹介します。

 


前立腺がんとは

前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱から続く尿道の周りを取り囲むように存在しています。

 

この前立腺が腫瘍化(がん化)したものが前立腺がんです。

基本的には進行が緩やかながんで、早期に発見できれば治癒も期待できます。

 

自覚症状としては、尿が出づらい、頻尿、などがありますが、早期にはほとんど症状が出ません。進行すると、血尿や腰痛等が発現することがあります。

 

前立腺がんの発生・増殖メカニズム

前立腺がんの発生や成長には男性ホルモンが大きく関与することが知られています。

 

男性ホルモンにはいくつかの種類がありますが、総称して「アンドロゲン」と呼ばれており、約95%が精巣で分泌されています。その他にも副腎前立腺がんからも分泌されます。

 

前立腺がんはアンドロゲンが結合する「アンドロゲン受容体」を持ち、ここにアンドロゲンが結合することでがん細胞の増殖が促進されます。

 

それではアンドロゲン受容体とがんの増殖機構についてもう少し詳しく解説します。

 

アンドロゲン受容体とがんの増殖機構

アンドロゲン受容体は、がん細胞の細胞質内に存在しています。

 

アンドロゲン受容体にアンドロゲンが結合して活性化すると、核内に移動していきます。

 

活性化したアンドロゲン受容体は、核内のDNAと結合することで、がん細胞の増殖が促進・活性化されると考えられています。

 

前立腺がんの治療

早期の前立腺がん(限局性、局所進行)の場合、

  • 手術
  • 放射線療法
  • ホルモン療法

などを単独もしくは適宜組み合わせた治療が行われます。

 

中心的に用いられるのホルモン療法で、前立腺がんはアンドロゲンによって増殖するため、アンドロゲンを除去する治療(androgen deprivation therapy:ADT)を行います。

昔はADTとして精巣を物理的に摘出する「外科的去勢術」が行われていました。

しかし、患者さんによっては精巣がなくなることへの抵抗感が強いため、現在のADTは薬による内科的去勢術」としてホルモン療法が行われます。

 

現在、初回のホルモン療法としては、

などが行われますが、場合によってはザイティガ(一般名:アビラテロン)を上記と併用することもあります。

 

しかしながら、ホルモン療法によるADTを行っていても抵抗性を示して、がんの増殖が抑えられないこともあります。

このような状態を去勢抵抗性前立腺がん(CRPC:castration resistant prostate cancer)と呼んでいます。

他の臓器に転移の無いCRPCでは、その後、約90%の患者さんが骨転移を経験してしまい、予後が不良となります。従って、なるべく転移を遅らせることが重要です。

 

今回ご紹介するアーリーダは、他の臓器に転移の無いハイリスクのCRPCに使用できる薬剤です。

 

転移のあるCRPCについては、以下の薬剤が用いられます。

 

アーリーダ(一般名:アパルタミド)の作用機序

アーリーダは、前述のがん増殖機構のうち、以下を阻害する薬剤です。

  1. アンドロゲン受容体への結合を阻害
  2. アンドロゲン受容体の核内への移動を阻害
  3. アンドロゲン受容体のDNAへの結合を阻害

アーリーダ(アパルタミド)の作用機序

上記の作用機序により、アンドロゲンによるがん増殖のシグナル伝達が阻害される結果、がん細胞の増殖抑制効果が発揮されると考えられています。

 

作用機序としては、イクスタンジ(一般名:エンザルタミド)と同様ですね。


 

エビデンス紹介(SPARTAN試験)

根拠となった臨床試験はSPARTAN試験です。1)

本試験は、PSA(前立腺特異抗原)倍加時間が10か月以下で他の臓器に転移の無いCRPC患者さんに対して、ADTのみを行う群と、アーリーダとADTを併用する群を直接比較した第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目の無転移生存期間は、アーリーダとADTを併用する群で有意に延長していました。

ADTのみADT+
アーリーダ
無転移生存期間中央値16.2か月40.5か月
HR=0.28, p<0.001
全生存期間中央値39.0か月未到達
HR=0.70, p=0.07

 

無転移生存期間の中央値で見ると2倍以上延長していますね。またハザード比(HR)も0.28と非常に治療効果が期待できそうです。

生存期間については今後のフォローアップ解析にも注目したいと思います。

 

用法・用量

通常、成人にはアパルタミドとして1日1回240mgを経口投与します。なお、患者さんの状態により適宜減量します。

 

副作用

主な副作用として、疲労(22.5%)、皮疹(15.3%)、甲状腺機能低下症(4.7%)、そう痒症(4.1%)、体重減少(3.4%)などが報告されています。2)

 

薬価

現時点では薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

アーリーダはこんな薬

  • 他の臓器に転移の無いCRPCに使用する
  • アンドロゲン受容体の各ステップを阻害する

 

これまで、他の臓器に転移の無いCRPCに有効な薬剤はほとんどありませんでした。

アーリーダによって、前立腺がんの予後向上に寄与できれば良いなと感じます。

 

以上、今回は前立腺がんとアーリーダの作用機序についてご紹介しました。

 

2020年には新規経口アンドロゲン受容体阻害薬のダロルタミドも登場予定です。以下の記事で各薬剤の違いや特徴について解説しています。

 

引用文献・資料等

  1. SPARTAN試験:N Engl J Med. 2018 Apr 12;378(15):1408-1418.
  2. アーリーダ錠 添付文書
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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

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