10.皮膚・骨格筋

ザガーロ(デュタステリド)の作用機序【男性型脱毛症(AGA)】

男性の男性型脱毛症における発毛及び育毛、脱毛(抜け毛)の進行予防」を効能・効果とするザガーロカプセル(一般名:デュタステリド)が2015年9月28日に承認されました!

今回は男性型脱毛症(AGA)ザガーロの作用機序についてご紹介します。

 

男性型脱毛症(AGA)とは

男性型脱毛症(AGA:Androgenetic Alopecia)とは、成人の男性によくみられる髪の毛が薄くなった状態を言います。

思春期以降に、おでこの生え際(前頭部)頭頂部の髪の毛が薄くなってきます。

 

症状として、以下のようなものが認められた場合、AGAの可能性があります。

  • おでこの生え際(前頭部)や前頭部の髪の毛が細くなってきた
  • おでこが広くなってきた
  • 頭頂部の触り心地が以前よりスカスカしてきた
  • 抜け毛が最近増えてきた
  • 抜け毛が昔より細い

 

このようなAGAの発症には後述する男性ホルモンの中でも「ジヒドロテストステロン」が関与すると言われています。

その他にも遺伝的要因、環境要因などが複雑に絡み合って発症します。

また、女性の脱毛症では、男性型脱毛症(AGA)と区別するために「女性男性型脱毛症(FAGA:Femwomanale Androgenetic Alopecia)」と呼ばれます。

 

AGAの患者数

抜け毛や薄毛で悩まれている男性の90%以上がAGAだと言われております。

日本人男性の発症頻度は平均約30%と報告され、患者数は1200万人以上と推察されています。

年代的には20歳代後半から徐々に進行が見られ、40歳代や50歳代で症状が完成します。

 

各年代の発症率は、

  • 20歳代:約10%
  • 30歳代:20%
  • 40歳代:30%
  • 50歳代:40%強

と言われていますが、近年では20歳代から発症することも増えてきているようです。

食生活や生活習慣によるものと考えられます。

 

AGAと毛周期

通常、髪の毛は1日に50~100本は抜けると言われていますが、それと同じ量が生えて成長しています。

このような髪の毛が生え、成長し、抜けるまでの過程を「毛周期(別名:ヘアーサイクル)」と呼んでいます。

毛周期には、大きく分けて以下の3つの期があります。

  • 成長期:髪の毛が成長し、太く長くなる
  • 退行期:髪の毛の成長が鈍化する
  • 休止期:髪の毛が抜けていく

 

成長期

通常、成長期の期間は2~6年と言われており、毛母細胞が活発に増殖して髪の毛を太く・長くします。

髪の毛全体の約90%がこの成長期に該当します。

AGAでは、後述のジヒドロテストステロンの影響で、成長期の期間が「数か月~1年」まで短縮されてしまっています。

そのため、全体的に休止期に入る髪の毛が多くなってしまい、脱毛・薄毛になりAGAを発症してしまいます。

退行期

退行期の期間は約2週間程度で、毛母細胞の増殖が少なくなります。

この時期から髪の毛が抜けやすくなります。

 

休止期

休止期の期間は約3~4か月で、毛母細胞の働きが完全に止まります

ここから成長期に戻る際に、古い髪の毛が抜けるため、休止期は特に抜け毛が起きやすい時期です。

 

猫や犬などは、一気に毛の抜ける時期がありますが、これは全体の毛が休止期に入るためです。

ヒトではそれぞれの髪の毛毎に期が異なっていますので、通常は一気に抜けることはありません。

 

AGAとジヒドロテストステロン

男性ホルモンの一種である「テストステロン」が髪の毛の毛根に運ばれると、「5α-還元酵素(5α-リダクターゼ)」と呼ばれる酵素によって、より活性の強い「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換されます。

また、5α-還元酵素には1型と2型があり、2型の5α-還元酵素がよりDHTへの変換を促進していると言われています。

DHTが髪の毛の毛根にある男性ホルモン受容体に結合すると、毛母細胞の増殖が抑制され、成長期が短縮されてしまいます。

おでこの生え際(前頭部)や頭頂部ではDHTの感受性が高いため、AGAでは生え際や頭頂部から症状が進行していきます。

 

AGAの治療と治療薬

AGAの患者数は1200万人以上と推察されていますが、治療を受けているのはその半数以下だそうです。

しっかりと早期に治療を開始すれば、薄毛の進行を抑えることができますので、まずは医療機関を受診して治療を開始することが望ましいです。

 

AGAの治療薬には、国に認可されていないような怪しい薬海外からの輸入品も横行していることがしばしばあります。きちんとした医療機関を受診の上、国に認可されている薬を使用してください!

 

国に認可されている治療薬には、主に以下があります。

 

薬を用いない治療には植毛やレーザー治療等がありますので、個々人や進行具合、症状等によって使い分けられたり、適宜併用して用いられます。

 

ザガーロ(一般名:デュタステリド)の作用機序

ザガーロはテストステロンからDHTの変換に関与している1型/2型5α-還元酵素を共に阻害することで、DHTの産生量を低下させます。

DHT量が減少することで毛母細胞の増殖が元に戻り、成長期が延長します。その結果、AGAの症状進行を抑制できると考えられます。

 

類薬

類薬のプロペシア(一般名:フィナステリド)2型5α-還元酵素のみ阻害しますが、ザガーロ(デュタステリド)は1型と2型5α-還元酵素を共に阻害します。

従って、ザガーロの方がよりAGAの進行抑制が強力だと考えられます。

 

注意事項

ザガーロ(デュタステリド)もプロペシア(フィナステリド)も男性ホルモンであるテストステロンからDHTへの変換を阻害する薬剤です。

従って、女性の脱毛症「女性男性型脱毛症(FAGA)」に対しては使用することができませんのでご注意ください。

 

あとがき

元々、有効成分のデュタステリドは、「前立腺肥大症」を効能・効果とするアボルブカプセルとして承認を取得していますが、アボルブカプセルと識別できるよう、ザガーロカプセルはカプセル剤皮の色を変更しています。

前立腺肥大症もDHTが原因で前立腺が肥大するため、同様の作用機序で前立腺肥大の進行を抑えることができます。

 

男性型脱毛症(AGA)のまとめ記事もありますので、是非ご覧ください。

 

以上、本日は脱毛症に対するザガーロカプセルをご紹介しました!

 

\ 新薬情報オンラインの運営者が執筆! /

本サイトが書籍化(オフライン化)して新発売

>>Amazonで立ち読み

新薬情報オンラインの更新情報をLINEで受け取ろう!

PASSMED公式LINE、はじめました。

友だち追加

失敗しない薬剤師の転職とは?

数多く存在する薬剤師専門の転職エージェントサイト

どこに登録したらいいのか悩むことも少なくありません。そんな転職をご検討の薬剤師さんに是非見ていただきたい記事を公開しました。

  • 新薬情報オンラインの薬剤師2名が実際に利用・取材!
  • 各サイトの特徴等を一覧表で分かりやすく掲載!
  • 絶対にハズレのない厳選の3サイトを解説!

上手に活用してあなたの希望・条件に沿った【失敗しない転職】を実現していただけると嬉しいです!

薬剤師の転職サイト3選|評判・求人特徴とエージェントの質を比較

続きを見る

 

日々の情報収集に最適

薬剤師の勉強・情報収集に役に立つ無料サイト・ブログ8選
  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

プロフィール・運営者詳細
お問い合わせ・仕事の依頼
私の勉強法紹介

-10.皮膚・骨格筋
-