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ガザイバ(オビヌツズマブ)の作用機序と副作用【悪性リンパ腫】

2022年12月23日ガザイバ点滴静注1000mg(一般名:オビヌツズマブ)の「慢性リンパ性白血病」の初回治療に対する適応拡大が承認されました。

中外製薬|ニュースリリース

 

ガザイバは2018年7月2日に「CD20陽性の濾胞性リンパ腫」を効能・効果として承認された糖鎖改変型タイプⅡ抗CD20モノクローナル抗体薬です。

 

ガザイバはリツキサン(一般名:リツキシマブ)と同様の作用機序ですが、その薬効を高めた特徴がありますね。

 

今回は濾胞性リンパ腫とガザイバ(オビヌツズマブ)の作用機序と特徴、そして根拠となったエビデンスについてご紹介します。

 

慢性リンパ性白血病(CLL)については併用するカルケンス(アカラブルチニブ)の記事で解説しています。

カルケンス(アカラブルチニブ)の作用機序【CLL】

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濾胞性リンパ腫とは

濾胞性リンパ腫は、悪性リンパ腫の種類の1つに分類されている血液腫瘍で、リンパ球の中でも「B細胞」が腫瘍化して発生します。

進行は比較的遅く、「低悪性度」に分類されています。

疫学的には、悪性リンパ腫の約15~20%を占めていて、近年増加傾向です。特に高齢者に多く発症します。

また、腫瘍化したB細胞の多くは細胞膜表面に「CD20」と呼ばれるタンパク質を発現していることが知られています。

 

このように腫瘍化したB細胞が全身のリンパ節(頸部、胸部、腹部など)に凝集することで様々な症状が現れます。

 

濾胞性リンパ腫の治療

早期の場合には、腫瘍細胞が凝集しているリンパ節部位への放射線照射が行われることが多いです。

放射線が難しい患者さんでは、経過観察で様子を見ることも行われます。

 

一方、進行している場合、抗がん剤や分子標的薬の併用による化学療法が基本です。

主には以下のような併用療法が標準的に用いられていました。

 

このように、濾胞性リンパ腫の腫瘍細胞は「CD20」を有していることから、CD20を特異的に阻害するリツキサン(一般名:リツキシマブ)が標準的に用いられます。

今回ご紹介するガザイバもCD20を標的とした抗体製剤で、リツキサンと同様、化学療法(ベンダムスチンやCHOP、CVPなど)と併用して用いることができます。

 

それに伴い、トレアキシン(一般名:ベンダムスチン)も同日、ガザイバとの併用療法が可能となっています。

血液
トレアキシン(ベンダムスチン)の作用機序と副作用【悪性リンパ腫】

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ガザイバ(一般名:オビヌツズマブ)の構造と作用機序

ガザイバは、腫瘍細胞のCD20を特異的に認識してその働きを阻害する糖鎖改変型タイプⅡ抗CD20モノクローナル抗体薬です。

通常の抗体薬とは異なり、抗体の定常領域(Fc領域)のフコース」が除去されています。

フコースを除去すると、抗原と結合した抗体をNK細胞が発見(攻撃)しやすくなるといった特徴があります。

 

即ちNK細胞は、腫瘍細胞のCD20と結合したガザイバを認識して直接腫瘍細胞を攻撃します。

これを「抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)」と呼び、腫瘍細胞を排除することができると考えられています。

 

このようにガザイバは、

  • 腫瘍細胞のCD20に結合してその働きを抑制
  • 免疫細胞による腫瘍細胞排除(ADCC活性の増強)

といった作用機序により、腫瘍細胞の増殖・活性化の抑制、そして排除を促します。

 

エビデンス紹介(GALLIUM試験:ガザイバ vs. リツキサン)

未治療のCD20陽性進行期低悪性度非ホジキンリンパ腫患者さんを対象に、リツキサン+化学療法を併用した導入療法後にリツキサンの維持療法を継続した群(リツキサン群)と、ガザイバ+化学療法を併用した導入療法後にガザイバの維持療法を継続した群(ガザイバ群)を比較した第Ⅲ相臨床試験(GALLIUM試験)1)を紹介します。

化学療法としては、CHOP療法やCVP療法、トレアキシン(一般名:ベンダムスチン)が選択されていました。

 

本試験の主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」で、結果は以下の通りでした。

リツキサン群 ガザイバ群
3年時点のPFS率 73.3% 80.0%
HR=0.66,  P=0.001
3年時点の生存率 92.1% 94.0%
HR=0.75,  P=0.21
Grade3-5の有害事象 67.8% 74.6%
重篤な有害事象 39.9% 46.1%

 

GALLIUM試験の結果、リツキサンと比較してガザイバの方が治療効果が高いことが示されています。

一方、有害事象についてはリツキサンと比較してガザイバの方が高いことも示されていますので注意が必要です。

 

副作用

主な副作用としては好中球減少、アレルギー、感染症、便秘や下痢、インフュージョンリアクション、などがありますので注意が必要です。

 

特に、前述のGALLIUM試験1)では、ガザイバはリツキサンと比較してインフュージョンリアクションの発現頻度が高い(ガザイバ:59.3%、リツキサン:48.9%)ことが報告されているため、投与時には注意深く観察することが大切かもしれません。

 

用法・用量(濾胞性リンパ腫)

導入療法としてガザイバと併用可能な治療選択肢には、CHOP療法、CVP療法、トレアキシンがあります。

 

併用する治療によって、用法・用量が異なり、以下の通りです(導入療法)。

  • CHOP療法/CVP療法:オビヌツズマブとして1日1回1000mgを、1サイクル目は1、8、15日目に、2サイクル目以降は1日目に投与する。これを3週間1サイクルとして8サイクル繰り返す。
  • トレアキシン:オビヌツズマブとして1日1回1000mgを、1サイクル目は1、8、15日目に、2サイクル目以降は1日目に投与する。これを4週間1サイクルとして6サイクル繰り返す。

 

導入療法後の維持療法については、ガザイバ単独投与を2か月に1回、最長2年間投与を繰り返します。

 

収載時の薬価

薬価収載時点(2018年8月29日)の薬価は以下の通りです。

  • ガザイバ点滴静注1000mg:450,457円

 

新規作用機序のため有用性加算(Ⅱ)が20%加算されており、根拠は以下の通りです。

  1. 濾胞性リンパ腫の一次治療としてリツキサン以降、初のリツキサンを上回る治療法である
  2. 海外のガイドラインにおいて標準的治療法として推奨されている

 

算定方式等は以下の記事をご覧ください。

>>【新薬:薬価収載】9製品(2018年8月29日)と用法用量変化再算定

 

あとがき

ガザイバはリツキサン(リツキシマブ)よりも治療効果が高いと考えられていますので、今後はリツキサンに変わって使用頻度が増えていくと予想されます。

血液
リツキサン(リツキシマブ)の作用機序と副作用【悪性リンパ腫】

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ただし、治療効果の増強に伴い、有害事象(副作用)も増強されている可能性があるため、投与の際には注意が必要かもしれません。

 

以上、今回は濾胞性リンパ腫とガザイバ(オビヌツズマブ)の作用機序についてご紹介しました。

 

引用文献・資料等

  1. GALLIUM試験:N Engl J Med. 2017 Oct 5;377(14):1331-1344.

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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