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ネスプ(ダルベポエチン)の作用機序とバイオセイム・ABS【CKD・腎性貧血】

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腎性貧血などに使用するネスプ(一般名:ダルベポエチン アルファ)のオーソライズド・バイオシミラー(ABS)が2018年8月15日に承認されました!

  • 製品名:ダルベポエチン アルファ注シリンジ「KKF」

 

通常、高分子タンパク製剤(抗体薬などのバイオ医薬品)の後発品は「バイオ後続品(バイオシミラー:BS)」と呼ばれますが、今回承認されたのは、先発品のネスプと同一品です!

そのため、バイオシミラー(似ている、という意味)ではなく、バイオセイム(同一、という意味)と呼ばれます。

低分子医薬品のジェネリック(後発品)であるオーソライズド・ジェネリック(AG)の“バイオ版”という意味合いから、「オーソライズド・バイオシミラー(ABS)」とも呼ばれます。

 

新薬情報
製品名にも「BS」と付いていないため、バイオシミラー(BS)とは別物として扱われていることが分かりますね。

そして、国内では初のバイオセイムの登場のため、非常に話題になっています。

 

今回はバイオセイムについて、そして腎性貧血のネスプの作用機序についてご紹介します☆

 


AGとバイオセイムとは

通常の低分子の後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、有効成分が同一のものを言います。

しかしながら、原薬や添加物、製法等は特に限定されていないため、各後発医薬品で様々です。

 

オーソライズド・ジェネリック(AG)とは、有効成分だけでなく、原薬、添加物、製法も含め、全て先発品と同一の後発品のことを指します。

先発品と同じ工場や生産ラインで製造していることが多いため、先発品と同じ使用感(形や色、味、等)で服薬することができます!

 

さらに、先発メーカーから許諾を得て製造しているため、先発品の特許期間中であっても製造販売することが可能です☆

 

これのバイオ医薬品(抗体薬やタンパク製剤)版バイオセイムです!

そのため、「オーソライズド・バイオシミラー(ABS)」とも呼ばれます。

 

バイオシミラーとバイオセイムの違い

バイオ医薬品の後発品のことを「バイオシミラー」と言います。

バイオ医薬品は、低分子の医薬品と比べて分子量が非常に大きく、また三次構造等の複雑な構造をしていることから、バイオシミラーと先発医薬品の主成分が全く同じであることを証明することが困難です。

 

そのため、バイオシミラーの開発では、作用や副作用が先発医薬品と同一かを検証するために臨床試験を行い、「同等性・同質性」を証明する必要があります。

厚労省に提出する申請資料として、低分子のジェネリック医薬品では最大4種類ですが、バイオシミラーでは臨床試験成績を含む最大20種類に上ります。

 

しかし、バイオセイムでは先発医薬品と全くの同一であるため臨床試験が不要です。

 

少し言葉が色々出てきてややこしいので、イメージ図を作成しました。

あくまでイメージですが、GE、AG、BS、ABSはこんな対応だと思います。

 

本来であればネスプの特許切れは2019年内でしたが、バイオセイムとして承認を取得することで、2018年12月の薬価収載・発売が予想されます

2018.11追記⇒2019年6月薬価収載、2019年7~9月頃の発売予定とのことです。

 

ではここからネスプに関連する慢性腎臓病(CKD)と腎性貧血についてご紹介します。

 

慢性腎臓病(CKD)とは

慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)は、腎障害が慢性的に持続する疾患の全体を意味するものです。

以下の場合、CKDと確定診断されます。

  • 尿異常(蛋白尿)、画像診断・血液所見・病理所見等で腎障害の存在が明らか
  • GFRが60(mL/分/1.73㎡)未満

※GFR:「糸球体ろ過量」のことで、腎機能の指標です。

 

CKDのリスク因子としては、以下が知られています。

 

また、CKDの初期にはほとんど無症状のため徐々に腎機能が低下していきます。

腎臓は老廃物の排泄骨代謝造血器機能調節といった様々な役割を担っています。

 

そのためCKDによって腎機能低下が進行してしまうと、

といった様々な症状が現れます。

従って、早期からリスク因子である原疾患の治療、症状に対する対処療法と共に、生活習慣改善が行われます。

 

腎性貧血とは

CKDの症状の一つである腎性貧血について解説します。

体の中で“はたらく細胞”の一つに「赤血球」が知られており、主に酸素の運搬二酸化炭素の回収を担っている細胞です。

この赤血球は造血幹細胞⇒赤芽球を経て産生されますが、そこに関与する物質として「エリスロポエチン(EPO)」があります。

EPOは腎臓で産生され、造血幹細胞の「エリスロポエチン受容体」に作用することで赤芽球への分化を促進させます。

つまり、腎臓のEPOによって赤血球の産生が促進されている、ということです。

 

しかし、CKDでは腎臓の機能が低下しているためEPOの産生も低下しています。

そのため造血幹細胞から赤芽球への分化が低下し、結果的に赤血球の数が減少してしまい、貧血の症状が現れます。

 

即ち、腎臓が原因で貧血を生じますので「腎性貧血」と呼んでいます。

 

ネスプ(ダルベポエチン)の作用機序

ネスプはヒトのエリスロポエチンを改変した薬剤です!

 

ネスプが造血幹細胞のEPO受容体を刺激することで、赤芽球への分化が回復し、赤血球の産生が促進されると考えられています。

ネスプの作用機序

 

赤血球の数が回復する結果、貧血の症状軽減に繋がります。

 

ネスプの特徴

生体内にある通常のヒトエリスロポエチンには「N-結合型糖鎖」と呼ばれるところが3箇所存在しています。

これが多いほどシアル酸と呼ばれる物質との結合力が高まり、半減期が延長することが知られていますが、多すぎるとEPO受容体の刺激作用が弱まってしまいます。

 

ネスプは遺伝子工学・糖鎖工学によってN-結合型糖鎖を2箇所追加し、計5箇所とした薬剤です!

ネスプの作用機序・特徴

 

この結果、半減期は3倍に延長し、長時間作用するように工夫されています。

 

まとめ・あとがき

ネスプはこんな薬

  • ヒトのエリスロポエチンを改変した薬剤
  • 造血幹細胞のEPO受容体を刺激し、赤血球の分化を促進する
  • 半減期が延長している

 

国内初のバイオセイムとしてネスプのAGが承認されました。

バイオシミラーの開発には臨床試験が必要であることから多額の開発費用が必要ですが、バイオセイムは臨床試験が不要です。

 

新薬情報
ネスプのバイオシミラー(BS)として開発を進めていた製薬企業も数社いるため、打撃は計り知れないと思います。

 

今後もバイオセイムが次々に登場すると、バイオシミラーの開発にブレーキがかかってしまうのではないでしょうか。

今後の動向についても注視していきたいと思います。

 

ちなみにエリスロポエチン(EPO)製剤に次ぐ新薬候補としてHIF活性化薬(HIF-PH阻害薬)も期待されていますよ。下記記事を是非ご覧くださいませ。

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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