5.内分泌・骨・代謝系

トルリシティ(デュラグルチド)の作用機序【糖尿病】

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厚労省は2015年7日3日、「2型糖尿病」を効能・効果とするトルリシティ皮下注アテオス(一般名:デュラグルチド遺伝子組換え)を承認しました。

 

今回は糖尿病治療とトルリシティ(デュラグルチド)の作用機序についてご紹介します。

 

生体内の血糖調節システム

通常、生体内では以下のいくつかのホルモン等によって血糖が一定に保たれています。

 

<血糖を上昇させる生体内物質>

  • グルカゴン
  • アドレナリン
  • ノルアドレナリン
  • コルチゾール
  • 成長ホルモン

<血糖を下降させる生体内物質>

  • インスリン

 

このように、血糖を上昇させる物質は数種類存在していますが、血糖を下降する物質はインスリンしかありません。

 

インスリンの作用とGLP-1

インスリンは膵臓から分泌されるホルモンです。

分泌されたインスリンは、細胞に作用することで血中のブドウ糖を細胞内に取り込む働きがあります。

この働きによって、血中のブドウ糖を下げる(血糖降下)作用を発揮しています。


また、インスリンの分泌を促進させる物質の一つに「GLP-1」と呼ばれるホルモンがあります。

GLP-1は食事が小腸を通過することで分泌されるホルモンで、以下のような働きを有します。

  • インスリン分泌促進(血糖依存的)
  • グルカゴン分泌抑制(血糖依存的)
  • 胃排泄遅延
  • 食欲抑制

血糖値が低い時にはインスリンの分泌を促進しないため、過剰に分泌されても低血糖になる恐れがありません

しかし、GLP-1は「DPP-4」と呼ばれるたんぱく質によって半減期1~2分ほどの早さで速やかに分解され、効果はすぐ失われます。

 

糖尿病とは

平成26年の厚労省調査によると、糖尿病の総患者数は316万6,000人であり、前回の調査よりも46万人以上増加しているようです。

糖尿病はその名の通り、血中ブドウ糖濃度が高い状態が慢性的に継続している病態です。

 

健康診断等で

  • 空腹時血糖値が126mg/dL以上
  • HbA1cが6.5%以上

の場合に疑われ、数回の検査を経て確定診断されます。

 

糖尿病には、
遺伝的要因が関与する「1型糖尿病」と、生活習慣などが関与する「2型糖尿病」に分類されています。

日本人では90%以上が「2型糖尿病」に分類されており、食生活・運動不足・肥満等が原因で、以下の理由で引き起こされると考えられています。

  • インスリンの分泌低下:インスリン量が減っている
  • インスリンの抵抗性増大:インスリンの効きが悪くなっている

 

糖尿病の治療

糖尿病治療は

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 薬物療法

を基本としますが、最も大切なのは食事療法運動療法です。

食事/運動療法を2~3カ月続けても血糖値が下がらない場合、薬物療法が開始されます。

 

糖尿病治療薬

糖尿病治療薬にはいくつかの種類があり、年齢や肥満の程度、合併症、肝・腎機能等によって使い分けられます。

まずは経口血糖降下薬の少量から開始されることが多いです。

 

経口血糖降下薬には以下の種類があり、糖尿病の原因(インスリン分泌低下、抵抗性増大)によって使い分けられます。

 

<インスリン分泌低下を改善>

  • スルホニル尿素(SU)薬:インスリン分泌促進
  • グリニド薬:より速やかなインスリン分泌促進
  • DPP-4阻害薬:GLP-1分解抑制によるインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制

 

<インスリン抵抗性を改善>

  • ビグアナイド薬:糖新生の抑制
  • チアゾリジン薬:インスリンの感受性を向上

 

加えて、ブドウ糖の吸収を抑制する「α-グルコシダーゼ阻害薬」や、ブドウ糖の排泄を促進する「SGLT2阻害薬」等も使用されます。

DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬については以下の記事をご参照ください。

 

これら経口血糖降下薬を使用しても血糖値が下がらない場合、経口薬の増量や併用、そして注射剤(GLP-1受容体作動薬、インスリン製剤)の使用が検討されます。

 

GLP-1受容体作動薬の作用機序

通常、生体内のGLP-1はDPP-4によって速やかに分解されてしまいます。

そこでトルリシティ(デュラグルチド)に代表されるGLP-1受容体作動薬は、GLP-1のアミノ酸配列を改変させてDPP-4の分解を受けにくくした薬剤です!

別名、「GLP-1アナログ製剤」とも呼ばれています(アナログとは“類似の”という意味です)。

従って、投与されると生体内で長時間作用するのが特徴です。

また、GLP-1は血糖値が低い時にはインスリンの分泌を促進しないため、生体内に長時間滞留しても低血糖になる恐れがありません。

余談ですが、
アメリカドクトカゲと呼ばれるトカゲが、小動物を大量に捕食しても血糖値が全然上昇しないことがきっかけで、体内を調べたところ、ヒトのGLP-1によく似たGLP-1アナログが発見されたようです。

 

あとがき

既存のGLP-1受容体作動薬にはバイエッタ皮下注(エキセナチド遺伝子組換え、1日2回)、ビデュリオン皮下注(エキセナチド遺伝子組換え、週1回)、ビクトーザ皮下注(リラグルチド遺伝子組換え、1日1回)、リキスミア皮下注(リキシセナチド遺伝子組換え、1日1回)があり、トルリシティ皮下注は同作動薬として4成分5製剤目、同作動薬の週1回製剤としては2剤目となります。

最近は糖尿病領域に新薬が次いで導入されています。

今後は各薬剤の特徴や副作用等を踏まえた使い分け等が検討されることを期待したいと思います。

 

2018.3.23追記
GLP-1アナログ製剤の一覧をまとめています。

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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