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オニバイド(イリノテカン リポソーム製剤)の作用機序【膵臓がん】

更新日:

2019年3月、「治癒切除不能な膵がん」を対象疾患とするオニバイド(イリノテカン リポソーム製剤)の製造販売承認申請が行われました。

ヤクルト本社|プロモーション契約締結のニュースリリース

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名米国では「Onivyde(オニバイド)
日本では不明
一般名イリノテカン水和物リポソーム注射剤
製品名の由来不明
製薬会社製造販売:日本セルヴィエ(株)
コ・プロモーション:(株)ヤクルト本社
効能・効果不明:ゲムシタビンによる治療歴を有する治癒切除不能な膵がん(?)
用法・用量不明
収載時の薬価薬価未収載

 

既に米国では2015年、欧州では2016年に承認されていますが、ようやく日本でも申請が行われました。

 

木元 貴祥
主成分はイリノテカン(製品名:カンプト、トポテシン)ですので馴染み深いと思います!

 

今回は膵臓がんとオニバイドの構造・作用機序についてご紹介します。

 

膵臓の働きと膵臓がん

膵臓は胃の後ろにある細長い臓器で、主な役割としては以下の2つです。1)

  • 食物の消化酵素の分泌(外分泌)
  • インスリン等のホルモンの産生(内分泌)

 

膵臓がんは膵臓にできる悪性腫瘍(がん)のことで、極めて予後の悪い代表的ながんですね。

 

初期にはほとんど症状がないため、早期発見は困難とされています。

しかし進行すると、腹痛、食欲不振、腹部膨満感、黄疸、腰背部痛、糖尿病といった症状が現れてきます。

 

膵臓がんの治療

発見時の進行具合(Stage)に応じて治療が行われますが、早期の場合は手術によってがんを取り除く治療が原則です。

手術の後には再発を抑えるためにTS-1やジェムザール(一般名:ゲムシタビン)が行われます。2)

ティーエスワン(TS-1)と5-FUの作用機序と特徴【抗がん剤】

続きを見る

 

しかし、発見時に他の臓器に転移のある場合(StageⅣ)や、遠隔転移は無いものの切除不能な場合(StageⅢ)は抗がん剤治療(化学療法)が原則です。2)

 

現在、膵臓がんの初回に使用できる化学療法(一次化学療法)の選択肢としては以下になります。

  • ジェムザール単剤
  • ジェムザール+アブラキサン
  • TS-1単剤
  • FOLFIRINOX療法(エルプラット+カンプト+5-FU+アイソボリン併用療法)

 

アブラキサンについては以下の記事で作用機序等を解説していますのでご確認くださいませ。

アブラキサン(パクリタキセル)の作用機序と副作用【膵臓がん】

続きを見る

 

FOLFIRINOX療法については以下をご覧ください。

エルプラット(オキサリプラチン)の作用機序と副作用【膵臓がんFOLFIRINOX】

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木元 貴祥
切除不能なStageⅢの場合には単剤治療(ジェムザールもしくはTS-1)、StageⅣの場合には併用療法が行われることが多いですね。

 

今回ご紹介するオニバイドはジェムザールを含む治療で抵抗性が認められた患者さんの二次化学療法として5-FU/LVと併用での使用が見込まれています。2-3)

5-FU:フルオロウラシル、LV:ロイコボリン

 

オニバイドの構造:リポソーム化したDDS

オニバイドはイリノテカン(製品名:カンプト、トポテシン)をリポソームで封入した構造を有しています。4)

オニバイド(イリノテカン リポソーム製剤)の構造文献4)より作図

 

木元 貴祥
ちなみに、リポソーム内のイリノテカンはスクロース八塩酸塩として安定しているようです。

 

一般的に抗がん剤をリポソーム化することで、がん細胞へ選択的に移行するようになるため、抗腫瘍効果の増強・副作用の軽減が期待できます。

所謂、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)ですね。

 

リポソーム化している同様の製品には卵巣がんに使用されるドキシル(ドキソルビシン塩酸塩 リポソーム注射剤)があります。

 

オニバイド(イリノテカン)の作用機序

がん細胞は細胞分裂によって増殖していきますが、その準備段階として自身のDNAを2倍量に増やします。この過程を「複製」と呼んでいます。

 

通常、がん細胞のDNAは二本鎖の二重らせん構造をとっていますが、複製過程においてはヘリカーゼと呼ばれるタンパク質によって一本鎖に分離されます。

解かれた一本鎖DNAに「DNAポリメラーゼ」が作用することで二本鎖DNAが新たに合成され、DNAの複製が完了するといった流れですね。

 

しかし二本鎖を解いていく時に、元の二本鎖DNAには過剰なねじれ(超らせん構造)が生じてしまいます。

 

木元 貴祥
そこで働くのがⅠ型トポイソメラーゼと呼ばれるタンパク質です。

 

Ⅰ型トポイソメラーゼがねじれの生じたDNAの一本鎖を切断することで超らせん構造を解消していきます。

がん細胞の増殖とⅠ型トポイソメラーゼの働き:超らせん構造の解消

この他、二本鎖を切断するⅡ型トポイソメラーゼも関与している。

 

ねじれが解消されることで、DNAの複製は順調に進行し、がん細胞の増殖が次々に引き起こされていくといったイメージです。

 

さて、がん細胞内に到達したオニバイドからはイリノテカンが放出され、がん細胞のカルボキシエステラーゼによって活性代謝物のSN-38に変換されます。

SN-38はがん細胞のⅠ型トポイソメラーゼを選択的に阻害します。これによってがん細胞のDNAは、ねじれ(超らせん構造)を解消できなくなり、その後のプロセスがストップしてしまうといった作用機序ですね。

オニバイド(イリノテカン)の作用機序:Ⅰ型トポイソメラーゼの阻害

 

木元 貴祥
イリノテカンの作用機序・・・学生時代以来です。懐かしい(笑)

 

オニバイドはがん細胞への移行性が高く5)、更にがん細胞内のカルボキシエステラーゼによって活性代謝物(SN-38)に変換されますので、抗腫瘍効果の増強と副作用の軽減が期待できますね。

ただし、後述の副作用(好中球減少や下痢)には注意が必要です。

 

エビデンス紹介:NAPOLI-1試験

根拠となった臨床試験(NAPOLI-1試験)をご紹介します。6)

本試験は膵臓がんの一次治療としててジェムザールを含む化学療法で抵抗性を示した患者さんを対象に、二次治療として5-FU/LV+オニバイド群、5-FU/LV群、オニバイド単独群を比較した海外第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「全生存期間」で結果は以下の通りでした。

試験群5-FU/LV+
オニバイド群
5-FU/LV群オニバイド単独群
全生存期間中央値6.1か月4.2か月4.9か月
HR=0.67,
p=0.012
-
-HR=0.99,
p=0.94
Grade3以上の有害事象
●下痢
●嘔吐
●悪心
●食欲不振
●疲労
●好中球減少
●貧血
●低カリウム血症
発現率
13%
11%
8%
4%
14%
27%
9%
3%
発現率
4%
3%
3%
2%
4%
1%
7%
2%
発現率
21%
14%
5%
19%
6%
15%
11%
12%

 

5-FU/LVにオニバイドを併用することで有意に生存期間の延長が示されていますね。一方、残念ながらオニバイド単独については5-FU/LV群と同程度の治療効果でした。

 

また、5-FU/LV+オニバイドでは下痢と好中球減少の発現頻度が高いため、注意が必要です。

 

木元 貴祥
ちなみに日本でも同様の試験が行われているようですが、結果は未公表です。公表されましたら追記したいと思います。

 

副作用:下痢に注意

正式承認後に更新予定です。

 

SN-38は肝臓のUGT1A1によって代謝され、不活性体のSN-38G(グルクロン酸抱合体)に変換されます。

その後、SN-38Gは腸管内に排泄されますが、一部、腸内細菌の産生する「β-グルクロニダーゼ」によって脱抱合を受け、SN-38に戻ってしまうことがあります。

 

SN-38には細胞障害作用がありますので腸管細胞がダメージを受け、遅発性の下痢を誘発してしまうと考えられていますね。

早発性の下痢についてはイリノテカンのコリン作用によると考えられている。

イリノテカン(SN-38)による下痢の発現機序と腸肝循環

 

また、SN-38の一部は再度腸管から吸収され、肝臓に戻ることがあり、これを「腸肝循環」と呼んでいます。

 

木元 貴祥
イリノテカン、ゲリノテカン・・・国家試験の時によく語呂合わせしたものです。

 

UGT1A1はヒトによって遺伝子多型(変異)を有していることがありますので、SN-38の代謝能が低下している場合、副作用が強く出てしまう恐れもあり、注意が必要です。

 

ちなみに、海外では遺伝子多型に応じて初回の減量基準が定められています。

 

用法・用量

正式承認後に更新予定です。

海外の臨床試験6)では、オニバイド 80mg/m2とロイコボリン(LV)400mg/m2を点滴静注し、その後、5-FU 2,400mg/m2を46時間持続静注しています。これを1サイクルとして2週間毎に繰り返されていました。

 

木元 貴祥
なんとなく、大腸がんのFOLFIRI療法のような投与スケジュールですね。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

オニバイドはこんな薬

  • イリノテカンのリポソーム製剤
  • 活性代謝物のSN-38がⅠ型トポイソメラーゼを阻害する
  • 下痢と好中球減少には注意が必要

 

海外では2015年から膵臓がんの標準治療として使用されていましたが、ドラッグラグのため日本では使用できませんでした。

切除不能な膵臓がんの二次治療ではTS-1単剤やジェムザール単剤がよく使用されていますが、新たな治療選択肢が望まれていたため、オニバイドが貢献できるのではと期待しています。

 

余談ですが、最近になってイリノテカン類似薬の開発が盛んですね。

トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の作用機序・特徴【乳がん】

続きを見る

 

以上、今回は膵臓がんとイリノテカンのリポソーム製剤であるオニバイドについてご紹介しました!

 

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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