3.呼吸器系

ビベスピ(LAMA/LABA)の作用機序:ウルティブロ、アノーロとの違い・比較【COPD】

更新日:

2019年6月18日、「COPD」を対象疾患とするビベスピ・エアロスフィア(一般名:グリコピロニウム/ホルモテロール)が承認されました!

アストラゼネカ|ニュースリリース

基本情報

製品名ビベスピエアロスフィア28吸入/120吸入
一般名●グリコピロニウム臭化物
●ホルモテロールフマル酸塩水和物
製品名の由来Bevespi:優れた2剤配合剤で呼吸を届けるという狙いから、「Best」 (一番の) 、
「Bi」 (2剤配合剤) 、「spi」(respire:呼吸するの意) を合わせて「Bevespi」と名付けられた。
デバイス名の由来Aerosphere:薬剤結晶と比べて比重の軽い担体がキャリアとなって薬剤を送達させる技術を用いたことから、
空気のように軽い「Aero」と担体の「sphere」をとって「Aerosphere」と名付けられた。
製造販売アストラゼネカ(株)
効能・効果慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の諸症状の緩解
(吸入ステロイド剤、長時間作用型吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
用法・用量通常、成人には、1回2吸入を1日2回吸入投与する。
収載時の薬価薬価未収載

 

ビベスピは同日承認されたビレーズトリ(LAMA/LABA/ICSの配合剤)からICSを除いたものですので、LAMA/LABAの2剤配合剤ですね。

  • 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)のグリコピロニウム
  • 長時間作用性β2刺激薬(LABA)のホルモテロール

参考読み方:LAMAは“ラマ”、LABAは“ラバ”、ICSは“アイシーエス”

 

今回は慢性閉塞性肺疾患(COPD)とビベスピの作用機序、そして同じくLAMA/LABA配合剤のウルティブロとアノーロとの違い・比較等についてご紹介します。

 


慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは

慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、喫煙を主な原因として発症する肺の炎症性疾患です。

基本的には不可逆的の慢性疾患で、徐々に症状が進行していきます。

 

主な症状は、咳、痰や動作時の呼吸困難などで、患者さんのQOLが著しく低下するだけでなく、症状の進行によって、やがては呼吸不全を起こし、生命を脅かす可能性のある病気です。

 

ではここで、COPDがどのような症状か体験してみたいと思います。

まず息を大きく吸って下さい。そのまま吐かずに吸って吸って吸って・・・・。

ちょっと吐いて下さい。

そしたらまた吸って吸って吸って・・・。ちょっと吐いてください。これを繰り返します。

 

新薬情報
非常に辛いですよね・・・。このような状態がずっと続くのがCOPDの主な症状だとお考えください。

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因と病態

COPDの最大の原因は喫煙です。

喫煙者の15~20%がCOPDを発症すると言われています。従って、発症予防としては「禁煙」が最も効果的です。

 

喫煙によって気管支に炎症が生じ、それに伴い気管支平滑筋の収縮や肥厚(平滑筋が厚くなってしまう)してしまいます。

また、喫煙による痰も絡みやすくなり、次第に気管支は狭窄していってしまいます。

正常な気管支とCOPDの気管支:平滑筋の収縮や肥厚によって狭窄している

 

進行してしまうと、酸素を取り込む肺胞自体も炎症によって破壊され、呼吸機能が低下していってしまいます。

 

新薬情報
重度に呼吸機能が低下しすぎてしまうと、人工呼吸器を用いることもあります。

 

気管支平滑筋の収縮と弛緩(拡張)

通常、気管支平滑筋の収縮や弛緩(拡張)は副交感神経と交感神経によって調節されています。

  • 副交感神経:平滑筋の収縮
  • 交感神経:平滑筋の弛緩(拡張)

 

副交感神経から産生される「アセチルコリン」が平滑筋の「アセチルコリンM3受容体」に作用することで平滑筋が収縮します。

また、交感神経から産生される「ノルアドレナリン」が平滑筋の「アドレナリンβ2受容体」に作用することで平滑筋が弛緩(拡張)します。

気管支平滑筋の神経支配(交感神経・副交感神経)

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療

COPDの治療の基本は気管支拡張薬による薬物療法が中心です。1)

主な気管支拡張薬には以下があります。

  • 抗コリン薬
  • β2刺激薬
  • テオフィリン薬

 

また、上記薬剤は基本的には「吸入」で使用し、長時間持続タイプのものが使用されます。

 

抗コリン薬の長時間持続タイプを「LAMA」、β2刺激薬長時間持続タイプを「LABA」と呼んでいます。

  • LAMA:Long-acting muscarinic antagonist(長時間作用性抗コリン薬)
  • LABA:Long-acting β2-agonist(長時間作用性β2刺激薬)
  • ICS:Inhaled corticosteroids(吸入ステロイド)

 

治療を開始する際には、LAMAやLABAを単剤から使用していきますが、最近ではLAMAの単剤が第一選択として推奨されています。1)

また、喘息を併発している場合、適宜、吸入ステロイド薬(ICS)も併用します。

 

単剤で治療効果が不十分な場合に併用療法(例:LAMA+LABA、ICS+LABA)が検討されますが、症状や重症度によっては最初から併用療法が行われることもあります。

  • LAMA+LABA配合剤:アノーロ、ウルティブロ
  • ICS+LABA配合剤:レルベア、シムビコート、アドエア

 

今回ご紹介するビベスピはLAMAとLABAの2剤を配合した薬剤ですのでアノーロやウルティブロと同系統の薬剤ですね。

 

ビベスピ・エアロスフィアの作用機序

ビベスピは、

  • 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)のグリコピロニウム
  • 長時間作用性β2刺激薬(LABA)のホルモテロール

を配合した薬剤です。

 

新薬情報
それぞれの作用機序について解説していきますね。

 

グリコピロニウムの作用機序

グリコピロニウムは抗コリン薬に分類されています。

 

アセチルコリンM3受容体を遮断することで気管支平滑筋の収縮を抑制し、気管支を拡張するといった作用機序を有しています。

ビベスピの作用機序:グリコピロニウム(LAMA)

 

ホルモテロールの作用機序

ホルモテロールはβ2刺激薬に分類されています。

 

アドレナリンβ2受容体を刺激することで気管支平滑筋を弛緩(拡張)させるといった作用機序を有しています。

ビベスピの作用機序:ホルモテロール(LABA)

 

 

このようにビベスピは、

  • LAMAとLABAによる気管支拡張作用

により、炎症によって狭窄した気管支を広げ、呼吸機能の緩和が期待されています。

 

エビデンス紹介:PINNACLE4試験

根拠となった臨床試験を一つご紹介します。2)

本試験は中等度~重度のCOPD患者さんを対象に、以下の各群の吸入投与(1日2回)を比較する国際共同第Ⅲ相臨床試験です。(24週間)

  • ビベスピ群(グリコピロニウム+ホルモテロール)
  • グリコピロニウム群
  • ホルモテロール群
  • プラセボ群

 

主要評価項目の「24週時点の午前投与前(トラフ)FEV1 のベースラインからの変化量」に関してビベスピ群では他の3群と比較して有意な改善が認められていました。

 

新薬情報
割愛しますが、KRONOS試験3)という試験ではシムビコートに対してビベスピの非劣性も証明されていますね。

 

KRONOS試験についてはビレーズトリの記事にて解説していますので併せてご確認くださいませ☆

ビレーズトリ(LAMA/LABA/ICS)の作用機序:テリルジーとの違い【COPD】

ビレーズトリ・エアロスフィアとは、2019年6月18日に「COPD」を対象疾患として承認された新有効成分含有・新医療用配合剤で、LAMA/LABA/ICSの3剤を配合しています。 アストラゼネカ|ニュ ...

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副作用と注意事項

重大な副作用として

  • 心房細動(0.1%)
  • 重篤な血清カリウム値の低下(頻度不明)

が挙げられていますので注意が必要です。これは類薬(LAMA+LABA配合)も同じですね。

 

また抗コリン薬のグリコピロニウムを配合していることから、下記の患者さんには投与禁忌です。

  • 閉塞隅角緑内障の患者さん
  • 前立腺肥大等による排尿障害がある患者さん

 

新薬情報
共に、抗コリン作用によって、悪化する可能性があるためですね。

 

用法・用量

通常、成人には、1回2吸入を1日2回吸入投与します。

 

薬価

現時点では薬価未収載です。

 

ビベスピとアノーロ、ウルティブロ、スピオルトとの違い・比較

2019年6月時点でCOPDに使用されるLAMA+LABAの2剤配合剤には下表の4製品がありますので、一覧表としてまとめてみました!

 

COPDに使用するLAMA+LABA配合剤の4製品比較・一覧表:ビベスピ、ウルティブロ、アノーロ、スピオルト

 

禁忌、併用注意、併用禁忌、重大な副作用等は4製品共同様ですのであまり差はありませんね。

 

新薬情報
ウルティブロやアノーロでは1吸入を1日1回ですが、ビベスピは1日2回吸入のため、少し煩雑な印象を受けました。

 

またデバイスも異なっています。ビベスピのエアロスフィアは加圧式定量噴霧吸入器(pMDI:pressurized meterdose inhaker)の一種に分類されていますが、世界初の薬剤送達技術(以下の特徴)を有しているようです。3)

  • 3つの薬剤を多孔性粒子である担体に接着させ、肺全体に送達できる
  • この担体は、肺の中枢から末梢まで到達するのに適していると考えられている粒子径である
  • 比重が軽いことから、薬剤を肺の末梢まで送達することが期待できる

 

またブリーズヘラーやエリプタなどのDPI、レスピマットのSMIとは吸入時の特徴も異なりますね。

  • エアロスフィア:加圧式定量噴霧吸入器(pMDI:pressurized meterdose inhaker)による吸入のため、努力呼吸を必要としません。吸気流量の低いCOPD患者さんでも吸入しやすいとされている一方で、ボンベを押すタイミングと吸気開始を合わせる必要があります。
  • ブリーズヘラーとエリプタ:ドライパウダー吸入器(DPI:dry powder inhaler)の一種で、粉状の薬剤を吸入器によってセットすることによって吸入します。勢いよく吸入して息を数秒間止める必要がある一方で、吸気を同期させる必要はありません
  • レスピマット:ソフトミスト吸入器(SMI:soft mist inhaler)は、噴射ガスを使わずに薬剤を含んだやわらかく細かい霧をゆっくり生成し噴霧させることで、有効成分を効果的に肺へ送達させます。勢いよく吸入する必要はありませんが、セットなど事前の作業が必要です。

 

新薬情報
このようにデバイスによる使い分けもできるかもしれません。自発呼気量が低下しているような患者さんではエアロスフィア(ビベスピ)やレスピマット(スピオルト)が良いかもしれませんね。

 

まとめ・あとがき

ビベスピはこんな薬

  • LAMA/LABAを配合した薬剤
  • 同配合剤としては4製品目
  • 1日2回吸入投与する

 

LAMA/LABA配合剤は既にウルティブロとアノーロがあり、共に1日1吸入です。このような状況下で1日2回吸入のビベスピがどのように使用されていくのか興味がありますね。

 

以上、今回はCOPD治療薬であるビベスピの作用機序やエビデンス、そしてウルティブロとアノーロとの違い・比較等についてご紹介しました☆

 

ビベスピにICSを追加したビレーズトリも同日承認されていますので併せてご確認くださいませ~。

ビレーズトリ(LAMA/LABA/ICS)の作用機序:テリルジーとの違い【COPD】

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最後に・・・COPDは喫煙をしなければほぼ発症しない病気です。もし喫煙されている方がいらっしゃれば、今のうちから禁煙をお勧めいたします☆

 

引用文献・資料等

  1. COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]
  2. PINNACLE4試験:Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018 Sep 26;13:2969-2984. 
  3. KRONOS試験:Lancet Respir Med. 2018 Oct;6(10):747-758.

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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