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ユルトミリス(ラブリズマブ)の作用機序:ソリリスとの違い【PNH】

更新日:

ユルトミリス点滴静注(一般名:ラブリズマブ)とは、2019年6月18日に「発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)」を効能・効果として承認された新薬で、抗補体(C5)抗体に分類されています。

アレクシオンファーマ|ニュースリリース

基本情報

製品名ユルトミリス点滴静注
一般名ラブリズマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来ultimate, innovative leap from Soliris
製造販売アレクシオンファーマ合同会社
効能・効果発作性夜間ヘモグロビン尿症
用法・用量記事参照
収載時の薬価薬価未収載

 

これまで夜間ヘモグロビン尿症に使用できる治療薬はソリリス(一般名:エクリズマブ)のみでしたが、2週間に1度の投与が必要でした。

ユルトミリスは最大8週間に1度の投与で治療できるといった特徴がありますので患者さんの負担軽減・利便性向上が期待できると思います。

 

新薬情報
作用機序としてはソリリスと同じく、抗補体(C5)抗体に分類されていますね。

 

今回は発作性夜間ヘモグロビン尿症とユルトミリス(ラブリズマブ)の作用機序、エビデンス等について解説します。

 


発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)とは

発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroximal Nocturnal Hemogrobinuria:PNH)は稀な疾患(患者さん数は約400人)ですが、重篤化することから難病に指定されています。1)

 

後天的な原因で酸素運搬等の役割を担う赤血球が壊される(溶血)ことで発症すると考えられており、主な症状としては以下があります。

  • 早朝の赤褐色尿(ヘモグロビン尿)
  • 嚥下障害
  • 男性機能不全
  • 腹痛
  • 疲労

 

重症化すると以下のような重度の合併症を呈してしまう2)ため、早期の発見・治療が重要です。

  • 血栓症:主要な死因の一つ
  • 慢性腎臓病:2/3の患者さんが合併する
  • 肺高血圧症

 

根治的な治療法としては造血幹細胞移植しかありませんが、重篤な骨髄不全やコントロール困難で致命的な血栓症に対して行われます。2)

通常は溶血症状に対してソリリス(一般名:エクリズマブ)や、その他の症状に応じた対症療法が基本です。

 

このように赤血球の破壊(溶血)が常に起こることで様々な症状・合併症を呈してしまうのが発作性夜間ヘモグロビン尿症ですね。

 

新薬情報
では、次に赤血球の溶血が引き起こされる原因について解説します。

 

発作性夜間ヘモグロビン尿症の原因

通常、赤血球の表面には「グリコシルホスファチジルイノシトール(glycosyl phosphatidylinositol:GPI)」と呼ばれるタンパク質が存在しています。

 

これは自己の免疫システム(次項の補体活性化経路)から身を守るためのもので、通常状態でしたら赤血球は自己免疫の攻撃を受けません。

 

しかし、PNHでは後天的な原因によってGPIが欠損してしまっていることが知られています。1)

このため赤血球は常に補体活性化(自己免疫の攻撃)を受けてしまい、常に溶血が引き起こされてしまっています。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)と赤血球の溶血

 

新薬情報
詳しく書くと・・・GPIをコードしているPIGA遺伝子の変異によってGPIが欠損してしまうらしいです。

 

赤血球の溶血と補体活性化経路

補体(Complement)とは、生体が病原菌などを排除する際に、抗体抗原反応などを補助する免疫システムです。

補体にはいくつかの種類があり、C1~C9で表されます。

 

詳細は割愛しますが、免疫が活性化する際に、「レクチン経路」、「古典的経路」、「第二経路」と呼ばれる経路によって、補体の「C3」が産生・活性化されます。

この補体C3は、補体C5を「C5a」と「C5b」に分解します。

補体活性化経路

 

特に補体C5bは赤血球の溶血を引き起こしますので、前述のGPIが欠損している赤血球ではモロに補体の攻撃を受けてしまいます。

 

ユルトミリス(ラブリズマブ)の作用機序と特徴

ユルトミリスは補体C5を選択的に阻害する長時間作用型抗補体(C5)抗体製剤です!

 

補体C5が阻害されることでC5aとC5bの分解が抑制され、赤血球の溶血が抑制されると考えられています。

ユルトミリス(ラブリズマブ)の作用機序

 

またユルトミリスは長時間作用型の抗体薬のため、投与間隔は8週間と約2か月に1度の投与で効果を発揮するといった特徴があります。

 

ソリリスとユルトミリスの構造の違い

余談ですが、ユルトミリスはソリリスの重鎖の4個の固有のアミノ酸(Y27H、S57H、M429L及びN435S)を置換していることで長時間作用型になったようです。

 

エビデンス紹介:301試験・302試験

根拠となった臨床試験は以下の2つがあります。

  1. 301試験:補体阻害薬で治療経験がないPNH患者さんを対象として、ソリリスに対するユルトミリスの非劣性を検証する第Ⅲ相臨床試験3)
  2. 302試験:ソリリスによる治療経験があるPNH患者さんを対象として、ソリリスに対するユルトミリスの非劣性を検証する第Ⅲ相臨床試験4)

維持治療期間の投与間隔はソリリスで2週毎ユルトミリスで8週毎とされています。

 

新薬情報
今回は代表として①301試験(補体阻害薬未治療)についてご紹介します。

 

301試験の主要評価項目は「輸血を必要としない患者割合」と「LDH正常化を維持している患者割合」とされました。

試験群ソリリス群群ユルトミリス群
輸血を必要としない患者割合66.1%73.6%
非劣性が証明
LDH正常化割合49.4%53.6%
非劣性が証明

 

このように301試験ではこれまでの2週投与のソリリスと比較して、8週毎のユルトミリスは治療効果が同程度であることが示されています。

 

新薬情報
302試験についても同様にソリリスに対するユルトミリスの非劣性が証明されていますよ。

 

副作用

主な副作用として、頭痛(17.1%)、悪心(3.2%)、発熱(2.7%)、上気道感染(2.7%)、疲労(2.3%)などが報告されています。

 

重大な副作用として

  • 髄膜炎菌感染症(頻度不明)
  • infusion reaction(頻度不明)

が挙げられています。特に髄膜炎菌感染症は致死的にもなりかねますので特に注意が必要です!

 

添付文書の警告欄にも「原則、本剤投与前に髄膜炎菌に対するワクチンを接種すること。」と記載されています。

 

用法・用量

通常、成人には、ラブリズマブ(遺伝子組換え)として、患者の体重を考慮し、1回2,400mg~3,000mgを開始用量とします。

初回投与から2週間後に1回3,000mg~3,600mgを投与し、以降は8週ごとに1回3,000mg~3,600mgを点滴静注します。(用量は下表の体重に応じる)

 

体重初回投与量2回目以降の投与量
40kg以上60kg未満2,400mg3,000mg
60kg以上100kg未満2,700mg3,300mg
100kg以上3,000mg3,600mg

 

新薬情報
初回と2週間後に投与して、その後は維持期として8週毎で治療が可能ですね。

 

薬価

現時点では薬価未収載です。

 

ユルトミリスとソリリスの違い・比較

添付文書等から抜粋してソリリスとユルトミリスの違いについて比較一覧表を作成してみました(2019年6月19日時点)。

 

ソリリスとユルトミリスの違い・比較一覧表:抗C5抗体薬

 

新薬情報
PNHに関する大きな違いは維持治療期間の投与間隔(2週 or 8週)ですね。また導入期の投与回数も異なっています。

 

一方、ソリリスの方が適応が幅広く、以下の適応を有しています。今後はユルトミリスも順次効能追加していくものと予想されますね。

  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)における溶血抑制
  • 非典型溶血性尿毒症症候群における血栓性微小血管障害の抑制
  • 全身型重症筋無力症

 

重症筋無力症とソリリスについては以下の記事をご覧ください。

ソリリス(エクリズマブ)の作用機序【重症筋無力症】

厚労省は2017年12月25日、ソリリス点滴静注300mg(一般名:エクリズマブ(遺伝子組換え))に新たな適応として「全身型重症筋無力症(免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法による症状の管理が困 ...

続きを見る

 

まとめ・あとがき

ユルトミリスはこんな薬

  • 補体C5を特異的に阻害する抗体製剤
  • 維持治療期間中は8週毎の投与で治療効果を発揮する
  • 髄膜炎菌感染症には注意が必要!

 

ユルトミリスはソリリスと同じく補体C5を阻害しますが、長時間作用型といった特徴があります。

 

新薬情報
今後、溶血性尿毒症症候群(aHUS)や全身型重症筋無力症(gMG)についても開発が進行中ですので、ソリリスからの置き換えが期待できると思います。

 

以上、今回は難病の発作性夜間ヘモグロビン尿症とユルトミリス(ラブリズマブ)の作用機序、エビデンス等についてご紹介しました!

 

参考資料・文献等

  1. 難病情報センター:発作性夜間ヘモグロビン尿症(指定難病62)
  2. 日本PNH研究会
  3. 301試験(補体阻害薬未治療):Blood. 2019 Feb 7;133(6):530-539.
  4. 302試験(ソリリス既治療):Blood. 2019 Feb 7;133(6):540-549.

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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