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NUBEQA(ダロルタミド)の作用機序・類薬との違い【前立腺がん】

更新日:

2019年3月5日、「遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん」を予定効能・効果とする新規経口アンドロゲン受容体阻害薬のダロルタミドの製造販売承認申請が行われました。

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名海外ではNUBEQA
一般名ダロルタミド
製品名の由来
製造販売バイエル薬品(株)
効能・効果遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん
用法・用量?(臨床試験1)では1日2回経口投与)
収載時の薬価薬価未収載

臨床試験では転移リスクの高いの患者さんを対象にしていたことから、この旨が添付文書に記載されると思われます。

 

木元 貴祥
類薬には以下があり、作用機序は同様です。

 

今回は前立腺がんダロルタミドの作用機序、そして上記類薬との違いについてご紹介します。

 


前立腺がんとは

前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱から続く尿道の周りを取り囲むように存在しています。

 

この前立腺が腫瘍化(がん化)したものが前立腺がんです。

基本的には進行が緩やかながんで、早期に発見できれば治癒も期待できます。

 

自覚症状としては、尿が出づらい、頻尿、などがありますが、早期にはほとんど症状が出ません。進行すると、血尿や腰痛等が発現することがあります。

 

前立腺がんの発生・増殖メカニズム

前立腺がんの発生や成長には男性ホルモンが大きく関与することが知られています。

 

男性ホルモンにはいくつかの種類がありますが、総称して「アンドロゲン」と呼ばれており、約95%が精巣で分泌されています。その他にも副腎前立腺がんからも分泌されます。

 

前立腺がんはアンドロゲンが結合する「アンドロゲン受容体」を持ち、ここにアンドロゲンが結合することでがん細胞の増殖が促進されます。

前立腺がんの増殖とアンドロゲン

 

それではアンドロゲン受容体とがんの増殖機構についてもう少し詳しく解説します。

 

アンドロゲン受容体とがんの増殖機構

アンドロゲン受容体は、がん細胞の細胞質内に存在しています。

 

アンドロゲン受容体にアンドロゲンが結合して活性化すると、核内に移動していきます。

 

活性化したアンドロゲン受容体は、核内のDNAと結合することで、がん細胞の増殖が促進・活性化されると考えられています。

アンドロゲン受容体の仕組み

 

前立腺がんの治療

早期の前立腺がん(限局性、局所進行)の場合、

  • 手術
  • 放射線療法
  • ホルモン療法

などを単独もしくは適宜組み合わせた治療が行われます。

 

中心的に用いられるのホルモン療法で、前立腺がんはアンドロゲンによって増殖するため、アンドロゲンを除去する治療(androgen deprivation therapy:ADT)を行います。

 

昔はADTとして精巣を物理的に摘出する「外科的去勢術」が行われていました。

しかし、患者さんによっては精巣がなくなることへの抵抗感が強いため、現在のADTは薬による内科的去勢術」としてホルモン療法が行われます。

 

現在、初回のホルモン療法としては、

などが行われますが、場合によってはザイティガ(一般名:アビラテロン)を上記と併用することもあります。

 

しかしながら、ホルモン療法によるADTを行っていても抵抗性を示して、がんの増殖が抑えられないこともあります。

このような状態を去勢抵抗性前立腺がん(CRPC:castration resistant prostate cancer)と呼んでいます。

 

他の臓器に転移の無いCRPCでは、その後、約90%の患者さんが骨転移を経験してしまい、予後が不良となります。従って、なるべく転移を遅らせることが重要です。

 

今回ご紹介するダロルタミドは、他の臓器に転移の無いハイリスクのCRPCに使用できる薬剤です。

 

転移のあるCRPCについては、以下の薬剤が用いられます。

 

ダロルタミドの作用機序

ダロルタミドは、前述のがん増殖機構のうち、以下を阻害する薬剤です。

  1. アンドロゲン受容体への結合を阻害
  2. アンドロゲン受容体の核内への移動を阻害
  3. アンドロゲン受容体のDNAへの結合を阻害

ダロルタミドの作用機序

上記の作用機序により、アンドロゲンによるがん増殖のシグナル伝達が阻害される結果、がん細胞の増殖抑制効果が発揮されると考えられています。

 

エビデンス紹介(ARAMIS試験)

根拠となった臨床試験はARAMIS試験です。1)

本試験は、
ハイリスク因子を有し、他の臓器に転移の無いCRPC患者さんに対して、ADTのみを行う群と、ダロルタミドとADTを併用する群を直接比較した第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目の無転移生存期間は、ダロルタミドとADTを併用する群で有意に延長していました。

ADTのみADT+
ダロルタミド
無転移生存期間中央値18.4か月40.4か月
HR=0.41, p<0.001
全生存期間中央値未到達未到達
HR=0.71, p=0.045

 

木元 貴祥
無転移生存期間の中央値で見ると2倍以上延長していますし、中間解析ですが生存期間も有意に延長していますね。

 

ダロルタミドの特徴:アーリーダとの違い・比較

他の臓器に転移の無いCRPC使用し、同様の作用機序を有する薬剤にはアーリーダ(一般名:アパルタミド)があります。

 

木元 貴祥
個人的に気になるポイントとしては以下がありますね。
  1. 効果と安全性
  2. 血液脳関門の透過性(中枢作用)
  3. 薬物相互作用(CYP)

 

効果と安全性

ダロルタミド1)とアーリーダ2)の各臨床試験を比較してみたいと思います。

対象症例は厳密に同一でないため、参考程度です。

 

SPARTAN試験2)ARAMIS試験1)
ADTのみADT+
アーリーダ
ADTのみADT+
ダロルタミド
無転移生存期間中央値
(主要評価項目)
16.2か月40.5か月18.4か月40.4か月
HR=0.28,
p<0.001
HR=0.41,
p<0.001
全生存期間中央値39.0か月未到達未到達未到達
HR=0.70,
p=0.07
HR=0.71,
p=0.045
有害事象(全Grade)
・疲労
・高血圧
・皮疹
・下痢
・悪心
・関節痛
・めまい
発現率
・21.1%
・19.8%
・5.5%
・15.1%
・15.8%
・7.5%
・6.3%
発現率
・30.4%
・24.8%
・23.8%
・20.3%
・18.1%
・15.9%
・9.3%
発現率
・8.7%
・5.2%
・0.9%
・6.9%
・5.0%
・8.1%
・4.0%
発現率
・12.1%
・6.6%
・2.9%
・5.6%
・5.8%
・9.2%
・4.5%

 

無転移生存期間中央値は同じくらい、生存期間はダロルタミドで有意差が付いていますが、効果としてはアーリーダとそんなに差は無いように思いますね。

有害事象は数値だけ見るとダロルタミドで低そうですが、プラセボ群がそもそも低いのでこれも明確に比較はできませんでした。

 

木元 貴祥
効果・安全性は両剤で同じくらいかもしれません。あとは日本人のデータが欲しいところですね。

 

血液脳関門の透過性(中枢作用)

ダロルタミドは非臨床的モデルにおいて、イクスタンジ(一般名:エンザルタミド)とアーリーダ(一般名:アパルタミド)より血液脳関門の透過性が低いことが報告されています。3)

 

木元 貴祥
ダロルタミドの臨床試験1)でもめまいや記憶障害の発現率は低いため、中枢性の毒性が低い可能性がありますね。

 

薬物相互作用(CYP)

ダロルタミドは臨床用量ではCYP阻害作用を示さないことが報告されています。4)

It has no CYP inhibition or induction with therapeutic doses.

 

アーリーダやイクスタンジはCYP3A4の阻害作用や誘導作用があるため、CYPで代謝される薬剤との相互作用(併用注意)が多数あります。

 

木元 貴祥
ダロルタミドはCYPとの相互作用がないことから、併用注意の制限等が少ない可能性がありますね。

 

しかし、正式に承認されるまでは不明ですので、正式承認後に改めて上記のポイントを考察してみたいと思います。

 

薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ダロルタミドはこんな薬

  • 他の臓器に転移の無いCRPCに使用する
  • アンドロゲン受容体の各ステップを阻害する
  • 血液脳関門の透過性が低い
  • 薬物相互作用が少ない

 

これまで、他の臓器に転移の無いCRPCに有効な薬剤はほとんどありませんでしたが、2019年にはアーリーダが登場しました。

アーリーダ(アパルタミド)の作用機序と副作用【前立腺がん】

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今後はダロルタミドによって治療選択肢が増えるとともに、両薬剤の使い分け等について検討が進めば興味深いと感じました!

 

以上、今回は前立腺がんとダロルタミドの作用機序、そして類薬との違い・比較について考察しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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