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エプクルーサ配合錠(ベルパタスビル/ソホスブビル)の作用機序と副作用【C型肝炎】

更新日:

厚労省の薬食審医薬品第二部会は2018年11月29日、「前治療歴を有するC型慢性肝炎、C型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」および「C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」を効能・効果とするエプクルーサ配合錠(一般名:ベルパタスビル/ソホスブビル)の承認を了承しました!

現時点では未承認のためご注意ください。

製薬会社

製造販売元(仮):ギリアド・サイエンシズ(株)

 

これまで、代償性肝硬変に対してはマヴィレット配合錠などが使用可能でしたが、非代償性肝硬変については使用できる薬剤がありませんでした。

 

今回ご紹介するエプクルーサ配合錠は非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルスに対して有効性が期待できる薬剤です!

 

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C型肝炎とは

C型肝炎は「C型肝炎ウイルス(HCV)」に感染することで引き起こされます。

一度HCVに感染すると約70%の方はが持続感染者となり、そのまま自覚症状のないまま病気が進行していきます。

放っておくと、
慢性肝炎→肝硬変→肝がん、
と進行してしまうため、HCVに感染した場合、症状が無い状態から治療を開始することが望ましいです。

 

現在では国内に約100万人のHCV感染者の方がいると推定されています。

 

C型肝炎の症状

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、ちょっとやそっとの病気では症状が現れません。

HCV感染でも慢性肝炎の状態ではなかなか症状が現れにくく、肝硬変になってだんだんと症状が現れます。

 

肝硬変の主な症状は以下があります。

  • 手掌紅斑:手のひらが赤くなる
  • 黄疸
  • 浮腫(腹水貯留)
  • 出血傾向(鼻血など)

 

肝硬変でも上記のような症状がいずれもみられない場合を「代償性肝硬変」、いずれかの症状がみられる場合を「非代償性肝硬変」と分類しています。

 

C型肝炎ウイルスの増殖

C型肝炎ウイルスは自分自身の力で増殖することはできません

そこで、ウイルスは宿主(ヒトの細胞)の力を借りて、増殖を行います。

 

ヒトの細胞にC型肝炎ウイルスが侵入(感染)すると、ウイルス由来の遺伝子(RNA)を放出します。

その後、ウイルス由来RNAは、ヒト細胞内のタンパク質や因子等を勝手に使用してRNAの複製を行います。

この複製過程では、まず「HCV複製複合体」と呼ばれる工場のようなものを形成します。

この工場(HCV複製複合体)の中でRNAの複製が行われますが、複製には「NS5Bポリメラーゼ」と呼ばれるタンパク質が関与しています。

 

C型肝炎ウイルスの治療

C型肝炎ウイルスは変異が起こりやすいく、多くの遺伝子変異が確認されています。

そのため、C型肝炎ウイルスは遺伝子型(ジェノタイプ)によって細かく分けられます。

 

その中でも、日本人では

  • ジェノタイプ1b型(約70%)
  • ジェノタイプ2a型(約20%)
  • ジェノタイプ2b型(約10%)

の3種類が多いとされておりますが、その他にも極めて稀なジェノタイプ3~6型も存在しています。

 

昔はインターフェロンを用いた治療が基本でしたが、最近ではインターフェロンを用いない治療法である直接作用型抗ウイルス剤(DAA)によって治癒が見込める時代となってきました。

 

C型肝炎治療ガイドライン(第6.2版)2018年10月で推奨されている主なDAAは以下の通りです。

 

<慢性肝炎(DAAの治療歴なし)>

ジェノタイプ1型
  1. ハーボニー配合錠の12週投与(重度腎障害なし)
    ・グラジナ錠とエレルサ錠の12週投与
    マヴィレット配合錠の8週投与
  2. ジメンシー配合錠の12週投与(毎週の肝機能検査)
ジェノタイプ2型

 

<代償性肝硬変(DAAの治療歴なし)>

ジェノタイプ1型
ジェノタイプ2型

なお、慢性肝炎・代償性肝硬変、いずれも1型と2型の混合型では、全ての型に効果が期待できるマヴィレット配合錠が推奨されています。

 

 

このように「C型慢性肝炎」や「C型代償性肝硬変」では治療薬があるのに対し、「C型非代償性肝硬変」には有効な薬剤がありませんでした。

 

また、上記のようなDAA治療に抵抗性を示した場合マヴィレット配合錠の12週投与が使用可能ですが、C型肝炎治療ガイドライン(第6.2版)2018年10月には以下の注意事項が記載されています。

国内臨床試験におけるプロテアーゼ阻害薬+NS5A阻害薬治療不成功例に対するマヴィレット配合錠治療の著効率は約90%であったが、少数例であったため、治療前の薬剤耐性変異が及ぼす治療効果への影響については、今後、市販後の治療成績が十分に検討される必要がある。治療前にNS3/4およびNS5A変異を測定したうえで治療適応を考慮することが望ましい。

マヴィレット配合錠の添付文書を確認すると、確かにDAA既治療例に対しては1~30例程のデータしかありませんので、今後の検討が必要かもしれませんね。

 

今回ご紹介するエプクルーサ配合錠は

  • 非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス
  • ジェノタイプ1型又は2型でDAA治療に抵抗を示した場合

にも有効性が期待できる薬剤です!

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エプクルーサ配合錠(ベルパタスビル/ソホスブビル)の作用機序

エプクルーサ配合錠は、

  • NS5A複製複合体を阻害する「ベルパタスビル」
  • NS5Bポリメラーゼを阻害する「ソホスブビル」

を配合した薬剤です。

 

ソホスブビルは商品名「ソバルディ」として既に承認・販売されている有効成分です。

それぞれの有効成分の作用機序についてご説明します。

 

ベルパタスビルは、ウイルスRNAの複製過程における「HCV複製複合体」の中でも、「NS5A複製複合体」を阻害する薬剤です。

ソバルディ(ソホスブビル)は、RNA複製過程に関与する「NS5Bポリメラーゼ」を阻害する薬剤です。

 

このように、HCVの複製に関わるNS5A複製複合体NS5Bポリメラーゼを共に阻害することでウイルスの増殖抑制効果を発揮すると考えられているのがエプクルーサ配合錠です!

 

エビデンス紹介:非代償性肝硬変に対して

C型非代償性肝硬変患者さんを対象とした国内第Ⅲ相試験をご紹介します。1)

本試験はC型非代償性肝硬変患者さんを対象に、エプクルーサ配合錠投与群もしくはエプクルーサ配合錠+レベトール(リバビリン)併用群を比較した試験です。

両群共に投与期間は12週間とされています。

 

主要評価項目は「SVR12率*」で、結果は下表の通りでした。

試験群エプクルーサ配合錠群エプクルーサ配合錠+
リバビリン併用群
SVR12率*92%92%
何らかの有害事象69%86%
重篤な有害事象8%14%

*SVR12率:投与終了後12週時点での持続性ウイルス学的著効

 

このようにエプクルーサ配合錠はリバビリン併用の有無に関わらず高いSVR12率を示しました。

また、リバビリンを併用すると有害事象の頻度が高まることから、併用無しで十分だと思われます。

 

1)GS-US-342-4019試験:J Gastroenterol. 2018 Sep 10. doi: 10.1007/s00535-018-1503-x.

 

エビデンス紹介:DAA治療不成功例に対して

DAAによる前治療不成功のC型慢性肝炎とC型代償性肝硬変の患者さんを対象とした国内第Ⅲ相試験をご紹介します。2)

本試験はDAAによる前治療不成功のジェノタイプ1型又は2型のC型慢性肝炎とC型代償性肝硬変の患者さんを対象に、エプクルーサ配合錠+レベトール(リバビリン)併用の12週間もしくは24週間投与を比較した試験です。

 

主要評価項目は「SVR12率*」で、結果は下表の通りでした。

試験群エプクルーサ配合錠+
リバビリンの12週投与
エプクルーサ配合錠+
リバビリンの24週投与
SVR12率*82%97%
p=0.023
ジェノタイプ1型の
SVR12率*
85%98%
ジェノタイプ2型の
SVR12率*
70%92%
何らかの有害事象81%75%
重篤な有害事象0%7%

*SVR12率:投与終了後12週時点での持続性ウイルス学的著効

 

このようにDAAによる前治療が不成功であった患者さんに対しても、エプクルーサ配合錠+リバビリンを24週投与することで高いSVR12率が得られています。

 

2)GS-US-342-3921試験:Hepatol Int. 2018 Jul;12(4):356-367.

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エプクルーサ配合錠の用法・用量

以下の適応に使用する場合、いずれも1日1回の経口投与ですが、期間が異なります。

  • 前治療歴を有するC型慢性肝炎、C型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善:リバビリンとの併用で24週間
  • C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善:12週間

 

DAA治療不成功例に対してはレベトール(一般名:リバビリン)と併用することから、レベトールの効能・効果と用法・用量追加も同日行われる予定です。

 

エプクルーサ配合錠の副作用

後日更新予定です。

 

エプクルーサ配合錠の薬価

現時点では未承認・薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

エプクルーサ配合錠はこんな薬

  • ベルパタスビルがNS5A複製複合体を阻害する
  • ソホスブビルがNS5Bポリメラーゼを阻害する
  • C型非代償性肝硬変に対して効果が期待できる
  • ジェノタイプ1型又は2型でDAA治療不成功例に対して効果が期待できる

 

これまでC型代償性肝硬変に対してはマヴィレット配合錠の12週投与が使用可能でしたが、C型非代償性肝硬変に対しては有効な治療薬がなかったため、エプクルーサ配合錠が期待されます!

 

また、DAA治療不成功の場合にもマヴィレット配合錠(12週投与)と並んでエプクルーサ配合錠(24週投与)が期待できると思われます。

 

以上、今回はC型肝炎とエプクルーサ配合錠の作用機序やエビデンスについてご紹介しました☆

参考になったらシェアいただけると嬉しいです!
   

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。FP資格あり。

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