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2020年2月21日、オプジーボ(ニボルマブ)の適応に「切除不能な進行・再発の食道がん」を追加することが承認されました!
小野薬品|ニュースリリース
基本情報
製品名 | オプジーボ点滴静注20mg/100mg/240mg |
一般名 | ニボルマブ(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | optimal(最適な)+PD-1+nivolumab(一般名)から命名 |
製薬会社 | 製造販売:小野薬品工業(株) プロモーション提携:ブリストル・マイヤーズ スクイブ(株) |
効能・効果 | ●悪性黒色腫※ ●切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん※(予定) ●根治切除不能又は転移性の腎細胞がん※ ●再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫 ●再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん ●がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃がん ●がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫 ●がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん※ ●切除不能な進行・再発の食道がん |
「※」はヤーボイ併用療法も可な疾患
ヤーボイと併用可能な以下の効能・効果については別の記事で解説しています。
- 悪性黒色腫
- 非小細胞肺がん
- 腎細胞がん
- 結腸・直腸がん(大腸がん)
-
オプジーボとヤーボイ併用療法の作用機序【悪性黒色腫/腎/大腸/肺がん】
続きを見る
今回の記事では胃がん・食道がんのオプジーボ単剤療法とそのエビデンス等について解説していきます。
目次(クリック可)
胃がんと治療
胃がんの治療は発見時のStageによって異なります。
最近では胃がん検診受診率の向上により、より早期で発見できることが多いとされています。
発見時に遠隔臓器に転移がある場合(StageⅣ)や、再発した胃がんの場合、手術によって取り除くことができないため、抗がん剤併用(化学療法)による治療が原則です。
StageⅣや再発の胃がんの場合、約20%は「HER2」と呼ばれる受容体が発現していることが知られています。
HER2が陽性の場合、HER2を阻害するハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)を併用した以下のような化学療法が行われます。
- XP(カペシタビン+シスプラチン)+トラスツズマブ
- SP(S-1+シスプラチン)+トラスツズマブ
- SOX(S-1+オキサリプラチン)+トラスツズマブ
- XELOX(カペシタビン+オキサリプラチン)+トラスツズマブ
ハーセプチンの作用機序については以下の記事をご確認ください。
-
ハーセプチン(トラスツズマブ)の作用機序と副作用【胃がん】
続きを見る
一方、HER2が陰性の場合、以下のような化学療法が行われます。
- SOX(S-1+オキサリプラチン)
- SP(S-1+シスプラチン)
- DS(S-1+ドセタキセル)
- XP(カペシタビン+シスプラチン)
- XELOX(カペシタビン+オキサリプラチン)
- FOLFOX(オキサリプラチン+5-FU+レボホリナート)
上記の初回治療(一次化学療法)で増悪が認められた場合、二次治療としてはタキソール+サイラムザ(一般名:ラムシルマブ)による併用療法が行われます。
しかし、二次治療で増悪した場合のその後の治療選択肢は限られていましたが、ここに使用できるのがオプジーボです!
食道がんと治療
食道がんはその名の通り、食道に発生するがんです。日本人の食道がんは約半数が食道の中央付近からでき、次に食道の下部に多くできると言われています。
治療の基本は手術と放射線治療ですが、がんが進行している場合、適宜、抗がん剤(化学療法)が併用して行われます。
特に発見時に他の臓器に転移の有る場合(StageⅣ)、5-FUとシスプラチンの併用療法が初回治療(一次治療)として行われますが、その後の治療選択肢は限られていました。
ちなみに、類薬のキイトルーダ(ペムブロリズマブ)も二次治療として承認されましたので、今後、使い分け等が検討されていくと思われます。
-
キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序【消化器がん/MSI-High固形がん】
続きを見る
それではここからオプジーボの関与する免疫チェックポイントについて解説していきます。
がんと免疫チェックポイント
通常、がんができると生体内の免疫反応が活性化され、がん細胞を死に導こうとしますが、がん細胞はヒトの免疫機構から逃れる術をいくつか持っています。
その一つに、がん細胞ではヒトの免疫反応を抑制する「PD-L1」を大量に発現し、免疫反応(T細胞からの攻撃)から逃れています。
PD-L1はT細胞のPD-1と結合することで、T細胞の活性を抑制させる働きがある、いわば、ブレーキのような働きを担っています。
これを“免疫チェックポイント”と呼んでいます。
オプジーボ(ニボルマブ)の作用機序
今回紹介するオプジーボは、「ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体薬」と呼ばれる、がん免疫療法薬です。
オプジーボはT細胞の「PD-1」を特異的に抑制することで、がん細胞からのブレーキを解除させ、ヒト本来の免疫反応を活性化させます。
その結果、T細胞が、がん細胞を攻撃することでがん細胞を死に導く、といった作用機序を有しています☆
T細胞が活性化され、ヒト本来の免疫力によってがん細胞を攻撃しますので、従来の抗がん剤と比較して副作用が比較的少ないと言われています。
ただし、免疫活性化に伴い、自己免疫疾患(例:甲状腺機能異常、腸炎、一型糖尿病、肝炎)等の発現が認められていますので注意が必要となります。
胃がんのエビデンス紹介:ATTRACTION-2試験
本試験は一次・二次治療で増悪した胃がん患者さんを対象にオプジーボ投与群とプラセボ投与群を比較した第Ⅲ相臨床試験です。1)
主要評価項目は「全生存期間」でした。
試験群 | プラセボ群 | オプジーボ群 |
全生存期間中央値 | 4.14か月 | 5.26か月 |
HR=0.63, p<0.001 | ||
PFS中央値* | 1.45か月 | 1.61か月 |
HR=0.60, p<0.001 | ||
奏効率† | 30% | 0% |
p<0.0001 |
*無増悪生存期間(PFS):治療開始から、がんが増悪(増大)するまでの期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合
このようにプラセボと比較して、オプジーボは有意に生存期間を延長することが示されました。
食道がんのエビデンス紹介:ATTRACTION-3試験
本試験は一次治療の5-FU+プラチナ製剤(例:シスプラチン)で増悪した食道がん患者さんを対象に、オプジーボ投与群とタキサン系薬剤投与群(パクリタキセル or ドセタキセル)を比較した第Ⅲ相臨床試験です。2)
主要評価項目は「全生存期間」でした。
試験群 | タキサン群 | オプジーボ群 |
全生存期間中央値 | 8.4か月 | 10.9か月 |
HR=0.77(95% CI: 0.62-0.96) p=0.019 | ||
PFS中央値 | 3.4か月 | 1.7か月 |
HR=1.08(95% CI: 0.87-1.34) | ||
奏効率 | 22% | 19% |
このようにこれまで標準治療であったタキサン系薬剤と比較して、オプジーボは有意に生存期間を延長することが示されました。
-
タキソールとタキソテールの作用機序と副作用【抗がん剤】
続きを見る
あとがき
今までのがん治療は、
- 手術
- 薬物治療(抗がん剤や分子標的薬)
- 放射線治療
が主な治療でしたが、近年はオプジーボのような「免疫療法」もがん領域の新たな治療法の一つとして確立されてきています!
今後は抗がん剤との併用療法や、分子標的治療薬との併用療法などが色々ながんで開発が進んで行くものと予想されます。
例:抗がん剤+テセントリク(アテゾリズマブ)の併用
-
テセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序【肺がん/乳がん/肝がん】
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例:免疫チェックポイント阻害薬+分子標的薬の併用
-
バベンチオ/キイトルーダ+インライタの作用機序【腎細胞がん】
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以上、今回はオプジーボの作用機序と胃がん・食道がんについて解説しました!
参考論文・資料等
- ATTRACTION-2試験(胃がん):Lancet. 2017 Dec 2;390(10111):2461-2471.
- ATTRACTION-3試験(食道がん):Lancet Oncol. 2019 Nov;20(11):1506-1517.
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