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ハーセプチン(トラスツズマブ)の作用機序と副作用【胃がん】

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  • HER2過剰発現が確認された乳がん
  • HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃がん

を効能効果とするトラスツズマブBS点滴静注用60mg、同150mg「ファイザー」と「第一三共」2018年9月21日に承認されました!

 

バイオ後続品とは、高分子タンパク製剤(抗体薬などのバイオ医薬品)の後発医薬品のことで、「バイオシミラー」とも呼ばれます。

 

トラスツズマブの先発医薬品は「ハーセプチン」で、トラスツズマブBSは既に以下の2製品が承認されています。

  • トラスツズマブBS点滴静注用60mg「NK」、同150mg「NK」(一般名:トラスツズマブ(遺伝子組換え)[トラスツズマブ後続1])
  • トラスツズマブBS点滴静注用60mg「CTH」、同150mg「CTH」(一般名:トラスツズマブ(遺伝子組換え)[トラスツズマブ後続1])

 

しかし、上記2製品は「胃がん」の適応しかなく、「乳がん」の適応はありませんでした。

2018年11月28日に上記2剤も「乳がん」の適応が追加されました!

 

 

ただし、先発品のハーセプチンを乳がんに使用する場合、

  • A法:90分以上かけて1週間間隔で点滴静注
  • B法:90分以上かけて3週間間隔で点滴静注(2回目以降は投与時間を30分まで短縮可能)

の用法・用量がありますが、トラスツズマブBSは全て「A法のみ」となっています。

ちなみによく使用されているのは「B法」です・・・。特許の関係だと思われます。

 

本日はバイオ後続品について、そして胃がんとトラスツズマブの作用機序についてご紹介します☆

 

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バイオ後続品(バイオシミラー)とは

通常、低分子医薬品の後発医薬品(ジェネリック医薬品)は主成分の構造式が全くの同一です。構造式が同一であれば、生体内の作用・副作用も先発医薬品と同一であるとみなされています。

ただし、先発医薬品とジェネリック医薬品では添加剤や製法等は異なることがあります。

最近では、先発医薬品と添加剤や製法等も全く同一の「オーソライズド・ジェネリック(AG)」も登場しています。

 

一方、抗体薬に代表されるバイオ医薬品は、低分子の医薬品と比べて分子量が非常に大きく、また三次構造等の複雑な構造をしていることから、先発医薬品と主成分が全く同じであることを証明することが困難です。

従って、生体内の作用・副作用も先発医薬品と同一でない可能性があります。

 

そのため、作用や副作用が先発医薬品と同一かを検証するために、臨床試験を行い、同一性を証明する必要があります。

厚労省に提出する申請資料として、低分子のジェネリック医薬品では最大4種類ですが、バイオシミラーでは臨床試験成績を含む最大20種類に上ります。

 

今回ご紹介するトラスツズマブBSは、臨床試験でも同一性が証明されたため、承認に至っています。

それではここからトラスツズマブの効能・効果である胃がんについてご紹介します☆

 

胃がんとは

胃がんは、胃に発生する悪性腫瘍のことで、ヘリコバクターピロリ菌の持続的な感染などが胃がん発生のリスクを高めると言われています。

最近では、ヘリコバクターピロリ菌の除菌が浸透してきたことから、胃がん患者さんの数は年々減少しています。

 

胃がんは、早期の段階で自覚症状が出ることは少なく、かなり進行しても無症状の場合があります。

代表的な症状は、胃の痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などがあります。

 

胃がんの治療

胃がんの治療は発見時のStageによって異なります。

最近では胃がん検診受診率の向上により、より早期で発見できることが多いとされています。

 

StageⅠ胃がんの治療

StageⅠの中でもより早期に発見できた場合、内視鏡治療によってがんを取り除きます。

内視鏡治療によって取り除けない場合、手術によってがんを取り除きます。

StageⅠの胃がんの場合、これで治療は完了で、5年生存率は95%を上回ります。

 

StageⅡ~Ⅲ胃がんの治療

StageⅡ~Ⅲの場合、手術によってがんを取り除きます。

場合によっては、術後に再発を抑制する目的で抗がん剤による術後補助化学療法を1年間(S-1の場合)、もしくは半年間(XELOXの場合)行います。

StageⅡの5年生存率は65%前後、StageⅢの5年生存率は50%前後です。

 

StageⅣ・再発胃がんの治療

発見時に遠隔臓器に転移がある場合(StageⅣ)や、再発した胃がんの場合、手術によって取り除くことができないため、抗がん剤併用(化学療法)による治療が原則です。

StageⅣや再発の胃がんの場合、約20%は「HER2(“ハーツー”)」と呼ばれる受容体が発現していることが知られています。

 

HER2が陽性の場合、HER2を阻害するトラスツズマブを併用した以下のような化学療法が行われます。

  • XP(カペシタビン+シスプラチン)+トラスツズマブ
  • SP(S-1+シスプラチン)+トラスツズマブ
  • SOX(S-1+オキサリプラチン)+トラスツズマブ
  • XELOX(カペシタビン+オキサリプラチン)+トラスツズマブ

 

一方、HER2が陰性の場合、以下のような化学療法が行われます。

  • SOX(S-1+オキサリプラチン)
  • SP(S-1+シスプラチン)
  • DS(S-1+ドセタキセル)
  • XP(カペシタビン+シスプラチン)
  • XELOX(カペシタビン+オキサリプラチン)
  • FOLFOX(オキサリプラチン+5-FU+レボホリナート)

 

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トラスツズマブの作用機序

トラスツズマブは、がん細胞のHER2を特異的に阻害する抗HER2ヒト化モノクローナル抗体薬です!

HER2陽性胃がんに対して、化学療法と併用して用いることで、がんの増殖を抑制するといった作用機序を有しています。

 

トラスツズマブの副作用

副作用として心不全などの心毒性があるため、定期的に心機能測定を行うことが大切です。

 

先発品(ハーセプチン)との適応違い

先発品のハーセプチンは以下の適応を有しています。

  • HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃がん
  • HER2過剰発現が確認された乳がん

 

トラスツズマブBS「NK」「CTH」「ファイザー」「第一三共」の適応は、

  • HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発の胃がん
  • HER2過剰発現が確認された乳がん

と、全て先発品と同じです。

 

しかし、先発品のハーセプチンを乳がんに使用する場合、

  • A法:90分以上かけて1週間間隔で点滴静注
  • B法:90分以上かけて3週間間隔で点滴静注(2回目以降は投与時間を30分まで短縮可能)

の用法・用量がありますが、トラスツズマブBは「A法のみ」となる見込みですので注意が必要です。

 

乳がんに対して現場でよく使用されているのは「B法」ですので、A法のみだと少々使い勝手が悪いかもしれませんね。

効能・効果乳がん胃がん
用法・用量A法
(1週間間隔)
B法
(3週間間隔)
B法
(3週間間隔)
先発品:ハーセプチン
トラスツズマブBS「NK」×
トラスツズマブBS「CTH」×
トラスツズマブBS「第一三共」×
トラスツズマブBS「ファイザー」×

 

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あとがき

近年では、相次いで抗体薬のバイオシミラーが登場してきています。

 

今後はベバシズマブ(製品名:アバスチン)のバイオシミラーも開発されているようですので、今後も次々と登場することが予想されます!

 

以上、今回はトラスツズマブのバイオシミラーと胃がん治療についてご紹介しました。

 

乳がん治療におけるトラスツズマブについては以下の記事をご覧ください。トラスツズマブと基本併用して用いるパージェタの作用機序内で一緒に紹介しています。

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。FP資格あり。

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