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ベネクレクスタ(ベネトクラクス)の作用機序と副作用【慢性リンパ性白血病】

更新日:

2019年9月20日、「再発・難治性の慢性リンパ性白血病」を効能・効果とするベネクレクスタ錠(ベネトクラクス)が承認されました!

アッヴィ|ニュースリリース

基本情報

製品名ベネクレクスタ錠
一般名ベネトクラクス
製品名の由来特になし
製造販売アッヴィ合同会社
効能・効果再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)
用法・用量1日1回食後経口投与。詳細は記事内参照
収載時の薬価薬価未収載

 

ベネクレクスタは初の経口BCL-2阻害薬で、既に海外では販売されていて慢性リンパ性白血病の標準治療に位置づけられています。

今回は慢性リンパ性白血病(CLL)とベネクレクスタ(ベネトクラクス)の作用機序、エビデンスについてご紹介します。

 

慢性リンパ性白血病とは

白血病は「血液のがん」です。

血液細胞には、白血球(好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球、リンパ球(B細胞やT細胞)等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。

 

慢性リンパ性白血病(CLL:chronic lymphocytic leukemia)は、リンパ球のうち「成熟した小型のB細胞」が腫瘍化する疾患です。

腫瘍化したB細胞が末梢血や骨髄に存在している時には「慢性リンパ性白血病」と呼ばれ、リンパ節にあるときは「小リンパ球性リンパ腫」と呼ばれます。

 

慢性リンパ性白血病の発生頻度は日本では非常に少なく、白血病全体の約1~2%で約2,000人と推定されています。

 

慢性リンパ性白血病の症状と治療

慢性リンパ性白血病は進行が緩やかで無症状であることが多く、この場合経過観察が基本です。

進行すると倦怠感、寝汗を伴う微熱、貧血、血小板減少が認められることもあります。

 

症状がある場合、抗がん剤(フルダラビンやシクロホスファミド)と適宜リツキサン(一般名:リツキシマブ)を併用した治療や、イムブルビカ(一般名:イブルチニブ)による治療が行われます。1)

血液
イムブルビカ(イブルチニブ)の作用機序と副作用【慢性リンパ性白血病】

続きを見る

 

しかし上記の治療を行っても治療抵抗性になったり、一度は寛解(効いた)にも関わらず再発してしまうこともあります。

この場合、治療選択肢は限られていました。

 

今回ご紹介するベネクレクスタは再発・難治性の慢性リンパ性白血病に対してリツキサン(一般名:リツキシマブ)と併用することで治療効果が期待されています。

 

木元 貴祥
ではベネクレクスタに関与しているBCL-2とその働きについて説明します。

 

BCL-2によるアポトーシスの抑制

正常の細胞がダメージや傷を受けた場合、そのまま放置されてしまうと異常細胞になってしまったり、がん細胞になってしまったりします。

そのため、細胞には「アポトーシス」と呼ばれる自然細胞死の機能が備わっており、異常な細胞はアポトーシスによって自然に消滅していきます。

 

しかし慢性リンパ性白血病細胞はBCL-2と呼ばれる抗アポトーシスタンパク質を過剰に発現してることが知られています。

BCL-2は通常、細胞内のミトコンドリアに存在していますが、がん細胞や白血病細胞が過剰に発現するとアポトーシスが抑制され、死ななくなってしまいます。

BCL-2によるアポトーシスの抑制:慢性リンパ性白血病(CLL)

 

また、抗がん剤等で白血病細胞がダメージを受けると、通常はアポトーシスが起こりますが、BCL-2が発現しているとアポトーシスが抑制されることから、抗がん剤の耐性にも関与していると考えられています。

 

その他、慢性リンパ性白血病の腫瘍細胞の表面にはCD5やCD23がよく発現していることが知られていますが、一部CD20も発現していることがあります。

 

ベネクレクスタ(ベネトクラクス)の作用機序:BCL-2阻害薬

ベネクレクスタは白血病細胞で過剰に発現しているBCL-2を選択的に阻害する薬剤です。

ベネクレクスタ(ベネトクラクス)の作用機序:BCL-2阻害薬

 

BCL-2が阻害されることで白血病細胞のアポトーシス機能が回復し、自然細胞死が誘導されると考えられます。

 

また、併用するリツキサンは白血病細胞のCD20を特異的に阻害するモノクローナル抗体薬です。リツキサンの作用機序については以下の記事をご覧ください。

血液
リツキサン(リツキシマブ)の作用機序と副作用【悪性リンパ腫】

続きを見る

 

エビデンス紹介:MURANO試験

根拠となった臨床試験を一つ紹介します。2-3)

本試験は1~3つの治療歴のある再発・難治性の慢性リンパ性白血病患者さんを対象に、ベネクレクスタ+リツキサン群とトレアキシン(ベンダムスチン)+リツキサン群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」とされました。

試験群ベネクレクスタ+
リツキサン群
トレアキシン+
リツキサン群
PFS中央値未到達17か月
HR=0.17[95%CI:0.11-0.25], p<0.001
2年時点の全生存率91.9%86.6%
HR=0.48[95%CI:0.25-0.90]
Grade3/4の
いずれかの有害事象
82.0%70.2%
-Grade3/4の好中球減少症
-Grade3/4の発熱性好中球減少症
57.7%
3.6%
38.8%
9.6%

 

このようにトレアキシン+リツキサンと比較してベネクレクスタ+リツキサンは増悪までの期間を有意に延長することが示されています。

 

木元 貴祥
ただし、好中球減少症についてはベネクレクスタ群で高かったことから注意が必要ですね。

 

副作用

前述の臨床試験では好中球減少症、感染症、貧血、血小板減少などが報告されています。

 

用法・用量

通常、成人にはベネトクラクスとして、1日1回食後に経口投与ですが、用量を徐々に増やしていきますので投与量が変則的です。

 

下表にまとめてみましたのでご参考ください。

治療期投与量
用量漸増期1週目20mg
2週目50mg
3週目100mg
4週目200mg
5週目400mg
維持投与期400mg

患者の状態により適宜減量する。

 

木元 貴祥
治療開始から5週目までは週毎に投与量が異なりますので注意が必要ですね!

 

薬価

現時点では薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ベネクレクスタはこんな薬

  • 経口のBCL-2阻害薬
  • 白血病細胞のアポトーシス機能を回復させる
  • 治療開始から5週目までは投与量が異なる

 

これまで慢性リンパ性白血病の治療選択肢は限られていたことから、今後、色々な薬剤開発が進めば良いなと感じています。

 

以上、今回は慢性リンパ性白血病と、国内初のBCL-2阻害薬であるベネクレクスタの作用機序についてご紹介しました☆

 

引用文献・資料等

  1. 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版
  2. MURANO試験:N Engl J Med 2018; 378:1107-1120
  3. MURANO試験(追加解析):J Clin Oncol. 2019 Feb 1;37(4):269-277.

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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