11.血液・造血器系 12.悪性腫瘍

トレアキシン(ベンダムスチン)の作用機序と副作用【悪性リンパ腫】

2021年3月23日トレアキシン(一般名:ベンダムスチン)の効能・効果に「再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫」を追加することが承認されました。

 

現在のトレアキシンの効能・効果はこちらです。

  • 低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫
  • 再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  • 慢性リンパ性白血病
  • 腫瘍特異的T細胞輸注療法の前処置

 

再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫については、同日承認されたポライビー(ポラツズマブ ベドチン)との併用において使用されます。

ポライビー(ポラツズマブ ベドチン)の作用機序・特徴【DLBCL】

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なお、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫については、2018年7月2日ガザイバ(オビヌツズマブ)との併用を目的として適応拡大されています。

ガザイバ(オビヌツズマブ)の作用機序と副作用【悪性リンパ腫】

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今回は「B細胞性非ホジキンリンパ腫」とトレアキシン(ベンダムスチン)の作用機序についてご紹介します。

 

非ホジキンリンパ腫とは

非ホジキンリンパ腫は、悪性リンパ腫の種類の1つに分類されている血液腫瘍です。

悪性リンパ腫には大きく分類して「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」があり、大部分が非ホジキンリンパ腫です。

 

非ホジキンリンパ腫の中には、リンパ球の中でも「B細胞」が腫瘍化して発生するものがあります。

また、腫瘍化したB細胞の多くは細胞膜表面に「CD20」と呼ばれるタンパク質を発現していることが知られています。

 

このように腫瘍化したB細胞が全身のリンパ節(頸部、胸部、腹部など)に凝集することで様々な症状が現れます。

 

非ホジキンリンパ腫の治療

B細胞性の非ホジキンリンパ腫の中にもいくつかの分類あって、悪性度や進行具合が異なっています。

 

ただ、多くの場合、進行しているB細胞性の非ホジキンリンパ腫では抗がん剤と分子標的治療薬による化学療法が標準的に行われます。

主には以下のような併用療法が初回治療として用いられています。

  • R-CHOP療法:リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン
  • R-CVP療法:リツキシマブ、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン
  • RB療法:リツキシマブベンダムスチン
  • ガザイバ+ベンダムスチン併用療法

 

このように、B細胞性の非ホジキンリンパ腫の腫瘍細胞は「CD20」を有していることから、CD20を特異的に阻害するリツキサン(一般名:リツキシマブ)が標準的に用いられますが、トレアキシンは初回治療からリツキサンと併用して使用されます。

 

そこに同じくCD20を標的とするガザイバとの併用療法が追加されました。

ガザイバ(オビヌツズマブ)の作用機序と副作用【悪性リンパ腫】

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トレアキシン(一般名:ベンダムスチン)の作用機序

がん細胞が増殖する際、まずDNAの複製が行われます。

二本鎖DNAが解かれて一本鎖DNAになり、その後ポリメラーゼ等によって複製が行われて二本鎖DNAが完成します。

 

トレアキシンは、1960年代初めに旧東ドイツで合成されたナイトロジェンマスタード系のアルキル化薬に分類されています。

ナイトロジェンマスタードと言えば、世界大戦時にドイツ軍が毒ガスとして使用した化学兵器として有名ですが、そこから抗がん剤としても開発が進み、シクロホスファミドに代表される抗がん剤として今日まで使用されるようになりました。

 

トレアキシンは、
ナイトロジェンマスタード化学構造と、代謝拮抗剤のプリンアナログ様化学構造を併せ持つDNA合成抑制剤です。

ナイトロジェンマスタード構造を有することから、アルキル化薬としての作用を有しています。

がん細胞の二本鎖DNAに結合して架橋構造を形成することで、一本鎖DNAになることを阻害し、その後の複製反応をストップさせます。

その結果、がん細胞死(アポトーシス)を引き起こし、がん細胞の増殖が抑制できると考えられています。

その他にも有糸分裂期(M期)に作用して、分裂期にがん細胞の崩壊を促したりする作用もあると考えられています。

 

副作用

主な副作用には、好中球減少、悪心・嘔吐、食欲不振、便秘、疲労などが報告されています。

重大な副作用としては間質性肺炎腫瘍崩壊症候群アナフィラキシーショックなどが発現する可能性がありますので特に注意が必要です。

 

あとがき

トレアキシンはアルキル化薬にはない作用機序(分裂期への作用など)を有していることから、他のアルキル化薬との交叉耐性がない点も特徴だと言われています。

 

これまでB細胞性非ホジキンリンパ腫の初回治療はリツキサンとしか併用できませんでしたが、今後は新薬のガザイバ(一般名:オビヌツズマブ)との併用が可能となります。

初回治療としてのリツキサンとガザイバの治療効果の違い、臨床試験の成績については以下の記事をご参照ください。

ガザイバ(オビヌツズマブ)の作用機序と副作用【悪性リンパ腫】

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以上、本日はB細胞性非ホジキンリンパ腫とトレアキシン(ベンダムスチン)の作用機序についてご紹介いたしました☆

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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