8.感染症 疾患・作用機序まとめ

【インフルエンザ】ノイラミニダーゼ阻害薬の作用機序と一覧表

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今回は、インフルエンザウイルスの感染・増殖メカニズムと、インフルエンザ治療薬の一つである「ノイラミニダーゼ阻害薬」の作用機序についてご紹介します。

また、他のインフルエンザ治療薬との作用機序の違いについても説明いたします。

 

ノイラミニダーゼ阻害薬はいくつか種類があり、それぞれ投与法や投与経路(経口、吸入、点滴静注)が異なりますので、特徴等を一覧でまとめて記載しています!

 

インフルエンザウイルスとは

インフルエンザ、という名前は必ず一度は聞いたことがあると思います。

正式には「インフルエンザウイルス感染症」と呼びます。例年12月~3月頃に流行し、世間を賑わせていますよね。

 

インフルエンザウイルスは「一本鎖RNA」を持つウイルスで、単体では増殖することができませんので、ヒトを含む様々な動物に感染して増殖します。

 

インフルエンザウイルスは、構成するタンパク質の違いから、A型、B型、C型に分類されています。

  • A型:ヒト、鳥、ブタ、ウマに感染し、病原性が強く、症状も強く出る
  • B型:ヒトにしか感染せず、病原性が強い
  • C型:ヒトにしか感染しないが、病原性は弱い

よく流行するのは病原性の強いA型B型ですね。

C型については一度感染すると免疫を獲得するため、大人ではかかりにくいですが、乳幼児に多いとされています。

 

症状

インフルエンザ感染の症状としては、

  • 突然現れる高熱
  • 頭痛
  • 筋肉痛や関節痛
  • のどの強い痛み
  • 咳・鼻水

などが挙げられます。

特にA型のインフルエンザ感染症では上記の症状(特に高熱)が強くみられる傾向があります。

免疫力の低下してる方や高齢者の方では気管支炎や肺炎など、症状が重篤化する恐れもあります。

 

また小児では中耳炎、熱性けいれん、急性脳症などを併発し、重篤になる場合があるため、注意が必要です。

 

インフルエンザの予防

インフルエンザ感染症は、まずは感染しないことが最重要です!

そのため、毎年のインフルエンザワクチン接種の他、手洗い・うがい・マスク着用・加湿、といった日頃の生活で感染を予防することが大切です。

 

インフルエンザの治療

インフルエンザと思われる症状が発現した際には、まずは医療機関を受診して診断することが重要です。

インフルエンザであった場合、医師がその必要性を判断し、抗インフルエンザウイルス薬が処方されます。また、水分を十分に補給し、睡眠を十分にとることも大切です。

それではここからインフルエンザウイルスの感染メカニズムについてご紹介します。

インフルエンザウイルスの感染・増殖メカニズム

インフルエンザウイルスは以下の図のようなプロセスで感染・増殖します。

  1. 吸着・膜融合・脱殻ヒト細胞内に入る
  2. mRNAの合成とRNAの複製ヒト細胞内で増える
  3. 細胞からの遊離:ヒト細胞外へ出て、他の細胞に感染する

それではここから各プロセスについてご説明します。

 

①吸着・膜融合・脱殻

インフルエンザウイルスは、ヒトの粘膜上皮細胞にある「シアル酸レセプター」と呼ばれるところに結合(“吸着”と呼びます)し、そこからヒト細胞内に取り込まれます。

 

ヒト細胞内に取り込まれたウイルスは、今度はウイルスを包んでいたヒト細胞の膜とウイルスの殻の部分を融合させ(“膜融合”と呼びます)、ウィルスの殻が破れることで(“脱殻”と呼びます)、ウイルスのRNAがヒト細胞内に放出されます。

 

②mRNAの合成とRNAの複製

通常、ヒトのDNAは「転写」によってmRNAが作成され、mRNAの情報を「翻訳」することでタンパク質が合成されます。

※転写:DNAまたはRNAからmRNAを合成すること
※翻訳:mRNAからタンパク質を合成すること

 

【インフルエンザウイルスのmRNA合成】

インフルエンザウイルスのRNAは非常に単純な構造のため、そのままでは翻訳が開始できません。

少し難しく言うと、RNAの頭の部分に「キャップ構造(5'キャップ)」と呼ばれるものが存在しない限り、翻訳は開始されません。

もちろん、ヒトのmRNAにはキャップ構造があります。

 

従って、インフルエンザウイルスは自身のRNAからキャップ構造を持つmRNAを作成する必要があります。

 

そこで、インフルエンザウイルスはヒトのmRNAのキャップ構造を認識し、「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ」と呼ばれる自身のタンパク質によって切断して自分のRNAに結合させます。

エンドヌクレアーゼによってヒトのmRNAからキャップ構造を奪い取るイメージですね。

 

このキャップ構造を起点(プライマー)として転写が開始され、インフルエンザウイルスが元から持っている「RNA依存性RNAポリメラーゼ」によって伸長反応が促されます。

伸長反応の最後には「ポリA鎖」と呼ばれるmRNAの安定性に関わるものも付与され、ウイルスRNAからウイルスmRNAの転写が完了します。

 

その後、mRNAは翻訳が開始され、ウイルスのタンパク質が合成されます。

 

【インフルエンザウイルスのRNA複製】

一方、RNAの複製反応は、不明確なことが多いとされていますが、インフルエンザウイルスが元から持っている「RNA依存性RNAポリメラーゼ」によって、自身のRNAの複製が行われると考えられています。

 

このようにして出来上がったウイルスタンパク質とウイルスのRNAが合わさって、インフルエンザウイルスが完成します。

このプロセスを繰り返すことで、ヒトの細胞内ではインフルエンザウイルスが増殖し続けます。

 

③細胞からの遊離

ヒト細胞内で増殖したインフルエンザウイルスは、最後にヒト細胞から離れ、また他の細胞に感染していきます。

遊離する直前には、ヒト細胞の表面に盛り上がって突起(“出芽”と呼びます)となっており、シアル酸レセプターに繋がれている状態です。

このままでは細胞から遊離できませんので、インフルエンザウイルスは「ノイラミニダーゼ」と呼ばれるタンパク質によって、シアル酸レセプターを切り離します。

これにより、ヒト細胞からインフルエンザウイルスが遊離され、また他の細胞に感染していきます。

 

以上がインフルエンザウイルスの感染・増殖メカニズムです!

ノイラミニダーゼ阻害薬の作用機序

ノイラミニダーゼ阻害薬は上記「③細胞からの遊離」に関与している「ノイラミニダーゼ」を選択的に阻害する作用機序を有しています!

ノイラミニダーゼを阻害することで、ウイルスがヒト細胞から遊離できなくなってしまい、そのまま細胞膜表面で死滅します。

 

ノイラミニダーゼ阻害薬の注意事項(異常行動)

これまでタミフル(オセルタミビル)の添付文書には、
「10歳以上の未成年患者(ハイリスク患者を除く)への使用を原則として差し控える」ことが記載されていました。

これは平成19年に、タミフル服用中のインフルエンザ患者さんが異常行動によって自殺したとこの報道が相次いだためです。

 

その後、様々な検討が行われ、インフルエンザ治療薬の服用有無によらず異常行動が起こる事がわかりました。

そして2018年8月21日、厚労省から各インフルエンザ治療薬全てに対して以下の項目を追記するよう指示が出ています。

「服用の有無や種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には異常行動を発現した例が報告されている」

引用:【厚生労働省】抗インフルエンザウイルス薬の「使用上の注意」の改訂について

 

同時に
「10歳以上の未成年患者(ハイリスク患者を除く)への使用を原則として差し控える」の記載が削除されますので、使用制限が解除されています。

 

ノイラミニダーゼ阻害薬の一覧まとめ

以下に現在(2019.6.18)、主に使用されているインフルエンザ治療薬の一覧表を掲載しています!(治療に用いる場合)

インフルエンザ治療薬の一覧表:ノイラミニダーゼ阻害薬とゾフルーザ

予防に用いる場合、用法・用量が異なる場合がありますのでご注意ください。

 

成人では利便性が重視される傾向がありますので、経口薬のタミフルもしくは、1回の吸入で治療が完了するイナビルが好まれていると思います。

一方、小児に使用する場合、吸入が難しいので、経口薬のタミフルが好まれると思います。

 

どの薬剤もA型・B型のインフルエンザ感染症に使用できます。

また、治療効果としてはどの薬剤も大差はないとされています。

 

治療開始までについてですが、
ノイラミニダーゼ阻害薬は「インフルエンザ感染症の発症から2日以内(48時間以内)に投与を開始すること」と添付文書に記載があるため、注意が必要です。

 

その他のインフルエンザ治療薬の作用機序

その他のインフルエンザ治療薬には

がありますが、現在ではノイラミニダーゼ阻害薬が主流のですのでほとんど使用されていません。

以下の図にインフルエンザ治療薬の作用機序まとめを掲載しています。

 

シンメトレル錠(一般名:アマンダジン)の作用機序

シンメトレルは、インフルエンザウイルス感染初期の「脱殻」を選択的に阻害する作用機序を有した薬剤です。

耐性の問題や、A型インフルエンザウイルスにしか使用できないため、近年ではあまり使用されていません。

 

アビガン錠(一般名:ファビピラビル)の作用機序

アビガンは「②mRNAの合成とRNAの複製」に関与している「RNA依存性RNAポリメラーゼ」を選択的に阻害する薬剤です。

mRNAの伸長反応RNAの複製を共に阻害できるため、ウイルスの増殖を抑制することが可能です。

 

しかしながら、アビガン錠は「緊急事態と国が認めた場合限り使用できる」という異例の条件付きの承認のため普段は使用できません。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

 

あとがき

現在、主流で使用されているインフルエンザ治療薬は「ノイラミニダーゼ阻害薬」ですが、いくつかの種類・投与経路・投与日数がありますので今回一覧表としてまとめてご紹介しました!

 

2018年には1回の経口投与で治療が完了するキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬「ゾフルーザ錠」(一般名:バロキサビル マルボキシル)が承認されました。

作用機序や使い分け等について以下の記事で解説しています。

 

まずは、予防のために手洗い・うがい・マスク着用を徹底してくださいね☆

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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