11.血液・造血器系 12.悪性腫瘍

ヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序:ゾスパタとの違い・比較【AML】

更新日:

2019年6月18日、「再発又は難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病」を効能・効果とするヴァンフリタ錠(一般名:キザルチニブ)が承認されました!

第一三共|ニュースリリース

基本情報

製品名ヴァンフリタ錠17.7mg/26.5mg
一般名キザルチニブ
製品名の由来FLT3 の語感に由来する。
製造販売第一三共(株)
効能・効果再発又は難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病
用法・用量通常、成人にはキザルチニブとして1日1回26.5mgを2週間経口投与し、
それ以降は1日1回53mgを経口投与する。
なお、患者の状態による適宜減量する。
収載時の薬価薬価未収載

 

新薬情報
ヴァンフリタはFLT3阻害剤に分類されていますので、似たような作用機序を有する薬剤にはゾスパタ(一般名:ギルテリチニブ)があり、適応もほぼ同じです。

 

今回は急性骨髄性白血病とヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序やエビデンス、ゾスパタとの違いについてご紹介します。

 


急性骨髄性白血病

白血病は「血液のがん」です。

血液細胞には、白血球、赤血球、血小板等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。

また、白血球には

  • 顆粒球(骨髄系):好中球、好酸球、好塩基球
  • リンパ球(リンパ系):B細胞、T細胞、NK細胞

があります。

 

急性骨髄性白血病は、白血球の中でも「顆粒球」の未熟細胞が腫瘍化する疾患で、予後は不良とされています。

この腫瘍化した未熟な顆粒球のことを「白血病細胞」と呼んでおり、白血病細胞の表面にはしばしば「FLT3受容体」と呼ばれるタンパク質が発現していることが知られています。

急性骨髄性白血病とFLT3受容体

 

急性骨髄性白血病の予後因子

急性骨髄性白血病には以下のような様々な予後因子が知られています。

因子予後良好予後不良
年齢50歳以下60歳以上
合併症有無なしあり(感染症等)
染色体の核型t(8;21)
t(15;17)
inv(16) or t(16;16)
3q異常
5・7番の異常
複雑核型 等
遺伝子異常NPM1変異
CEBPA変異
FLT3変異
TP53変異
寛解までの治療期間1回2回以上

 

年齢染色体/遺伝子異常は予後因子として重要であると言われており、FLT3遺伝子に変異がある場合、特に予後不良です。

 

急性骨髄性白血病の治療

基本的な治療は、抗がん剤の多剤併用療法(化学療法)です。1)

1カ月程の化学療法(導入化学療法)によって8割以上の患者さんでは「完全寛解」が得られ、その後、地固め療法を数回行います。

そして完全寛解が5年以上続けば、「治癒」に至ります。

 

ただし、最初の導入化学療法で1~2割の患者さんは抵抗性を示してしまいます(難治性)。

また、一度完全寛解が得られたとしても、半数以上の患者さんは再発してしまいます。

 

このような再発・難治性の患者さんに対して使用できる薬剤はマイロターグ(一般名:ゲムツズマブオゾガマイシン)がありますが、それ以外には有効な薬剤はなく、造血幹細胞移植などしか選択肢がありませんでした。

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今回ご紹介するヴァンフリタはFLT3-ITD遺伝子変異陽性の再発・難治性急性骨髄性白血病に使用できる薬剤です。

 

新薬情報
それではここからFLT3遺伝子変異について解説致します。

 

FLT3遺伝子変異:ITDとTKD

急性骨髄性白血病の白血病細胞には、しばしばFLT3受容体が存在しています。

 

しかし、急性骨髄性白血病の患者さんのうち、約1/3はFLT3遺伝子に変異があることが知られており、この変異がある場合、予後は非常に不良と言われています。

 

FLT3遺伝子変異には以下の2つのタイプがあります。

  1. 遺伝子内縦列重複変異:ITD(Internal Tandem Duplication)
  2. チロシンキナーゼドメイン変異:TKD(Tyrosine Kinase Domain)

FLT3遺伝子変異の種類:ITDとTKD

 

今回ご紹介するヴァンフリタはITDの変異を選択的に阻害する薬剤ですので、TKDには使用できないことに注意が必要です。

 

ヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序

ヴァンフリタは、白血病細胞の内側からFLT3-ITD遺伝子変異のあるFLT3受容体を選択的に阻害します。

ヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序:FLT3阻害薬

 

その結果、がんの増殖が抑制され、急性骨髄性白血病の進行抑制効果を発揮すると考えられてます。

 

エビデンス紹介:QuANTUM-R試験

根拠となった臨床試験を一つご紹介します。2)

本試験はFLT3-ITD変異を有する再発または難治性のAML患者さんを対象に、救済化学療法とヴァンフリタを比較した海外第Ⅲ相臨床試験です。

 

本試験の主要評価項目は「全生存期間」で結果は以下の通りでした。

試験群救済化学療法ヴァンフリタ
全生存期間中央値4.7か月6.2か月
HR=0.76, p=0.02
EFS*0.9か月1.4か月
HR=0.90, p=0.11
QT延長全Grade:0%
Grade 3以上:0%
全Grade:26%
Grade 3以上:4%

*EFS(Event Free Survival):増悪等のイベント無しに生存している期間

 

新薬情報
ヴァンフリタは有意に全生存期間を延長していますが、QT延長の副作用の発現が高い印象を受けますね・・・。

その他の副作用については特に差は無かったようです。

 

副作用

主な副作用として、悪心(31.7%)、嘔吐(18.3%)、下痢(11.5%)、無力症などが報告されています。

 

重大な副作用としては

  • QT間隔延長(26.3%)、心室性不整脈(Torsade de Pointesを含む)(頻度不明)
  • 感染症
  • 出血
  • 骨髄抑制
  • 心筋梗塞(0.4%)
  • 急性腎障害(1.4%)
  • 間質性肺疾患

が挙げられていますのでより注意が必要です。

 

用法・用量

通常、成人にはキザルチニブとして1日1回26.5mgを2週間経口投与し、それ以降は1日1回53mgを経口投与します。

 

新薬情報
最初の2週間とそれ以降では投与量が異なりますので注意が必要ですね。

 

薬価

現時点では薬価未収載です。

 

ヴァンフリタとゾスパタの違い・比較

現時点での情報で一覧表を作成してみました(2019年6月18日時点)。

FLT3阻害薬:ヴァンフリタとゾスパタの違い・比較の一覧表

 

新薬情報
適応については、ゾスパタの方が広い(ITDとTKD共に使用可能)印象ですね。

併用注意はそこまで違いはありませんが、ゾスパタではP糖タンパクに作用する薬剤とは注意が必要です。

 

まとめ・あとがき

ヴァンフリタはこんな薬

  • FLT3-ITD遺伝子変異を有するFLT3受容体を阻害する
  • 1日1回経口投与(最初の2週間とそれ以降で用量が異なる点に注意)
  • 類薬にはゾスパタ(ギルテリチニブ)がある

 

これまで再発・難治性の患者さんに対してはマイロターグ(一般名:ゲムツズマブオゾガマイシン)、もしくは造血幹細胞移植しか選択肢がありませんでした。

 

2018年には同じくFLT3受容体阻害薬のゾスパタ(一般名:ギルテリチニブ)が承認・発売されましたが、ゾスパタはFLT3遺伝子変異のITDとTKDを共に阻害することができます。

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新薬情報
ヴァンフリタはFLT3-ITD変異のみの阻害ですので、この差が臨床的にどのような差につながるのか興味がありますね。

 

今後は使い分け等が検討されれば興味深いと思います。

以上、今回は急性骨髄性白血病とヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序についてご紹介しました。

 

引用文献・資料等

  1. 【日本血液学会】造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版
  2. QuANTUM-R試験:Lancet Oncol June 04, 2019

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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