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ヴァンフリタ錠(一般名:キザルチニブ)とは2019年6月18日に「再発又は難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病」を効能・効果として承認された新薬で、新規のFLT3阻害剤に分類されています!
第一三共|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ヴァンフリタ錠17.7mg/26.5mg |
一般名 | キザルチニブ |
製品名の由来 | FLT3 の語感に由来する。 |
製造販売 | 第一三共(株) |
効能・効果 | 再発又は難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病 |
用法・用量 | 通常、成人にはキザルチニブとして1日1回26.5mgを2週間経口投与し、 それ以降は1日1回53mgを経口投与する。 なお、患者の状態による適宜減量する。 |
収載時の薬価 | 17.7mg:19,694.90円 26.5mg:26,582.10円 |
今回は急性骨髄性白血病とヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序やエビデンス、ゾスパタとの違いについてご紹介します。
目次(クリック可)
急性骨髄性白血病
白血病は「血液のがん」です。
血液細胞には、白血球、赤血球、血小板等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。
また、白血球には
- 顆粒球(骨髄系):好中球、好酸球、好塩基球
- リンパ球(リンパ系):B細胞、T細胞、NK細胞
があります。
急性骨髄性白血病は、白血球の中でも「顆粒球」の未熟細胞が腫瘍化する疾患で、予後は不良とされています。
この腫瘍化した未熟な顆粒球のことを「白血病細胞」と呼んでおり、白血病細胞の表面にはしばしば「FLT3受容体」と呼ばれるタンパク質が発現していることが知られています。
急性骨髄性白血病の予後因子
急性骨髄性白血病には以下のような様々な予後因子が知られています。
因子 | 予後良好 | 予後不良 |
年齢 | 50歳以下 | 60歳以上 |
合併症有無 | なし | あり(感染症等) |
染色体の核型 | t(8;21) t(15;17) inv(16) or t(16;16) | 3q異常 5・7番の異常 複雑核型 等 |
遺伝子異常 | NPM1変異 CEBPA変異 | FLT3変異 TP53変異 |
寛解までの治療期間 | 1回 | 2回以上 |
年齢と染色体/遺伝子異常は予後因子として重要であると言われており、FLT3遺伝子に変異がある場合、特に予後不良です。
急性骨髄性白血病の治療
基本的な治療は、抗がん剤の多剤併用療法(化学療法)です。1)
1カ月程の化学療法(導入化学療法)によって8割以上の患者さんでは「完全寛解」が得られ、その後、地固め療法を数回行います。
そして完全寛解が5年以上続けば、「治癒」に至ります。
ただし、最初の導入化学療法で1~2割の患者さんは抵抗性を示してしまいます(難治性)。
また、一度完全寛解が得られたとしても、半数以上の患者さんは再発してしまいます。
このような再発・難治性の患者さんに対して使用できる薬剤はマイロターグ(一般名:ゲムツズマブオゾガマイシン)がありますが、それ以外には有効な薬剤はなく、造血幹細胞移植などしか選択肢がありませんでした。
-
マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)の作用機序と副作用【急性骨髄性白血病】
続きを見る
今回ご紹介するヴァンフリタはFLT3-ITD遺伝子変異陽性の再発・難治性急性骨髄性白血病に使用できる薬剤です。
FLT3遺伝子変異:ITDとTKD
急性骨髄性白血病の白血病細胞には、しばしばFLT3受容体が存在しています。
しかし、急性骨髄性白血病の患者さんのうち、約1/3(30~33%)はFLT3遺伝子に変異があることが知られており、この変異がある場合、予後は非常に不良と言われています。
FLT3遺伝子変異には以下の2つのタイプがあります。
- 遺伝子内縦列重複変異:ITD(Internal Tandem Duplication):約25%
- チロシンキナーゼドメイン変異:TKD(Tyrosine Kinase Domain):約7%
今回ご紹介するヴァンフリタはITDの変異を選択的に阻害する薬剤ですので、TKDには使用できないことに注意が必要です。
ヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序
ヴァンフリタは、白血病細胞の内側からFLT3-ITD遺伝子変異のあるFLT3受容体を選択的に阻害します。
その結果、がんの増殖が抑制され、急性骨髄性白血病の進行抑制効果を発揮すると考えられてます。
エビデンス紹介:QuANTUM-R試験
根拠となった臨床試験を一つご紹介します。3)
本試験はFLT3-ITD変異を有する再発または難治性のAML患者さんを対象に、救済化学療法とヴァンフリタを比較した海外第Ⅲ相臨床試験です。
本試験の主要評価項目は「全生存期間」で結果は以下の通りでした。
試験群 | 救済化学療法 | ヴァンフリタ |
全生存期間中央値 | 4.7か月 | 6.2か月 |
HR=0.76, p=0.02 | ||
EFS* | 0.9か月 | 1.4か月 |
HR=0.90, p=0.11 | ||
QT延長 | 全Grade:0% Grade 3以上:0% | 全Grade:26% Grade 3以上:4% |
*EFS(Event Free Survival):増悪等のイベント無しに生存している期間
その他の副作用については特に差は無かったようです。
副作用
主な副作用として、悪心(31.7%)、嘔吐(18.3%)、下痢(11.5%)、無力症などが報告されています。
重大な副作用としては
- QT間隔延長(26.3%)、心室性不整脈(Torsade de Pointesを含む)(頻度不明)
- 感染症
- 出血
- 骨髄抑制
- 心筋梗塞(0.4%)
- 急性腎障害(1.4%)
- 間質性肺疾患
が挙げられていますのでより注意が必要です。
用法・用量
通常、成人にはキザルチニブとして1日1回26.5mgを2週間経口投与し、それ以降は1日1回53mgを経口投与します。
収載時の薬価
収載時(2019年9月4日)の薬価は以下の通りです。
- ヴァンフリタ錠17.7mg:19,694.90円
- ヴァンフリタ錠26.5mg:26,582.10円(1日薬価:53,164.20円)
薬価算定の根拠は以下の記事をご参考ください。
-
【新薬:薬価収載】12製品+再生医療等製品(2019年9月4日)
続きを見る
ヴァンフリタとゾスパタの違い・比較
現時点での情報で一覧表を作成してみました(2019年6月18日時点)。
併用注意はそこまで違いはありませんが、ゾスパタではP糖タンパクに作用する薬剤とは注意が必要です。
まとめ・あとがき
ヴァンフリタはこんな薬
- FLT3-ITD遺伝子変異を有するFLT3受容体を阻害する
- 1日1回経口投与(最初の2週間とそれ以降で用量が異なる点に注意)
- 類薬にはゾスパタ(ギルテリチニブ)がある
これまで再発・難治性の患者さんに対してはマイロターグ(一般名:ゲムツズマブオゾガマイシン)、もしくは造血幹細胞移植しか選択肢がありませんでした。
2018年には同じくFLT3受容体阻害薬のゾスパタ(一般名:ギルテリチニブ)が承認・発売されましたが、ゾスパタはFLT3遺伝子変異のITDとTKDを共に阻害することができます。
-
ゾスパタ(ギルテリチニブ)の作用機序と副作用【急性骨髄性白血病】
続きを見る
今後は使い分け等が検討されれば興味深いと思います。
以上、今回は急性骨髄性白血病とヴァンフリタ(キザルチニブ)の作用機序についてご紹介しました。
引用文献・資料等
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