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ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】

更新日:

2019年4月19日の厚労省薬食審・医薬品第二部会にて「切除不能な進行・再発非小細胞肺がん(扁平上皮)」の一次治療としてのポートラーザ点滴静注液800mg(一般名:ネシツムマブ(遺伝子組換え))の承認が了承されました。

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名ポートラーザ点滴静注液
一般名ネシツムマブ
製品名の由来
製薬会社製造販売:日本イーライリリー(株)
販売:日本化薬(株)
効能・効果切除不能な進行・再発の扁平上皮非小細胞肺がん
用法・用量ゲムシタビン及びシスプラチンとの併用において、
通常、成人にはネシツムマブ(遺伝子組換え)として
1回800mgをおよそ60分かけて点滴静注し、
週1回投与を2週連続し、3週目は休薬する。
これを1コースとして投与を繰り返す。
なお、患者の状態により適宜減量する。
収載時の薬価薬価未収載

 

ポートラーザは抗EGFR抗体薬に分類されていますので、大腸がんでよく使用されるアービタックス(一般名:セツキシマブ)やベクティビクス(一般名:パニツムマブ)と同じ作用機序を有しています。

 

新薬情報
肺がんでは初の抗EGFR抗体薬になる見込みです!

 

今回は肺がんの中でも「扁平上皮肺がん」について、そしてポートラーザの作用機序やエビデンスについてご紹介します。

 


非小細胞肺がんと治療について

肺がんは性質や薬の効き方によって“小細胞肺がん”と“非小細胞肺がん”に分類されています。

早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。

 

また非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。

  1. 非扁平上皮肺がん
  2. 扁平上皮肺がん

非扁平上皮肺がん初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況によって優先順位で使用する薬剤が細かく使い分けられています。非扁平上皮肺がんの治療については以下の記事をご参照くださいませ。

 

一方、扁平上皮肺がん初回化学療法(一次化学療法)は以下のように、がん細胞の「PD-L1」発現状況に応じた治療が行われます。1)

  • PD-L1陽性:キイトルーダ単剤、化学療法(抗がん剤)±キイトルーダ
  • PD-L1陰性:化学療法(抗がん剤)±キイトルーダ

 

扁平上皮肺がんに対するキイトルーダについては以下の記事で作用機序やエビデンスについて解説しています。

 

今回ご紹介するポートラーザは扁平上皮肺がんの一次治療としてゲムシタビン+シスプラチン療法と併用して使用される見込みです。

 

新薬情報
それではここからポートラーザが関与するEGFRについて解説します。

 

扁平上皮肺がんとEGFR

非小細胞(扁平上皮)肺がんはしばしばEGFR(上皮成長因子受容体:Epidermal Growth Factor Receptor)と呼ばれる受容体を発現しています。

参考EGFRの読み方は「イージーエフアール」です。

 

EGFRに因子であるEGFが結合すると、がん細胞の増殖活性が促進され、無秩序に増殖していきます。

扁平上皮肺がんとEGFRの働き

 

新薬情報
このようにがん細胞の増殖に深く関与しているのがEGFRですね。

 

ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序

ポートラーザはEGFRを特異的に阻害するヒトIgG1モノクローナル抗体薬(抗EGFR抗体薬)です!

がん細胞のEGFRを阻害することでEGFRを介した増殖活性を抑制するといった作用機序を有しています。

 

さらに、がん細胞と結合したポートラーザをNK細胞(免疫細胞)が認識することで、NK細胞ががん細胞を直接攻撃します。これを「抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)」と呼び、がん細胞を除去することができると考えられています☆2)

 

エビデンス紹介:海外第Ⅲ相試験、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験

根拠となったのは以下の2つの試験です。

  • SQUIRE試験:海外第Ⅲ相臨床試験3-4)
  • 国内第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験5)

共に、扁平上皮肺がんの一次治療としてゲムシタビン+シスプラチン(GC療法)GC+ポートラーザ療法を比較した臨床試験で、主要評価項目は「全生存期間」とされました。

 

新薬情報
結果は下表にまとめています!両試験共にEGFRの発現有無別の解析も行われています。
試験名SQUIRE試験(海外)国内第Ⅱ相試験
試験群GC療法GC+
ポートラーザ療法
GC療法GC+
ポートラーザ療法
全生存期間中央値9.9か月11.5か月10.8か月14.9か月
HR=0.84, p=0.01HR=0.66, p=0.0161
EGFR陽性の患者さんの
全生存期間中央値
10か月11.7か月9.4か月14.8か月
HR=0.79, p=0.002HR=0.62, p=0.011
EGFR陰性の患者さんの
全生存期間中央値
19.1か月19.6か月
HR=1.52HR=0.76, p=0.554

 

このようにEGFRが発現している患者さんではポートラーザの上乗せ効果が顕著ですが、EGFRが発現していない患者さんではポートラーザの上乗せ効果が乏しいという結果でした。

 

新薬情報
もしかすると「EGFR陽性」と限定が付与される可能性もありますね。

 

ちなみに、ポートラーザは米国のガイドライン(NCCNガイドライン)で以下の理由より、推奨レジメンから削除されています・・・。

The NCCN Panel recently voted unanimously to delete the necitumumab/cisplatin/gemcitabine regimen from the NCCN Guidelines for patients with metastatic squamous cell NSCLC.

This decision reflects the fact that the NCCN Panel feels the addition of necitumumab to the regimen is not beneficial based on toxicity, cost, and limited improvement in efficacy when compared with cisplatin/gemcitabine.

【引用】NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®):Non-Small Cell Lung Cancer Version 3.2019

 

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効果が僅かで毒性も高く、費用も高い、と書かれていますね・・・。

現在、扁平上皮肺がんの一次治療はキイトルーダ±化学療法が使用できますので、ポートラーザが日本でどのように使用されていくのか注目です。

 

副作用

後日更新予定です。

国内試験で多く認められた副作用として、ざ瘡用皮疹、食欲不振、白血球減少、低マグネシウム血症、口内炎などがあります。5)

 

用法・用量

ゲムシタビン及びシスプラチンとの併用において、ネシツムマブ(遺伝子組換え)として1回800mgの週1回投与を2週連続し、3週目は休薬します。

 

新薬情報
体重や体表面積によらず投与量は800mgと固定されていますね。また、併用する抗がん剤はゲムシタビン+シスプラチンと限定されています。

 

薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ポートラーザはこんな薬

  • がん細胞のEGFRを特異的に阻害する抗EGFR抗体薬
  • ADCC活性を有する
  • ゲムシタビン+シスプラチンと併用して用いる

 

扁平上皮肺がんは数年前まで治療選択肢が少なく、化学療法(抗がん剤)しか使用できませんでした。

しかしここ数年で免疫チェックポイント阻害薬(例:キイトルーダやオプジーボ)などが使用可能となり、治療選択肢が広がってきています。

 

個人的にはこのような状況下でポートラーザはあまり使用されるケースが少なそうに思えますが、今後、免疫チェックポイント阻害薬との使い分け等が検討されれば興味深いと思います!

 

引用文献・資料等

  1. 肺癌診療ガイドライン2018年版
  2. Curr Opin Investig Drugs. 2010 Dec;11(12):1434-41.
  3. SQUIRE試験:Lancet Oncol. 2015 Jul;16(7):763-74.
  4. SQUIRE試験(EGFR有無別解析):Ann Oncol. 2016 Aug;27(8):1573-9.
  5. 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験:Lung Cancer. 2019 Mar;129:55-62.
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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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