11.血液・造血器系

ヘムライブラ(エミシズマブ)の作用機序と副作用【血友病A】

更新日:

厚労省の薬食審医薬品第二部会は2018年11月29日にて「インヒビター非保有の先天性血液凝固第Ⅷ因子欠乏患者(血友病A)における出血傾向の抑制」を対象疾患とするヘムライブラ皮下注30mg/60mg/90mg/105mg/150mg(一般名:エミシズマブ(遺伝子組換え))の承認が了承されました!

また、これまで1週間隔の投与のみでしたが、2週間隔や4週間隔についても追加される見込みです。

現時点では未承認のためご注意ください。

製薬会社

製造販売元:中外製薬(株)

 

ヘムライブラは2018年3月23日に、インヒビター保有の血友病Aに対して承認されていましたが、今回、インヒビター非保有まで適応が拡大される見込みです!

 

ヘムライブラは抗体製剤として初の「バイスペシフィック抗体(二重特異性抗体)」に分類されています。

通常の抗体は1種類の抗原としか結合できませんが、バイスペシフィック抗体は2種類の抗原と結合することができます。

 

今回は止血のメカニズムと血友病、そしてヘムライブラ(エミシズマブ)の作用機序と各エビデンスついてご紹介します。

 

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止血のメカニズム

我々が怪我などをした際に出血すると、体内では血を止めようとする機構(止血機構)が働きます。

止血には、血小板が関わる一次止血と、凝固因子が関わる二次止血があります。

出血が起こると、まずは血中に存在する血小板が活性化し、損傷部位に集まってきて血栓(一次血栓)を形成します。

これを一次止血と呼びますが、これだけでは簡単に剥がれてしまいます。

 

次いで、一次止血を補強する目的で二次止血が行われます。

二次止血では一次血栓の周囲を「フィブリン」と呼ばれるタンパク質で覆い、強固な止血血栓(二次血栓)を完成させます。

 

二次血栓に関与するフィブリンは様々な「凝固因子」が血液凝固反応(カスケード)を引き起すことで生成されます。

 

二次止血時の血液凝固反応(カスケード)とは

血液凝固反応では、全部で14種類の凝固因子が活性化することで引き起こされます。

一般的に凝固因子はローマ数字(例:Ⅴ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ)で表され、活性化した凝固因子はローマ数字の後ろに“a”を付けて(例:Ⅴa、Ⅶa、Ⅸa、Ⅹa)表されます。

体内の血液凝固反応は、反応の引き金となる因子の違いから「外因系」と「内因系」に分けられていますが、今回は内因系をメインにご紹介します。

 

内因系の血液凝固反応は第Ⅶ因子が活性化(Ⅶa)されることで開始されます。

Ⅶaはいくつかの反応を経て、第Ⅸ因子を活性化(Ⅸa)します。

また、第Ⅷ因子が活性化したⅧaと、Ⅸaによって第Ⅹ因子が活性化(Ⅹa)されます。

Ⅹaはプロトロンビンをトロンビンに変換し、トロンビンはフィブリノゲンをフィブリンに変換します。

 

このようにして完成したフィブリンが二次止血を行い、強固な血栓(二次血栓)を形成します。

今回ご紹介する血友病は上記の凝固因子が欠損して発症する疾患です。

 

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血友病とは

血友病は先天的に血液凝固因子が欠損している疾患です。

第Ⅷ因子が欠損している場合を「血友病A」、第Ⅸ因子が欠損している場合を「血友病B」と分類しています。

血友病は染色遺体の伴性劣性遺伝のため、男性の患者がほとんどを占めます。

国内での発症率は男児出生1万人に約1人で、現在では6000名程の患者さんがいらっしゃると推測されています。

 

血友病の病態と症状

血友病では血液凝固因子が欠損していることから、二次止血における血液凝固反応(カスケード)がうまく働きません。

その結果、二次止血に重要な「フィブリン」が生成されないため、様々な出血の症状が現れます。

 

特徴的な出血症状は、関節内や筋肉内の出血(深部出血)です。その他、抜歯後に血が止まらなかったり、頭蓋内で出血することもあります。

 

血友病の治療

血友病の治療は、欠損している血液凝固因子を補充する治療が基本です。

 

血友病による出血を予防するため、上記因子の「定期補充療法」を行います。

また、出血してしまった際には適宜、「オンデマンド補充療法」を行います。

※オンデマンド(on-demand)とは、「必要に応じて」を意味します。

 

血液凝固因子製剤は在宅でも安全に静脈内投与ができることから、上記の定期補充療法を中心として、出血時には必要に応じてオンデマンド補充療法を行うことが一般的です。

 

定期補充療法のデメリット(インヒビターの出現)

定期補充療法は、出血を予防するために常に体内に一定量の凝固因子を存在させておく必要があります。

従って、血中濃度を一定量維持するため、週に3回程投与する必要があります。最近では半減期を延長し、週に1回の投与で治療が可能な製剤もあります。

 

また、定期補充療法を繰り返していると、補充している凝固因子を「異物(非自己)」と認識し、凝固因子に対して抗体が産生されてしまうことがります。

このような抗体のことを「インヒビター」と呼び、血友病A患者さんの約10%~15%に認められます。

 

インヒビターが出現してしまうと、当然、補充した凝固因子が働くことができないため、止血能力が失われてしまいます。

インヒビターが出現してしまった場合の治療法には「インヒビター中和療法」や「バイパス止血療法」がありますが、選択肢は限られていました。

 

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バイスペシフィック抗体とヘムライブラ(エミシズマブ)の作用機序

前述の血液凝固反応(カスケード)の際、活性化した第Ⅷ・Ⅸ因子(ⅧaとⅨa)が第Ⅹ因子と複合体を形成することで第Ⅹ因子が活性化されⅩaが生成されます。

血友病Aでは第Ⅷ因子が欠損していることから、この複合体が形成できずに血液凝固反応(Ⅹ⇒Ⅹa)がストップしてしまっています。

 

通常の抗体は1種類の抗原としか結合できませんが、今回ご紹介するヘムライブラは2種類の抗原(ⅨaとⅩ)に結合することができます。

このような特徴を有する抗体を「バイスペシフィック抗体(二重特異性抗体)」と呼んでおり、国内では初の登場です。

 

ヘムライブラはⅨaとⅩに同時に結合することで、Ⅷaと同様の機能を発揮すると考えられています。

即ち、「ヘムライブラ-Ⅸa-Ⅹの複合体」を形成することで、第Ⅹ因子が活性化され、Ⅹaの生成が促進されるといった作用機序です。

Ⅹaが生成されると、その後の血液凝固反応が進行しますので、無事にフィブリンが生成され二次止血が完了します。

 

エビデンス紹介①:インヒビター保有(HAVEN1試験)

ヘムライブラは前述の第Ⅷ因子の補充療法によってインヒビターが出現している患者さんに有効性が示されています。1-2)

 

ここではHAVEN1試験1)についてご紹介します。

本試験は12歳以上のインヒビター保有の血友病A患者さんを対象に、ヘムライブラの有効性を検証した第Ⅲ相臨床試験です。

A群~D群まで4群間の比較試験ですが、今回は簡略化してA群とB群の比較をご紹介します。

 

試験治療開始前までにバイパス止血製剤による出血時止血療法を受けた患者さんをA群(ヘムライブラ定期投与)とB群(非投与群)に分けて比較しています。

主要評価項目はA群とB群の「治療を要した出血の年間出血率」の比較です。

試験群A群
(ヘムライブラ投与)
B群
(非投与)
治療を要した出血の
年間出血率
2.9イベント23.3イベント
p<0.0001
治療を要した出血が
認められなかった割合
62.9%5.6%

 

1)HAVEN1試験:N Engl J Med. 2017 Aug 31;377(9):809-818.
2)HAVEN2試験:添付文書

 

エビデンス紹介②:インヒビター非保有(HAVEN3試験)

ヘムライブラはインヒビターが出現していない患者さんに対しても効果が期待されています。

 

その根拠となった試験がHAVEN3試験です。3)

本試験は第Ⅷ因子製剤によるオンデマンド補充療法(出血時の止血療法)もしくは定期補充療法を受けていて、かつインヒビターを保有しない12歳以上の血友病Aさんを対象に行われた第Ⅲ相臨床試験です。

以下の4つの群(A~D群)に分けられてヘムライブラの有効性と安全性が検証されました。

A群第Ⅷ因子製剤によるオンデマンド補充療法を受けており、
ヘムライブラ3mg/kgを週1回、4週間定期投与し、
その後1.5mg/kgへ用量を変更し週1回の頻度で定期投与
B群第Ⅷ因子製剤によるオンデマンド補充療法を受けており、
ヘムライブラ3mg/kgを週1回、4週間定期投与し、
その後3mg/kg を2週間に1回の頻度で定期投与
C群第Ⅷ因子製剤によるオンデマンド補充療法を受けており、
ヘムライブラは非投与
D群第Ⅷ因子製剤による定期補充療法を受けており、
ヘムライブラ3mg/kgを週1回、4週間定期投与し、
その後1.5mg/kgへ用量を変更し週1回の頻度で定期投与

 

主要評価項目は、オンデマンド補充療法を受けていた患者さん(A~C群)のうち、非投与群(C群)に対するヘムライブラ投与群(AとB群)の「治療を要した年間出血の減少率」です。

試験群A群
(ヘムライブラ1週間隔)
B群
(ヘムライブラ2週間隔)
C群
(非投与)
治療を要した出血の
年間イベント
1.5イベント1.3イベント38.2イベント
C群に対する
治療を要した年間出血の減少率
-96%
(p<0.001)
-97%
(p<0.001)
-
治療を要した出血ゼロの達成割合56%60%0%

 

このようにヘムライブラは、インヒビター非保有患者さんに対して1週間隔でも2週間隔でも出血率を有意に減少させることが示されています。

 

3)HAVEN3試験:N Engl J Med 2018; 379:811-822

 

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ヘムライブラ皮下注の副作用

主な副作用としては注射部位反応が報告されています。

稀に血栓塞栓症や血栓性微小血管症の発現もありますので注意が必要です。

 

ヘムライブラ皮下注の用法・用量、自己注射

通常、エミシズマブとして1回3mg/kgを1週間の間隔で4回皮下投与し、以降はいずれかの用法・用量で皮下投与します。

  • 1回1.5mg/kgを1週間の間隔
  • 1回3mg/kgを2週間の間隔
  • 1回6mg/kgを4週間の間隔

 

ちなみに、4週間隔の投与については、インヒビター保有/非保有の患者さんを対象としたHAVEN4試験に基づいています。

 

なお、在宅での自己注射も可能です。

 

薬価

収載時(2018年5月22日)の薬価は以下の予定です。

  • 30mg1mL 1瓶:376,006円
  • 60mg0.4mL 1瓶:692,565円
  • 90mg0.6mL 1瓶:989,990円
  • 105mg0.7mL 1瓶:1,134,028円
  • 150mg1mL 1瓶:1,552,824円

 

ヘムライブラは新規作用機序のため有用性加算(Ⅰ)が50%、希少疾病用医薬品のため市場性加算(Ⅰ)が10%加算されています。

 

有用性加算となった根拠は以下の通りです。

  • 新規作用機序:二重特異性抗体
  • インヒビター保有患者さんに対して効果が認められた
  • 皮下投与製剤のため、利便性がよい
  • ヒト又は動物由来の原材料が使用されておらず、原材料由来の感染症伝播リスクが低減されている

 

薬価の算定方法については以下の記事をご参照ください。

 

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まとめ・あとがき

ヘムライブラはこんな薬

  • 国内初のバイスペシフィック抗体(二重特異性抗体)薬
  • Ⅷaと同様の機能を発揮し、Ⅹaの生成を促進する
  • インヒビター保有/非保有に関わらず効果を示す
  • 1週間隔、2週間隔、4週間隔でも治療が可能

 

インヒビターが出現してしまった場合、その後の治療選択肢は限られてしまっていたことから、ヘムライブラの登場で有望な治療選択肢が増えたことは朗報かと考えます。

また、インヒビター非保有患者さんに対しても適応拡大が見込まれますので期待大です!

 

インヒビター非保有の場合、従来の凝固因子の定期補充療法とヘムライブラのどちらかがより良いのか等、検討が進めば興味深いと感じました。

 

以上、今回は止血のメカニズムと血友病、そしてヘムライブラ(一般名:エミシズマブ)の作用機序についてご紹介しました!

参考になったらシェアいただけると嬉しいです!
   

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。FP資格あり。

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