1.中枢神経系

エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序・副作用【片頭痛の予防】

2021年1月22日、「片頭痛発作の発症抑制」を効能・効果とするエムガルティ(ガルカネズマブ)が承認されました!

日本イーライリリー|ニュースリリース

基本情報

製品名エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/シリンジ
一般名ガルカネズマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来特になし
製薬会社製造販売:日本イーライリリー(株)
販売:第一三共(株)
効能・効果片頭痛発作の発症抑制
用法・用量通常、成人にはガルカネズマブとして初回に240 mg を皮下投与し、
以降は1 カ月間隔で120 mg を皮下投与する。
収載時の薬価オートインジェクターキット:45,165円
シリンジ:44,940円

 

エムガルティは海外では既に「Emgality」の製品名で承認・販売されている抗CGRP抗体製剤ですね!

CGRP:Calcitonin Gene-related Peptide(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)

 

国内ではCGRPに関連する薬剤の開発がいくつも進行中ですが、エムガルティが国内初となりました。2020年7月には2製品目となるアジョビ(フレマネズマブ)も申請されていますので、今後続いてくる予定です。

アジョビ(フレマネズマブ)の作用機序【片頭痛の予防】

続きを見る

 

片頭痛予防はこれまでカルシウム拮抗薬や抗てんかん薬の連日投与が基本でした。

 

木元 貴祥
エムガルティは1か月に1度の皮下投与で予防効果を発揮すると期待されていますよ。

 

今回は片頭痛とエムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序について紹介していきます。

 

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片頭痛とは

片頭痛は日本人の約10%(約1000万人)に認められる疾患です。

年代としては20歳~40歳代、性別は女性に多いとされています(男:女=1:4)。

 

もしかしたら今ご覧の方々でも経験されたことがあるかもしれません。

 

症状としては

  • ズキズキと脈打つような痛み
  • 頭の片側に急に起こる
  • 一度発症すると4~72時間くらい持続する

が特徴的です。

 

木元 貴祥
その他にも吐き気や嘔吐を伴うこともあります。

 

人によっては前兆症状として

  • 目のちらつき(キラキラした感じ)
  • 視野が狭くなる
  • しびれ
  • 言語障害

といった症状が現れることもあります。

 

片頭痛を発症しやすい要因として、

  • ストレス
  • 睡眠不足
  • 高血圧
  • ホルモンバランスの乱れ

などが知られていますね。

 

片頭痛の原因:三叉神経血管説

片頭痛の原因は、明確には解明されていませんが、

  • 血管説(セロトニン説)
  • 神経説
  • 三叉神経血管説

などが提唱されています。1)

 

最近では、最も有力なのは「三叉神経さんさしんけい血管説」と言われています。

 

木元 貴祥
三叉神経は顔面周辺に存在している、脳神経の中でも最も大きい神経です。

 

何らかの原因で三叉神経が刺激されると、「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」などの血管作動性物質が分泌されることが知られています。

 

CGRPは血管拡張作用がある物質で、血管のCGRP受容体に作用すると、血管の過度な拡張によって周囲の神経が圧迫されて痛みを生じます。

その他にもCGRPは炎症反応を増強させたり、痛みを増強させる作用もあるため、これらの作用によって片頭痛が引き起こされます。

片頭痛の発症と三叉神経血管説:CGRPが関与している

 

このように血管の過度な拡張と炎症反応によって片頭痛が生じると考えられています。

 

片頭痛の治療

片頭痛の治療薬には、

  • 急性期治療薬(片頭痛の治療目的)
  • 予防薬(片頭痛の予防目的)

があります。

 

急性期治療薬 (片頭痛の治療目的)

今起こっている片頭痛を速やかに消失させる目的の薬です。

 

重症度に応じて、

  • 軽度~中等度:アセトアミノフェン、NSAIDsなど
  • 中等度~重度:トリプタン製剤

の使用が推奨されています。

 

ただし、軽度~中等度の頭痛でも、アセトアミノフェンやNSAIDsの効果が無い場合、トリプタン製剤に変更することもあります。

【片頭痛】トリプタン製剤の作用機序と薬剤一覧まとめ比較・使い分け

続きを見る

 

吐き気や嘔吐を併発している場合、制吐薬(プリンペランやナウゼリン等)を併用します。

 

予防薬 (片頭痛の予防目的)

片頭痛発作が月に2回以上または6日以上ある場合、予防療法が行われることがあります。1)

 

木元 貴祥
片頭痛の症状が無い時に、原則、毎日服用することで発症を予防していきます。

 

主に使用される薬剤は以下です。

  • カルシウム拮抗薬
  • 抗てんかん薬
  • β遮断薬
  • 抗うつ薬
  • 漢方薬

 

今回ご紹介するエムガルティは1か月毎の皮下注投与で片頭痛の発症予防効果が期待されている薬剤です!新たな治療選択肢として期待できますね。

 

それではエムガルティの作用機序について解説していきます。

 

エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序

エムガルティは片頭痛の発症に関与していると考えられているCGRPを選択的に阻害する抗CGRP抗体製剤です。

CGRP:Calcitonin Gene-related Peptide(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)

エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序:抗CGRPモノクローナル抗体

 

CGRPの働きが阻害されることで三叉神経付近の過度な血管拡張・炎症が抑制され、片頭痛の発症を予防すると考えられています。

 

エビデンス紹介:EVOLVE-1/2試験、REGAIN試験

根拠となる臨床試験の一部をご紹介します。主には以下の海外で行われた第Ⅲ相試験です。

  • EVOLVE-1試験2):反復性片頭痛患者さんを対象とした第Ⅲ相試験(北米)
  • EVOLVE-2試験3):反復性片頭痛患者さんを対象とした第Ⅲ相試験(国際共同)
  • REGAIN試験4):慢性片頭痛患者さんを対象とした第Ⅲ相試験

 

木元 貴祥
代表としてEVOLVE-1試験をご紹介します。

 

EVOLVE-1試験は反復性片頭痛患者さんを対象に、エムガルティ120mg(初回のみ240mg)、エムガルティ240mg、プラセボを比較した第Ⅲ相試験です。

主要評価項目は「治療期間中の1か月当たりの片頭痛日数のベーススラインからの平均変化」とされ、結果は以下の通りでした。

プラセボエムガルティ
120mg
エムガルティ
240mg
1か月当たりの片頭痛日数の
ベーススラインからの平均変化
-2.8日-4.7日-4.6日
プラセボとの差:いずれもp<0.001

 

EVOLVE-2試験でも同様の結果が報告されていますし、慢性片頭痛患者さんを対象としたREGAIN試験でも同様の結果でした。

 

副作用

1%以上に認められる副作用として、注射部位疼痛(10.1%)、注射部位反応(紅斑、そう痒感、内出血、腫脹等)(14.9%)などが挙げられていました。

 

木元 貴祥
注射部位疼痛は皮下注製剤ですのである程度は仕方ないですね。

 

重大な副作用としては「重篤な過敏症反応(頻度不明)」があります。通常、過敏症は当日によく起こるのですが、エムガリティの場合、「重篤な過敏症反応は本剤投与数日後においてもあらわれることがあり、また反応が長引くことがある。」と記載されていますので、少々やっかいな印象を受けます・・・。

 

その他、CGRPは血管拡張作用を有しているため、その働きを阻害することで「心血管関連の副作用」が気になるところでした。

 

木元 貴祥
が、審査報告書を見る限り、臨床試験ではそこまで高頻度に認められているわけではなさそうですね。RMPに期待!

現時点で臨床試験及び海外の製造販売後安全性情報から本薬が心血管又は脳血管のリスクを有することは示されていないが、以下の点を踏まえ、高齢の患者や重篤な心血管疾患・症状を有する又は心血管系のリスクを有する患者における重篤な心血管イベントについて、医薬品リスク管理計画における重要な不足情報に設定する。

 

用法・用量

通常、成人にはガルカネズマブとして初回に240mgを皮下投与し、以降は1か月間隔で120mg を皮下投与します。

 

国内2番手となる見込みのアジョビ(フレマネズマブ)は3か月に一度の投与で効果が期待されているので、使い分けのヒントになるかもしれませんね。

アジョビ(フレマネズマブ)の作用機序【片頭痛の予防】

続きを見る

 

また、エムガルティは「投与開始後3ヵ月を目安に治療上の有益性を評価して症状の改善が認められない場合には、本剤の投与中止を考慮すること」とされていますので、漫然とした投与には注意が必要です。

 

収載時の薬価

収載予定時(2021年4月21日)の薬価は以下の通りです。

  • エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター1mL1キット:45,165円
  • エムガルティ皮下注120mgシリンジ1mL1筒:44,940円

 

算定方法については以下の記事をご確認ください。

【新薬:薬価収載】11製品+再生医療等製品(2021年4月21日予定)

続きを見る

 

エムガルティとアジョビ・エイモビグとの違い・比較

現在、承認・申請中のCGRP関連製剤は以下の3製品があります。

製品名
(一般名)
作用機序投与間隔状況
エムガルティ
(ガルカネズマブ)
抗CGRP抗体1か月2021年1月承認
アジョビ
(フレマネズマブ)
抗CGRP抗体3か月2020年7月申請
エイモビグ
(エレヌマブ)
抗CGRP受容体抗体1か月2020年9月申請

 

今後、承認状況等が判明次第、更新していきたいと思います♪まずは投与間隔等が異なるんですかね。

 

まとめ・あとがき

エムガルティはこんな薬

  • 片頭痛の発症を予防する
  • CGRPを選択的に阻害する抗CGRP抗体製剤
  • 月に1回の皮下注投与

 

これまで片頭痛の発症予防はカルシウム拮抗薬や抗てんかん薬の連日投与が基本でした。

 

エムガルティは国内初のCGRP関連治療薬として1か月に1度の投与で発症が予防できますので、患者さんにとってはより治療が行いやすくなると思います。

 

ちなみに、エムガルティは海外では反復性群発頭痛でも予防効果5)が示されていて適応も取得していますが、日本ではどうなるのか今後の開発動向も要チェックです!

 

片頭痛の代表的な急性期治療薬であるトリプタン製剤については以下の記事で作用機序や一覧表を作成していますので、併せてご覧くださいませ。

【片頭痛】トリプタン製剤の作用機序と薬剤一覧まとめ比較・使い分け

続きを見る

 

以上、今回は片頭痛とエムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序について紹介しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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