8.感染症 11.血液・造血器系

プレバイミス(レテルモビル)の作用機序と副作用【サイトメガロウイルス感染】

同種造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制」を効能・効果とするプレバイミス錠240mg、同点滴静注240mg(一般名:レテルモビル)2018年3月23日に承認されました。

製薬会社

  • 製造販売元:MSD(株)

 

プレバイミスはサイトメガロウイルスのターミナーゼ複合体を選択的に阻害するといった新規作用機序を有する薬剤です!

今回は造血幹細胞移植時のサイトメガロウイルス感染とプレバイミス(レテルモビル)の作用機序についてご紹介します。

 

サイトメガロウイルスとは

サイトメガロウイルス(CMV)は、ヘルペスウイルスの一種で、世界中どこにでもいるウイルスです。

乳幼児期に感染することが多く、日本でも成人の60~90%の方は過去に感染したことがあると言われています。

一度でも感染してしまうと、CMVは一生涯、体内に潜むようになります。(潜伏感染

 

しかしながら、体の免疫機能が保たれていれば、CMVが潜伏感染していたとしても症状はほとんどありません

従って、多くの方は何も症状がないまま日常生活を過ごすことができます。

 

サイトメガロウイルス感染が危険な方

通常はほとんど問題のないCMV感染ですが、以下の方々では話が変わります。

  • 妊婦
  • 免疫不全もしくは極度の免疫が低下している方

妊婦が感染してしまうと、胎盤から赤ちゃん(胎児)に感染してしまい、最悪の場合、流産や死産になってしまうこともあります。

 

また、免疫に異常がある場合(例:AIDSや臓器移植、造血幹細胞移植後)もCMV感染は危険を伴います。

CMVの感染部位によって、

  • 肺炎:呼吸困難
  • 胃腸炎:下血
  • 肝炎:肝機能の低下
  • 網膜炎:失明の危険性
  • 脳炎:脳障害
  • 膀胱炎:出血を伴うこともある

といった様々な症状を呈することがあります。

最悪の場合、死に至ることもあるため、CMVの感染を予防することが重要です。

 

それでは、免疫低下を招く一因となる「造血幹細胞移植」についてご紹介します。

 

造血幹細胞移植とは

造血機能に異常をきたした場合(例:白血病や悪性リンパ腫などの血液腫瘍、再生不良性貧血など)、ドナーから提供された造血幹細胞を患者さんに移植することを造血幹細胞移植と呼んでいます。

血液腫瘍(白血病など)の場合、そのまま造血幹細胞を移植してしまっても、体内には腫瘍細胞が残ってしまっています。

そのため、移植を行う前に大量の抗がん剤を数種類併用した多剤併用化学療法を行い、体内の腫瘍細胞と正常な血液細胞を全て根絶します。

 

その後、ドナーから提供してもらった正常な造血幹細胞を体内に投与することで、正常な血液細胞が増え(生着)、移植が完了します。

 

移植後も血液細胞の働きは完全と言えず、免疫力が低下している状態です。

そのため、移植後には様々な感染症の危険性が伴います。

特に、移植後30日~100日の間にはCMV感染の危険があるため、これを予防する必要があります。

 

造血幹細胞移植時のサイトメガロウイルス感染予防

移植後にはCMV感染を注意深くモニタリングして、感染が疑われ始めたら

  • デノシン(一般名:ガンシクロビル
  • バリキサ(一般名:バルガンシクロビル)
  • ホスカビル(一般名:ホスカルネット)

などの抗CMV薬が投与されます(これを“先制治療”と言います)。

 

しかし、これらの薬剤は副作用が強く骨髄抑制や急性腎不全、腎機能異常といった重篤な副作用の危険性があります。

従って、これらの薬剤は添付文書に下記の注意書きがあります。

発症リスクの高い患者(サイトメガロウイルス抗体ドナー陽性かつレシピエント陰性等)において治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

 

そのため、副作用の少ない薬剤の開発が望まれていました。

それでは今回ご紹介するプレバイミス(レテルモビル)に関与する「ウイルスターミナーゼ」について、CMVの増殖機構と共に説明します。

 

サイトメガロウイルスの増殖機構とウイルスターミナーゼ

サイトメガロウイルス(CMV)は二本鎖DNAを持つウイルスで、単体では増殖できません。

従って、ヒト等の動物の細胞内に感染して増殖を行います。

CMVはエンベロープと呼ばれる外膜の中にカプシドがあり、その中にDNAが封入された構造を有しています。

CMVがヒト細胞に感染すると、
吸着⇒膜融合⇒脱殻というプロセスを経てヒト細胞内にウイルスDNAが放出されます。

 

その後、放出されたウイルスDNAを元にして、

  • DNAの複製
  • 転写・翻訳によるタンパク質合成

が行われます。

 

複製されたDNAは「ターミナーゼ」と呼ばれるCMVのタンパク質によって、「ターミナーゼ複合体」を経由してカプシド内に格納されます。

ターミナーゼは複製されたDNAを細かく切断してカプシド内に格納します。

その後、DNAを封入したカプシドはエンベロープ内に運ばれ、CMVが完成します。

以上のようなプロセスによって、CMVはヒトの体内で増殖します。

 

プレバイミス(一般名:レテルモビル)の作用機序

プレバイミスはCMVのターミナーゼ複合体を選択的に阻害する薬剤です!

ターミナーゼ複合体を阻害することで、ウイルスDNAがカプシド内に格納されなくなってしまいます。

 

そのため、その後の増殖機構が全てストップされ、CMVの増殖が抑制されます。

 

また、ターミナーゼはヒトの細胞には存在していないため、副作用も少ないと考えられます。

 

プレバイミスの副作用

主な副作用には悪心・嘔吐、下痢などが報告されていますが、全体的な忍容性は良好とのことです。

また、他の抗CMV薬にみられるような骨髄抑制や腎毒性の発現も低かったと報告されています。

 

プレバイミスの用法・用量

プレバイミス錠:
通常、成人にはレテモビルとして480mgを1日1回経口投与します。
シクロスポリンと併用する場合にはレテモビルとして240mgを1日1回経口投与します。

 

プレバイミス点滴静注:
通常、成人にはレテモビルとして480mgを1日1回、約60分かけて点滴静注します。
シクロスポリンと併用する場合にはレテモビルとして240mgを1日1回、約60分かけて点滴静注します。

 

ただし、注射剤には添加剤として「ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン」が含まれています。

これは腎機能障害のある患者さんで蓄積し、腎機能の悪化等を引き起こすおそれがありますので、経口投与が可能でしたら極力経口剤を使用する方が望ましいとされています。

 

エビデンス紹介(001試験)

根拠となった臨床試験(001試験)をご紹介します。1)

本試験は、CMV抗体陽性の成人同種造血幹細胞移植患者さんを対象に、CMV感染症の発症予防を目的としてプレバイミス投与群とプラセボ投与群を直接比較する第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は投与開始時にCMVのDNAが検出されなかった患者さんにおける「移植後24週間で臨床的に有意なCMV感染を起こした患者さんの割合」です。

試験名001試験
試験群プレバイミス群プラセボ群
移植後24週間で
臨床的に有意な
CMV感染を起こした患者割合
37.5%60.6%
P<0.001
移植後48週間時点の
死亡患者割合
20.9%25.5%

 

上記より、CMV感染予防としてのプレバイミスの治療効果が確認され、死亡率も低下していることが示されています。

 

プレバイミスの薬価

収載時(2018年5月22日)の薬価は以下の予定です。

  • 240mg 1錠:14,379.20円
  • 240mg12mL1瓶:17,897円

 

プレバイミスは新規作用機序のため画期性加算が75%、希少疾病用医薬品のため市場性加算(Ⅰ)が10%加算されています。

しかし、製造総原価の開示度が低いために加算係数0.2を乗じて、最終的には、(75%+10%)×0.2=17%の加算とされています。

 

画期性加算となった根拠は以下の通りです。

  • 新規作用機序:ウイルスターミナーゼ選択的阻害
  • 臨床試験にて全死亡率を低下させた
  • 造血幹細胞移植後の生着に影響を与えない
  • 骨髄抑制(好中球減少等)も認められていない

 

薬価の算定方法については以下の記事をご参照ください。

>>【新薬:薬価収載】13製品(2018年5月22日)

 

まとめ・あとがき

プレバイミスはこんな薬

  • ウイルスターミナーゼを選択的に阻害する
  • 骨髄抑制や腎毒性の発現が低い

 

造血幹細胞移植時のCMV感染は特に重篤化し、命の危険性も伴う感染症です。

これまでの抗CNV薬では、重篤な骨髄抑制や腎毒性の副作用があったことから、安易には使用できませんでした。

プレバイミスによって、CMV感染の発症を抑えられれば、患者さんのQOL向上にも寄与できると考えます。

 

以上、今回はサイトメガロウイルス(CMV)感染症とプレバイミス(レテルモビル)の作用機序についてご紹介しました。

 

引用文献・資料等

  1. 001試験:N Engl J Med. 2017 Dec 21;377(25):2433-2444.

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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