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エンタイビオ(ベドリズマブ)の作用機序と副作用【潰瘍性大腸炎】

   

新薬情報オンライン(@shinyaku_online)です。

2018年7月2日、厚労省は「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする新規有効成分医薬品のエンタイビオ点滴静注用300mg(一般名:ベドリズマブ(遺伝子組換え))を承認しました。

 

エンタイビオは「α4β7インテグリン」を特異的に阻害するといった新規作用機序を有するモノクローナル抗体製剤です。

 

今回は潰瘍性大腸炎とエンタイビオ(ベドリズマブ)の作用機序、根拠となったエビデンスについてご紹介します。

 

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潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患(炎症を伴う腸疾患)の1つであり、大腸の粘膜に炎症が起き、ただれたり、潰瘍が発生する疾患です。

好発年齢は10歳代後半~30代前半で、比較的若年者にみられます。

 

主な自覚症状としては、粘血便、下痢、腹痛などの症状が持続的かつ反復的にみられ、症状が悪化すると体重減少や発熱など、全身の症状が起こることもあるようです。

特に初期症状としては粘血便が多いとされています。

 

潰瘍性大腸炎の多くは、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返します。

長い経過のなかでは、徐々に病気が進行し、重大な合併症を引き起こすこともあり、さらに、長期間罹患していると、大腸がんの発現率も高くなると言われています!!

 

潰瘍性大腸炎の原因

明確な原因は未だ不明とされていますが、

  • 免疫異常等の遺伝因子
  • 食習慣等の環境因子
  • ストレス等の心理学的因子

が複雑に関与して発症すると考えられています。

 

何らかの自己免疫異常によって、免疫細胞(白血球)が自分自身の大腸粘膜を「異物」としてみなして攻撃してしまうことで大腸粘膜に炎症が引き起こされます。

このような持続的な自己免疫異常が潰瘍性大腸炎の発症と炎症の持続に関与すると言われています。

 

白血球(マクロファージ、顆粒球、T細胞)が大腸粘膜を攻撃する際、血中の白血球は以下のプロセスで大腸粘膜まで移動し、攻撃を行います。

  1. 血管内皮細胞に接着する
  2. 組織内に入る(浸潤
  3. 攻撃する部位(この場合、大腸粘膜)に移動する(“遊走”と呼びます)
  4. 大腸粘膜を攻撃し、炎症を引き起こす

 

白血球の中でもリンパ球のT細胞が上記プロセスを行う場合、まずT細胞に発現している「α4β7インテグリン」と呼ばれるタンパク質が血管内皮細胞上にある「MAdCAM-1」と結合することで「接着」が起こります。

その後、接着した部位から組織内に浸潤が起こり、大腸粘膜に遊走していきます。

大腸粘膜に到達したT細胞が粘膜を攻撃することで炎症を引き起こします。

 

潰瘍性大腸炎の治療

潰瘍性大腸炎は、その病状により、「軽症」「中等症」「重症」に分類されております。

 

潰瘍性大腸炎は原因が不明であるため、腸管の炎症を抑えて症状を鎮め寛解に導くこと、そして炎症のない状態を維持(寛解状態)することが治療の主な目標になります。

治療は薬物療法が主体となりますが、薬物療法が有効でない場合や腸閉塞、穿孔などの合併症では外科治療血球成分除去療法などが行われることもあります。

 

初期に行う主な薬物療法は、以下の薬剤があり、重症度によって適宜併用して用います。

  • 5-ASA製剤:メサラジン、サラゾスルファピリジン
  • 副腎皮質ホルモン:ブレドニゾロン、ブデソニド
  • 免疫調整薬:アザチオプリン、6-メルカプトプリン

 

これらの標準治療薬剤を使用しても症状が改善しない場合、「難治」とされ、以下のような生物学的製剤(抗TNFα抗体製剤)の使用が検討されます。

 

今回ご紹介するエンタイビオは標準治療薬剤に抵抗性、もしくは抗TNFα抗体製剤に抵抗性を示す中等症から重症の潰瘍性大腸炎に対して治療効果が認められている薬剤です。

 

エンタイビオ(一般名:ベドリズマブ)の作用機序

エンタイビオは、前述のT細胞の接着に関与する「α4β7インテグリン」を特異的に阻害するモノクローナル抗体薬です!

T細胞の「α4β7インテグリン」と血管内皮細胞上の「MAdCAM-1」との結合を阻害することでT細胞の接着と浸潤、そして遊走を抑制することができます。

 

 

このように、炎症部位にT細胞が向かうのを阻害するため、エンタイビオはホーミング阻害剤とも呼ばれます。

その結果、T細胞による炎症反応が抑制でき、潰瘍性大腸炎の症状緩和効果を発揮すると考えられます。

 

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エンタイビオ点滴静注用の副作用

主な副作用として、寒気、頭痛、関節痛、悪心、発熱、感染症などがあります。

稀に肺炎、敗血症、結核等の重篤な感染症が報告されているため、特に注意が必要です。

 

エビデンス紹介(GEMINIⅠ試験)

根拠となった臨床試験の一つである海外のGEMINIⅠ試験をご紹介します。1)

本試験は少なくとも1つ以上の従来の薬物療法または抗TNFα抗体薬による治療にも関わらず、中程度から重度の活動期潰瘍性大腸炎患者さんを対象に、エンタイビオ群とプラセボ群を直接比較する第Ⅲ相臨床試験です。

本試験は導入期と維持療法期から構成されています。

 

<導入期>
1日目と15日目にエンタイビオもしくはプラセボを投与する群を比較します。

<維持療法期>
治療開始6週時点でエンタイビオに反応した患者さんをエンタイビオ継続投与(4週毎 or 8週毎)もしくはプラセボを投与する3群を比較します。

 

導入期の主要評価項目は「6週時点の改善率」で、結果は以下の通りでした。

試験名 GEMINIⅠ試験(導入期)
試験群 エンタイビオ群 プラセボ群
6週時点の
改善率*
47.1% 25.5%
p<0.001
6週時点の
寛解率
16.9% 5.4%
p=0.001
6週時点の
粘膜治癒率
40.9% 24.8%
p=0.001

*Mayoスコアがベースラインから3ポイント以上かつ30%以上低下した患者さんの割合
†Mayoスコアが2以下かつ他のサブスコアで1を超えるものが無い患者さんの割合
※Mayo内視鏡サブスコアが1以下の患者さんの割合

 

維持療法期の主要評価項目は「52週時点の寛解率」で、結果は以下の通りでした。

試験名 GEMINIⅠ試験(維持療法期)
試験群 エンタイビオ
4週毎群
エンタイビオ
8週毎群
プラセボ群
52週時点の
寛解率
44.8% 41.8% 15.9%
p<0.001
52週時点の
粘膜治癒率
56.0% 51.6% 19.8%
p<0.001

 

このようにエンタイビオは、導入期と維持療法期、共にプラセボと比較して良好な治療成績が得られています。

 

1)GEMINIⅠ試験:N Engl J Med. 2013 Aug 22;369(8):699-710.

 

エンタイビオ点滴静注用の用法・用量

通常、成人にはべドリズマブとして1回300mgを点滴静注します。

初回投与後、2週、6週に投与し、以降8週間隔で点滴静注を行います。

 

薬価

薬価収載時点(2018年8月29日)の薬価は以下の通りです。

  • エンタイビオ点滴静注用300mg:274,490円(1日薬価:4,902円)

 

新規作用機序のため有用性加算(Ⅱ)が10%加算されており、根拠は以下の通りです。

  1. α4β7インテグリンに結合するといった新規作用機序を有する
  2. 抗TNFα抗体薬の治療歴のある患者さんにも効果がある

 

算定方式等は以下の記事をご覧ください。

 

あとがき

エンタイビオは、T細胞の接着に関与する「α4β7インテグリン」を特異的に阻害するといった新規の作用機序を有する薬剤です。

2018年7月18日にクローン病の適応拡大についても申請されていますので、今後にも期待したいと思います。

 

今後は既存の抗TNFα抗体製剤との使い分けや投与の順番等が検討されれば興味深いと感じます。

 

以上、今回は潰瘍性大腸炎とエンタイビオ(ベドリズマブ)の作用機序についてご紹介いたしました♪

 
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