7.炎症・免疫・アレルギー 疾患・作用機序まとめ

JAK阻害薬の一覧表(経口7製品)と作用機序のまとめ

今回の記事では関節リウマチ、乾癬、アトピー性皮膚炎、新型コロナウイルス感染症などで使用されているJAK阻害薬のまとめを紹介していきます。

 

JAK阻害薬には経口薬として以下の8製品がありますが、悪性腫瘍に使用するジャカビ(ルキソリチニブ)と外用薬のコレクチム軟膏(デルゴシチニブ)については今回は割愛します。

 

それぞれ効能・効果に違いがありますので、作用機序と共に各薬剤の一覧表や違いについて解説していきますね!

 

炎症性疾患(リウマチ・乾癬・アトピー性皮膚炎など)の発症機序

関節リウマチ、乾癬、アトピー性皮膚炎などの明確な発症原因は不明確ですが、

  • 家族歴・既往歴
  • 外的要因
  • 環境要因(ストレス、食生活、肥満等)

などによって、炎症反応が引き起こされることで発症すると考えられています。

 

様々な原因によって、マクロファージやTh2細胞(ヘルパーT細胞の一種)からTNFα、IL-4、IL-6、IL-13、IL-22などのサイトカイン・ケモカインや化学伝達物質が放出され、これが作用することで疾患を誘発すると考えられています。

炎症性疾患(リウマチ・乾癬・アトピー性皮膚炎など)の発症機序

 

木元 貴祥
各疾患の概要や治療法については各JAK阻害薬の記事内で解説していますので参考にしてみてください。

 

関節リウマチ

ジセレカ(フィルゴチニブ)の記事内で解説しています!

ジセレカ(フィルゴチニブ)の作用機序【関節リウマチ/潰瘍性大腸炎】

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潰瘍性大腸炎

ゼルヤンツ(トファシチニブ)の記事内で解説しています。

ゼルヤンツ(トファシチニブ)の作用機序【関節リウマチ/潰瘍性大腸炎】

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潰瘍性大腸炎の適応症を有するJAK阻害薬はゼルヤンツのみでしたが、2022年にはジセレカ(フィルゴチニブ)も適応拡大されました。

ジセレカ(フィルゴチニブ)の作用機序【関節リウマチ/潰瘍性大腸炎】

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乾癬

リンヴォック(ウパダシチニブ)の記事内で解説しています。

リンヴォック(ウパダシチニブ)の作用機序【関節リウマチ/乾癬/アトピー性皮膚炎】

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アトピー性皮膚炎

サイバインコ(アブロシチニブ)の記事内で解説しています。

サイバインコ(アブロシチニブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎】

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その他、外用JAK阻害薬のコレクチム軟膏(デルゴシチニブ)も使用されていますね。

コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎】

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SARS-CoV-2による肺炎

いわゆる、新型コロナウイルス感染症ですね。これはJAK阻害薬の中でもオルミエント(バリシチニブ)のみが適応を有しています。

 

新型コロナウイルス感染症とオルミエントの使い方については併用するベクルリー(レムデシビル)の記事で解説!

ベクルリー(レムデシビル)の作用機序・副作用【COVID-19】

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円形脱毛症

オルミエント(バリシチニブ)の記事内で解説しています。経口のJAK阻害薬では初の適応症です。

オルミエント(バリシチニブ)の作用機序【リウマチ/アトピー/COVID-19/円形脱毛症】

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その後、JAK阻害作用にTECファミリーキナーゼ阻害作用を有するリットフーロカプセル(リトレシチニブ)も登場しました。

リットフーロカプセル(リトレシチニブ)の作用機序【円形脱毛症】

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JAK阻害薬の作用機序

炎症性サイトカインであるTNFαやIL-6、IL-2等が炎症を引き起こす際、それらが各受容体に結合して刺激が核に伝えられます。

 

各受容体には「ヤヌスキナーゼ(JAKジャック」と呼ばれるタンパク質が付随していて、JAKを介してシグナルが核へと届けられます。

JAKには結合するサイトカインの受容体に応じてJAK1・JAK2・JAK3が知られている。

 

核内に刺激が到達すると、炎症反応が引き起こされ、関節リウマチや乾癬、アトピー性皮膚炎などが進行してしまいます。

 

JAK阻害薬はJAKを阻害することで、TNFαやIL-6による刺激が核に伝わるのを遮断して炎症を抑えるといった作用機序です。

 

炎症が抑えられる結果、各疾患の進行や症状緩和に繋がると考えられていますね。

 

注意すべき副作用(経口JAK阻害薬)

いずれの経口JAK阻害薬も重大な副作用として、

  • 感染症:帯状疱疹及び肺炎等
  • 消化管穿孔
  • 好中球減少、リンパ球減少、ヘモグロビン減少
  • 肝機能障害:ALT上昇、AST上昇等
  • 間質性肺炎
  • 静脈血栓塞栓症

が挙げられていますので注意が必要です。

 

特に結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染などの重篤な感染症は注意すべきでしょう。

 

経口のJAK阻害薬の比較一覧表

JAKが関与する代表的なサイトカインの受容体としては以下が知られています。

サイトカイン 関与するJAK
IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15 JAK1、JAK3
IL-6 JAK1、JAK2
IFN-α JAK1
IFN-γ JAK1、JAK2
G-SCF JAK1、JAK2

日本薬理学雑誌 144 巻 (2014) 4 号, 160-166

 

各JAKへの選択性として、

を選択的に阻害することが知られています。

Expert Opin Investig Drugs. 2016 Dec;25(12):1355-1359. J Pharmacol Sci. 2017 Jan;133(1):25-33.

 

木元 貴祥
作用機序の違いが有効性や安全性にどう影響するのかは明らかではありませんので、今後の検討が必要かと考えます。

 

その他、効能・効果や用法・用量にも少し違いがありますので、以下に比較表としてまとめてみました☆

経口JAK阻害薬の違い・比較一覧表

 

腎機能に関する禁忌項目や相互作用などに差があることが分かりますね。参考にしていただければ幸いです!

 

まとめ

JAK阻害薬はこんな薬

  • 炎症性サイトカインのシグナル伝達に重要なヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害する
  • 経口薬8製品と外用薬1製品があり、それぞれ適応症が異なる

 

近年、様々な疾患でJAK阻害薬が開発されています。新型コロナウイルス感染症治療薬として登場したのはびっくりしました!

 

木元 貴祥
今後も色々開発が進行中ですので、適宜更新していきたいと思います♪

 

↓↓各薬剤のリンクはこちら↓↓

 

 

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木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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