5.内分泌・骨・代謝系

ウパシタ(ウパシカルセト)の作用機序【副甲状腺機能亢進症】

2021年6月23日、厚労省は「血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品のウパシタ静注透析用シリンジ(ウパシカルセト)を承認しました!

三和化学研究所|ニュースリリース

基本情報

製品名 ウパシタ静注透析用25μg/50μg/100μg/150μg/200μg/250μg/300μgシリンジ
一般名 ウパシカルセトナトリウム水和物
製品名の由来 血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症の患者さんの「明日あした」へという願いを込めて、
「ウパシカルセト」と「明日あした」を合わせて「ウパシタ」と命名した。
製薬会社 製造販売元:(株)三和化学研究所
プロモーション提携:キッセイ薬品工業(株)
効能・効果 維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症
用法・用量 記事中参照
収載時の薬価 25μg1mL1筒:976円
50μg1mL1筒:1,392円
100μg1mL1筒:2,007円
150μg1mL1筒:2,494円
200μg1mL1筒:2,914円
250μg1mL1筒:3,291円
300μg1mL1筒:3,635円

 

木元 貴祥
ウパシタは新規のカルシウム受容体作動薬ですね。

 

カルシウム受容体作動薬には、既に以下の3製品が承認・販売されています。

 

ウパシタは透析回路静脈側に注入するので、パーサビブと同じ使い方ですね。

 

今回は二次性副甲状腺機能亢進症とウパシタ(ウパシカルセト)の作用機序についてご紹介します。

 

副甲状腺とPTH

二次性副甲状腺機能亢進症の説明の前に、副甲状腺と「副甲状腺ホルモン(PTH:パラソルモン)」の働きについて説明します。

喉の近くにある甲状腺の裏側には、米粒大の「副甲状腺」という臓器が存在しています。

 

副甲状腺から分泌されるPTHは、

  • 腸管からのカルシウム吸収促進
  • 尿からのカルシウム排泄抑制
  • 骨のカルシウムを血中に放出(骨吸収)

などの作用によって、血中のカルシウム濃度を上昇させる働きがあるホルモンです。

その他にも、リンの尿中排泄を促進する働き(血中のリン濃度低下作用)もあります。

 

血中のカルシウム濃度が上昇すると副甲状腺の「カルシウム受容体」がそれを感知し、PTHの分泌を抑制します。

逆に、血中のカルシウム濃度が低下するとカルシウム受容体が感知して、PTHの分泌を促進させます。

 

木元 貴祥
このように、血中のカルシウムやリンの濃度を一定に保つために働いているホルモンがPTHです。

 

腎臓の働きとカルシウム濃度

腎臓の働きの一つに「活性型ビタミンD3の産生」があります。

活性型ビタミンD3は、ビタミンDが肝臓と腎臓を経て産生される物質で、腸管からのカルシウム吸収を促進して血中カルシウム濃度を上昇させます。

その他、リンの排泄にも腎臓が大きく関わっています。

 

慢性腎不全(透析患者さん)と二次性副甲状腺機能亢進症

透析を行っている患者さんでは腎機能が低下しています(慢性腎不全)。

そのため、活性型ビタミンD3の産生が低下し、腸管からのカルシウム吸収が悪くなってしまっています。(→低カルシウム血症

また、リンの排泄もできなくなってしまい、体内にリンが蓄積されてしまいます。(→高リン血症

 

このような低カルシウム血症高リン血症の状態が長期間持続してしまうと、低下したカルシウム濃度を上昇させるために、副甲状腺からPTHが過剰に分泌されます。

この状態になると、カルシウム濃度に関係なく常にPTHが過剰分泌されてしまい、血中のカルシウム濃度が異常に上昇してしまいます。

 

このような疾患が「二次性副甲状腺機能亢進症」です。

 

症状

PTHの過剰分泌によって、骨からカルシウムが放出(骨吸収)されてしまいます。

そのため、骨が脆くなってしまい、骨折を引き起こすことがあります。

 

また、血中のカルシウム等が骨以外の場所(関節、皮下、眼、血管)に沈着する「異所性石灰化」がみられることもあります。

血管に異所性石灰化がみられると、動脈硬化などの心血管系障害の発症リスクが高まり、生命予後に影響を及ぼす可能性もあります。

 

治療

二次性副甲状腺機能亢進症の治療の基本は、薬物療法です。

主に用いられる薬物療法には、以下があります。

  • 活性型ビタミンD3製剤
  • カルシウム受容体作動薬

 

薬物療法で効果が不十分な場合は、手術が行われることもあります。

 

今回ご紹介するウパシタは「カルシウム受容体作動薬」に分類されている薬剤です。

 

ウパシタ(ウパシカルセト)の作用機序

ウパシタは、血中カルシウム濃度のセンサーである副甲状腺のカルシウム受容体を直接刺激するカルシウム受容体作動薬です。

カルシウム受容体を刺激することで過剰なPTHの分泌が抑制され、血中のPTH濃度を低下させるといった作用機序を有しています。

その結果、血中のカルシウム濃度やリン濃度が正常になり、二次性副甲状腺機能亢進症の症状緩和が得られると考えられます。

ウパシタ(ウパシカルセト)の作用機序

 

用法・用量

通常、成人には、ウパシカルセトナトリウムとして1回25μgを開始用量とし、週3回、透析終了時の返血時に透析回路静脈側に注入します。

血清カルシウム濃度に応じて開始用量を1回50μgとすることができます。以後は、患者の副甲状腺ホルモン(PTH)及び血清カルシウム濃度の十分な観察のもと、1回25~300μgの範囲内で適宜用量を調整します。

 

増量する場合には増量幅を50μg(ただし25μgから増量する場合は50μgへ増量)とし、2週間以上の間隔をあけて行うこととされていますね。

 

副作用

他のカルシウム受容体作動薬と同じですが、重大な副作用として

  • 低カルシウム血症(5.7%)
  • QT延長(1.3%)

が挙げられていますので注意が必要です。特に血清カルシウム濃度については投与開始時及び用量調整時は週1回測定し、維持期には2週に1回以上測定することとされています。

 

他のカルシウム受容体作動薬との違い・比較

同様の作用機序(カルシウム受容体作動薬)と投与経路を持つ類薬はパーサビブ静注透析用(エテルカルセチド)です。

 

木元 貴祥
ざっと調べた限り、そこまで差は無さそうでしたね・・・。共にプレフィルドシリンジ製剤ですし。

 

強いて言うなら、パーサビブは3規格、ウパシタは7規格ですので、ウパシタは患者さんのカルシウム値に合わせて細かく用量設定ができるのかもしれませんね。

その他の比較についてはオルケディアの記事で紹介しています!

オルケディア(エボカルセト)の作用機序:レグパラ/パーサビブ/ウパシタとの違い【副甲状腺機能亢進症】

続きを見る

 

収載時の薬価

収載時(2021年8月12日)の薬価は以下の通りです。

  • ウパシタ静注透析用25μgシリンジ:976円
  • ウパシタ静注透析用50μgシリンジ:1,392円
  • ウパシタ静注透析用100μgシリンジ:2,007円
  • ウパシタ静注透析用150μgシリンジ:2,494円
  • ウパシタ静注透析用200μgシリンジ:2,914円
  • ウパシタ静注透析用250μgシリンジ:3,291円
  • ウパシタ静注透析用300μgシリンジ:3,635円(1日薬価:1,513円)

 

算定根拠等については以下をご確認ください。

【新薬:薬価収載】15製品+再生医療等製品(2021年8月12日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

ウパシタはこんな薬

  • 透析回路静脈側に注入して使用する
  • カルシウム受容体作動薬
  • 過剰なPTHの分泌が抑制され、血中のPTH濃度を低下させる

 

カルシウム受容体作動薬には、既に以下の3製品が承認・販売されていますが、ウパシタは新たな選択肢として期待されます。

 

特に透析回路静脈側に注入して使用するのはこれまでパーサビブしかありませんでしたので、治療選択肢が広がるのは朗報ではないでしょうか。

 

以上、今回は二次性副甲状腺機能亢進症とウパシタ(ウパシカルセト)の作用機序についてご紹介しました。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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